支援機関とともに取組む障害者雇用
- 事業所名
- 生活協同組合コープあおもり
- 所在地
- 青森県青森市
- 事業内容
- 供給事業(共同購入・個人宅配、店舗)、共済事業、生活事業
- 従業員数
- 正規職員 162名
定時・嘱託職員 506名(短時間労働者を換算した数379名) - うち障害者数
- 11名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚・言語障害 肢体不自由 1 販売 内部障害 3 販売・パソコン入力・軽作業 知的障害 7 シッパーセット・清掃・精肉加工補助・農産部門品出し等 精神障害 発達障害 高次脳機能障害 難病等その他の障害 - 目次
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1. 事業所の概要
青森市民生協(昭和50(1975)年設立)、弘前市民生協(昭和51(1976)年設立)、八戸市民生協(昭和51(1976)年設立)の3生協が平成5(1993)年3月21日に合併して、青森県全域を活動エリアとする「コープあおもり」が発足した。また、平成22(2010)年3月21日には、弘南生協(昭和48(1973)年設立)と合併し、新生「コープあおもり」がスタートした。
協同・助け合いの精神と民主的運営を大切にし、安全・安心な商品の供給をはじめとする事業と運動を通して、人間らしい豊かなくらしと、平和で住みよい地域社会づくりに貢献することを基本理念とし、「誠実」「公開」「社会的責任」「他人への配慮」を行動指針としており、障害者雇用もこの理念、行動指針に基づいて促進されている。
主な事業は、食料品等小売業(6店舗・6共同購入支部)、灯油センター(3箇所)であり、他に共済、葬祭事業を行っている。自主的な組合員活動を大切にし、組合員の声を真中に運営されている。
さらに、青森保健生協との共同出資による株式会社あおもりコープフーズにおいて、セントラルキッチンシステムを活用し、病院給食、介護施設給食、夕食配食事業を展開するために「あおもりセントラルキッチン」が平成26(2014)年3月の事業開始を目標に準備を進めている。
平成25(2013)年3月現在、組合員数は約14万3千人(県内世帯数比で24.5%)で、出資金高が約29億8千万円となっている。供給高は平成24(2012)年度実績で約142億5千万円にのぼっている。
障害者に対する配慮した事業成果の例として、次の二つの事例を紹介する。
- (1)障害のある子供を持つ当生協職員の思い、実践を著した書籍の出版などを通して共感を広げ、それによって障害のある子供たちも安心して加入できるように共済制度を改善した。
- (2)視覚障害をもつ人の為に、共同購入の注文書を読上げる声のボランティア(リーディングサービス)を平成17(2005)年から開始し、現在では読上げソフトを活用して商品案内を電子図書(デイジー)とCDで作成し、届けている。このことで購入商品の幅が広がり、購入費用も把握でき、適切に注文することができるようになり、生活が豊かになったと喜ばれている。
2. 障害者雇用の経緯と雇用状況
障害者雇用については、合併前の各生協での雇用者を引き継いでおり、法令遵守とともに社会的責任を果たし、社会貢献をするという視点(CSR)から行われている。
まず、年間を通じて、法定雇用障害者数(法定雇用率)を下回らないことを基本とし、可能な限り障害者雇用を推進していくよう雇用管理を行っている。どこかの店舗、センターで退職者があった場合、また、制度改正などで促進が必要になった場合には、各店舗、各センターに対し障害者雇用のための業務切り出しを促し、全体として雇用数が充当されるよう管理されている。採用にあたっては、ハローワークへ求人票を提出するとともに、配属先の事業所の圏域を担当する障害者就業・生活支援センターへ求人情報を提供し、支援を受けている。
現在、その主な配属先は、倉庫業務(商品の仕入れ、保管、加工)と、配送業務(商品の包装、仕分け、発送)を中心業務とし、障害者のための業務の切り出しが様々に行われている青森市浪岡にある浪岡物流センターとなっている。
平成26(2014)年2月1日現在、本部を含め14ヶ所ある各店舗、センターにおける雇用状況は次表となっている。
施設名 | 身体 重度 | 身体 重度外 | 知的 重度 | 知的 重度外 | 精神 | 業務内容 |
