はじめての障害者雇用 イロハから
- 事業所名
- オノライティング株式会社 神戸本社
- 所在地
- 兵庫県神戸市
- 事業内容
- 電球・照明器具・電設資材の販売及び電球の輸出入
- 従業員数
- 21名(全体27名)
- うち障害者数
- 1名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚・言語障害 肢体不自由 内部障害 知的障害 精神障害 発達障害 1 商品管理課(ピッキング・商品管理) 高次脳機能障害 難病等その他の障害 - 目次
|
1. 事業所の概要
オノライティング株式会社は、オフィス、店舗、大型商業施設、イベントやエンターテインメント、街路樹やモニュメントを彩るイルミネーションに至るまで、あらゆる分野の灯りに関する商品の販売を手掛けるとともに、灯りのスペシャリストとして、一般照明用から都市景観を美しく演出する灯りまであらゆる分野・環境・施設に対応した最適なライティングを自らのネットワークにより提案するソリューション業務を行っている企業である。
【経営理念】
生ある物は、必ず死ぬ
役に立つ仕事をし、
意味ある人生を送ろう
【経営目的】
仕事を通して自分の周りの人間を幸せにする
そして、一人ひとりの社員が、その幸せを、
さらに、周りに影響力を及ぼし、伝わって社会を幸せにする。
2. 障害者雇用の経緯・背景
障害者雇用のきっかけは、小野社長が社会のために何か役に立てることをしたいが何ができるだろうと考えている時、知人から「初めて障害者雇用を行った」という話を聞いたことから始まった。話の内容は「最初は大きく戸惑い、悩みこれまで経験したことが無いことを味わい苦労の連続であったが、少しずつ社員一人ひとりがお互いを助け合い、いたわり合う社内風土が芽生えてきた」という経験談である。小野社長も「我が社でも、障害者を雇用することで地域社会への貢献と社員一人ひとりが業務や指導面の見直しを図り、誇りを持って働ける職場を目指したい」という思いから、本年度中に1名以上の障害者雇用を実施するよう採用担当者に指示を出した。
しかし、指示を受けた採用担当者は、今まで障害者採用の業務を行った経験が無くどう進めていけばいいか分からない状況であり、インターネット等で調べているうちに兵庫障害者職業センター(以下「職業センター」)の存在を知ることに至った。
(1)職業センター訪問
まず社長と担当者は職業センターを訪問し、この度障害者雇用に取り組むことになったが、経験がないため職務内容、募集方法等の雇用全般に係る助言が欲しいと要望した。これまで社長や担当者の障害者雇用のイメージは、車いすの人や聴覚障害の人等といった身体障害者の受け入れであって、スロープや手すり等職場環境の整備を行わないと受け入れが難しいのではと懸念していたが、知的障害、発達障害、精神障害の人であれば、環境の整備はさほど必要とせず各々の障害特性に応じて雇用管理の配慮を行うことで受け入れが可能であるということを知った。
担当職務についても検討するに当たって、職業センターに事業所の業務内容や職場環境を見て助言が欲しいということ及び年内に1名以上の障害者雇用を行いたいことを相談し、職業センターから障害者職業カウンセラー(以下「カウンセラー」)が事業所へ出向き、業務内容や職場環境を確認することとなった。
(2)カウンセラーによる職務分析
障害者にまかせる職務を決めるために、まずカウンセラーからのヒアリングが行われた。ここで、当社としては事業所内での伝票処理等の事務業務もしくは倉庫内での入出庫業務を想定していることを伝えた。このヒアリングに基づきカウンセラーと担当者とでそれぞれの職務内容を分析し、具体的な検討を行った。
まず、事務業務については、事務処理を行いつつ電話対応を同時に行うなどの一定のスキルが求められるなど、知的障害、精神障害、発達障害の人には対応が難しいと考えられるため、大きく職務内容や手順の見直しが必要となる。また、就業場所が事務所の3階となるため、身体障害の人を受け入れる場合には階段の上り降りなどに対応した職場の物理的環境の整備が必要となるなどの問題点が確認された。
一方、倉庫内業務については、まず、次の通り作業内容とその工程を確認した。
- ピッキング作業(発注書の確認→商品棚の確認→商品数の確認及びピッキング)
- 検品・梱包作業(商品確認→梱包作業→出荷準備)
- 商品補充作業(作業棚の確認→在庫補充)
- 入荷作業(商品移動→納品数確認→棚への持ち運び→入荷伝票整理)
各作業内容やその工程を分析してみると、倉庫内作業については、脚立やハンドリフトなどの器具を使用しながらの作業となるので、身体障害の人の場合、対応可能な人が限られる。
また、知的障害、精神障害、発達障害の人にとっては作業内容が幅広く、各作業も複数の工程があるため、実際に従事してもらう作業内容と本人の能力・特性とのマッチングを十分検討することが必要となる。
加えて、就業場所の倉庫内は構造上、暑さ、寒さの影響を受けやすいため、気温差に対応できる人か雇用前に確認することが必要であるなどが問題や検討事項として確認された。
これらの分析結果を踏まえ、倉庫内作業は複数の工程からなりたっているが、①作業手順がルーチン化されていること、②職場環境の改善が必要がないという事業所ニーズにもマッチしていること、③さらに比較的人材が確保しやすいといった点を考慮し、知的障害、精神障害、発達障害の人を倉庫内作業で雇用していくこととした。
