関係機関との連携で安心して就労に至った事例
- 事業所名
- 株式会社北陸モンベル
- 所在地
- 石川県羽咋市
- 事業内容
流通業: モンベルグループ取扱商品の流通業務 製造業: アウトドア衣料の縫製
フォールディングカヤック「アルフェック」の製造- 従業員数
- 45名
- うち障害者数
- 3名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚・言語障害 肢体不自由 内部障害 知的障害 3 流通業務3 精神障害 発達障害 高次脳機能障害 難病等その他の障害 - 目次
事業所外観
1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
(1)事業所の概要
モンベルグループは、株式会社モンベル、株式会社ベルカディア、株式会社北陸モンベル、株式会社ネイチュアエンタープライズ、モンベルアメリカ・インク、モンベルスイスSAから成る、アウトドア用品の製造、卸、販売、イベント運営企画、保険業などを手がける総合グループである。また、自然保護やスポーツ等を通して様々な社会活動にも貢献している。
Aさんの就労先である株式会社北陸モンベル(以下、北陸モンベル)は石川県羽咋市寺家町にある。昭和61(1986)年に羽咋市で設立されて、以来アウトドア用品の流通、品質管理、修理、サンプル、製品の製造を主に取り扱っている。現在は製造・流通を拡充するために、新たな拠点を設立する予定であり、地域の雇用機会の創出にも一役を担っている。
(2)障害者雇用の経緯
在学時、Aさんは農工班や清掃美化班で体を動かす作業学習に積極的に取組む姿が見られた。重量物や仲間と協力して材料を運搬するなど体力や社交性もあり、Aさんにとってやりがいのあるものであった。一方で手先の細かな作業は苦手で、字を書く時や紐を縛る時は、緊張から手が震えることなどに大変苦労していた。また、コミュニケーションでは人見知りはするものの、友達や教師と色々な話題を広げることができた。
当時から卒業後の一般企業への就労意欲もあり、長期の休みには調理補助のアルバイトを経験するなど自分を高めることのできる生徒であった。
Aさんは通勤距離に負担のかからない就労先を模索していた。また、本校の進路指導も近隣のハローワークに対して、Aさんの障害の特性や希望に叶う求人を継続して依頼しており、北陸モンベルを紹介していただくこととなった。
当時、北陸モンベルでは2名の障害者(福祉施設から移行)を雇用していたが、在学中の生徒の実習受入や新卒の雇用経験は無かった。そこで平成24(2012)年1月下旬より本校の職場実習を2週間行い、同年4月から石川県障害者職場実習制度を活用しながら雇用へとつながっていった。
2. 取組の内容
職場実習を行うに当たり、事前に北陸モンベルの担当者との打ち合わせを行った。そこで期間中に、専門的な支援を直接行うジョブコーチにも巡回指導に加わっていただき、2週間(9日間)の職場実習計画を作成し実施した。
(1)本校の職場実習計画
本校の職場実習に採用された作業は、「荷受け作業」で、その作業及び手順は次のように計画された。
◆荷受け作業及び手順
- ダンボール箱の上部に貼られているガムテープを、箱の内にある商品の袋を破らないよう専用のカッターで切る。
- ダンボール箱の横に表示されている・品番・カラー・サイズ・個数が、商品に付いているタグと同じであるかを照らし合わせる。
- 照らし合わせた後は、ガムテープでダンボール箱の上部を留める。
- ダンボール箱を運び6段ごとに積み重ねておく。
(2)職場実習の様子
本校の職場実習はのべ10日間となった。その様子は次表のとおりである。
日 | 実習内容 | 課題・評価・取り組み |
1日目 | 入荷作業 |
|
2日目 | 入荷作業 |
|
3日目 | 入荷作業 |
|
4日目 | 休み | |
5日目 | 入荷作業 |
|
6日目 | 入荷作業 |
|
7日目 | 入荷作業 |
|
8日目 | 入荷作業 |
|
9日目 | 入荷作業 |
|
10日目 | 入荷作業 |
|
3. 取組の効果、今後の展望と課題
(1)取組の効果
2週間の職場実習では、当初ガムテープを専用カッターで切ることや、ガムテープをロールから剥がすこともできなかったが、ダンボールと体の位置を決めたり、作業台の高さを調整したり、当社の実習担当者やジョブコーチと共にAさんのやりやすさを常に工夫し、確認しながら進めていった。徐々にではあるが作業手順の定着や効率も上がり、それに伴い実習担当者や従業員とのコミュニケーションの場面も多く見られるようになり、Aさんからも仕事に対する自信や意欲を窺うことができた。しかし、個数確認やテープの扱い方など、Aさんが苦手としている細かい部分での不正確さが課題として挙げられた。
実習9日目には実習担当者、ジョブコーチ、ハローワークの担当者、本校の進路指導主事を交えて実習の総括や、卒業後の定着に向けた各関係機関との支援体制について、ケース会議を行った。そこで課題の克服に向けて、作業で使用するダンボールとガムテープを北陸モンベルから譲り受け、ダンボール箱の組み立て作業がスムーズに行えるよう実習後も繰り返し練習を行った。
卒業式後も月・水・金曜日に弁当を持参して繰り返し練習をしたいと、Aさんからの相談もあり3月末まで進路指導課の職員とともに取り組んだ。休憩時間には、お給料をもらった時には、「コンサートやプロ野球の観戦に行きたい」、「そのためにインターネットで近くの会場や、公共交通機関をどうやって利用するかを調べる」など、夢を膨らませる会話を職員と交わす姿が見られた。そして現在、ダンボール箱の組み立て作業を中心に就労2年目を迎えようとしている。
実習を通して、Aさんだけでなく実習担当者やジョブコーチ、教員がどれだけコミュニケーションを図るかが重要であるかを感じた。Aさんが業務を円滑に進める上で、PLAN(計画)→DO(実行)→CHECK(評価)→ACT(改善)を繰り返すことによって業務を継続的に改善し、業務のやりづらさやAさんとの関わり方など、関係者間で連携を深めたことが、Aさんの働くことへの安心感にも繋がった。
|
(2)今後の展望と課題
一般企業への就労を目指すどの生徒にも、「この会社のために頑張りたい」という意識を持たせたいと考えている。今まで努力して一般就労をしたにも関わらず、離職する人も少なくない。多くは本人自身の問題や支援体制の問題など様々な要素が起因している。
我々進路に携わる側は、企業が求める人材の把握や、永く働ける人材を育成するためにも実態把握や職業適性の検証を行わなければならない。そこには企業側の受容と理解と期待が、障害者の雇用促進に向けて大きな原動力となっているからだと考える。
Aさんは現在もダンボール箱の組み立て作業を中心に入荷や出荷の補助などを行っている。先日も様子を見に行くと、担当者からは「実習の頃の手際に比べれば、今は全く違和感なく取り組めている」、「次にやらなければならないことが予測できていたり、ちょっとした気配りも作業の中で見られたりする」と、我々にとっては大変うれしい言葉であった。
Aさんは仕事が休みの日には、よく学校に訪れる。コンビニで買った弁当とジュースを持って…1日学校でのんびり過ごす。やはり余暇の過ごし方、休憩時の過ごし方などライフスタイルに合わせた支援も継続して取り組まなければならないと感じている。
皆さまのお役に立てるホームページにしたいと考えていますので、アンケートへのご協力をお願いします。
なお、事例掲載企業、執筆者等へのお問い合わせや、事例掲載企業の採用情報に関するご質問をいただいても回答できませんので、あらかじめご了承ください。
※アンケートページは、外部サービスとしてユミルリンク株式会社提供のCuenote(R)を使用しております。