障害者の自立を支援します。~共に働く仲間として~
- 事業所名
- 株式会社岡山髙島屋
- 所在地
- 岡山県岡山市
- 事業内容
- 百貨店業
- 従業員数
- 317名
- うち障害者数
- 7名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚・言語障害 肢体不自由 5 事務職、販売職 内部障害 知的障害 精神障害 2 事務職、販売職 発達障害 高次脳機能障害 難病等その他の障害 - 目次
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1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
(1)事業所の概要
岡山髙島屋は、建築家・村野藤吾先生の設計建築で1973(昭和48)年5月19日に「岡山駅前にバラ一輪」のキャッチフレーズで髙島屋11番目の店舗の「都市型百貨店」として誕生した。
1995(平成7)年9月1日、株式会社髙島屋と合併して髙島屋岡山店に改称し、2004(平成16)年4月1日に分割分社して株式会社岡山髙島屋に改称し現在に至っている。開店40周年の2013(平成25)年度には婦人雑貨、食料品など10億円に及ぶ改装計画が完成し、「こころ躍る瞬間を、この先も!」をキャッチフレーズに地元にこよなく愛される百貨店を目指している。
髙島屋グループの経営理念「いつも、人から」に込められた「人の心を大切にする」精神は、企業活動を通じて社会に貢献することが企業のあるべき姿勢と考えている。
また、岡山高島屋は地域において、女性の能力発揮を促進するために、他の模範ともいうべき取組を推進している企業として「均等・両立推進企業表彰」(岡山労働局長優良賞(平成21年度))を受賞している。
- 髙島屋グループが目指すべき指針(方向性)
1.こころに残るおもてなし
2.未来を切り拓く新たな生活・文化の創造
3.いきいきとした地域社会づくりへの貢献
4.地球環境を守るためのたゆまぬ努力
5.社会から信頼される行動 - 企業メッセージ
『'変わらない'のに、あたらしい』
伝統があるから、新しくなれる。時代に息づく心地よい価値をこれからも。
守り継ぎたいことはそのままに。時代が求める変化には柔軟に。
心のこもったサービスなど「変えてはならないもの」と、お客様に喜んでいただくために「変えるべきもの」を明確にし、全員が心をひとつにして進化してゆく髙島屋です。
(2)障害者雇用の経緯
企業の義務として障害者雇用率が2013(平成25)年4月から2%に拡大する中、当社においても精神障害者・肢体不自由者雇用に向けた取組みをさらに強化していくことが重要であると認識している。特に精神障害者は肢体不自由者と比べて病状への気づきが遅れがちとなるため、精神障害者の障害の特性、状態などの知識・情報を収集し『理解』と『配慮』を十二分に発揮することが大切であると考えている。また、肢体不自由者についても心身の疲労に配慮する必要があり、そのためには事業所内障害者支援スタッフ(産業医・衛生管理者・看護師・労務担当・組合)は職場の業務内容、業務特性に合わせた支援活動を連携して行う必要があると考えている。
新規採用の精神・肢体の障害者にとっては新しい職場環境や仕事に対する身体的、心理的ストレスは私達支援スタッフの考える以上に大きく、様々な課題を持っている。
2005(平成17)年から2013(平成25)年7月現在までの障害者採用状況をみると、10名採用に対して残念ながら6名が退職(精神障害者2名・肢体不自由者4名)しているのが現実だ。
支援スタッフは『体調の変化への気づき』『相談対応能力』を身につけ問題点の正しい把握と整理、改善力を身につけることが大きな課題だと認識している。そのため、支援スタッフは、独立行政法人労働者健康福祉機構の岡山産業保健推進センター(現:岡山産業保健推進連絡事務所)が主催する企業の人事・労務・衛生管理者むけの研修会に参加するなどして研鑽を積んだ。
しかし、精神障害者雇用についてはまだまだ受入れ側としての未熟な点もあり『業務遂行援助者の配置助成金』を利用していた経緯もあるが、定着に至らなかった。また、長期休職者には復職のためのプログラムを本人・主治医・会社(労務担当・産業医・看護師)と十分な情報交換を行って作成してマニュアル化し、復職経過を考慮してマニュアル修正もしながら支援をしているが、日々変わる状況にマニュアルのみでは対応できず3者とも悩んでしまい、本人の状態についてじっくりと傾聴を重ね相互信頼関係が持てないと復職への道のりは厳しいものと痛感している。
当社は百貨店であり販売付帯業務や販売サポート業務の中から本人の特性に応じた業務は何かと考え、共に働く仲間として共存していける業務は何かを考えることから始めた。
2. 事務所の紹介、雇用事例
(1)事務所の紹介
当社は百貨店業である。私達はすべての業務の原点を『販売』と考えて行動しており、全員が販売員である認識のもと当社は販売部・外商部・営業推進部の三部門で業務展開をしている。
