「共に生きる」「共に働く」
- 事業所名
- 社会福祉法人 元気村
- 所在地
- 埼玉県鴻巣市
- 事業内容
- 高齢者介護施設・障害福祉サービス事業所の運営
- 従業員数
- 892名
- うち障害者数
- 24名
障害 人数 従事業務 視覚障害 4 マッサージ業務 聴覚・言語障害 2 介護業務・庶務業務 肢体不自由 内部障害 4 介護業務・看護業務・マッサージ業務・庶務業務 知的障害 6 介護補助業務・庶務業務 精神障害 8 介護補助業務・庶務業務 発達障害 高次脳機能障害 難病等その他の障害 - 目次
1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯、障害者の作業内容
(1)事業所の概要
社会福祉法人元気村は平成5(1993)年に50名のお年寄りをお迎えするための小さな家として特別養護老人ホーム「翔裕園」を埼玉県鴻巣市に開園。以来、「家族主義」を基本理念に、幸福・福祉・繁栄を意味するハイ・ウェルヘア(高福祉)を心から実感できる理想郷を目指して、栗橋市や川口市等に各市の名称を冠に入れた翔裕園の名称(「栗橋翔裕園」、「かわぐち翔裕園」など)で特別養護老人ホームを、同様にナーシングホーム翔裕園の名称で介護老人保健施設を開園し、「感動介護」の実践による長寿社会の構築を目指して、地域社会福祉の一端を支える理想の福祉サービスの具現化に努めている。また、急速に進展する韓国、中国をはじめとするアジア諸国の高齢化に少しでも役に立てればと積極的に視察団や研修生等の受け入れを行っている。
(2)障害者雇用の経緯
高齢者のみならず、地域からニーズのあった障害福祉サービス事業所(就労移行支援事業・就労継続支援B型事業の多機能型)を立ち上げることで障害者への就労支援を法人として積極的に行うようになる。
これを契機に、法人として障害種別に特化することなく、あらゆる障害のある人を広く受け入れていこう、社会復帰のきっかけになればと平成22(2010)年に清掃などの庶務、介護補助、あん摩マッサージという職種で障害者求人を出した。
当初、応募のほとんどは精神障害者で、まずは精神障害者(女性)に施設内の清掃に従事してもらった。医師と法人内の精神保健福祉士が連携を図り、心理的サポートを行いながら職場適応を目指した。被害妄想等も出現したり、宗教的なからみも生じてきたが、なんとか定着し始めたことをきっかけに、次々と障害者雇用が開始された。
(3)障害者の作業内容
- 庶務業務
館内の掃除や洗濯などを行う。施設によって仕事内容も仕事の取り組み方も違う。仕事の取り組み方としては、シルバー人材センターから来られる高年齢の方やスタッフとチームで行う施設、一人で決められたマニュアルの通りに行う施設、障害者同士がペアになり行う施設などいろいろある。
- 介護補助業務
介護者とともに、利用者様のおむつ交換、食事介助などを行う。ヘルパー2級や初任者研修を受講し、本人が望むことで業務内容はより専門的になっていく。 - あん摩マッサージ
利用者様の状態に合わせて、マッサージを行う。特別養護老人ホームでは血流を良くすることが目的となり、介護老人保健施設では可動域を少しでも伸ばすことが目的となる。
2. 取り組みの内容、定着への配慮等
(1)取り組みの内容
- 障害者の理解を深める
法人内に障害福祉サービス事業所(就労移行支援事業・就労継続支援B型事業)を開所することで、障害者がどのような訓練をして、どのような事で悩みやすいのかなど身近で職員が感じられるようにすることで、偏見や誤解を軽減させた。
- 相談体制の充実
精神保健福祉士を雇用して、いつでも相談できるように体制を整備した。精神保健福祉士には携帯電話を携行してもらうことにし、所属施設外にも相談ができる体制を作った。電話での相談にて安定が図れない場合は、巡回し面接を行う。また、上司(所属管理者)とも密に連絡を取り、環境調整を行う。
相談に関しては仕事のことに限定しない。私生活・生活面の不安が仕事に影響することも多い。例えば、働き出したことで障害年金が受給できなくなった事例などもあり、不服申し立ての手続きの仕方や、実際に受給できなかった場合の金銭的なやりくりの相談などもある。他にも仕事を始めたことで、服薬しなくても大丈夫と思うこともあり、最初は緊張感などから保つことができるものの、2、3か月すると病状が悪化してしまう事例もあるため、服薬管理指導などを行う場合もある。
