コミュニケーションを取り、「明るく楽しく元気よく」働ける職場作りを目指して
- 事業所名
- アート金属工業株式会社
- 所在地
- 長野県上田市
- 事業内容
- 各種内燃機関用ピストン及びピストンピンの開発・製造・販売
- 従業員数
- 755名
- うち障害者数
- 12名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚・言語障害 1 製品検査業務 肢体不自由 3 製造、事務 内部障害 知的障害 6(うち重度3名) 製造 精神障害 1 製造 発達障害 1 製造 高次脳機能障害 難病等その他の障害 - 目次
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1. 事業所の概要
(1)沿革
当社は大正6(1917)年、東京本郷に「アート商会」を創業し、自動車修理工場として稼働を始めた。大正14(1925)年、自動車修理業を営む傍らで、従来からの鋳鉄製のピストンを軽量化したいという発想から、アルミニウム合金製のピストンの開発を始め、翌年には日本発の合金鋳造法による内燃機関用の軽合金ピストンの試作に成功した。
昭和4(1929)年、「内燃機関用ピストン」の特許を取得し、ピストン鋳造工場を開設した。昭和7(1932)年、社名を「アート軽合金鋳造所」と改称し、「金属加圧鋳造機」の製作や金属製「アルミニウムピストン」鋳型に関する特許出願等を行い、ピストンの本格的な操業を始めた。昭和16(1941)年、太平洋戦争勃発により本土空襲が始まり、東京から上田へ工場疎開を開始した。昭和20(1945)年、「アート金属工業株式会社」と社名を変えて、上田で再出発した。現在は、ピストンの他にピストンピンの製造も行い、日本国内・海外の4輪車メーカー、2輪車メーカー、汎用機メーカー等へ納品・供給をしている。
資本金は24億円、売上高は200億円、従業員数は755名(国内単体)となっており、国内に5拠点【本社・塩田工場・山田工場(長野県上田市)、中部営業所(愛知県岡崎市)、関西営業所(大阪府大阪市)】海外には5拠点【中国2社、タイ、インドネシア、ドイツ】を展開している。その他に長野県に5社の関連会社と協力しあって月産約200万個のピストンの生産を行っている。
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(2)会社方針
【基本理念】
- 世界のお客様へ優れた製品を提供し豊かな社会づくりに貢献する
- 創造力とチームワークで活き活きした明るい職場をつくる
【中長期経営方針】
- オープンでフェアな企業活動を通じて信頼される企業市民を目指す。
- オールアートが一体となり市場変化に打ち勝つモノづくり改革を推進する。
- お客様第一を最優先として品質の画期的向上に努める。
- 時代を先取りしたクリーンで高機能な製品の開発に取り組む。
- 海外生産拠点の自立化支援を充実しグローバルな事業展開を図る。
- 環境保全に継続的に取り組み地域社会に貢献できる企業を目指す。
2. 障害者雇用の経緯
現在当社では、本社1名、塩田工場9名、山田工場2名の合計12名の障害者を雇用している。平成21(2009)年までは6名の障害者雇用をしていたが、現在までの人数に増えた経緯を記述する。
以前は、管轄のハローワーク主催の障害者就職面接会に単独で参加し、当社に興味を持った人がいたら、後日会社に来社してもらい、面接及び会社見学を実施し採用可否を決めていた。しかしながら採用担当者も障害についての知識が乏しく、障害のある人々へどのような職種が向いているのか?どのような接し方やフォローをするのが良いのか?等、手探り状態の日々が続いていた。その状況の中、双方の意思疎通ができない状態が続くと、退職してしまう人が出てきたり、逆に他の従業員からも、「やはり障害者雇用は厳しい」という意見が出されてしまったりし、中々雇用数を増やしていくことができず、企業に求められている障害者の法定雇用率が達成できない年もあった。
このような状況がしばらく続く中、長野県上田市と小県郡から成る上小地域(上田市、東御市、長和町、青木村)を管轄する「上小地域障害者就業・生活支援センター」との出会いから一変した。
ある日、「上小地域障害者就業・生活支援センター」から1人の重度障害者(Aさん)の受入の打診があった。Aさんは知的障害者だが、身体と言語にも障害があり、思うように会話ができない人であった。
