医療・介護現場にて、その専門性を活かす
- 事業所名
- 和歌山中央医療生活協同組合
- 所在地
- 和歌山県和歌山市
- 事業内容
- 医療・介護
- 従業員数
- 403名
- うち障害者数
- 5名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚・言語障害 肢体不自由 3 エコー・心電図検査、看護師、事務 内部障害 1 事務 知的障害 精神障害 1 事務 発達障害 高次脳機能障害 難病等その他の障害 - 目次
1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯・背景
(1)事業所概要
- 事業所経歴
・1954(昭和29)年: | 和歌山中央医療生活協同組合創立、中ノ島診療所開設 |
・1961(昭和36)年: | 生協芦原診療所開設 |
・1980(昭和55)年: | 和歌山生協病院開設 |
・1998(平成10)年: | おおみや診療所開設、同年生協みなみ訪問介護ステーション開設 |
・2000(平成12)年: | 生協病院在宅総合ケアセンター開設(在宅支援・訪問介護、介護事業)、同年生協こども診療所開設 |
・2010(平成20)年: | デイサービスセンター「げんき」開設 |
- 主な事業内容
「いつでも、どこでも、だれもが安心できるよりよい医療と福祉を目指して」をスローガンに外来医療、入院医療、在宅医療、訪問介護、デイサービス事業を展開し、保健・医療・介護のネットワークを形成している。
○医療分野
・和歌山生協病院
・和歌山生協病院附属診療所
・生協こども診療所
・生協芦原診療所
・河西診療所
・おおみや診療所
○介護分野
・生協病院在宅総合ケアセンター
・訪問介護ステーション 生協みなみ
・海南海草総合介護支援センター げんき
なお、本事業所は、「日本医療機能評価機構」(※)による、病院機能評価にて「認定病院」に指定されており、地域に根ざし、安心・安全、信頼と納得の得られる医療サービスを提供すべく、常日頃努力している病院であるといえる。
(※)日本医療機能評価機構:医療機関を評価し、改善を支援する第三者機関
(2)障害者雇用の経緯
障害者雇用については、約30数年前(1980年代頃)から始まっており、当初から身体障害者が多くを占めていた。勤務形態もフルタイム勤務が基本で、当事業所が求める医療業務を担当できる方であれば、特に障害のある・なしに区別無く採用していた。人数的な枠は特段意識をすることなく、その時々の医療現場において、必要とする又は欠員となっている職種内容の技能・技術・資格を持っている方を大学或いは、ハローワーク等を通じて採用活動を行ってきた。
その結果として、雇用数は5~6名の状態で推移してきており、最近では、身体障害者4名(肢体不自由者3名、内部障害者1名)、精神障害者1名の合計5名の状況になっている。
身体障害者雇用に伴う職場環境の改善・改修については、もともと職場環境が病院ということもあり、フロアーはバリアフリー化・傾斜部のスロープ化及びトイレ等の改造等ハード面においては、既にその環境は整っていた。以上のようなことから、特段、インフラ・設備面において、意識することなく身体障害があっても快適に仕事を行える。こうしたことが、古くから(約30数年前から)障害者雇用を推し進めることができた、ひとつの要因となっているといえる。
(3)事業所としての姿勢
当事業所は、医療・介護事業を行っているため、専門的な技能・技術・資格を要求される。そのため、まずもって採用に当たっては、その求める専門的な技能・技術・資格を唯一の採用基準として捉え、本人の「意欲」・「能力」を中心に採用の可否を判断している。
よって、障害者雇用を特別に意識することなく、自然体のなかで、結果的に障害者雇用を受け入れている。基本的には、勤務時間もフルタイム勤務形態にての就労が多い。
ただし、個々の障害者の特性により、職場の配置転換及び勤務時間等を考慮している。例えば、現在、身体障害がある人には、当直業務(夜勤業務)は外すこと等がある。しかし、できるだけ特別扱いをすることなく、同じ職場内においてお互いに助け合うという、コミュニケーションを大事にして、公平感を大事にしていきたいとの基本的な想いをもっている。
従業員個々に不公平感を持つことなく、お互いに医療現場・介護現場のスムーズな業務遂行に資するように、コミュニケーションを大事にすることが肝要であり、そのことが、障害者雇用を30数年にかけて行ってきた経験にて会得することができた基本的なスタンスである。
常日頃より、理事長は「企業として出来る社会的貢献は積極的に果たしていく」と言う考えの下、ハローワーク、障害者職業センター等関係機関との連携を取りながら障害者を雇用してきた。
2. 取り組みの内容
(1)障害者の業務・職場配置
障害 | 勤続年数 | 配置 | |
Aさん | 身体障害者(内部疾患) | 17年 | 本部事務局(事務業務全般) |
Bさん | 身体障害者(下肢) | 27年 | エコー、心電図等検査技師 |
Cさん | 身体障害者(上肢・下肢) | 27年 | 看護師 |
Dさん | 身体障害者(右下膝) | 12年 | 事務業務全般 |
Eさん | 精神障害者 | 19年 | 診療所勤務(H25.5月異動) |
- Aさん
本部事務局として勤務。事務業務全般を任されている。狭心症の内部疾患を罹患しているが、フルタイム勤務で毎日の職務を遂行している。既に勤続年数17年のベテランで、本部事務業務の要となっている。
