各関係機関との連携・協力により雇用につながった事例
- 事業所名
- ホシザキ北信越株式会社
- 所在地
- 石川県金沢市
- 事業内容
- 各種業務用厨房機器の販売及びメンテナンス
- 従業員数
- 421名
- うち障害者数
- 6名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚・言語障害 肢体不自由 6 社内清掃及びワックスがけ、営業、一般事務 内部障害 知的障害 精神障害 発達障害 高次脳機能障害 難病等その他の障害 - 目次
|
1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
(1)事業所の概要
当社は昭和52(1977)年、全自動製氷機、業務用冷凍冷蔵庫、業務用食器洗浄機をはじめとする各種フードサービス機器の研究開発および製造を事業とするホシザキ電機株式会社のグループ会社として、金沢で設立された。
多様化する「食」に対するニーズの変化に対応し、お客様のみならず社会に貢献できる「進化する企業」であることを目指している。ホシザキ電機株式会社の業務用厨房機器の販売とアフターメンテナンスなどを主な業務内容とし、国内外トップシェアの機器も扱っている。
「良い製品は良い環境から」をモットーに「遵法はもとより社会と社員から信頼される会社づくり」「透明性のある経営 議論のできる経営の実践」「事業活動と環境との調和 働きやすい職場環境の実現」を営業姿勢としているほか、「ホシザキグリーン財団」を応援するなど、「自然環境の保護」や「社会貢献」にも積極的に取組んでいる。
(2)障害者雇用の経緯
当時、事業所は法定雇用率を満たしていたが、将来を見越して障害者雇用を拡げようと考えているところであった。しかし、新たに雇用を考えた時、事務系の仕事ではすでに障害者が配置されており、人手は足りている状態であった。また障害者本人が単独でお客様の店舗で業務用厨房機器の修理や点検ができるのかなど、「任せる仕事があるか」といったことや「障害者の日常生活のケアに対する不安」「経費増」などが問題となり、なかなか話が進まない状態であった。
そんな折、障害者職業生活相談員が、社内で「特別支援学校では、生徒に対して卒業後の進路決定のために『職場実習』というものを実施している。一度受け入れてみてはどうか」という話が出たことから、筆者が所属する当校(いしかわ特別支援学校)に職場実習の受入についての打診があった。
なお、当校は石川県内で初めての複数の障害種に対応する特別支援学校として、平成18(2006)年に肢体不自由教育部門が、平成20(2008)年に知的障害教育部門が開校し、児童生徒、保護者、地域の皆様から信頼される学校をめざして教育活動に取り組んでいるが、今回の職場実習の受入の打診に対しては、対象生徒を肢体不自由教育部門の生徒として職場実習への取組を行った。
職場実習では教員が付き添って、実際の現場でその生徒に合った手順や方法で作業をするため、本人はもとより従業員に対しても大きな負担がかかることなく即戦力としてのスキルを身につけ、将来性についての判断もしてもらうことができた。
事業所側からは、うまくいけば契約中のビルメンテ業者に換えて、パートタイムで仕事をしてもらうことも考えているという話をしていただいた。さらに職場実習中には従業員のみなさんが実習生に対して積極的に声をかけてくれて、本人の就業意欲がさらに高まったようだった。
職場実習の最後には本人、保護者を含めた会議を持ち、改めて就業についての話し合いをし、お互いの意思確認を行った。また、ハローワークの担当者が同席しての打合会を持ち、結果的には使うことはなかったが助成金の話や県実習、高校生の求人票についての説明をしてくれた。
計3回の8週間(うち1週は就労前の定着実習)、職場実習を実施して就労に結びついた。
2. 取組の内容
実際に実習を始める前に、特別支援学校の進路担当者と事業所の担当者との打ち合わせを行った。そこでは企業側が考えている仕事の中身と就労を希望している生徒ができる業務のすり合わせを行い、実習という形で実際に取り組んでみた上で就労に向けた判断をするということを確認した。
(1)1回目の実習
特別支援学校では対象生徒を肢体不自由教育部門の生徒とし、まず、2週間の実習を行うこととした。対象のAさんは独歩で自宅から公共交通機関を使って通勤ができるが、尖足の障害があり、立位が不安定なことやしゃがんだままでの作業が難しいといった動作面の不安要素があった。一方、友人を気遣ったり手伝ったりする優しい性格であり、負けず嫌いな面もあって、就労に対する意欲は十分に持っていると思われた。
実習では、清掃場所であるトイレ、廊下、階段、玄関周り、事務所内のそれぞれの清掃作業手順を教員が作成し指導にあたった。慣れてくるに従って、教員が付かずに一人で作業するようにした。
