高齢者介護で障害者雇用への取り組み
- 事業所名
- 有限会社ドッグスハンド
- 所在地
- 沖縄県豊見城市
- 事業内容
- 高齢者介護サービス業
- 従業員数
- 56名
- うち障害者数
- 13名
障害 人数 従事業務 視覚障害 2 マッサージ 聴覚・言語障害 肢体不自由 1 施設管理(修繕含む) 内部障害 知的障害 4 介護補助、清掃、配膳下膳 精神障害 6 事務、介護、介護補助、清掃等 発達障害 高次脳機能障害 難病等その他の障害 - 目次
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1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
(1)事業所の概要
有限会社ドッグスハンドは平成15(2003)年8月に設立し、利用者、家族、従業員が相互に助け合い、家庭的な雰囲気の中で人間関係を築く取組をしながら、老人ホーム、通所介護事業、居宅支援事業等の事業を行っており、有料老人ホーム5ヶ所、通所介護事業所2ヶ所、居宅支援事業所1ヶ所を運営している。
平成15(2003)年 8月11日 | 有限会社ドッグスハンド設立(那覇市高良) |
平成15(2003)年 9月 1日 | 有料老人ホームゆいホーム花宜保開所 |
平成15(2003)年10月20日 | 有料老人ホームゆいホーム花小禄開所 |
平成16(2004)年 4月 8日 | 有料老人ホームゆいホーム花渡嘉敷開所 |
平成16(2004)年 6月 1日 | 通所介護事業所ゆいホーム空事業開始 |
平成16(2004)年10月12日 | 有料老人ホームゆいホーム花国場開所 |
平成17(2005)年 6月 2日 | 有料老人ホームゆいホーム花宇栄原 |
平成17(2005)年10月 1日 | 通所介護事業所ゆいホーム空小禄事業開始 |
平成18(2006)年 4月 1日 | 介護予防通所介護事業所 ゆいホーム空小禄開始 |
平成18(2006)年11月17日 | 本社を那覇市字小禄地へ移転 |
平成21(2009)年 7月27日 | 本社所在地を豊見城市字平良へ移転 |
平成25(2013)年 8月 1日 | 居宅支援事業所 縁事業開始 (南風原町兼城) |
(2)障害者雇用の経緯
平成15(2003)年8月、有料老人ホーム等高齢者介護サービス事業を経営する会社設立当初から公共職業安定所の紹介により、精神障害者3名を雇用した。採用に当たって公共職業安定所職員による障害者雇用に係る留意点の学習会を全職員を対象に行うとともにジョブコーチの支援も利用した。その後、事業拡張に伴い身体・知的・精神障害者雇用を推進した。
障害者雇用に至った理由は下記のとおり。
- 高齢者介護業務は多岐にわたり、かつ多くの人手を要する。中には、掃除、洗濯、配膳下膳、送迎車両の運転等専門知識を有さなくとも可能な業務があり、利用者の個別ニーズに対応し、サービスの質を向上させるために人員配置基準を超えて障害者雇用を開始した。
- 障害者の特性である、ゆったりとした言動、穏やかな表情、やさしげな笑顔等が認知症高齢者等から好感をもたれるのではないかと考えた。
- それぞれの障害者が獲得している特技、趣味、嗜好等を活用し、業務範囲を限定し、繰り返し訓練することにより、十分戦力になると判断した。
2. 取組の内容
(1)雇用支援機関との連携
採用については公共職業安定所への求人申込を行うと共に、ジョブコーチの支援、トライアル雇用制度を活用している。
また、沖縄障害者職業センターとの連携で、本人を含めてカンファレンスを行い、ジョブコーチ支援計画に基づき支援している。問題等が生じた場合は、障害者職業センター、主治医等との意見交換を行い、支援計画の見直しを行っている。
(2)障害者の従事業務
- 視覚障害者
マッサージの専門職(あんまマッサージ師、指圧師の資格所持者)として1日6時間、週4日通所介護事業所に勤務(2名)
- 肢体不自由者
施設管理者(修繕含む)としてフルタイム(1日8時間、週5日)作業に勤務(1名)
- 知的障害者
介護業務の補助及び清掃や配膳下膳・洗濯等の業務を、1名が老人ホームにて午前7時から午後8時の間で1日5時間、週6日勤務。3名が通所介護事業所にて午前8時30分から午後5時30分の間で1日5時間、週6日勤務
