成長の輪を回し続けよう
- 事業所名
- 南九イリョー株式会社
- 所在地
- 鹿児島県鹿児島市
- 事業内容
- 総合クリーニング業、リネンサプライ業
- 従業員数
- 668名
- うち障害者数
- 46名
障害 人数 従事業務 視覚障害 2 事務・生産 聴覚・言語障害 5 生産・リフォーム 肢体不自由 7 生産 内部障害 2 生産 知的障害 28 生産 精神障害 2 生産 発達障害 高次脳機能障害 難病等その他の障害 - 目次
|
1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
(1)事業所の概要
南九イリョー株式会社は鹿児島市に南九州医療サービス株式会社として資本金200万円で昭和40(1965)年に設立された。事業内容については創業当初は病院向け貸しおむつ事業から取り組み始め、乳幼児の布おむつの洗濯代行を行っていた。その後、熊本・宮崎・福岡さらには鹿児島県内の各地へ支店や営業所を設立し、病院・施設の生活を心地良く過ごしていただくための幅広いメディケアサービス、ハイグレードなリネンで「トータル・アメニティ」をバックアップするホテルリネンサービス、品質と確かな納期のホームクリーニングサービスなどのサービスを中心に確実な事業展開のもと、年々業績を伸ばしている。
また先代社長の熱い思いから障害者雇用にも継続的に力を入れており、このような長きにわたる障害者雇用の取り組みを評価され、平成3(1991)年には障害者の雇用の促進と職業の安定に寄与したとして労働大臣表彰を受賞、平成22(2010)年には独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構(現:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構)より「障害者雇用優良事業所」の表彰も受けている。
なお、平成20(2008)年には指定障害者福祉サービス事業所として、就労移行支援事業・就労継続支援事業B型を行う「株式会社ワークステージつばさ」を設立した。
当社の企業理念は「“もっともっと”をめざします」である。縁あるすべての人々とともに生きてきて良かったと思い・思われ、感謝し・感謝される幸せというものを“成長の輪”を回し続けることによって達成していこうというものである。
この企業理念を達成するために回し続けていこうとする“成長の輪”は5つの行動指針から成り立っている。第一は「品格」を高める。これは礼節を重んじ、敬意や思いやりを持って謙虚でいようということである。第二は「一丸」となる。仲間との意思疎通・相互理解を深め協調性、責任感を持ち、他人のせいにするということをしないということである。第三は「貢献」できるようになる。情報のアンテナを常に張り巡らせ、創意工夫・改善を図り変化に対応することで問題解決を行うことによって人や社会に貢献するというものである。第四は「信頼」されよう。誠実であり約束を果たし、縁に感謝し、恩に報いることで絶対に裏切ることのないようにしようというものである。最後は「誇り」を持とう。使命感・プロ意識を持つことで存在意義を明確にし、目の前の壁から絶対に逃げないでおこうというものである。当社ではこの5つの“成長の輪”をお互いに共有し、これに沿って考え、判断し行動している。
(2)障害者雇用の経緯
障害者雇用に至った経緯は事業所概要でも簡単に述べたが、先代社長の熱い思いのそれに尽きる。先代社長のご家族に障害者がいる環境での生活が、障害者の働く場を設けたいとの思いを自然に沸き起こさせたとのことである。また、次のようなお話を池田事業本部副本部長から頂いた。
「以前雇用していた障害者夫婦が給料を少しずつ貯金し、マンションを買われて、その夫婦からの『ありがとうございます』とのお礼の言葉に先代社長は大変喜ばれ、障害のある人達とまずは接していたい、関わり合いを持ちたいと思うようになったそうです。指定障害者福祉サービス事業所『株式会社ワークステージつばさ』もそのような流れからでき上がったものなのです。」
この話を伺って、当社においては障害者を雇用している・雇用しなければならないという認識ではなく、障害者も障害のない者同様自然に受け入れられていることなのだと感じた。
2. 取組の内容
今回、障害者雇用の取組を伺う上で、当社姶良工場を訪問した。こちらでは従業員133名で、障害者4名(全員知的障害:重度1名、軽度3名)が勤務している。障害のある人達の従事している作業内容は洗濯の工程の内、洗い物の仕分け、洗い、乾燥、仕上げ等に配置されている。障害のある人達はこのような作業に分担され、一つの作業をこつこつとこなしていく。このように一つの作業に特化するのが強みなのだと池田副本部長は話される。
軽度知的障害者のAさんに話を聞いてみた。Aさんは高校生の時、養育手帳を交付される際に軽度知的障害と判定された人だ。当社に入社した経緯は養護学校高等部3年生の時の職場実習で当社姶良工場を訪れ、その確実で熱心な仕事ぶりから内定を貰いそのまま入社したという。今年で勤続年数5年目に突入するAさんは小物班という機械では処理できない洗い物を手作業で行う業務に主に従事している。
