トップと現場が連携し職域拡大を図り短期間で障害者雇用を進めた事例
- 事業所名
- 株式会社ホンダカーズ埼玉
- 所在地
- 埼玉県さいたま市
- 事業内容
- Honda車(新車・中古車)販売、修理自動車部品・カー用品の販売、レンタカーリース、自動車保険代理業
- 従業員数
- 1,108 名(平成26(2014)年1月)
- うち障害者数
- 25名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚・言語障害 3 OA業務、エアコンガス回収、タイヤ保管サービス、鳥フン除去、整備 肢体不自由 4 一般業務、洗車 内部障害 知的障害 10 洗車、OA業務補助 精神障害 8 洗車、エアコンガス回収、タイヤ保管サービス、鳥フン除去 発達障害 高次脳機能障害 難病等その他の障害 - 目次
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1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯・背景
(1)事業所の概要
当社は、本田技研工業株式会社100%出資で、ホンダ車(新車、中古車)の販売及び修理、レンタカー、自動車保険代理業、自動車部品、用品の販売、リースの事業を埼玉県の東南部を中心に展開している。
理念として「共に語り」、「共に働き」、「共に喜び」、「共に感謝し」、「共に成長する」を掲げ、『お客様から「ありがとう」を頂くために、私たちは全力を尽くします』を社是として取り組んでいる。
平成19(2007)年から経営体力の強化を目的として、ホンダ販売会社5社が順次統合し、店舗数23店舗から55店舗(新車48拠点、中古7拠点)、社員数400名から1,000名を超える規模に至った。
(2)障害者雇用の背景・経緯
平成19(2007)年の経営統合により社員数が2.5倍に増え、55店舗あるショールームの社員規模や「障害を持つ人のことを知らないことによる不安」「障害者に何をしてもらえばいいのか」「どうやって採用をすればいいのか」「採用後どのようなフォローが必要か」などの理由で障害者雇用がなかなか進まない状況であった。
また、ハローワークの雇用率達成指導で雇い入れ計画を作成するが、やはり障害者雇用が改善されない状態が続いていた。
平成22(2010)年雇い入れ計画3年目を契機に、会社トップの判断で障害者雇用を進める方針が打ち出され、全社を挙げ積極的に障害者雇用に取組むこととなる。
当初、採用担当者が埼玉県障害者雇用サポートセンターを訪問相談し、障害者を雇用している同業企業の見学、障害者が行う業務の切り出し方法、就労支援機関による採用活動支援等の具体的情報を得ることができた。
障害者の業務内容については、
- 緊急性は低いが、重要なこと
- 手間、時間がかかるので後回しにしていること
- 他に優先したい仕事がある人がしていること
- スピードを求めずにすむこと
をポイントに社内調整し、本社内での事務補助業務、ショールームでの洗車業務の他、Gloss事業部と呼ばれる、工場で生産された車を一時的に保管し、用品の取り付け、ボディーコート等納車整備を行う部署での業務切り出しを行った。
採用方法については、ハローワーク、地域の障害者就労支援センター、障害者施設等の全面協力によって、支援機関による事前の職場見学会、障害者による職場見学会、職場実習、求人票作成、採用面接、入社手続きの流れで進めていった。
採用の基準として、障害の種別によって判断するのではなく、社会性の視点からあいさつ、身だしなみ、コミュニケーション、また、作業適性等の視点から、作業スピード、作業の正確性、体力・健康チェック、指示理解度を設定している。
また、採用後の雇用(就労)の継続を図るため、
- 支援機関との連携
- 定期的な面談
- ステップアップの道(時給契約から月給制へ)
- 賞与、昇給の仕組み
を進めている。
2. 障害者の従事業務
(1)本社での業務・・・身体障害者、知的障害者、精神障害者が勤務
- 事務補助
ファイリング、コピー、押印、封入、あて名書き、シュレッダーなど。
- PCでのデータ入力補助
伝票や納品書などのデータやアンケートを集計表に入力する。
- 社内便での物品配送補助
宛先ごとにロッカーに物品をしまう。
(2)ショールームでの業務・・・身体障害者、知的障害者、精神障害者が勤務
- 洗車
展示車両、試乗用車両などの業務車の清掃をする。
点検や整備などで預かった車の清掃を行う。
平日でも1日20台、多いときで30台前後の洗車を行うこともある。
その他、外装・内装の清掃、タイヤのワックスがけ、ガラスの撥水加工補助なども実施。
- 夏場を中心とした敷地内清掃、除草作業
(3)Gloss事業部での業務・・・身体障害者、精神障害者が勤務
- 車の保管場所での鳥フン除去、小石拾い
鳥フンを放置すると酸化により塗装を傷めるため、駐車場を見て回り手作業で拭き取る。また、小石のはねあげによる塗装の傷つきを防止するため、小石拾いの作業を実施している。
夏の炎天下ではかなりの重労働だが、作業実施による費用対効果は絶大。
- 仮ナンバー取り付け
駐車場の間に公道があり、ナンバーなしでは横断できないため、公道を移動するときに仮ナンバープレートの取り付けと取り外しを行う。
- 事務補助・軽作業
- タイヤ保管サービス
夏タイヤ・冬タイヤの履き替えに合わせて、タイヤを預かるサービス。
ラックの作成から受け入れ、データ入力等もすべて障害者が行っている。
- エアコンガスの回収
専用の機械を使い、スクラップする車からエアコンガスを抜き取る。
3. 取組の効果、今後の課題と展望
(1)取組の効果
当初は、障害者雇用に対して不安からのスタートであった。現場ではスムーズに進まず、様々な困難な場面があったと思われるが、社員一丸となって対応し、雇用を拡大していくことにより現場からは、
- 障害を持った人と一緒に働けるのが分かったので、また募集をしてもらいたい。
- 指示がどの程度理解できるのかわかってくれば合わせていけるし、素直な人が多い。
- すっかり戦力として働いており、いてもらわないと困る。
等の高い評価があがってきている。
障害者を仕事の戦力スタッフとして位置づけ、現場からのニーズに対応した結果、現在の雇用を継続している。
また、障害を持つ社員からも
- 人との係わりが増え、会話も増えた
- 運転免許取得を目標にお金を貯め始めた
- 一人暮らしを目標にしている
- 親が安心できるよう自立したい
等の話も聞かれている。
(2)今後の課題と展望
当社では、障害者雇用率に関係なく社会貢献の一環として、引き続き障害者雇用を積極的に進めていく方針である。
それは、平成22(2010)年から障害者雇用を取り組み、3年間で25名の障害者を雇用した実績からも強い意思が感じられる。
また、採用だけでなく継続雇用の取組にも力を入れ、勤務評価や給与体系の改善、定期面談等の配慮を行っている。部署異動や勤務地の異動等を行ったことにより、雇用の継続が図られたケースもあった。
さらに障害者の雇用が進み、人数が多くなってくると、今まで以上のよりきめ細かい雇用管理体制が必要になってくると思われる。
社内の様々な部署で障害者が働くことにより、他部署も含めた社員全体に障害者への理解が浸透し、どの部署でも障害者を受け入れやすくなるという相乗効果が期待できる。各現場でしっかり働いている障害者の様子、それを受け入れている各現場のスタッフの様子から「障害者」としてではなく「同じ社員」として受け入れており、障害者の働きやすい環境が保たれていることを感じることができる。
今後、新たな職域を広げ、地域の障害者雇用のけん引役になることを期待してやまない。
就労支援統括マネージャー 河崎 誠司
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