障害の特性に合わせ、障害者雇用者の職場現場の提供を基本とする
- 事業所名
- 和歌山警備保障株式会社
- 所在地
- 和歌山県和歌山市
- 事業内容
- ・総合警備保障業務
・消防設備、電気・空調設備等の管理及び保守
・電気・電子通信機器、防犯・防災機器の販売 - 従業員数
- 372名
- うち障害者数
- 13名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚・言語障害 2 1名 営業 1名 施設警備(常駐) 肢体不自由 8 施設警備(常駐) 現場警備(常駐) 内部障害 3 施設警備(常駐) 知的障害 精神障害 発達障害 高次脳機能障害 難病等その他の障害 - 目次
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1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯・背景
(1)事業所の概要
- 事業所の経歴
昭和45(1970)年3月18日和歌山県和歌山市において、総合警備業務を開始。その後、営業所3か所(田辺営業所・新宮営業所・尾鷲営業所)、出張所2か所(御坊出張所・串本出張所)を開設し、21か所の待機所(岩出待機所等)を常備する。
- 主な事業内容
- 総合警備保障業務
- 消防設備、電気・空調設備等の管理、保守、電気・電子通信機器及び防犯・防災機器の販売
その他各種の関連業務を展開し、顧客のベストな「安全」と「サービス」の提供のため、さらに業務内容向上を追求している。
(2)障害者雇用の経緯・背景
- 障害者雇用までの経緯
当社では、全体の従業員数のなかで、1割が事務職であり、残りの9割が現場での警備業務に従事することになる。よって、基本的には警備に関係する諸法令により、身体障害者が障害者雇用のほぼ全体を占める現状になっている。採用は、ハローワークを通じて求人募集し、警備業務を前提に採用を決定している。
社内全体会議等の場で各営業所長には、面接に当たって障害者であると判明した場合でも、本人のやる気が感じられれば、個々の障害の程度を考慮し現場紹介する等の配慮を行っていくようお願いしている。例えば、心臓疾患の障害者であれば、夜勤をできるだけ避けた業務に就くことができるような職場配置、また現場での作業で下肢障害者の脚立の使用要否等々、細かな指示を出すなど、きめ細かに現場の実情に合わせた配慮を行い、障害者の雇用の「場」の提供を心がけている。そうした結果が、現在の高い障害者雇用率に表れており、当社が創業以来現在に至るまでに障害者雇用の大きな流れを形作ってきた「軌跡」を見ることができる。
(3)事業所としての姿勢
当社では、毎月一回の全体会議が行われており、その会議では障害者雇用の積極的な推進を押し進めるため、当社のトップダウンの明確な指示により、障害者雇用に関する情報交換を頻繁にかつ積極的に行っている。
また、日常的には定期的な巡察を行い、問題点等が無いか確認を常に行っている。
当社では、上記の全体会議と定期的な職場の巡察をもって、障害者がより適切な職場環境が得られるよう、常に配慮を行う姿勢を保っている。実例として、通院が必要な場合は、平日に休める常駐警備(交代勤務)などを配慮する等のことを行っている。こうした配慮が可能なのは、当社が、昭和45(1970)年3月の創業以来、信頼を勝ち得た多くの主要契約先があるためであり、その現場での職場環境特性を考慮した適切な配置が、障害者が無理なく働き続けることができる結果になっている。また、そのことが、障害者が安心して仕事に打ち込むことができ、それがさらに主要契約先の信頼度を増すという好循環を生み出している。
なお、トップの「障害者雇用は社会全体で取り組むもの」との考えで、障害者雇用納付金制度の障害者雇用調整金の受給は辞退するなど障害者雇用に対する理解は深く、このような取組に対し、平成25(2013)年度障害者雇用優良事業所として独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長努力賞を授賞されている。
2. 取組の内容
(1)障害者の配置状況
障害者 | 人数 | 職種 |
---|---|---|
身体障害(上肢・下肢) | 8 | 現場警備(交通・イベント)、施設警備(常駐) |
身体障害(内部・聴覚) | 5 | 施設警備(常駐)・営業 |
勤務形態は「65歳」まではフルタイム勤務、「65歳」以降は短時間勤務を基本とするが、それぞれの障害の程度、本人の希望により就労時間を決定している。13名のうち、下記の3人の業務内容等について紹介する。
- Aさん(身体障害(聴覚))
勤続年数 8年 年齢 30歳 職種 営業 勤務形態 8:30~17:30 Aさんは、勤続8年目で、営業を担当しており、顧客の開拓を行っている。会話は補聴器を使用していることもあり、また、相手の口元を読み取る訓練もしているので、普通に会話ができるよう不断の努力をされている。
勤務時間は8:30~17:30(休憩時間1時間)の8時間のフルタイム勤務になっている。営業関係であるので、普通自動車運転免許証を取得している。
また、周りの人たちは、難聴であることを知っているので、できるだけ大きな声で会話をするように協力してもらっている。現在では、勤続8年間の勤務経験を有し、営業部営業課の主任として、営業の中心として日々活躍している。