今まで当社では重度障害者を雇用した経験が無く、正直どのような働き方ができるか不安だったが、「ジョブコーチ支援」の話を聞き、専門の人にフォローしてもらえるのであればということで、製品を輸送する為の空箱清掃業務に就いてもらうことにした。Aさんへのジョブコーチ支援は、始めの2週間は毎日来てもらい、徐々に支援回数や時間を減らし、途中途中では人事担当者と職場とジョブコーチとで情報交換を交わしながら様子を見てきた。その結果、無事定着し、業務指示も朝のミーティングの時に伝えたものだけで遂行できるようになり、不明な点が出てきた際には自ら筆談等を交えながら聞くこともできるようになった。無遅刻無欠勤で真面目な働きぶりは、同じ職場の社員だけでなく、上層部の人にまで評判が伝わり、「Aさんは良く頑張ってくれている」と高評価を受けるようになった。また、「Aさんのように頑張ってくれる人が他にもいるのであれば、工場としても障害者の雇用を推進する」とまで言ってくれるようになった。
その結果、約3年で従来の倍の12名(重度障害3名)の障害者雇用が実現することができた。
現在もAさんは空箱清掃のリーダー的存在で、後輩の指導をしながら働き続けている。
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3. 採用と労働条件について、今後の展望と課題
(1)採用と労働条件について
- 採用について
就職希望者が訪れた際は、まずは笑顔で接し、いきなり仕事の話をするのではなく、世間話をしながら、リラックスできる雰囲気を作ることから始めている。緊張がほぐれ、お互いが話し易い環境作りができてから、業務内容説明及び職場見学を行っている。職場見学時には、障害のある人が理解できているか、興味を持って聞いているか様子を見ながら説明するように心掛けている。また、形式的な説明ではなく、働くうえで発生するであろうあらゆる可能性の説明もし、決して簡単な仕事では無いことをしっかり説明している。
逆に障害のある人からも、どのような職種なら働けそうなのか?職場の人にどのような配慮をしてもらいたいか?を聞き出し、一緒になって働けそうな職場を検討している。
配属する職場が決定した後、受け入れ部署の所属長や係長に障害の特徴や、配慮の仕方などを説明し、理解を求めている。
入社後は、まず3ヶ月間のトライアル雇用からスタートし、この間にジョブコーチ支援も入れて、採用担当者とジョブコーチ双方から継続して働けそうかなどのヒアリングを行っている。双方問題が見受けられなければ、トライアル雇用終了後、正式に入社となる。
トライアル雇用中はジョブコーチ支援を入れているからと言って、任せきりにしないことを心がけている。採用担当者も頻繁に足を運び、実際に働いている作業環境や働きぶりを確認し、声掛けを行うようにしている。障害のある人が、ジョブコーチにしか心を開かなくなってしまうようでは、ジョブコーチ支援が終了してから頼れる人がいなくなってしまうことを防ぐ為でもある。
こうすることによって採用担当者も個々の障害の特徴や性格を把握することができ、信頼関係が増すと共に、お互いが働きやすい環境に変わっていく。
個人個人性格や考え方や障害の種類など違うので、決してマニュアルどおりの接し方では務まらない。定着を図る為にはとにかくコミュニケーションを取る事が一番重要だと思っている。
- 労働条件
原則、契約社員からスタートする。
契約期間は個々によって異なるが、基本的には3ヶ月更新から始まり、様子を見ながら、職場・本人・ご家族と相談しながら1年更新に変更している。
就業時間等は障害の特性に合わせ、本人の意思を尊重しながら決めている。
給与は日給制とし、年1回の昇給と年2回の賞与がある。
福利厚生は他の社員と同様である。
ソフトボール大会などの会社イベントにも一緒に参加している。
(2)今後の展望と課題
まずは現在就労している障害者の定着を図ると共に、個々の成長を望んでいる。
それと同時に、法定雇用率の達成にとらわれず、それ以上の新規雇用を検討している。
障害のない者と障害者の壁を無くし、お互いが気持ちよく明るく楽しく元気よく働ける職場作りを目指している。
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