- Bさん
病院にとって、エコー、心電図等検査全般の検査技師は大切な存在である。1980(昭和55)年に和歌山生協病院が開設してから、その6年後の1986 (昭和61)年に採用され、エコー、心電図等検査技師として、勤続年数27年のキャリアを持っている。今後とも、その活躍が大いに期待されている。
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- Cさん
採用は、Bさんと同じく、1986(昭和61)年4月にて、勤務形態もフルタイム勤務となっている。看護師として活躍され、現在勤務年数は27年の超ベテランとなっており、当病院にとって、大切なポジションを占めている。当直勤務(夜勤勤務)は外す等の配慮を行っているが、同じ職場の仲間同士のコミュニケーションを大切に扱うことにより、その配慮も職場全体で受け止めている。
- Dさん
訪問介護ステーションに勤務される。当事業所では身体障害者も勤務形態はフルタイム勤務を基本としているが、Dさんだけはパート勤務の形態で就労されている。採用は2001(平成13)年で、勤続年数が12年となっており、長年のキャリアにて事務業務全般を行っている。
- Eさん
当事業所では身体障害者が多い中、唯一の精神障害者である。以前に、精神障害がある人がもうひとり在籍していたが、現在はその方は退職している。勤務形態はフルタイム勤務にて、本部事務局総務で薬等発注業務であったが、本年(2013(平成25)年)5月より診療所の事務業務全般を任され勤務されており、勤続年数も19年になっている。
(2)就業以外のフォロー
前述のように、当事業所は身体障害者が従来の経緯の中で、障害者雇用の大方の部分を占めており、障害の程度により当直勤務(夜勤勤務)を外す等のことはあるが、就業以外の特段のフォローは意識しておらず、通常の人事労務管理をベースとしてその対応を図っている。現在、職場には、障害者のみではなく高年齢者、パートタイム勤務者、子育てのためその育児時間を確保することが必要な方等、いろいろな就労パターンを必要とする方が混在している。
そうした職場状況においては、総合的にいろいろな配慮を講じて、職場全体の公平感を維持することがより必要となってきている。そのことが結果的に、障害者雇用を長く定着させることができる秘訣でもある。
そうした意味において、障害者雇用を長く定着させ、維持・向上していくには、30数年の障害者雇用を実践してきた経験の中で、表面だったことではなく、より充実したコミュニケーションをお互いに大事にすることが、人事労務面において大切になってきていることを実感している。
3. 障害者の処遇、今後の課題と展望
(1)障害者の処遇
障害がある方5名の勤務形態は、下表の通りとなっている。
所定労働時間 | 勤務形態 | |
Aさん | 7時間25分(休憩50分) | フルタイム勤務 |
Bさん | 7時間25分(休憩50分) | フルタイム勤務 |
Cさん | 7時間25分(休憩50分) | フルタイム勤務 |
Dさん | 7時間10分(休憩50分) | パートタイム勤務 |
Eさん | 7時間25分(休憩50分) | フルタイム勤務 |
当事業所は、基本的にはフルタイム勤務ができる障害者を採用している。現在のところDさんだけはパートタイム勤務となっているが、ほぼフルタイム勤務に近い勤務形態である。
フルタイム勤務の勤務時間は7時間25分、休憩時間は50分で、障害のない同職種の職員との違いはなく、毎日の就労には、日々他の人と同じ職場環境の中で、それぞれ身体的な機能障害を持ちながらも、そのハンディを克服して、自らその職場環境に溶け込んでいる。
「昨日よりも今日が、そして明日が一層意欲的に生きられる。そうしたことを可能にするために、自分を変え、社会に働きかける、みんなが協力し合って楽しく明るく積極的に生きる」、これが和歌山中央医療生協のめざす健康観であるが、障害者自身もフルタイム勤務の就労形態の中で、毎日の仕事を通じて社会貢献に参画できる充実感が、自らの「支え」にもなっている。
(2)今後の課題と展望
当事業所は医療・福祉を事業とする"生活協同組合"である。そのため「誰もが望む、健康で生きいきとしたくらしがしたい」、「いざというとき、安全・安心の医療や介護のサービスがあれば・・・・」そんな願いを実現するために、地域のみなさんや組合員一人ひとりによって、病院や診療所、介護施設や介護事業所をつくり、医療や介護の専門家と協同して運営している。
そうしたポリシーのもと、当事業所では1980(昭和55)年、和歌山生協病院開設時から今日の障害者雇用は始まっている。「意欲」と「能力」があれば、障害者であることには若干の配慮が必要としても、就労することには基本的にはなんら関係なく、その就労機会をオープンにしている。その当初からの「考え方」が今日においても、脈打って、受け継がれており、現在の障害者雇用の基盤を形作っている。
今後とも、その精神=考え方は不変のものであり、これからも継続していきたいと考えるところである。保健・医療・介護のネットワークにて、人と人の協同の輪が広がっていくことが当事業所の理念でもあるが、障害者雇用においてもその理念に沿って、障害者であっても、協同の精神を活かし、誰でも社会参画を行い、共に「支え」合っていく職場風土を今後とも維持・発展させていってもらいたいと願う。
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