専門的な知識を持つ精神保健福祉士を配置したことで、主治医や関係機関との連携がより強化され、多角的で細やかな対応が可能となっている。
- 業務遂行の工夫
採用時面接の時に、主治医や就労支援センターなどの支援者との連携を図り、障害状態をしっかりと把握をする。障害者の希望だけでなく、病状等も併せて適切な勤務時間・日数を決める。
また、勤務場所に関しても本人が通勤できる範囲内で、職場の雰囲気の合うところから決める。例えば、対人関係が極度に苦手な人であれば、特定の人しか出入りをしない洗濯場に配置する。
マニュアルに関しても、文字だけのものや写真などを使って細かく説明したものなど、その障害者に合わせて作成する。
支援者との連携については、最初の導入週は今までの支援者に同席をしてもらう。翌週は障害者の業務が終わった後に支援者から障害者に連絡を入れてもらい様子を聞いてもらう。翌々週はなにか困ったことがあれば支援者に連絡して、支援者から障害者本人に連絡をしてもらうなどし、これまでの支援者にうまく橋渡しをしてもらうこともお願いをしている。
業務に慣れてくると時間を延ばしたい、常勤になりたいという希望や、安心感や疲れから病状が不安定になることも多い。また、周囲から自分が認められているのか、自分が行っている業務が意味のあるものなのか不安が生じたり、周りの職員と比較してもっと違う業務を行いたいなどという希望が生じることもある。その際にはまずは所属施設の管理者に面接をしてもらい、その次に精神保健福祉士が面接をするなど段階的に手厚く向き合ったり、関係者を集めてカンファレンスを開き、多角的な側面から把握をした上で解決するようにしている。
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(2)定着への配慮等
- 家族・関係機関との連携
ご家族・就労支援センターや主治医などの関係機関との連携は強化している。社会で見せる顔とご自宅で見せる顔、病院で見せる顔はそれぞれ違うことがあり、それぞれを把握していることで安定した生活が送れることが多いからである。
また、家族と連携を図ることで、ご家族の不安も把握し、良好な関係性を築くことで、障害者の安定した勤務に対して双方が協力して努めることができる。
- 定着への配慮
仕事に慣れてくると、自分の仕事への意義を不安に感じ、雑務業務なのではないかという誤解を抱くことがあるため、職場で必要な存在であること、周りの人からの評価をしっかりと伝えるよう心掛けている。ただし、「ほめる」ことだけではなく、努力しなくてはいけないこと、今後の課題を適切に伝えることで、今後何を自分が頑張らなくてはいけないのかをしっかり理解してもらうことで、自分で次の目標をもって業務に取り組むことができるように努めている。また、新たに生じた不安などを丁寧に相談に乗ることで、安定した病状を維持できるようにしている。
3. 障害者雇用における改善点・反省等、今後の取り組み・展望
(1)障害者雇用における改善点・反省等
現在まで45名が仲間として一緒に働いたが、雇用継続ができているのは21名。退職した方は身体障害者6名、知的障害者3名、精神障害者15名と圧倒的に精神障害者が多い。これは職場の人間関係や病状悪化が原因である。支援体制を強化することで、安定した勤務が行えるように職場体制を整えるとともに、所属施設に障害者対応担当を配置することで見守る目を増やし、早期に問題等を発見し解決できる体制をもっと早くつくることが必要だったと反省している。
(2)今後の取り組み・展望
- 実習生の受け入れ
今後は雇用するという側面だけでなく、積極的に実習生を受け入れることで、働くことへのイメージをつかめるよう社会復帰の足掛かりとなるお手伝いも積極的に行う。働くためにはどのような課題があるのか、しっかりと理解をしてそれぞれの施設、学校で訓練を受けることで、就労への近道にもなると思う。"雇用"ということだけでなく、雇用の前の段階のお手伝いも積極的に行いたい。 - 組織としての体制整備
平成25(2013)年度より法人本部に障害者雇用を担当する「障がい福祉課」を設置。その他、今後「障害福祉部会」を設置する。障害福祉部会は各施設より1名、障害者雇用担当者として輩出してもらい、各施設で行った事例への取り組みなどを話し合う組織で、障害者への対応の意識をより高め、理解を深めることが目的である。
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