|
|
(3)障害者雇用の準備
一方、現場では障害者を雇用することに対し「受け入れ体制が整ってないのに大丈夫なのか」「障害者と接したことがないからどうしていいのか分からない」といった不安の声が上がっていた。
そこで現場の不安を払拭し周囲に理解してもらうために、職業センターのカウンセラーの勧めもあり、当センター主催の発達障害の人の雇用をテーマとした「地域職業リハビリテーション推進フォーラム」に参加した。フォーラムを通じて、発達障害のある人の障害特性、就職に向けた支援制度や採用事例(ハローワークや職業センターなどの連携で採用につながったもの)を知ることができた。
障害者雇用について理解を深めた担当者は、障害者を受け入れることによる会社のメリット、社会貢献度を社内にどんどん発信していき、全社員が障害に対する正しい理解を持ち会社全体で受け入れる体制を整えたいと感じた。収集した情報については随時現場に提供を行うことで現場の不安を和らげた。
次に、他社情報の収集方法、求人活動の方法、各種援護制度についてカウンセラーより説明をうけ、発達障害の人に関する具体的イメージを持つため、職業準備支援の作業風景の見学を行った。その結果、まず職業センター登録者から1名職場実習を受け入れて障害者雇用の体験を行うこととなった。その際、職業センター内のトレーニングでピッキング作業を得意とし、正確さが高かったAさんの紹介を、求職登録しているハローワークを通じて受けた。
【スケジュール】
- 2週間の職場実習の受け入れを行い事業所の現場担当者がAさんに業務内容を説明
- 雇用条件の設定(勤務時間、賃金等)
- 面談
- 実際の雇用に向けて業務や職場環境をカウンセラーが分析、必要に応じて提案
当初は上記内容のスケジュールであったが、Aさんにとって非常に働きやすい環境であり、また事業主側が求めていた業務内容を双方が確認し雇用へつながった。
(4)入社してくれてありがとう
当事業所では社内で「ありがとうカード」を贈呈している。これは普段、仕事や生活の中でなかなか感謝の気持ちを伝える機会が無いため、社内に複写式の5センチ四方のカードを置き、感謝を伝えたい人にメッセージを書き朝礼の際、カードを渡している。小野社長はこの「ありがとうカード」に「入社してくれてありがとう」と記載し、感謝の気持ちをAさんへ贈呈した。
3. 雇用を開始してから約1ヶ月が経過して
今回取材を行ったのはAさんが入社して1ヶ月経過する頃であった。Aさんも徐々に業務に慣れてきたようで、入社直後よりもピッキング作業も早くかつ正確に行うことができるようになった。困ったことがあると近くの人に「今、少しお時間よろしいですか?」とまず声をかけ、今質問していいかを確認してから尋ねることで不安を解消することができるようになった。梱包作業においては、当初は小さい梱包ばかりであったが、大きい箱の梱包もチャレンジできるまで成長しているという。
|
(1)現場からの課題と今後について
発達障害の人は自分の考えを伝え、表現することが苦手で特に電話はそれに該当する。荷受作業の時に担当者へ電話連絡する際、言いたいことがうまく伝えられず電話の相手先から再度確認の電話を受けることがある。その場合は周囲が理解し、スタッフがフォローに入る必要がある。
荷受作業においては、処理を終えて商品が乗っていないパレットの片づけができておらず、何度か作業中に指摘したが忘れることがあった。Aさんは、いったん入った情報を変更しにくく、また突発的に指示を受けたり、周囲に音があると話の内容を理解しにくい特性があるため、落ち着いた状況の時に、作業項目の中にパレットの片づけを追加するよう丁寧に説明することで解決を図った。
今後、検品作業も行ってもらおうと思っているが、ピッキングと異なり動く範囲も狭く、ある意味単純作業となる上、Aさん自身も単純作業は苦手と言っている。しかし、これも同様に検品作業の意味、重要性をきちんと説明して理解をすれば十分に任せることができると考えている。
作業スピードについても上がってきており、さらにできることも増えてきている。今後は検品作業も含め商品管理の全ての作業をできるようになってもらい、誰よりも商品管理の作業をこなせるようになってほしいと期待をしている。
(2)まとめ
今回の取材では、当社の社員は皆、非常に元気がありさわやかな挨拶で受け入れてくれ気持ちよく取材を行うことができた。
これは冒頭に挙げた小野社長の「障害者を雇用することで自分の業務・指導を見直し、人のために役立つことを会社でできる」という思いに繋がっており、なによりもこの雰囲気がAさんにとっても働きやすい環境となっているのではないかと感じられた。今回をきっかけに当社のさらなる障害者雇用の取組は進むものと期待ができる。
皆さまのお役に立てるホームページにしたいと考えていますので、アンケートへのご協力をお願いします。
なお、事例掲載企業、執筆者等へのお問い合わせや、事例掲載企業の採用情報に関するご質問をいただいても回答できませんので、あらかじめご了承ください。
※アンケートページは、外部サービスとしてユミルリンク株式会社提供のCuenote(R)を使用しております。