難関を全員で解決する習慣をめざして
- 事業所名
- 株式会社 藤岡エンジニアリング
- 所在地
- 岡山県真庭市
- 事業内容
- 精密機械器具製造
- 従業員数
- 152名
- うち障害者数
- 4名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚・言語障害 2 機械加工員、製品外観仕上員 肢体不自由 2 機械加工員、検査員 内部障害 知的障害 精神障害 発達障害 高次脳機能障害 難病等その他の障害 - 目次
1. 事業所の概要
当社は、1973(昭和48)年にミノルタカメラ株式会社(現・コニカミノルタ株式会社)のカメラ製造子会社として設立し、カメラの部品加工・塗装・組立完成までの一貫生産を行ってきた。
現在(2013(平成25)年)は、永年にわたり培ってきたカメラ製造技術・ノウハウを活かし、精密部品、電子機器部品等を高品質・高付加価値・適正価格で製品提供を行っている。
また、高速度・高性能のマシニングセンター、NC旋盤を備え、ADC、マグネシウム製品(部品)の金型手配から成形・機械加工・塗装・組立までの一貫した受注を行っている。
そして、チクソモールド・マグネシウム成形機を保有し、マグネシウム部品において、成形から部品完成までを行い、高難度・高品質な製品提供を行っている。
さらに、お客様の仕様に基づき開発設計から加工・調達、組立・完成までを行いさまざまなお客様のニーズに応えることとしている。
2. 障害者雇用の経緯と対応内容
(1)障害者雇用の経緯
1973(昭和48)年の会社創業時の一般男女の採用時に、ハローワーク及び当時の町役場(現市役所)産業課より勧められ、障害者雇用を同時に行った。当時は作業工程が機械加工中心であったことと、工場建屋が旧学校跡であるため、障害のない従業員と同じ作業環境の中で作業ができる者ということで、障害程度の軽い者をテストケースとして採用を行った。
新規創業の募集ということで、多くの応募がありその中で、軽度の下肢障害、聴覚障害がある人について、特に問題なく採用とした。結果的には、各障害者も前職で仕事(作業)を経験していたので、会社も違和感なく障害のない従業員と同じ内容で仕事に従事してもらった。
その後、従業員の増員増加とともに、障害者雇用率の関係から各職場において障害者雇用の対応(可能作業の検討)を行った。
この際、次のようなことを重視し職種を選定した。
配属・作業の習得等について、障害のない従業員とは少し違い制約がある。たとえば、下肢障害であれば作業環境を考慮すること。聴覚・言語障害であれば作業指導の面で考慮することなどである。障害の状態にもよるが、制約の内容を会社、障害者本人ともに理解をすることが、以後の作業成果を左右することになると思う。
そこで、選定した作業は、作業量を色々と調整でき、比較的座り作業が多いカメラ組立作業とした。
一人目の採用者は肢体不自由で障害程度も軽かった為、特に問題なく作業に入れた。二人目の採用者は聴覚・言語障害で作業指導を筆談で行ったが十分理解できないまま作業に入るという状態になった。作業内容にも問題が生じた為、補助者を一般作業者の中より選任し理解を深める再指導とコミュニケーションを深める為、相談援助を行った結果、時間はかかったが、作業意欲も上がり一般作業者と同様な作業ができるまでになった。
その後は、下肢障害者で日常生活をする上で、一人である程度歩行可能な者を中心に採用を行い、障害のない従業員と同じ条件で育成訓練を行った。仕事形態、物の移動など課題が見つかったが、その都度現場担当者と従業員(障害者)が協議を行い課題を克服し作業を行った。
ハード面では、マイカー通勤者の為に、駐車場所を作業場(建屋)に近いところに設置したり、洋式トイレの設置などの配慮を行った。また、聴覚障害者には作業に対する理解を深める為、視力のみでも理解しやすい作業手順書を作成し指導を行った。
現在まで、入社・退職と出入りが数名あったが、その都度対応について協議し問題を解決しながら、作業に当たっている。現在では、4名の障害者が作業しているが、全員入社20年以上となり、各自自信を持って日々自己研鑽に努め頑張っている。
(2)障害者雇用の対応内容
今回は、身体障害者のKさんについて紹介したい。
