障害をもった職員の笑顔とともに職員一丸となって組合員さんのくらしをサポート
- 事業所名
- 生活協同組合コープぎふ
- 所在地
- 岐阜県各務原市
- 事業内容
- 共同購入・店舗・福祉・共済保険事業、暮らしに関わる事業を展開している
- 従業員数
- 1,256名
- うち障害者数
- 27名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚・言語障害 肢体不自由 6 事務、品出し 内部障害 1 営業 知的障害 19 事務、品出し、出庫 精神障害 1 出庫 発達障害 高次脳機能障害 難病等その他の障害 - 目次
|
1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
(1)事業所の概要
- 設立
昭和38(1963)年に設立した「飛騨生協」、昭和46(1971)年に設立した「岐阜消費生協」、昭和48(1973)年に設立した「岐阜地区市民生協」、これら3つの生協が合併し、平成11(1999)年に「生活協同組合コープぎふ」が発足した。なお、現在はコープあいち、コープみえと県を越えた東海コープ事業連合を作り、協同して事業を進めている。
- 事業概要
共同購入事業をはじめとして、店舗事業、福祉事業、住宅事業、共済・保険事業、サービス事業、葬祭事業、夕食宅配事業を岐阜県全域で展開している。共同購入事業所は9事業所、店舗は6店舗、介護事業所は4事業所となっている。
組合員数 220,804人(平成25(2013)年12月20日現在)
総事業高 265.6億円(平成24(2012)年度)
- 理念
<笑顔あふれる協同のくらし>「わたしたちの願いは、すべての人たちの幸せです。一人ひとりが地域社会の一員として大切にされ、イキイキと心豊かに暮らせる笑顔あふれる協同のくらしの実現をめざします。
そのために、生協は人と人の架け橋となり、地域社会におけるくらしの安心のよりどころになります。わたしたちが暮らす岐阜県の豊かな自然や歴史、伝統文化を大切にし、地域の諸団体とのネットワークを広げ、くらしやすい地域づくりを一緒になってすすめます。
組合員の知恵と力で事業や活動を活発にし、お互いに助け合い、分かち合う協同のよさを広めます。そして、地域の人々のくらしに役立ち、生涯を通じて利用できる安心・信頼の生協となります。」
(2)障害者雇用の経緯
岐阜地区市民生協時代の平成9(1997)年に長良店で障害者の雇用がスタートした。そして平成10(1998)年「当面は法定雇用率を満たす障害者雇用を目標に進め、将来的には多くの障害者が働ける生協をめざしたいと考えます」という方針を掲げ、障害者雇用を進めていき、平成13(2001)年までは雇用率を満たしていた。
その後、職員の退職などで雇用率が維持できなかったのを受け、平成15(2003)年全店での障害者雇用を行うなど新たなる方針が決まった。そのことを受け、特別支援学校からの実習受け入れとその後の採用、ハローワーク主催の就職説明会への参加などを積極的に行った。その結果障害者雇用が進み、しばらくは雇用率を満たしていたが、退職などの関係で、再び雇用率を下回る状況となった。
- 障害者雇用促進方針の作成
以上の状況にあったため、平成21(2009)年に再度コープぎふ全体で「障害者雇用の意義」を以下のように掲げ、これを確認した。そしてこの障害者雇用の意義を確認するとともに、全店舗(6店舗)で障害者を採用するだけではなく、全共同購入事業所(9事業所)での採用をするなど新たなる障害者雇用促進の方針を作成した。
『コープぎふは「笑顔あふれる協同のくらし」を理念として掲げ、豊かな地域づくりに貢献すべく日々活動しています。そして、「コンプライアンス基本方針」を定め、「法令やルール」を守ることはもちろん、「行政・諸団体と共によりよい地域社会づくりに貢献」することを宣言しています。地域で共にくらす障害者の人もいきいきと参加できる社会、その実現のためにコープぎふも積極的に貢献することが求められています。』
- 障害者雇用促進方針の具体化
以上の方針を進めていくために、まずは県内各地の特別支援学校・養護学校に対し生徒の職場実習受け入れ案内を行った。そして、ハローワークに求人票を出すことや就職相談会への参加などハローワークと今まで以上に連絡を取るなど、具体的な対策も進めていった。
また採用する事業所の支援を行うことで事業所が積極的に採用できるよう、採用に関わる実務などは本部が行い、管理者向けに障害者雇用に関する学習会を行うなど事業所への支援策も進めていった。
