忠恕の配慮 共に働く職場を目指して
- 事業所名
- 両備ホールディングス株式会社
- 所在地
- 岡山県岡山市
- 事業内容
- 運輸観光事業(旅客事業、貨物運送業 他)
生活関連事業(不動産事業、ストア事業、整備事業 他) - 従業員数
- 2,400名
- うち障害者数
- 26名
障害 人数 従事業務 視覚・言語障害 聴覚障害 肢体不自由 10 構内作業、バス運転職 他 内部障害 5 事務職、タクシー乗務社員 他 知的障害 5 ストア部門での調理や品出し 他 精神障害 6 野菜工場での野菜の栽培
ボウリング場での接客 他高次脳機能障害 難病、その他 - 目次
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1. 会社概要と障害者雇用の経緯
当社は両備グループの運輸交通部門の中核会社で、両備バス株式会社と両備運輸株式会社を統合し、平成19年4月1日に設立した。平成22年に創業100周年を迎え、バス事業、タクシー事業、物流事業、不動産事業、ストア事業、車両整備事業等々、多角的に事業を展開している。岡山県南を中心に全国に拠点を持ち、現在首都圏や海外への進出を進めている。
「忠恕(ちゅうじょ)=真心からの思いやり」の経営理念のもと、社員一人ひとりが思いやりの気持ちを持ち、日々仕事に取り組んでいる。
また、当社は「社会正義」を経営方針として掲げており、社業を通じ世の中にお役立ちしていくことで会社の継続的存続があると考えている。これまで障害者雇用についても、社会正義の一環と捉え取り組んできた。
障害者雇用を進めていく上で、まず問題となったのが「障害者にどこで働いてもらうか」ということである。上記のように、当社の事業内容は多岐にわたる。交通運輸業を中心としている当社の従業員の多くは運転職であるが、運転職は免許と経験が求められることから、まずはストア部門で働いてもらう環境を提供することとなった。
2. 雇用事例1【両備ストアにおける障害者雇用】
両備ストアは、岡山県内に12店舗を構えるスーパーマーケットで、現在当社で雇用する障害者26名のうち12名の障害者が勤務している。ここでの障害者雇用の事例を紹介する。
ストア部門での仕事の内容は、バックヤードでの作業や調理、品出し等である。
採用の方法としては、ハローワーク主催の面接会等を通じて行い、入社した後にジョブコーチ支援を利用したこともある。ジョブコーチ支援では、入社した障害者のフォローを中心に店舗責任者へ障害者雇用に関するアドバイスもしてもらえたので大変有り難かった。
現在、各店舗の責任者に向けての指導として、指示は「できるだけ単純明快に小分けに出すように」と伝えている。12名の障害者の内5名は知的障害者で、過去知的障害者に対して一度に多くの指示を出し気が動転したという事例もある為、指導の方法については特に注意をしている。また、障害のない従業員が差別的な発言や態度をとらないよう正しく障害について理解してもらう為、あらかじめ説明した上で注意を促している。
現在勤務している障害者は、集中力があり比較的単純な仕事であれば障害のない従業員より優れている部分が多い。皆さん真面目に勤務しており助かっている。
現状の問題点としては、接客においてのトラブルである。お客様は、障害者に対しても障害のない従業員と同じ当社の社員の一人として評価する。したがって、従業員としての社員教育を行った上で、仕事の分担については障害者一人ひとりの適性等を判断しながら行っている。
今後の課題としては、担当業務の確保である。一概に障害者といっても障害の程度や適性は個々に違うが、上記でも記載した通り、比較的単純な作業において能力を発揮する人が多い。現在勤務している障害者については、比較的単純な仕事を任せているが、今後障害者雇用を拡大する上では、判断を伴う仕事へも対応してもらう必要がある。その為に、今後は業務や支援の方法等を工夫し雇用拡大に努めたい。(両備ストアカンパニー 角南)
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3. 雇用事例2【京山ソーラーグリーンパークにおける障害者雇用】
京山ソーラーグリーンパークでは、太陽光発電によって発電したエネルギーを利用し、室内で野菜の水耕栽培を行っている。ここでの障害者雇用の事例を紹介する。
