障害特性を能力として活かす
~障害をハンディとしないノーマライゼーションの理念を目指して~
- 事業所名
- 株式会社 リフォーム三光サービス
- 所在地
- 福岡県福岡市
- 事業内容
- 衣服のリフォーム業
- 従業員数
- 135名
- うち障害者数
- 22名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚・言語障害 13 衣服のリフォーム 肢体不自由 7 衣服のリフォーム 内部障害 知的障害 2 衣服のリフォーム及び店舗での接客、パソコン入力 精神障害 発達障害 高次脳機能障害 難病等その他の障害 - 目次
1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
(1)事業所の概要
- 事業所の特徴
株式会社リフォーム三光サービス(以下、「三光サービス」という。)は、九州一円で多店舗展開を行っている衣服のリフォーム専門店である。衣服のお直しを通じて、生活になくてはならない衣服をいつまでも、大切に、そして心地よく着ていただきたい、また資源の節約を通じて環境問題の改善にも貢献したいとの想いから、「人を大切に、物を大切に」を経営理念に掲げ、障害者雇用にも尽力している。
現在、九州を中心に2つの工場と38店舗を展開し、障害者のほとんどを工場内で技術者として雇用している。一代で三光サービスを築いた元社長、現会長の宮崎栄二氏と、現在社長の宮崎高志氏は、「障害をハンディと捉えるのではなく、集中力・技術力・向上心のある最高の人材として働いてもらっている」「当社にとっては、障害者もなくてはならない存在です」と語っている。 - 経営方針
経営理念である「人を大切に、物を大切に」は、人=お客様はもちろんのこと、社員や取引先を含む三光サービスに係る全ての人たちであり、物=Reform(サイズ直し)・Repair(ほつれや穴を直す)・Remake(形を変えて新しいものを作り出す)を通して、お客様がより長くお気に入りの一着を大切に着続けられることを指している。
(2)障害者雇用の経緯
21年前(平成4(1992)年)の4月、工場の一画を間借りするような形で三光サービスを設立した。当時社長であった宮﨑栄二氏は、社員を雇い入れようとハローワークに求人票を出した。ハローワークから紹介されてやってきたのが聴覚障害者であった。栄二氏は当時の心境について、思いもよらない展開に驚きとショックを隠せなかったと語っている。また一人目の社員ということで、彼を雇用することに対して不安や迷いも大きかったという。
しかし、縫製ができる社員が必要だったこともあり、雇用することを決めた。最初は、どのようにコミュニケーションを取ればよいのかわからず、薄暗い工場の中で、互いに身振り手振り、筆談を用いるなど必死であった。それが三光サービスでの初めての障害者雇用である。その後、一生懸命に仕事に打ち込む姿と高い技術力が信頼できると判断し、技術者として徐々に障害者の雇用を増やしてきた。現在では三光サービスにとって、彼らはなくてはならない存在となっている。
2. 障害者の従事内容、具体的な取組み
(1)障害者の従事内容
三光サービスで働いている障害者のほとんどが、衣服のリフォームの技術者として従事している。とくに聴覚障害者は、耳が不自由な分、周囲の雑音に左右されることなく集中して作業に取り組むことができ、真面目で一生懸命な姿勢、向上心といった点で、とても優れた技術者であるという。
また、知的障害者のうち1名は、縫製ができるということで入社したのだが、実際には縫製ができず退職してもらうことを考えたこともあった。だがそんな時、「好きなことは何?」と栄二氏が尋ねたところ「パソコンが好き」と返答があったため、試験的にパソコンの入力作業をさせることにした。すると入力の速さ、漢字の変換も間違うことなくできたため、顧客のデータ入力を彼の業務として割り当てることにしたのだ。このように、彼らの好きなこと、得意なことを活かすという考え方も、障害者雇用を行う際に必要な視点といえるだろう。
さらに、もう1名の知的障害者は、障害が軽度でありコミュニケーションにも問題がなかったため、現在では技術者として縫製するだけでなく、店舗に立って接客も行っている。
三光サービスでは障害はハンディではなく、むしろ高い技術力をより活かすための能力なのだ。
(2)具体的な取組み
- 聴覚障害者とのコミュニケーション~手話を共通言語に~
障害者も、障害のない社員も、手話や筆談を積極的に用いて円滑なコミュニケーション方法について努力と工夫を重ねている。社員同士のコミュニケーションに関する会社の方針としては、「社員は自ら聴覚障害のある社員とコミュニケーションを取ること」となっており、その一環として手話を使用する場合が多いということである。そのため社内で手話を勉強する機会を設け、作業室内の壁には手話で用いる指文字の50音表が掲示されている。
また、毎朝行われる朝礼では、高志社長が手話であいさつを行っている。三光サービスでは、手話が共通言語として活用されているのだ。障害の有無も種別も越えて、社内では手話がひとつの言語として機能している。
さらに、社内だけでなく一般市民向けに毎月手話講座を開催し、毎回5~7人の市民が受講している。障害者のための手話ではなく、ひとつの言語として手話が市民の間にも浸透していくよう、会社として活動を行っているのだ。 - 取引先企業に対し、障害者雇用について説明を行う