その後各事業所に対して採用を呼びかけ平成22(2010)年度には新たに6名の障害者を各事業所で採用した。
また平成22(2010)年5月に岐阜市立岐阜養護学校、岐阜県立長良特別支援学校、岐阜県立岐阜本巣特別支援学校を役員と人事部長が訪問し、学校長、教頭、進路指導の先生の話を直接聞き、コープぎふからは生協の説明や障害者の雇用状況について話し、関係づくりとともに雇用に向けての協力を要請した。
岐阜県では学校と企業が一体となった就労支援を一層推進するため、平成22(2010)年11月に、障害のある生徒の就労支援に積極的な県内の企業を登録する、「働きたい!応援団 ぎふ」登録制度を創設した。これは、特別支援学校高等部卒業後、一般企業等への就職を目指す生徒の働く力の育成及び就労促進に資することを目的に、職場見学、就業体験、企業内作業学習、校内作業学習の技術指導(生徒、教員を対象とした技術指導)及び就労推進(雇用直結型職場実習の実施及び雇用)についてサポートする企業を登録して、このサポートに参加・協力をしてもらう制度であるが、コープぎふでは、このサポーター企業登録第一号として平成23(2011)年2月17日岐阜県教育委員会より登録証の授与を受けた。
以上のような取組によって、平成23(2011)年度には岐阜県の特別支援学校、養護学校の高等部から6名採用、期中採用として3名、期中退職2名となり、障害者雇用数は22名となり障害者雇用率も法定雇用率を大きく上回った。その後さらに採用が進み、平成25(2013)年12月16日現在では障害者雇用数は27名となり、すべての店舗、共同購入事業所で障害のある職員が働くようになった。
2. 取組の内容
(1)募集・採用方法について
ハローワーク、特別支援学校や養護学校、各地域にある障害者就業・生活支援センターからの紹介などで採用を進めている。
特別支援学校や養護学校から採用する場合は、職業体験を行っていただく。その後当生協を希望された生徒と面接を行い学校や保護者と相談しながら進めていく。また採用後も学校の先生や保護者と連携を取りながら、職場での育成・指導方法を話し合っている。
障害者就業・生活支援センターやハローワークから紹介などされた場合には、トライアル雇用を活用し、仕事をまずは体験してもらう。育成・指導方法についてジョブコーチと連携を取りながら、仕事を覚えて慣れていってもらっている。
(2)障害者の仕事内容・働きぶりについて
障害のある職員も、障害のない職員と同じ仕事をしている。店舗では品出しや事務、共同購入事業所では出庫作業(トラックに乗せる荷物の準備、トラックの片付け等)や事務、本部では事務を行っている。
障害の内容や程度にもよるが、仕事を覚えるまでには時間がかかることが多い。しかし、覚えた仕事についてはまじめにかつ丁寧に仕事を行う。また、コミュニケーションをとることが苦手な職員も仕事に慣れてくると、他の職員と積極的にコミュニケーションをとることができてくる。
障害のある職員と一緒に仕事をしている職員からは「毎日元気で明るい声であいさつしてくれるので、組合員さんからよくほめられます」、「出庫の定時メンバーさんたちからの信頼も高いです。忙しいところへのフォローにも自分から入れます」、「出庫作業では、重くて女性には厳しいこともあるが、その時は率先してその作業を行ってくれる。また、自分の作業が終わり、時間があるときは、自ら率先して掃き掃除を実施している。支所には無くてはならない、大切な人です」などの意見が出ている。また、障害のある職員が一生懸命働いている姿を見ることで、「自分ももっと頑張らないと」、「見習わないと」と思う職員も増えた。
|
|
(3)育成していく上での工夫
障害の内容や程度、それぞれの職員の得意・不得意な分野があるため、実際に障害者が働いている職場では、担当職員や一緒に働いている職員により、様々な工夫がされている。具体的には以下のような工夫がされている。
- 指示をする際には簡潔にし、作業内容を記載した札をつくり、まずは一緒に作業をする。次回からはその作業内容を記載した札を見ながら作業をしてもらう。
- 誰に聞いても同じ指示ができるようにマニュアル作りを進めた。
- 作業の順番を書いたものを用意するなど、見える化を行った。
- 自分から辛いという意思表示をしないので、水分補給や体温調節など声かけをする。
