特別支援学校を軸とした障害者雇用の取り組み
- 事業所名
- 日本エアリネン株式会社 西宮工場
- 所在地
- 兵庫県西宮市
- 事業内容
- ドライクリーニング業及びランドリー業、リネンサプライ業等
- 従業員数
- 129名(西宮工場)
- うち障害者数
- 13名 (西宮工場)
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚・言語障害 肢体不自由 内部障害 知的障害 13 仕分け、機械投入、仕上げ 精神障害 発達障害 高次脳機能障害 難病等その他の障害 - 目次
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1. 事業所の概要
昭和29(1954)年 | 東京都大田区に「有限会社白バラクリーニング商会」設立 |
昭和58(1983)年 | 有限会社を株式会社に組織変更、商号を「株式会社大阪白バラ」に変更、本社所在地を大阪府茨木市に移転 |
昭和59(1984)年 | 兵庫県西宮市(現在地)に用地を確保、鉄道リネンサービス株式会社の技術及び要員の協力を得て新工場の建設着工 |
昭和60(1985)年 | 新工場完成により移転、操業開始 |
昭和61(1986)年 | 商号を「株式会社全日空リネンサプライ関西」に変更、同時に本店所在地を兵庫県西宮市に移転 |
平成元(1989)年 | 鉄道リネンサービス株式会社が経営引受 |
平成2(1990)年 | 商号「株式会社全日空リネンサプライ関西」を「日本エアリネン株式会社」に変更 |
日本エアリネン株式会社の前身である有限会社白バラクリーニング商会の創業は、昭和29(1954)年までさかのぼる。創業当初は全日空関係のドライクリーニング、リネンサプライ業を行っていたが、平成元年に関連会社である鉄道リネンサービス株式会社が経営を引き受けたことを契機に、日本エアリネン株式会社が誕生した。
現在は各航空会社やホテルで使用するシーツやタオルなど、リネン品のドライクリーニングを中心とした業務を行っている。
2. 特別支援学校との連携
(1)特別支援学校との出会い
平成元(1989)年に経営を引き受けた際、継承された従業員のうち、知的障害のある従業員は5名在職していた。日本エアリネン株式会社として障害者雇用を進め始めたのはそれから7年後の平成8(1996)年となる。
受け入れのきっかけとなったのは、平成8(1996)年当時、兵庫県下に新設された特別支援学校の先生が、卒業生の就職先の開拓として訪れたことであった。この特別支援学校は「職業自立」を目指す高等部のみの学校で、就職に向けた準備を熱心に行っている学校である。
先生の訪問を受け、まずは学校にどのような生徒がいるかを確認するため、見学を行うことにした。当初考えていた以上に生徒たちが職業自立の準備をしっかりと行っており、また熱心に指導を行う先生を見て、これなら業務に順応できるのではないかと考え、まずは実習の受け入れを行うことに決めた。
(2)実習の取組と効果
当初は1名のみの受け入れを予定していたが、2名いた方がお互い安心であろうとの配慮から2名の受け入れを決めた。初回の実習は1回2週間の計4回行った。実習中には先生のサポートもあり、熱心に実習を行う生徒の姿を見て、これなら十分に会社の戦力になるだろうと思い採用を決めた。この2人は実習後、ハローワークを経由して平成9(1997)年に特別支援学校卒業第一期生として入社することとなった。
その後も特別支援学校の推薦を受けた生徒の職場実習を積極的に行った。現在は夏休み・9月・11月に職場実習を行っている。採用計画とマッチングすれば順次実習後に採用し、平成9(1997)年から平成24(2012)年までの16年間で12名を雇用した。
採用の見極めについては、一つ目に「人の話がよく聞ける」「挨拶がきちんとできる」などの基本的なコミュニケーションがとれること、二つ目に「基本的な作業(仕分け)をこなせる」「フルタイムで働ける体力がある」などの作業面をポイントとした。
実習中に会社の求める人物であるかをじっくり見極める時間が取れるため、その後の職場定着率も高い。現在就労している13名の勤続年数の内訳は、1年が1名、5~9年が7名、16年が2名、24年が3名と並ぶ。
障害のある従業員は職場実習を通じて採用されているので、特別支援学校と関わりを長く持つことで、業務に適した人物像などのニーズを共有していった。また、実習時の現場同行や就職した卒業生の様子を確認しに年に数回先生による職場への訪問があるため、現在の職場情報や学校情報も共有することができた。
障害のある従業員にとっても、実習で母校の後輩たちがやってくると先輩としての立場からか身が引き締まり、実習生に対し面倒見よく接している。実習生が雇用された際にも、後輩たちの手本になるように責任感を持って仕事に取組んでいる。