総務グループ用度事務所は営業推進部総務チームに所属しており岡山髙島屋の包装材料(包装紙、手提袋など)・事務用品(伝票・ノートなど)・被服(女子制服など)・備品雑品(洗剤・トイレットペーパーなど)の発注、受渡し業務や熨斗(のし)紙・書類の印刷業務を行っている。これらの業務は販売サポート業務のひとつとして誰かがしなくてはならない大事な業務である。今回は用度担当の2名が様々なハードルを乗り越えて現在に至る2人のリファレンスを紹介したい。
(2)2人の雇用事例
- 頑張り屋のSさん(勤続36年:男性)
岡山公共職業安定所からの紹介で1977(昭和52)年4月に入社。脳性麻痺により左上下肢に障害があるが人一倍の努力家。筆者は1998(平成10)年からSさんと同じ総務グループで働いている。当初、どのように周りから接してもらうことがありがたいのかを聞いた時、Sさんが言った「皆と同じように接してもらうことが一番ありがたい」と、その言葉が今でも私の心に残っている。正にそのとおりである。障害がある、なしに関わらず私たちは誰もがそう願っているのだ。
Sさんは入社当時、仕事がなかなか覚えられず上司に叱られた日々だったとか。Sさんは負けたくない気持ちが強くて、空いた時間に伝票や帳簿を読み返して用度品の金額、種類を覚えて自分の力にしていった。厳しい上司のお陰で現在では用度品のことはSさんに聞けば何でも解る、教えてもらえる、『用度の匠』として頼りにされており彼は毎日、働き甲斐を持って勤務している。
しかしながら、現在に至るまで何もなかった訳ではない。用度事務所の近くに洋式トイレがなくSさんには不自由をかけていた。当社は2002(平成14)年2月、障害者作業施設設置等助成金(第1種)を利用して和式トイレから洋式トイレに改修、使いやすいよう手すりを取り付けた。また、新たに導入した熨斗(のし)作成用パソコンのマウスでは細かい入力作業に時間がかかるため、同上の助成金を利用し上肢障害者用のマウスを購入した。このマウスを使う事によって手先の作業が早くなり、現在では通常のマウスも使えるようになった。仕事をする環境を改善することにより、業務が進めやすくなり業務終了後の疲労感も少なくなり、雇用の継続と安定につながったようである。
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- 素直で心優しいHさん(勤続6年:女性)
Hさんは、障害者合同面接会に参加されトライアル雇用を3か月行い、2007(平成19)年3月1日に本採用となった。Hさんは「もやもや病(ウィリス動脈輪閉塞症)」により高次脳機能障害があり、身体障害はおもに左手に障害がある。
彼女は国立吉備高原職業リハビリテーションセンター職域開発系でパソコン入力、簿記、接遇などを学び入社した。卒業後1年間はセンターの先生が職場訪問され彼女の相談役となり指導してくれていた。解らないことは解るまで何度でも聞く、また職場のメンバーも何度でも解るまで指導するといった言葉のキャッチボールで、私達はHさんとの信頼関係づくりから始めた。彼女は真面目で丁寧、売場から受けた熨斗(のし)紙作りは正確である。
ある日、熨斗紙印刷機の入れ替えで困った事が生じた。インクを交換する時ドラムが重たくて左手に障害があるHさんにとってはかなりのダメージがあるのだ。Hさんからの相談を受け業者へ相談した結果、業者の方が左手を補助する装具を作ってくれた。装具を装着してドラム交換をすることにより普段使わない筋肉を使って傷めることなく熨斗印刷業務を遂行することができる。また、タイムカードの枚数確認や印刷が終了した熨斗紙の整理作業をセロハンテープディスペンサーの横腹を支えにして行う等の工夫やダンボール箱の移動は片手ではできないため箱の一箇所に手の入る窓を開けることによって移動を楽にする工夫をしたり、左手を入れる窓が開いているキャスター付き収納箱を利用するなど工夫がいっぱいだ。
現在では用度業務以外、国立吉備高原職業リハビリテーションセンターで習ったことを生かして庶務の郵便業務ではとても綺麗に几帳面に切手を貼ってくれる。障害のない私達では気がつかないことに遠慮なく意見具申してくれ、私達は素直に受け止め改善案を提案して投げかけて工夫を重ねている。そして障害のあるなしに関わらず、自然体で「言葉のキャッチボール」をすることは組織においても大切なことだと感じている。
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3. 今後の展望
当社は階段が多く、職員用トイレも洋式が少ないなど、後方部署の施設面などの職場環境整備が課題であり整備計画を策定しているところである。一方、障害者にお願いしたい業務が各職場ごとにあり業務集約ができにくいため、効率よく業務のできる働く場所を検討することも大切である。施設と職場の環境整備・業務整理をさらに推し進めて積極的な障害者雇用に努力したいと考えている。また、受け入れ側として経営層をはじめ管理監督者及び従業員に対する障害者雇用教育を継続実施して意識醸成のさらなる浸透、現障害者雇用職場への支援スタッフによる支援など障害者の継続雇用への取組み強化、障害者と共に働き共に成長できる組織風土づくりに医務室・産業医・労務担当の障害者支援スタッフ間の連携強化、障害者雇用に関する情報収集と支援スキルアップをはかり、障害者雇用モデル企業を目標に努力を積み重ねていきたい。
総務グループ 総務担当課長 河江 正江
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