- 作業の流れが変わる際には、作業漏れが発生しやすいので、あらかじめ具体的に作業内容を示し「やってね」の声かけをし、作業後確認している。
しかし各事業所では、採用当初どこまでの作業ができるのか、どう教えたらよいのか手探り状態だった。そのため、職員が卒業した学校の先生やジョブコーチや保護者に相談し、慣れるまでは一緒に作業を行い上記のような工夫を実施することで、一人で作業をすることができるようになった。当生協だけで育成していくのではなく、学校や関係機関に協力を頂きながら障害を持った職員の育成について勉強をさせてもらい、また一緒に働く正規職員・定時職員みんなで障害のある職員を育てている。
3. 障害のある職員が長く働き続けられるためにできること、今後の課題と展望
(1)障害のある職員が長く働き続けられるためにできること
<障害のある職員の交流会の実施>
複数名の障害者を雇用している事業所もあるが、各事業所1名以上を雇用することを進めてきたため、今現在も障害のある職員は1名という事業所もまだある。そのため、他の障害のある職員が、どのような仕事をしているのかを知り、職員同士のつながり作りの場を設けることで「頑張ってるのは自分だけではない。仲間がいる」という安心感を持ってもらうために、障害のある職員の交流会を平成25(2013)年11月に初めて行った。
そこには障害のある職員だけではなく、保護者や障害者就業・生活支援センターからジョブコーチ、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構の職員にも参加頂き、また障害のある職員と一番よく接している職員にも参加してもらった。当日は障害のある職員が「仕事で頑張っていること」を一人ずつ発表してもらい、その後、職員は職員のグループに、保護者は保護者のグループに分かれ交流を行った。
参加した障害のある職員からは「皆が頑張っているのがわかりました。私ももっと頑張りたいと思いました」、「また何年後かにこのような機会ができたら、あの時はできなかったけど、今はこんなこともできるようになりましたという、報告ができたらいいと思います」といった、とても前向きな意見が多く出された。
保護者からは「発表している姿は皆笑顔でした。それは自分の仕事に誇りを持っているからではないでしょうか」、「自分の子の事業所は1人だったので、親として不安な面がありました。今日保護者の方との交流で、同じような悩みを抱えていると分かりホッとしました」といった意見が出された。
また障害のある職員を育成している職員からは「ジョブコーチの方の話が、これから育成していく上で非常に参考になりました」、「他の事業所の職員も悩みながら行っており、自分だけではないという安心感が持てました」といった意見が出された。
職員にとっては安心して働ける職場、保護者にとっては安心して任せられる職場と思ってもらえることを目指して、今回だけで終わるのではなく、引き続き交流会を行いたい。
|
|
(2)今後の課題と展望
これまで障害者を採用してきた中で、様々な課題も出てきた。一つは障害のある職員を担当する職員が障害者を雇用する上での基礎知識を学習できる場が少なかったことである。基礎知識を持つことで、障害者を育成していく上での不安、新たな障害のある職員を雇用するということに対する不安を少なくすることができる。
そのためにも「障害者職業生活相談員」を、障害のある職員がいる全事業所で一人は配置できるよう、来年度から障害のある職員の育成を行っている職員に対し障害者職業生活相談員資格認定講習を職員の教育プログラムに加えた。
また交流会で、自分自身では仕事のことや体調について申し出ができない職員がいることや、保護者も自分の子の職場での様子を知ることが安心につながるということもわかった。今後は保護者の意見も聞き、どういった連絡・相談方法がいいのかを決め、順次行っていきたいと思っている。
障害のある職員も、当生協にとって大事な人材である。その大切な人材をどう育てていくのかは常に手探り状態ではあるが、一歩ずつでも前進し障害のある職員も障害のない職員も、皆が笑顔あふれる職場になることを今後も目指していきたい。
皆さまのお役に立てるホームページにしたいと考えていますので、アンケートへのご協力をお願いします。
なお、事例掲載企業、執筆者等へのお問い合わせや、事例掲載企業の採用情報に関するご質問をいただいても回答できませんので、あらかじめご了承ください。
※アンケートページは、外部サービスとしてユミルリンク株式会社提供のCuenote(R)を使用しております。