- Bさん(身体障害(聴覚))
勤続年数 6年 年齢 66歳 職種 施設警備(常駐) 勤務形態 7:00~16:00(シフト勤務) 66歳の高齢者であるが、警備業に従事する人は一般的に高齢の人が多く、Bさんも61歳以降において採用された人である。
年金をもらいながら働くというパターンの人が多く、Bさんも同様に年金をもらいながら60歳以降も働くことを選択し、出勤日には欠勤することなく、元気にやりがいを持って警備業務に精励されている。Bさんの受け持つ警備現場は地元でも大きな病院で、毎日多くの外来患者等が来院する。この病院には3つの大きな駐車場があるので、自動車等で来院される人が多く、駐車場の案内・誘導、病棟への道順案内、また、病院内の巡回警備等、総合的な警備業務を担当し、日々の「安全」を確保するため誇りをもって仕事に当たっている。
勤務時間は、7:00~16:00(休憩時間1時間)の8時間勤務を基本としているが、複数の警備員にて当該業務を担当しているため、他の人との勤務割り表との関係で、勤務時間帯は、その時々の場合により若干違ってくる。
Bさんは、左耳が聞き取りにくいので、右耳で聞く習慣を持っており、普通に会話できるように努力している。
勤続年数は6年にて警備業務にも慣れ、また、月あたり出勤日数は16日にて、日々毎日を楽しみながら無理なく働き続けることができている。
- Cさん(身体障害(上肢))
勤続年数 10年 年齢 68歳 職種 交通警備 勤務形態 10:00~16:00(短時間勤務) 68歳の高齢者である。勤務時間は、10:00~16:00(休憩時間30分)の5時間30分の短時間勤務にて就労している。担当は交通警備にて、地元和歌山の競輪場に来場する人の自動車の誘導、また、近隣の迷惑駐車の監視等が主な業務内容になっている。当社からは、16名の警備員を派遣しており、Cさんは当社の当該現場での責任者補佐という立場で、その重責にあたっている。勤続年数も10年に達しており、当該交通警備業務に精通しているため、また、責任者の補佐の立場で同じ働く仲間の信頼も厚いものがある。68歳の高齢ではあるが、日々元気に明るく、働くことにやりがいをもって何事にも積極的にあたっている。時には自転車に乗って、近隣の迷惑駐車が無いかを確認するため、近隣周辺を元気に走り回っている。
Cさんは、いつまでも元気に働き続けることができるように、自ら、自己管理や食事には気をつけており、同じ働く仲間を勇気づけている。
(2)就業以外のフォロー
毎月1回開催される全体会議では、障害者雇用についての諸法令や知識の習得に努めており、障害者雇用に関してはそれぞれの営業拠点の責任者が常に意識のなかにあり、障害者の職場環境や障害の程度と就労との関係について気を配っており、障害者雇用に関する情報交換を常に行っている。
当社の障害者雇用の特徴としては、採用に当たってはハローワークを通じて求人募集を行っており、特に障害者雇用を前提にしての採用ではない。採用に関しては障害者や高齢者ということを意識せずに、本人の働く「意欲」と警備業務に向いている「素質」の2点を検討して採用決定に至っている。
採用した後、障害のある人についてはその障害の状態に応じて対応できる警備現場を決めている。
基本的には、障害者でも必ず適切な警備現場があるとの考え方が背景にあり、そのことが各営業拠点の責任者の労務管理の根底をなしている。
よって、当社の障害者は、障害に応じて適正配置された警備現場において自分の持てる「能力」を遺憾無く発揮することができている。
3. 障害者の処遇、今後の課題と展望
(1)障害者の処遇
当社は、基本的には「65歳」(継続雇用制度の上限年齢)まではフルタイム勤務を就業時間と定めている。また、「65歳」以降においては短時間勤務や短日数勤務が一般的となっている。
警備業界は全体的に年齢の高い人が多く、年金をもらいながら働くという形を選択する人が多いこと、また、加齢による体力の低下によるフルタイム勤務が厳しいことの理由による。
よって、障害者で高齢者でもある人が圧倒的に多い当社では、障害者の処遇も「65歳」を境に、2つの就労パターンとなるケースが多い。「65歳」以降において、1日8時間勤務の人は、2日出勤して2日休日とする、月あたり16日出勤となっており、「65歳」以降においても、障害を持っていても、無理なく元気に働き続ける、就労環境を提供している。
(2)今後の課題と展望
当社では、身体障害者が障害のある雇用者の大部分を占めているため、今まで多くの身体障害者の特性や就労に際しての工夫やノウハウを蓄積している。
全体会議において、トップダウンにより障害者の積極的な採用方針を指示されてから、創業以来40数年が経過して、現在、多くの契約先との警備業務を展開している。
採用後、また、採用時において障害者であっても就労を継続することができる情報(ノウハウ)を持っており、現在ある多くの警備現場でもって障害者の障害の程度や特性、また、本人の資質等を勘案して就労を継続し得る職場を提供することが可能になってきている。
今後とも従来の方針を堅持し、障害者も警備業務を通じて地域の「安全」「安心」に貢献できることを障害者自ら感じ取ってほしいと考えている。
そのサポートを地道に継続して行っていくことが当社に課せられた「課題」であると認識し、社会貢献のひとつとしていきたい。
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