ここではタオルや浴衣を畳む作業(1日合計500枚程)やおしぼり(1日約1000本)を畳み包装する作業がメインだ。タオルや浴衣は依頼されているそれぞれの旅館やホテルによって大きさも違えば畳み方も違う。また1枚1枚に破れがないかシミはついていないかに気を配らせる。おしぼりは包装するときに髪の毛の1本も入らないようにチェックする。工場を出発するトラックの時間の関係もあり、時間内に必ず終わらせなければならない商品もある。Aさんは周りとのコミュニケーションを図りつつ、作業を淡々とこなしていく。また周りの作業工程に気を配り時間内に終わらせることができるように人手が足りない箇所や工程が遅れている箇所には応援に駆けつけたりもするという。
|
|
仕事をする上で気を付けていることがあるか聞いてみた。
「工場内には特殊な大きい機械が無数にあるので、ちょっとした不注意が大けがにつながる。常に緊張感を持って、尚且つ仕事に対して迅速に対応している」と答えてくれた。また、作業をするのは自分だが失敗すれば会社の名誉に関わるので常に丁寧な作業を心掛けているという。
仕事をする上で大変なことがあるか聞いてみた。
間髪を入れずに「大変に思ったことは一度もない」と答えが返ってきた。しかし、少し考えた後に通勤が電車で1時間程度掛かるので朝が早くて寝坊したことがあったことと繁忙時期に仕事が終わって帰りの電車でうとうとしていたら寝過ごしてしまったことをいたずらっぽく笑いながら話してくれた。
仕事をする上での喜びがあるか聞いてみた。
これも間髪入れずに「仕事を続けて来られたことが喜びだ」と答えた。「自分の同級生には別の会社を半年で辞めることとなった人や、1年以上仕事に有りつけない人もいる。自分はこの工場、仲間に巡り合えてこうして毎日充実した日々を送っている。こうした縁に感謝して送る何気ない毎日が喜びだ」と力強く話してくれた。
これから先目指す社員像を聞いてみた。
「こういう社員になりたいという明確なものはないけど、毎日自分のやるべきことを迅速、丁寧に行っていく。それが商品の先にいらっしゃるお客様の為になるのだと心に常に思いながらこれからも仕事をこなしていくのだ」と答えてくれた。
Aさんの話を聞き、工場内を見学させてもらった。実際に工場の中は障害者のための職場改善はハード面においては必要ないほどであり、ソフト面でのサポート体制も従業員同士の声掛け(元気なあいさつや次にこの作業に取り掛かろう等のコミュニケーションの徹底)で意思疎通を深め、強い仲間意識を持つことで役割を明確にし、使命感を持って作業に取り組んでいるように感じた。
障害者の求人方法を池田副本部長に尋ねてみた。現在は養護学校や支援学校からの採用が主でハローワーク等に求人を出すことはないという。また障害者福祉サービス事業を行う「株式会社ワークステージつばさ」からも雇用している旨を話された。
障害者雇用に対して利用した制度や助成金も特に無いという。強いて挙げるなら障害者雇用調整金程度だという。池田副本部長はそう話された後に、次のように締めくくられた。
「トイレやスロープの設置など必要なものは自分たちのお金でやります。障害のない者と同じく、障害者がここにいることは私たちにとって当たり前のことなのです。」
3. 取組の効果・障害者雇用のメリット、今後の展望と課題
(1)取組の効果・障害者雇用のメリット
障害者雇用の障害のない者への波及効果がどのようなものか。池田副本部長は障害のある人のほうが良く働くと答える。障害のない者も見習うことはたくさんある。障害のある人のほうが素直であいさつや作業中の声掛けなど障害のない者からではなく逆に障害のある人のほうから行っている場合も多々あり、これに元気を貰え、誠実さや思いやりの心を持てるようになったと話す障害のない者も数多くいるという。
(2)今後の展望と課題
障害者雇用を継続するためには。
現在の企業には職場環境や人権、労働に対する配慮など社会的責任に重きを置くコーポレートガバナンスの充実が不可欠である。障害者法定雇用率の遵守など企業のコンプライアンスは当然の前提条件となっていくであろう。
縁あるすべての人々とともに生きてきて良かったと思い思われ、感謝し感謝されることが幸せなのだということを心に刻み、「品格」、「一丸」、「貢献」、「信頼」、「誇り」の成長の輪を常に回し続ける。
そう南九イリョー株式会社の企業理念の“もっともっと”をめざすことこそが障害者雇用を継続させていく為の秘訣なのではないかと今回の取材を終えて感じた率直な感想だった。
皆さまのお役に立てるホームページにしたいと考えていますので、アンケートへのご協力をお願いします。
なお、事例掲載企業、執筆者等へのお問い合わせや、事例掲載企業の採用情報に関するご質問をいただいても回答できませんので、あらかじめご了承ください。
※アンケートページは、外部サービスとしてユミルリンク株式会社提供のCuenote(R)を使用しております。