Kさんは、体幹機能障害5級で少し歩行に制約がある。養護学校(現在の特別支援学校)高等部を卒業後、岡山県吉備中央町に所在する社会福祉法人吉備の里に入所し約7年間、いろいろ経験を積んだ。当時、吉備の里へは当社から作業をお願いしていた関係もあり、平成4(1992)年に入社した。
初めはカメラ組立ラインに配属され、ベルトコンベアーによる流れ作業の一員となり作業内容等に特に問題ないと思われていたが、問題は別の方向から出てきた。
同じラインで働く従業員の多くが障害のない従業員の中、またほとんどが女性という中、うまくコミュニケーションが取れなくなり、孤立した状態になった。作業状態にも影響があり作業終了時に突然、大声を上げるなど問題が多発した。通常はおとなしく、色々と話をしてくれるKさんだが、まわりの従業員との溝が広がってしまった状態になった。
そこで障害者職業生活相談員だった私は、Kさんと色々話をしてみた。そこで初めて分かったことがあった。人間には性格というものがあり、それは障害のない人も障害者も同じである。しかし、障害者には、「障害がある」ということが、やはり心のどこかにあり、コミュニケーションをとる中で「障害」となっている。また、障害のない人にしても、障害者に対して「障害がある」という認識が同じように「障害」となっているということだ。
Kさんへの対応について、色々と検討し同じラインの従業員とも話し合い、Kさんとも話し合い、やっとコミュニケーションが取れるようになった。やはり、双方それぞれの立場を理解しあうことが大切である。仕事内容や設備面だけの配慮だけでは障害者雇用については問題が残る。やはり、メンタル面でのケアー(フォローアップ)が重要である。
これを期に、Kさんに新たな挑戦をしてもらった。それは、機械加工作業である。仕事は機械がするが、加工品の準備・脱着・検査・加工完品の数量チェックと一人で作業する。なおかつ交替勤務と今までとは違う環境下で作業についた。
作業を任せてみたところ、今までとは違うKさんになった。体幹障害ということで立ち作業を懸念していたが特に問題なくこなしていった。一人の作業がKさんに合った。今では、仕事時でも、休憩時でもコミュニケーションが取れ、色々な話をしてくれ、周囲の方とも和気あいあいで頑張っている。
3. 今後の取り組みと課題
現状及び今後に対しての取り組みとしては、特別な対応は考えていない。社内の仕事内容、また状況において厳しさを増している中で、障害者本人が、どの様にして問題を乗り越えるか(対応していくか)がポイントである。
会社が一方的な対応を行っても成果が出ないこともある。障害者本人から意見を出してもらい、会社・従業員全体で問題を解決していく。その様なことが習慣化することが大切である。意見を出すということは難しいとは思われる。しかし、そこで本人の意見が聞けてこそ、本当の問題が分かるのである。会社として、意見の出しやすい職場環境を整えていきたいと思う。
現在の情勢から、会社としては、余分な工数(時間)や費用をかけていく余力はない。今までの障害者雇用の実績をもとに、これから入社してくる人にそれらを理解していただき頑張っていただきたい。
しかし、一般的な対応は必要である。たとえば、障害の内容と本人の性格や体力などを十分に理解し、配属を行い各配属先も自立に向けて協力し合うように心掛けること。コミュニケーションも大事であり、休憩時に仕事以外の話や、仕事上での悩みなどを話し合えるよう日ごろから接することである。
いろいろな取り組みがあるとは思うが、障害者本人が、仕事を頑張ろうとする気持ちを大切にし、会社がそれをバックアップすることに尽きると思う。建屋の改造など、必要な項目は最低限とし障害のない従業員と同等の気持ちで仕事をこなす意欲を芽生えさせること、その中で、障害者が仕事に対する考え方(実績、情意、能力)などを伸ばせれば良いと思う。
現在の製造業は大変厳しい状況にあり、障害のない人、障害者に区別なく大変厳しい対応を要求しなければならないこともある。しかし、この状況を会社全体で乗り越えて地域社会の発展に貢献したいと考えている。
管理部管理課 野村 徳
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