障害者雇用という社会的バリアフリーをめざして
- 事業所名
- 盛岡ターミナルビル株式会社
- 所在地
- 岩手県盛岡市
- 事業内容
- 駅ビル業、ホテル業、飲食店の運営、駐車場業、新幹線高架下の管理業務
- 従業員数
- 269名
- うち障害者数
- 11名
障害 人数 従事業務 視覚障害 1 接客 聴覚障害 1(言語) 食器の洗浄・管理 肢体不自由 0 内部障害 0 知的障害 8 食器の洗浄・管理 精神障害 1 食器の洗浄・管理 - 目次
1. 事業所の概要等
(1)事業所の概要
当社は昭和54年に設立。JR東日本を筆頭株主(74.9%)とする安定企業である。昭和56年に盛岡駅に隣接する駅ビル「フェザン」と「盛岡ターミナルホテル」(現ホテルメトロポリタン盛岡)を開業した。盛岡の経済をリードし、地域イメージをつくる企業として、地域に与える影響は大きい。事業の詳細は以下のとおり。
・ホテル業:ホテルメトロポリタン盛岡(本館)、ホテルメトロポリタン盛岡ニューウイング(新館)
・駅ビル業:フェザン(盛岡駅ビル)、ラビナ(青森駅ビル)
・飲食店の運営
・駐車場業
・新幹線高架下の管理業務
(2)経営方針(企業理念)
「盛岡を変革する企業」を目標とし、自己改革に努めると共に、地域におけるリーダー企業を目指す。
(3)組織構成
・SC(ショッピングセンター)営業部(営業企画部、事業部、フェザン店、ラビナ店)
・ホテル営業本部(営業部、スチュワード課、調理部)
・CS(カスタマーズサービス)推進センター
・管理本部(設備部、経理部、総務部)
(4)障害者雇用の理念
当社の行動指針については、以下の4点を掲げている。
①「お客様第一の営業に徹します」
②「キャッシュフロー経営を目指します」
③「地域社会の発展に貢献します」
④「社員の生活向上を図ります」
特に③の「社会貢献」の内容として、環境対策とバリアフリーが掲げられている。施設としてのバリアフリー整備はもちろんだが、障害者雇用も「社会的バリアフリー」と認識している。
ホテルメトロポリタン盛岡の新館として平成8年に「ホテルメトロポリタン盛岡ニューウイング」がオープン。高級感あふれるこのホテルは、当初から「人にやさしいホテル」をコンセプトとしたバリアフリー設計を採用した。全フロアで客室の段差をなくして車いすでの移動がしやすく、ハンディキャップルームも用意した。このようなハード面での整備だけでなく、バリアフリーに関するセミナーを社員教育として行うなど全社的に啓蒙・理解も徹底した。
2. 障害者雇用の経緯
当社は、ホテルのバリアフリー対策と同時に社会的責務としての障害者の雇用も進めてきたが、平成11年、以前から障害者福祉についての理解が深かった熊谷保志さんがスチュワード課に着任し、一気に障害者雇用が進んだ。
什器の洗浄、保管、管理といった洗い場担当部署であるスチュワード課の熊谷課長は、JR東日本からの出向社員。かつて秋田県大館市に勤務していた頃、地元の障害者施設の家族旅行の企画を提案。300人もの参加者を案内し、イベント列車を走らせた。バスの旅行より移動中ものびのびとして楽しめ、トイレの心配もいらないこの旅行は家族や職員からも喜ばれ、評判となった。
その後、「びゅうプラザ盛岡」に勤務し、盛岡ターミナルビルの社員である石川紀文さんが代表を務める市民団体「アクセシブル盛岡」の活動に触れ、バリアフリーや障害者への理解をさらに深めていった。
平成11年、ホテルメトロポリタン盛岡ニューウイングのスチュワード課に出向となる。
当事、障害者は4名働いていたが、現在は11名まで雇用を拡大した。トライアル雇用も積極的に活用している。なお、食器の洗浄や管理業務は、障害の特性を考慮しつつも障害のある社員には一律の職務を課している。
「ホテルがバリアフリーであるように、人についても社会に貢献していきたい。障害者を雇用することについては、社内報などにも書いて社員に対し、機会があるごとに理解を求めています」と熊谷課長。
また、職場配置について、これまで障害者はホテル営業本部のスチュワード課へ配属していたが、平成16年4月から、SC営業部の事業部に視覚障害者を1名配属し、駅に隣接するビル「マリオス」の20階にある直営の展望レストラン「スカイメトロ」のウエイターとして勤務している。本人は弱視の障害があるが、勤務に影響はないとのことである。また、平成17年2月に精神障害者を初めて採用し、1日も休みなく勤務している。
このような障害者雇用の取り組みが評価され、平成16年には独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構構理事長表彰を受けている。
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3. 障害者雇用にあたっての取り組み
当社の具体的な取り組みは以下のとおり。
①生涯教育として「あいさつ」「会釈」の徹底を第一としている。
②「仕事は習うより慣れろ」が熊谷課長の方針である。言葉で指導するのではなく、横に並んで黙々と同じ仕事をして見せる。「一つのことを焦らずできるまでやって見せて覚えてもらう。一つのことができるようになれば、その仕事については天下一品になる。」
③一人一人の適性に応じた労働条件を設定している。例えば、疲れが原因で集中力を欠いてしまうある社員については、4時間ごとに30分の休憩を入れることにした。休憩時間は無給となるが、業務は円滑に進められ、継続勤務が可能となった。
④問題が生じた場合は、本人だけでなく、当社が社員に指名し設置した「障害者コーディネータ」や、必要に応じてジョブコーチの助言も受けながら解決の方法をしっかり話し合う。
⑤重度障害者介助等助成金を活用して業務遂行援助者を配置した。
なお、問題の中には、身体障害のある社員が知的障害のある社員を言葉巧みに物品購入を勧誘したり、同じ出身養護学校の先輩と後輩の確執など、人間関係に関わるものもあった。このような問題は、職務遂行上の問題以上に対応が難しいと思われるが、対応してこられたのは、ひとえに熊谷課長の経験と熱意によるところが大きいのではないだろうか。
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4. 取り組みの効果
以上の取り組みによって、障害のある社員の勤務に安定化が見られるようになったほか、運転免許を取得する社員やキャッシュカードが使用できる社員が出てくるなど、一人一人の社会生活力の向上が見られるようになった。精神障害のある社員からは、「最初は疲れて大変であったが、慣れるに従い支障なく勤務できるようになった」とのコメントを聞くことができた。
5. 今後の課題・展望
毎年、若干名の障害者雇用を計画している。現在、パート社員で補っている職務についても徐々に障害者を雇用したいとのこと。これまでは、接客場面は難しいことからスチュワード課に限定しての採用であったが、平成16年にレストラン勤務が可能な実績をつくりあげたことで、さらに雇用できる職域は広がったと言えよう。
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