まず、障害者が就労をするにあたっての問題点や求人方法等についての摺合せを行う為、岡山障害者職業センター、ハローワークの担当者に職場を訪問してもらった。そこで就労する上での問題点として大きく挙げられたのが以下の二つであった。
【就労する上での問題点】
- 事業所が山の上にある為、通勤が困難であること。
- 野菜の栽培や収穫作業において脚立を使用すること。
【問題点に対する留意点】
このことに対する策として以下の点に留意した。
- 通勤が困難な場合には最寄りのバス停まで送迎をすること。
- 障害の特性に応じて仕事の内容は相談に応じること。
また、就労時間についても相談に応じることとし、応募者の希望を聞きながら勤務を決める方法で求人を行った。
求人方法としては、ハローワークでの募集に加え関係機関等への呼びかけ(岡山障害者職業センター、スペシャルオリンピックス)、障害者合同企業面接会(岡山県障害者就職支援事業)での募集を行うことが決まった。
障害者合同企業面接会(注)は、岡山県障害者就職支援事業の一環で、岡山県が委託した民間企業による研修を6か月間(1か月に1回)を受けられる。また、6か月間の人件費についても助成を受けることができる。この面接会へは、現場責任者も同席し、具体的な業務内容等の説明を行った。後日、応募者に事業所に来てもらい、実際の業務を体験してもらった。実際に業務を体験してもらうことで、会社と応募者の双方が仕事に対する適性を判断する機会となった。その結果を踏まえて選考を行い、最終的には精神障害のあるMさんの雇用が決まった。
(注) | 障害者合同企業面接会 岡山県が民間企業に委託して実施した「障害者就職支援事業」の一環として開催された面接会。この面接会で内定した応募者は当該委託先民間企業において6か月間の研修(内定企業による職場体験、当該民間企業でのOffJTによる集合研修(1か月1回))がセットされる。また、内定企業には、同6か月の就業体験に係る研修費用(人件費)について助成措置がある。 |
Mさんは、岡山障害者職業センターからの推薦で農業高校出身ということもあり、野菜の栽培に対して意欲的であった。仕事の内容は、野菜の栽培(種まきから収穫まで)、野菜のカット作業や出荷作業と幅が広い。入社して2ヶ月が経過し、本人の話を聞くと「一日中立ちっぱなしの仕事で、トレーの洗浄作業や小さな種をピンセットで1粒ずつ植えていくのは大変だが、野菜と触れ合うのは楽しい」と話してくれた。今後は、自分のできる仕事を増やしていきたいとのこと。
また、当事業所では身体障害のあるHさんも勤務しており、社歴28年のベテランである。Hさんは、機械のメンテナンス(空調や水質の調整等)を行っており業務知識も豊富である。言語障害の為、相手に物事を伝える際に苦労することもあるが、自分たちの育てた野菜を「美味しい」と言ってくれる瞬間や見学に来た子供たちの楽しそうな顔を見るのが嬉しいと語ってくれた。
二人に共通していえることは、障害者だからといって特別な扱いはしておらず、障害のない従業員と区別はしていない。障害が軽度だからということもあるかもしれないが、事業所において重要な戦力であり、今後の活躍にも大いに期待している。
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4. 今後の課題と展望について
今後の課題としては、「障害者の働ける職場の拡大」が挙げられる。現在働いてもらっている障害者の内、約半数は両備ストアに勤務している。(他の半数の障害者については、会社として積極的に採用を行った人は少なく、入社後に障害があることが分かった人等)障害者雇用の経緯に記載したとおり、まずはストア部門からという考えでこれまで障害者採用を行ってきたが、精神障害や発達障害のある求職者が増えている現在、これまで通りの職務内容や職場だけでは雇用を拡大することは難しい。
そこで、ストア部門以外で働ける環境を提供する為、物流倉庫での構内作業職の採用を進めており、昨年12月にハローワークが主催する就職面接会を通じて1名入社しており、活躍をしている。今後の目標としては、ストア部門や物流倉庫のみならず障害者に様々な現場で活躍してもらえるような環境を整備することである。障害のある従業員と障害のない従業員が共に支えあって仕事ができる環境を作り、障害者一人ひとりの適性に合わせた職場の提供ができるよう努力を続けたい。
創夢本部人事部 鎌田 晴香
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