---|---|---|---|---|---|---|
本部 | 1 | パソコン入力・軽作業 | ||||
浪岡物流 センター | 1 | 2 | シッパーセット・清掃 | |||
1 | 1 | 集品作業・精肉加工補助 | ||||
和徳店 | 1 | 販売 | ||||
平賀店 | 1 | 農産部門品出し等 | ||||
るいけ店 | 2 | 農産部門品出し等・清掃 | ||||
1 | 販売 | |||||
合計 | 1 | 1 | 2 | 4 | ||
1 | 1 | 1 |
3. 取組の内容
平成22(2010)年7月から、障害者雇用納付金申告の際、短時間労働者が算入されることになり、当時の状況では法定雇用障害者数を下回る見通しとなったことから、平成21(2009)年度後半から、平成22(2010)年度前半にかけて、障害者の雇用を促進するために、採用予定事業所を圏域とする障害者就業・生活支援センター、ハローワークの支援を得て、知的障害者2名、精神障害者1名を採用し、平成22(2010)年度の雇用障害者数は、法定雇用数を上回ることができた。
また、平成22(2010)年度後半から、平成24(2012)年度にかけて、さらに障害者雇用促進を図るために知的障害者1名、精神障害者2名を採用した。この間、平成23(2011)年にうつ病と診断されて休職した職員に対して、青森障害者職業センター(以下、「職業センター」という。)との情報交換を行い、リワーク支援制度の活用、本人や家族(妻)との定期的な面談や、店舗の担当者と復職に向けた打合せを綿密に行う等して、事業所として復職に向けた取り組みを積極的に行っている。復職後も定期的に本人との面談の場を設けてフォローを継続している。なお、職業センターでは、これまで当生協に対して4名の復職支援を行っている。
しかし、平成25(2013)年に入り、退職者が相次いだ上に、法定雇用率が2.0%に改正されたため、平成25(2013)年度は法定雇用障害者数を下回る見通しとなったことから、再び、ハローワーク及び採用予定事業所を圏域とする障害者就業・生活支援センターの支援を得て、知的障害者2名の採用を行った。その結果、平成26(2014)年2月現在では、障害者が11名、重度・短時間換算数で13名となり、平成26(2014)年度においても、法定雇用障害者数は達成される見込みとなった。
このように当生協では、障害者の採用や復職に関して、支援機関の役割、支援内容を十分理解して連携し、機能を活用しながら、受入れる現場の職員に対する障害者理解、また障害者自身の円滑な職場定着を推し進めている。
(事例1)浪岡物流センター食肉部門 Tさん(知的障害)
平成20(2008)年12月、一般求人の求人票を見て、支援を受けていた職業センターの担当者と同行し応募してきた。採用にあたって、ジョブコーチ支援を受けながら、トライアル雇用で3ヶ月間能力を確認する期間を設けた。
当初は自閉傾向が強く、こだわりが強くなってしまい、作業の切り替えは、その都度指示がないと立ちすくんだり、適応がスムースに行かない状況が多かったことから、一旦終了したジョブコーチ支援を再度実施し、改善に努めた。その頃は、ジョブコーチのサポートを受けて何とかこなすというレベルだったが、それからは、徐々に作業種類を増やし適応の範囲を拡げてゆくことができた。
入協以来5年間、電車で通勤しながら無断での欠勤や遅刻、早退することもなく、真面目に勤務している。また、挨拶もきちんとしていて、他の職員との人間関係も良好であり、仕事上でも分からないことは必ず質問し、指示されたことについては忠実に、きちんとやりぬいており、その姿勢と責任感については定評があり、当初に比べて大きく成長した。
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(事例2)浪岡物流センター物流部門 Mさん(知的障害)
平成22(2010)年6月、Мさんの採用にあたっては、受け入れ先を浪岡物流センターとし、シッパー(発砲スチロールの容器)のセット、作業区域の清掃(夜間)を業務とし、職場実習から様子を見ることとした。実習の受入れについては障害者就業・生活支援センター月見野(以下「センター月見野」という。)に照会をした。センター月見野よりハローワークへ相談の上、対象者の選定を行い、その後、チーム支援(実習期間調整、実習計画書作成、見学及び面接、実習時の保険加入、実習時の同行支援等)を行うことになった。