三光サービスでは、取引先企業に技術者として障害者を雇用していることを説明し、納得してもらった上で契約を結ぶ。やはり起業当時は、取引先企業からは不安の声もあったが、実際に技術の高さを見てもらい、実績を積むことで信頼を得てきた。今では取引先企業に障害者を同行させることもあり、「障害者」ではなく、「障害をもった技術者」として見てもらえるよう会社として取り組んでいる。 - いかに働きがいを感じてもらえるか
聴覚障害をもつA氏(技術者)にインタビューを行った。A氏は紳士物スーツの袖を付け直すところで、肩の立体補正を手縫いで仕上げているところであった。これは高い技術力が求められる工程の1つであるという。そのA氏に、仕事のやりがい、楽しさについて尋ねたところ、A氏からは「難しい仕事を任せてもらえるところ」「自分の判断で作業を進められる」と答えてくれる。
お直しは、一点一点直す箇所も異なれば、必要な技術も異なる。それを自分で判断する応用力、預かった時と同じように、またはそれ以上に綺麗に仕上げる技術力が必要となる。熟練した技術者はそれらをすべて自分の判断で行い形にしていく。「任せてもらえる」という感覚は、仕事に対する責任感を強め、周囲から認められることは自尊心と自己肯定感を生む。これが働きがい、生きがいにつながるのだ。
さらに、優れた企画力をもつ聴覚障害者のB氏(技術者)は、浴衣からワンピースとサマーブラウス、バッグの3つをリメイクし、自ら『Rstyle』(株式会社リフォーム三光サービスが配布しているフリーペーパー)で商品の紹介とそのモデルを務めている。リメイク前の浴衣とリメイク後の3つの作品それぞれの写真が掲載されていて、より顧客が想像しやすいよう工夫がされている。このように、積極的にアイデアを形にする、挑戦しようとする姿勢ももちろん大切だが、その挑戦を柔軟に取り入れ、後押しできる体制が三光サービスにはあるのだ。
社員は能力を最大限に発揮し、認められることでさらに働きがいを得ることができる。また、障害の有無に関係なく、技術力・企画力の高い者は評価され、能力に見合うよう賃金も設定されている。実際に、技術者の上位3名は聴覚障害者で、技術力が求められる縫製やリメイクなどを担当している。
こうした取り組みの背景には、仕事でより輝いてほしいという高志社長の想いがある。第一線で活躍できる障害者を育てることで、後進者にも彼らを手本にして頑張ってほしいと考えているのだ。活躍する先輩社員の姿を見て、いつか自分も同じように活躍したい、後進者がそう思える人材を育成していくことが、社員のモチベーションの向上、如いては会社の成功の鍵となるのだ。 - 社員の理解を得る
社員の理解を得るために必要なことは、日ごろから社員とどのようにコミュニケーションを取るかである。高志社長は、週に一度の社内会議では社員の意見に耳を傾け、給与明細書にはメッセージ(障害者雇用の意義、経営理念、今後の展開など)を同封している。これまで順調に業績を伸ばしてきた三光サービスだが、店舗数や社員数が増えるほど、経営者と社員の軋轢は生じやすい。そこで、社長と社員が意見交換できる場を設けること、経営方針や今後の展望、会社としての方向性などについて、社長から発信し続けていくことを常に心がけているのだ。しかし、「障害者雇用100名を目指す」と公言した時は、社員から時期尚早との反発の声が上がった。そのような時も、毎週行われる社内会議で何度も説明を行い、給与明細書にも同様のメッセージを同封するなど、社員の理解を得られるよう努力と工夫を重ねてきた。
また、栄二氏も社員一人ひとりの誕生日にバースデーカードを送っている。これは栄二氏が社長であった頃から続けていることで、135名に社員が増えた今でも欠かさず行っている。一人ひとりに異なるメッセージと、感謝の気持ちが添えられたバースデーカードは、社員も毎年楽しみに待っているそうだ。こうした心配りが社員にも通じ、温かい雰囲気の社風と、強い団結力を生み出しているように感じる。
3. 取組みの効果、将来の展望
(1)取り組みの効果、将来の展望
障害があっても一生懸命に働く姿は、"自分ももっと努力しなくては"、"私も頑張ろう"と、障害のない社員のやる気につながっている。一方で、社内で手話を用いたり、障害者を特別に扱わない(区別しない)ことが、障害者にとっても働きやすい環境となっている。こうした取り組みが差別や偏見をなくし、明るい社内の雰囲気を作り出しているようだ。また、能力に応じた評価を行うことで、社員一人ひとりが自然と努力する環境となり、社内全体の技術の向上にもつながっている。
(2)将来の展望
宮﨑高志社長は、より多くの障害者を雇用し、彼らの能力を活かして活躍してもらいたいと考えている。現在、38店舗で22名の障害者を雇用しているが、今後は100店舗、100名の障害者雇用を目指す。
さらに、人材育成という点にも力を入れ、能力のある障害者を育てていきたいとのこと。これまでは、即戦力を求めたことから縫製工場での勤務経験やミシンの扱いができる者を優先的に雇用してきたが、経験のない者であっても興味ややる気のある者を雇用できるよう、社内の教育体制を整えていきたいと語っている。
顧客はもちろんのこと、社員に対し細やかな心配りのできるリフォーム三光サービス。技術者の育成を含めた今後の展開に注目したい。
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