障害のある人と共に働き、考え、改善し、安定した継続雇用につなげていく!
- 事業所名
- 丸善運輸倉庫株式会社
- 所在地
- 大阪府大東市
- 事業内容
- 一般区域貨物自動車運送事業、第一種利用運送事業、倉庫業、物流支援業
- 従業員数
- 48名
- うち障害者数
- 5名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚・言語障害 肢体不自由 内部障害 知的障害 3 入出荷作業、検品等 精神障害 2 入出荷作業、検品等 発達障害 高次脳機能障害 難病等その他の障害 - 目次
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1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
(1)事業所の概要
丸善運輸倉庫株式会社は、冷凍倉庫・冷蔵倉庫・定温倉庫・常温倉庫の4温度帯での物流サービスを提供している。従来の化学メーカー・製紙メーカーとの取引に加え、食品メーカー、食品卸売業や小売店の商品の取り扱いも行っている。
また、ITシステム会社と連携し、クラウドによる倉庫管理システムを運用し、賞味期限管理や出荷期限管理を徹底的に行っていることが、物流サービスを提供するための基盤となっている。
当社の経営理念(わたしたちの会社の想い)のキーワードは「共存共栄」と「一期一会」であるとし、事業活動をおこなっていくうえで、関わる周囲の方々によろこんでいただくことであるとする。
<共存共栄>
われわれは・・・
顧客(得意先)から感謝される企業を目指します。
従業員の安心と満足を与えられる企業を目指します。
購買先(仕入先)との連携ができる企業を目指します。
社会(地域)への貢献ができる企業を目指します。
<一期一会>
われわれは・・・
常に全力で業務を遂行できる社員を育成します。
常に準備を怠ることなく、チャンス(機会)を確実に捉えることができる企業になります。
(2)障害者雇用の経緯
平成17(2005)年に軽度の身体障害のある人を業務部門で採用したのが当社における最初の障害者雇用である。これを期に翌平成18(2006)年から本格的に障害者雇用への取組を始めた。幸い、長年勤務している社員の高齢化対策として流通加工事業への取組を開始していたため、ラベル貼りや袋詰めなどの軽作業を知的障害や精神障害のある人に従事してもらうことが可能となった。
平成18(2006)年2月に障害者就業・生活支援センターから推薦を受けて知的障害のある人、精神障害のある人をそれぞれ1名ずつ採用した(精神障害のある人は残念ながら体調を崩し、約1年で退職)。
さらには平成20(2008)年には特別支援学校より知的障害のある人を2名、平成21(2009)年には障害者就労支援機関より精神障害のある人を2名採用し、現在の障害者雇用数は5名である。
2. 取組の内容と効果
(1)継続就労可能な体制整備
障害者雇用の取組を開始した当初は障害特性の理解不足により、個人に適した対応ができず、その結果、障害のある人同士のトラブルやパート従業員とのトラブルにつながっていた。
こうした問題に直面し、解決策の一つとして第2号職場適応援助者養成研修を幹部社員3名が受講したことにより、障害に対する基本的な考えや知識、支援方法などが深まった。また障害のある人に対する共通の認識を持つことができるようになり、日々直面する問題や課題に対して温度差なく対応できるようになった。
また、作業中に障害のある人がてんかん発作で倒れた時、救急車が到着するまで従業員が誰一人として適切な処置ができなかったという反省から、全従業員が普通救命講習を受講した。受講以降もてんかん発作で年に数回倒れる時があるが、迅速かつ適切な処置を行っている。また、余談ではあるが幹部社員が心筋梗塞で倒れ、心停止を起こしたが、初期対応を迅速に行ったため後遺症もなく、無事に社会復帰を果たしている。
(2)作業マニュアルの見直し
当時使用していた作業マニュアルは文字ばかりで作成されており、特に知的障害のある人には読みづらく大変難しい内容であった。そのため、まず目で見て理解ができるように文字数を極端に減らし、写真や図を多用したマニュアルづくりを行った。
この見直しにより障害のある人が業務の手順や作業方法について、見易くまた理解が深まったことはもちろんのこと、配置転換や新規採用、実習生への指導、さらには取引先や顧客へ業務説明を行う際など従来の作業マニュアルに比べて、幅広く活用している。
(3)個人面談の実施
障害のある人にも業務日報を毎日記入してもらっている。この業務日報は日々の業務報告はもちろんのこと、自分の体調面やその日に感じたことなども記入する。