実習は、1人作業になる夜間業務を重点的に、職業センター及びセンター月見野の支援を受け行われた。清掃作業のエリアが広く、しかも断続して行うため、清掃済みエリアの把握が難しいことが分かり、ジョブコーチの提案を受けて作業エリアを細分化した図面(管理シート)を作成した。清掃が終了した作業エリアには作業をした日付を入れるようにしてある。このことによって1人で作業領域を管理することができるようになった。
実習終了前にはハローワーク、センター月見野と共に評価会議を開催した。その後、求人票に対して応募し、採用となる。採用後は職業センターのジョブコーチ及びセンター月見野のジョブコーチとのペア支援を受けることとして、業務習得、職場定着を図ることとした。
現在は、13時~20時の勤務で、ベルトコンベアにシッパーを積み重ねたり、シッパーの消毒を行い、各エリアでの詰め込み作業の終了状況を見ながら、夕食を摂った後に、各エリアの清掃作業を1人で行っている。
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(事例3)浪岡物流センター物流部門 Sさん(知的障害)、Fさん(知的障害)の場合
平成25(2013)年の退職者の補充にあたって、定型的な作業の繰り返しを業務として障害者の雇用を図るという観点から、受け入れ先を浪岡物流センターとし、作業を切り出し、再び、センター月見野に照会をした。センター月見野よりハローワークへ相談の上、圏域の障害者福祉サービス事業所へも作業内容等について情報提供することとした。その結果、ハローワークの求職者、就労継続支援A型事業所利用者、就労移行支援事業所利用者からそれぞれ1名の候補者となった。それぞれの候補者にはチーム支援を組み、面接の結果、それら候補者3名の実習を受け入れることとした。実習中はセンター月見野の支援を受けることとし、実習終了前には評価会議を開催した。結果、求人票に対してSさんとFさんの2名が応募し採用となった。
採用後は、職業センターとセンター月見野のジョブコーチのペア支援を受けることとした。当初は、それぞれに職員を1名配置して作業内容の習得に努めたが、2ヶ月を経過した現在では、2名とも一人で作業を行うことができている。
(作業状況)
- (Sさん)機械のシッパー投入側にいて、シッパーをベルトコンベアに載せる前に、シッパーに付着した汚れやシール、水滴等を拭き取って、ベルトコンベアに積み上げていくという作業を行う。
- (Fさん)機械の排出側にいて、シッパーの内側にセットされたビニールの袋を綺麗にセットし直し、次の工程の野菜詰めをしやすいようにしている。
4. まとめ
コープあおもりでの障害者雇用の取組みは、本部の機関運営部をコントロールタワーとして行われており、その中心に総務・人事を担当する人事教育担当の佐藤次長がいる。佐藤次長は精神保健福祉士の資格を有し、精神障害者支援施設へ勤務した経験もあり、障害者就労支援制度に対する理解は深い。文中で触れた休職者の復職に当たっては、佐藤次長自身が直接係わっている。
また、佐藤次長と現場責任者との連絡も適宜行われ、現場での障害者雇用に関する問題・課題の把握、対応が円滑に行われており、必要に応じて、採用予定事業所を圏域とする各障害者就業・生活支援センターに相談、情報収集を積極的に行っている。さらに、職業センターとの連携のもとに、職場定着の為にジョブコーチ支援を積極的に活用している。
今回は、事例を通して、障害者の採用前後に支援機関が係わった様子を紹介したが、障害者の雇用に際して、地域障害者職業センター、各地域の障害者就業・生活支援センター等の支援機関を活用する事業所がまだまだ少ない状況の中(※)で、支援機関と共に障害者雇用を進めている当生協の取組みが参考になれば幸いである。
また、取材を通して、障害者と一緒に働いている職員と現場の管理者、組織での担当者と現場の管理者、職員、また、それぞれに係わる支援機関の担当者、陰で支える家族の存在が、一人の障害者の就労を支え、成長を促していることを痛感した。
※参考資料:平成24年度障害者職域拡大等調査報告No2
—中小企業における初めての障害者雇用に係る課題と対応に関する調査—
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