最初の実習は作業場所ごとの手順や道具を確認しながら、丁寧さを意識することを目標に取り組んだため、作業時間が大幅に伸びたり、日によってばらつきが出たりして、一日の作業日程がなかなか組みにくい状態であった。道具についてもオフィス内でのコード使用の問題を考えて、充電式掃除機を使ったが、作動時間が短く、バッテリーを交換するために別の階まで移動しなくてはならず無駄な時間ができてしまった。ゴミ集めについても、ゴミ袋の交換について同様の課題が見つかった。
こうした実習で出た課題について、特別支援学校に戻って改めて手順や道具の検討と清掃作業の練習を継続して行った。事業所側からは、うまくいけば契約中のビルメンテ業者に換えて、パートタイムで仕事をしてもらうことも考えているという話をしていただいていたので、特に、大きな検討事項は「ワックスがけ」であった。ワックスがけについては、知的障害教育部門の作業学習にあたるワックスがけの作業チームと一緒に、業者による校内のワックスがけ作業に参加して経験を積むことにした。
(2)2回目の実習
2回目の実習では手順や使用する道具に関しては覚えていて、すぐに取りかかることができた。ただ時間を意識するあまり拭き残しや掃き残しがみられたが、巡回指導の教員に指摘されて改めて正確性を意識し直すことができた。実習の後半には、金沢障害者就業・生活支援センターのジョブコーチの協力も得て、さらに手順の見直しも行った。
実習が進むに従って職場の雰囲気にはすっかり慣れて表情も明るくなり、足りなくなってきた消耗品などの補充を自ら依頼することができるようになっていた。事業所内では清掃に対してだけでなく、本人の挨拶やコミュニケーションについても高く評価していただき、就業に向けて前向きに検討していただけることになった。
課題であったワックスがけは、会社の休業日に実際の場所で作業する許可を得て、特別支援学校の練習で使用している道具を使い担当教員が付いて作業を行った。
現場ではどのような流れで作業していくのか、床に置かれている物をどうやって移動させるか、ワックスの器具をエレベーターで各階に移動させる手順をどうするのか、さらに今使われているワックスの種類・扱い方についてなど、多くの課題が見つかった。幸い事業所では、就業に当たって本人の使いやすい道具を購入してもらえることになり、道具の検討と合わせて業者から直接指導を受けることとした。
道具は本人が扱いやすい物を優先し、当社の許可を得て決定した。まずは特別支援学校に納品してもらい基本的な使い方の講習を受けた。その後、特別支援学校の放課後等を使って練習し、3回目の実習に入った。
(3)3回目の実習
3回目の実習ではほぼ一日の作業の流れや手順ができた段階で、実際の道具を使って実際の場所での作業に取り組んだ。ワックスがけには再び業者に協力してもらい、実際の場所をどんなふうに作業するのかを相談した。また使うワックスの種類や手順での注意事項を教えてもらった。
特別支援学校の実習では、就労と同時に即戦力となることを意識し、事業所との打ち合わせや実習後の振り返り、相談を中心に各関係機関との連携を取りながら作業の定着を図っている。
|
|
3. 今後の取り組みと課題
Aさんが就労してすぐに社屋の改装工事が入り、作業道具置き場など環境は良くなったものの、作業場所や手順の変更を余儀なくされてしまった。それによって作業がしにくくなったのか、全体にスピードが遅くなり仕上がりも良くないとの指摘があった。すぐにジョブコーチが課題に対応するとともに、特別支援学校からも様子確認のための事業所訪問をして本人の話を聞き、対策を検討することができた。
本人からは社員から声をかけてもらっているので嬉しいということや、働くことに対する意欲はあるが、手順で戸惑いがあるということなどの思いを聞くことができた。
そのようなこともあり、当社では、障害福祉サービス就労移行支援事業を行う株式会社ヴィスト「ヴィスト金沢センター」から紹介してもらった「株式会社セントラルコーポレーション」から清掃業務の指導を受けることとし、作業研修を実施することになった。作業スケジュールの検討手順・手法の指導、プロ使用の道具や薬剤の導入提案と共に4ヶ月間の直接指導を受けて、スキルを格段に高めることができた。
当社では、今後Aさんが清掃担当のプロとなることを目指して、特別支援学校の先輩という立場で後輩の実習や就労に向けた指導をするくらいになって欲しいと考えているということであった。このことは本人にも伝えられ、本人の意欲はさらに高まり研修に対する姿勢にもつながった。
また、当社で清掃に従事している社員はAさん一人である。毎日が基本的に同じ作業の繰り返しであること、また他に協力したり比較したりする人がいない作業であるため、就労当初のモチベーションをいかに維持していくかが課題となっている。今後も各関係機関との連携の継続が必要になってくると思われる。
皆さまのお役に立てるホームページにしたいと考えていますので、アンケートへのご協力をお願いします。
なお、事例掲載企業、執筆者等へのお問い合わせや、事例掲載企業の採用情報に関するご質問をいただいても回答できませんので、あらかじめご了承ください。
※アンケートページは、外部サービスとしてユミルリンク株式会社提供のCuenote(R)を使用しております。