その業務日報の内容から仕事面や人間関係の悩み、気持ちの変化、あるいは普段接している態度や表情を読み取りながら、個人面談を定期的に実施している。個人面談では仕事に対する評価も同時に行うことで本人のモチベーションアップにもつなげている。
(4)体験実習の受け入れ
障害者の就労支援機関や特別支援学校等、さまざまな機関から積極的に体験実習の受け入れを行っている。総数は障害者雇用の取組の開始以降、7年間で約100名である。実習の門戸を広げることにより、これから就職を考える障害のある人には、企業の雰囲気を肌で感じ取り、また、この業界を希望している人には、その業務内容や仕事に対するイメージを持っていただくことができ、今後の就職活動に役立てられるのではないかと考えている。
また、実習生への業務指導を障害のある社員に一任する日を設けている。先輩としてあるいはリーダーという立場で、作業を教えることにより、仕事に対して今まで以上に責任感と達成感を持って取り組むようになった。
(5)支援機関との連携
障害のある人の安定した就労を図る上では、やはり就労支援機関との連携は必要不可欠である。
就労支援機関には、定期的な職場訪問を依頼している。毎日接している社員では見落としている可能性のある本人のマイナス面の変化に関する助言、あるいは本人との面談も依頼し会社には話すことができない悩みなどを聞き出してもらっている。何か問題に直面した時は社内で解決する努力はしているが、支援機関と連携することによって迅速に対応することができ、問題解決につなげている。
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3. 働く人の声
(1)精神障害のあるAさん
Aさんは就労支援機関からの入社で、5年が経過しようとしている。
勤務時間や日数については、Aさんの体調や支援機関・家族と相談しながら少しずつ増やしてきた。
【Aさんのコメント】
Q:入社してまもなく5年ですが、仕事は順調ですか?
Aさん
「自分なりには一生懸命頑張っています。最初は会社に配慮してもらって月・水・金の午前中のみの勤務でしたが、少しずつ仕事や環境にも慣れて今は1日7時間で週4日勤務ができるようになりました。」
Q:現在52歳ですが、仕事はしんどくないですか?
Aさん
「トラックから荷物を降ろして、仕分けをする時はケース数が多いとさすがに体にこたえます。でも、まわりのメンバーと声かけをしながら協力して行いますし、全てのケースを仕分け終わった時の達成感は何とも言えないです。」
Q:今後の目標は何かありますか?
Aさん
「60歳までは働きたいです。体力を維持するためにも水泳にも通っていますし、まだまだ現役でいたいし、これから年齢を重ねても会社から必要だと言われるように頑張りたいです。」
(2)知的障害のあるBさん
Bさんは特別支援学校からの入社で、6年が経過しようとしている。
今ではリーダー的存在に成長している。
【Bさんのコメント】
Q:支援学校から入社した当初、不安なことはありましたか?
Bさん
「やっぱり僕はてんかん発作があるので不安でした。でも、倒れた時にまわりの人が助けてくれたので嬉しかったです。」
Q:支援学校や支援機関などからたくさんの実習生が来ていますが、Bさんが教えたりするのですか?
Bさん
「はい。最初はどうやって教えたらいいかわからなかったけど、何度も教えるうちにコツをつかんできました。実習生が僕の教えた方法でうまく仕事をしてくれる時は僕も一緒に喜んでいます。」
Q:今後の目標はありますか?
Bさん
「これからも色々な仕事ができるように頑張りたいです。パソコンの勉強も頑張って会社の伝票の仕事にもチャレンジしたいです。」
4. 今後の展望と課題
障害者雇用が進んでいない時期の社員は、日々の業務の焦り、余裕の無さから自己中心的に行動してしまう者がいたが、障害のある人と共に働くことにより周りに気を配る余裕が持てるようになった。その結果、業務上のミスや事故が減少した。また、幹部社員が障害のある人を育てる意識をより強く持つようになり、全体的に障害に対する理解が深まった。
一方で障害者雇用を今後も推進していくうえでも、また現在勤務している障害のある人が年齢を重ね、体力的に現在の入出荷作業が困難になる時期に備えて、ラベル貼りや箱詰め等の業務の他に、軽作業等のさらなる仕事量の確保が必要である。
常に「適材適所」を意識して業務の洗い出しを行い、配置転換等によって本人のスキルとモチベーションのアップにつなげようとしている。
「必要な戦力・存在である」ということを感じてもらいながら、さらなる飛躍を期待したい。
執筆者: | 社会福祉法人大阪市障害者福祉・スポーツ協会 大阪市職業リハビリテーションセンター 主任 勝股 聖一 |
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