障害に配慮して継続雇用を実践
- 事業所名
- 医療法人正清会
(久田病院・介護老人保健施設うりずん) - 所在地
- 沖縄県島尻郡
- 事業内容
- 病院(内科・精神科・神経科)、介護
- 従業員数
- 約200名
- うち障害者数
- 5名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚・言語障害 肢体不自由 1 清掃・洗濯 内部障害 1 看護師業務 知的障害 2 清掃・洗車・食事後の片づけ 精神障害 1 清掃 発達障害 高次脳機能障害 難病等その他の障害 - 目次
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1. 事業内容、障害者の雇用状況
(1)事業内容
- 医療法人正清会について
医療法人正清会久田病院(以下、久田病院)は、昭和45(1970)年に現在地に開院した。
次の5項目を病院の理念に据え、精神疾患の患者への心のケアを専門とする施設を運営している。
1.患者さんの人格を尊重し心の通う医療を行います。
2.関係機関などと連携し患者さんの一日も早い社会復帰を目指します。
3.心の病の早期発見・早期治療・予防に努力します。
4.医学・医療の進歩をいち早く取り入れ最新で高度の医療が提供できるよう努めます。
5.職員が誇れる病院づくりを目指します。
特徴として神経心理検査、認知症検査、高次脳機能検査、メンタルドッグによる治療計画作成、また患者の自立に向けて作業療法を用いた治療・指導・援助を行っている。相談室も開設しており、病気や障害等に関わる様々な生活上の悩みや不安を精神保健福祉士・看護師に相談することができる。
医療法人正清会介護老人保健施設うりずん(以下、うりずん)は、平成18(2006)年に開設された。『常に言葉かけ、気持ちの温度を感じながらケアしよう』をスタッフの理念に据え、リハビリテーションを中心とした介護等で老人慢性疾患を有するお年寄りの家庭復帰や社会復帰の手伝いを行う施設を運営している。入所・短期療護介護・通所と、それぞれの利用者に合った介護の提供を行っている。
「久田病院」、「うりずん」合わせて従業員約200名のうち、次の2項目を障害者雇用における理念として、障害者5名を採用している。
1.障害者にとって豊かな環境を築き、個々を尊重し働く喜びを分かち合えるようにします。
2.すべての人にとって、自分の人生における主人公はいかなるときも自分です。障害のある方の人生が充実し輝いたものとなるように努力します。 - 障害者雇用の経緯・背景
 3年ほど前(平成22(2010)年頃)に、入院患者や利用者サービスの向上を目標に施設の環境整備に力を入れることとなり、このタイミングと合わせて障害者の雇用計画を立て求人を行った。その際2名を雇用したのが始まりである。その後、公用車の洗車も人手が足りていなかったため、さらに採用を拡大した。現在は当初から雇用した職員と合わせて4名が2年以上継続して働いている。
(2)障害者の雇用状況
現在、肢体不自由1名、内部障害1名、知的障害2名、精神障害1名の計5名を雇用している(表1)。全員が時給制で働いており、ほとんどが4時間~6時間勤務である。日中の勤務を基本としており、その通勤方法は、自家用車通勤、バス通勤、自転車通勤など様々である。
障害者種類 | 人数 | (施設)従事業務 |
知的障害 | 2 | (久田病院) 病院所有の公用車12台を、1日3、4台ずつにわけて洗車 敷地内の掃き掃除、灰皿清掃 職員の判断で室内清掃を行う事もある (うりずん) 利用者の方へお茶出し 食事後の食器の片づけ 施設所有の公用車3台の洗車 |
精神障害 | 1 | (久田病院) 駐車場とグランドの清掃 |
肢体不自由 | 1 | (うりずん) ポータブルなどの清掃 食事前後の机拭き 洗濯 |
内部障害 | 1 | (久田病院) 看護師業務 現在は体調不良のため休職中 |
2. 障害者雇用の具体的な内容、効果やメリット
ジョブコーチ(職場適応援助者)による支援を多くのケースで活用している。精神障害者についてはゆるやかなる職場適応を念頭にして、入職後6か月間支援を受けた。その後もフォローアップとして、約2週間に1回の訪問支援がある。気になることがあれば病院、施設側からジョブコーチへ連絡を取る場合もある。障害者の家族との連携もジョブコーチを仲介者として支援を得ることも多い。
(1)中途障害者の雇用継続
久田病院で雇用している精神障害者Aさん、内部障害者Bさんは、中途で障害となったため以前は普通に生活を行っていた人達である。そのため、「リカバリー」の意識を職員全員が自然に持ち、対応を行っている。精神病院でもあるため、障害に対する理解は問題ない。
- 精神障害者Aさんの場合
家族の話や本人の病気の話、仕事内容など個人的なことを職場で質問すると情緒が不安定になる。よって治療や生活面のことは家族・ジョブコーチなどの支援者に任せてケース会議などで職場と共有している。また、屋外での作業が中心なので水分摂取の調節には注意している。 - 内部障害Bさんの場合
去年までは他の看護師と同じように勤務を行っていたが体調を崩した。夜勤のストレスに対しては勤務時間を配慮するなど体調の安定に留意している。
(2)障害者向けの職域の開発
久田病院では入院患者や利用者サービスの向上を目標に環境整備に力を入れており、あらたに雇用した障害者の作業内容は、ほとんどが掃き掃除などの園内清掃である。現在、障害者が行える作業を増やすため、機械を使った作業(草刈機)を検討中であり、職員の指導により草刈機の操作にかかる訓練を行っている。
(3)工夫している取り組み