また実習にきた生徒たちも、卒業後、職業人として働く先輩たちの姿を見ることで、将来の目標とすることができる。実習後実際に入社した場合も、先輩を敬う気持ちがあるため、お互いに秩序ある職場を形成することができた。
3. 障害者雇用の取組
(1)業務内容
- 仕分け
はじめに各取引先企業から引き上げられてきた使用済のリネン品(シーツ・タオルなど)の袋が入ったワゴンを所定の保管位置に並べる。次に袋の中のリネン品のうち、汚れ・裂けなどの状態がひどいものや混ざりこんだ異物の除去などの仕分けを行う。実習の際には、まずこの基本業務ができるかどうかの見分けを行う。初めのうちは1対1で指導を行い、実際の作業方法を示すなど、わからないことがあればすぐに聞けるよう細やかなサポートを行った。この仕分けの業務が順調にできるようになると、適性を見ながら各部署に配置を行う。
- 投入
次の工程で障害のある従業員が配置されているのは、機械を使いリネン品を大型洗濯機へ投入していく業務である。
ここでは洗濯の順番が記載された指示書に基づいて、仕分けが済んだワゴンを機械のそばまで移動させ、大型洗濯機につながるシューターへ向かう筒状のバッグに投入していく。
バッグは一定時間で移動するようになっているため、次のバッグがくるまでにリネン品を投入しなくてはならず、手際よく動くことが必要になる。そのため、すぐに指示書のワゴンを見つけることができるよう、取引企業ごとに色でわけた目印の紐を、ワゴンの見えやすい位置に目印としてつける工夫を行っている。
また種類によって、投入量などが異なるため、機械操作盤の目の前に見やすいように色などで整理された作業表を貼ることで注意を促している。
- 仕上げ
大型の洗濯機で洗い上げられたリネン品は、乾燥を経てたたみを行う機械があるフロアまで自動的に流れてくる。この出口の部分にも障害のある従業員が配置されている。
洗濯されたリネン品は次々と運ばれてくるため、リネン品の固まりを抱えながら大きさなどの種別ごとに、たたみを行う機械にリネン品の投入を行う従業員が作業できるよう仕分けを行っている。
(2)PDCA活動
日本エアリネン株式会社では、毎月1回PDCA活動(Plan(計画)→Do(実施・実行)→Check(点検・評価)→Act(処置・改善)の4段階を繰り返すことにより業務を継続的に改善すること)を行い、業務改善に努めている。この活動は障害の有無を問わず、全ての従業員が一丸となって取組んでいる。
各々が担当する職場ごとにチームを組み、改善分析シートに課題と改善案を記入し提出することになっている。改善分析シートは現場(どこに)、現物(なにが)、現状(どうなっている)、問題(どう困る)、原因(なぜ)、対策(どうする)を記載する箇所がある。また課題分析の分類として、作業性、見える化、コストなどの項目があり、記入した問題点がどの分類にあてはまるかチェックを行う。最も優秀な改善案を出した者に対しては報奨金を出すなどして、従業員のモチベーションを高めている。
障害のある従業員からの提案も出ており、例えば業務量が増えた時にワゴンの置き場所が少なくなり、このままでは他部署にも迷惑をかけてしまうと改善分析シートに書き出した際には、ワゴン整理を行ってスペースを作るよう、朝礼で全体に伝えるといったフォローをとることができた。
このPDCA活動は一般的な業務マネジメントの手法であるが、障害のある従業員にとって、言葉では伝えにくいことを定期的に整理して伝えることができるため、コミュニケーションが不得手でも、自身が抱えている仕事を行う上での問題を相談できる機会となっている。
また、図や写真などを用いた作業表やラベルを各持ち場に貼りだすなどのわかりやすく注意を促す改善をいたる所で実施している。もともと障害の有無に関わらず、作業効率の向上のために行っている改善が、自然と障害者にとっても理解しやすい作業環境に繋がっている。
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(3)社会的貢献
こうした一連の障害者雇用に係る取り組みが評価され、平成25年度障害者雇用優良事業所高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長努力賞を受賞した。
また平成21(2009)年度より、兵庫県障害者就労応援企業に登録しており、兵庫県のホームページで障害者の雇用・定着を行う企業として紹介されている。
(4)まとめ
日本エアリネン株式会社は、特別支援学校と連携して障害者雇用と定着をノンストップで行うことができた事例である。
現在障害のある従業員の老齢化の課題などもあるが、積極的な社内改善を従業員一丸となって取り組むことで、今後も障害者とともに働くことを実践していくであろう。
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