久田病院では、雇用している障害者の情緒の安定を図るため、無理はさせずに本人の体調を考慮して仕事を減らしたり、増やしたり職務内容を変えている。本人からの要望もできる限り確認ができるよう相談時間の設定等により、配慮している。また、作業内容のほとんどが屋外での作業であるため、暑くなる午後は熱中症の予防も兼ねて屋内での作業に切り替えるなど気遣いながら作業内容を変更している。
(4)障害者雇用の取り組みによる効果やメリット
障害者と仕事をする機会が増えることにより、接し方や障害に対する理解が深まっている。また同じ職場で働き、休憩時間を一緒に過ごしコミュニケーションをとる中で、職員が「彼らも同じ仲間」として関われるようになってきた。
障害者雇用を行う前は、本来業務以外の清掃作業などを職員で分担して行っていたが、それらを仕事としてまとめ、障害者雇用を行ったことで他の職員も本来業務を集中して行えるようになっている。また、施設内の環境が整ったことで、利用者サービスの向上に繋がっている。
なお、病院の施設内で働く姿が入院患者の目標となり、入院患者のモチベーションの向上にもつながっている現状がある。さらに、人が嫌がる仕事であっても嫌な顔一つせず行ってくれるなど、彼らから学ぶべき面が多々あり他の職員の見本ともなっている。
3. 雇用障害者へのインタビュー、おわりに
(1)障害者へのインタビュー
- Cさん:20代後半男性、知的障害
Cさんは普通高校在学中にバイク事故による頭部損傷のため、手の震えの障害と知的障害(高校在学中の事故によることから療育手帳を取得)が残った。他の職場で働いた後、ハローワークの職業紹介で久田病院に採用され今年で2年目で、採用当初は、4時間の勤務であったが現在は2時間延びて6時間勤務である。
Cさんの主な作業内容は、病院所有の公用車、車いす専用車、乗用車、計12台の洗車と掃き掃除などの清掃である。洗車は1日3、4台ずつに分けて行っている。入社したての頃は、洗車の仕方がわからなくて大変だったが、最近ではワックスがけもできるようになっている。
入社前は、家でテレビを見て過ごすことも多く、今の仕事に就いてから生活に充実感を感じている。掃除のやり方も覚えることができ、入社直後に比べて仕事の幅が拡がりスピードも向上して、たくさん働けることがとても嬉しいそうである。仕事のことで悩んだりした時には、「あの時、ああすればよかったな」と自分で反省をして乗り越えている。また、屋外での作業が中心となるため、できるだけ日の当たらない場所に入って洗車を行うなど熱中症予防など体調管理に自ら気をつけているようだ。今後は、今よりもさらに頑張って勤務時間を増やし、最終的にはフルタイムで働けるようになるのが目標だと終始笑顔で語っていた。
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- Dさん:23歳男性、知的障害
Dさんは特別支援学校を卒業後、ゴミの分別の仕事を行っていた。その後、転居に伴いハローワークの職業紹介でうりずんに採用され、今年で2年目である。Dさんは、在学中は洗車や車を修理するような職種を希望しており学校の実習で洗車を行った経験があった。
現在、うりずんでは午前中の4時間勤務をしている。その業務内容は利用者の方へのお茶出し、食事後の食器の片づけ、洗車、毎週月曜日のトイレ清掃である。学生時代から希望していた洗車の仕事ができるのでとても嬉しいようだ。職員の中で一番若いこともあり、利用者に可愛がられている。
たまに指名を受けて頼みごとをされたり、「頑張っているね」と声をかけてもらったりした時が嬉しいそうだ。しかし、県外出身であるため、利用者が話す「しまくとぅば(沖縄語)」の意味が理解できず困ってしまうこともあるようだ。
午前中で仕事を終えたあと、月曜日と金曜日は地域活動支援センターに通っている。グループホームで生活しており、仲間との生活に楽しみを感じているようである。仕事が休みの日は、自転車に乗っていろいろなところへ行きストレスを解消している。今後もうりずんで働くことを希望していて、働いて貯めたお金で車の免許を取得するのが夢であると語っていた。
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- Eさん:女性、肢体不自由
Eさんは学生時代に習っていた洋裁を活かせる職場で働いていた。しかし、会社が潰れたためその後は那覇にある施設で子どもたちに手話を教える仕事を行っていた。学生時代に介護士か保育士になりたいという希望がありうりずんに入社した。
Eさんの主な作業内容は、清掃や食事前後の机拭き、洗濯で8:30~15:30の6時間勤務である。職場で難しい作業や困ったことはなく、今の仕事が楽しいそうだ。特に、利用者や職員の方々と「ゆんたく(おしゃべり)」をしているときが楽しいと語っていた。休みの日には、子どもが入部している部活動の試合を見に行くなど家族との時間を大切に過ごしている。今の生活・勤務時間・作業内容に大変満足しており、今後もうりずんで働くことを希望している。
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(2)おわりに
障害者雇用については、ジョブコーチとの連携が特徴的であるとともに、共に働く職員が同僚としてしっかり受け入れている様子がうかがえた。
またインタビューでは雇用されている障害のある人々の職務内容への満足度、充実感がとても高いと感じた。それは職員の同僚としてしっかり受け入れるという意識にとどまらず、障害に対する具体的配慮や工夫の影響が大きいと考える。それが持続可能な障害者雇用を作り出していると感じた。
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