- 精神障害者
1名はフルタイム(1日8時間、週5日)で事務職として本社勤務。5名は1日5時間、週6日で介護補助及び清掃等
(3)助成金等の活用
トライアル雇用制度(13名)、業務遂行援助者配置助成金の活用(2名)
(4)雇用継続への取組
- 障害者雇用を促進していく為に、本人と所属長で面談して職種、業務内容、労働時間等を決めている。
- 月に1回、所属長が個人面談を行い、問題等があれば専門機関と相談したりしている。
- 資格取得の希望者がいた場合は、勤務調整を行っている。
- 本人から業務についての希望があった場合は、能力に応じて業務内容の変更等、スキルアップ体制作りを行っている。
- 所属長、職員については、障害者職業生活相談員資格認定講習などに参加してもらっている。
(5)取組の効果
- 老人ホームでは午前7時から午後8時、その他の施設では午前8時30分から午後5時30分の勤務時間内で勤務してもらい、夜勤はさせていない。また、精神障害者1名については業務遂行援助者を配置している。
- 体調を崩した精神障害者について、病院の主治医、障害者職業センターのジョブコーチ、家族との話し合いで2ヶ月程度入院してもらい、退院後は業務内容、時間の調整を行い、退職することなく現場復帰してもらった。
- 介護補助業務に携わっていた精神障害者からヘルパーの資格取得希望があったため、専門学校への通学のために勤務時間の調整等を行った結果、2級の資格を取得し、介護職として勤務してもらっている。また事務職として1日5時間週6日勤務していた精神障害者の希望で平成25(2013)年4月よりフルタイム勤務となった。
- 研修を受講した一般職員は、各施設で行う職員会議で指導方法の見直しを障害者の意見を取り入れて行うようになった。
(6)障害のある社員へのインタビュー
- Kさん 38歳 男性 精神障害
事務職の仕事がしてみたいという考えから、就労移行支援事業所で1年6ヶ月訓練を受け、公共職業安定所を通じて、平成20(2008)年9月に当社に入社する。当初の勤務時間は1日4時間の週5日勤務、業務はレセプトの入力、日用品の購入などを行っていた。
勤めて半年ぐらいで要領良く業務ができるようになり、勤務時間が1日6時間の週5日勤務になった。その後、事業拡大の為、事務業務が増えることを聞いたので、自分から常勤勤務できないか上司に相談した。平成25(2013)年7月からは1日8時間週5日勤務になった。
勤務時間が伸びたことは収入も増えて良かったが、体調を維持するのが難しかったので、ストレスが溜まらないように職場上司に相談し、リフレッシュ休暇等を利用することで乗りこえることができた。
また、以前利用していた就労移行支援事業所のクラブハウスのリーダーをしていて、ボウリング、カラオケ、食事会等のイベントを行い、友人達と一緒に活動しながら情報交換を行っている。
今後の目標は「今の会社で正社員になることです。事務的な知識技術を上げるために資格をとっていきたいです」とのこと、これを当社とも共有している。
- Tさん 44歳 男性 精神障害
平成15(2003)年12月に入社して以来10年間、介護補助職員として勤めている。入社当初は、掃除、洗濯、シーツ交換等の業務内容であった。1ヶ月間は職場の上司がマンツーマンで指導して、早く業務を覚えられるよう配慮してくれた。その後、介護の仕事に興味をもつようになり、食事、排泄、入浴介助を指導してもらうとともに、専門学校への通学のために勤務時間の調整等をしてもらって、ヘルパー2級の資格を取得し、今では入浴担当として頑張っている。
本人からは「入社して1番困ったことは認知症高齢者の対応でした。声かけしても違う返答が返ってくるし、どうしたらいいのかわからず悩んだこともありました。その時はすぐ上司に相談し、いくつかの対応方法を指導してもらうこととあわせて外部研修にも参加させて頂いたので、なんとか対応できるようになりました」とふりかえる。
あわせて今後の目標は「今の会社で定年まで働きたいです」とのこと、これを当社とも共有している。
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3. 今後の展望と課題
障害者雇用の特徴として身体・知的・精神障害者を幅広く雇用しており、障害者を介護補助者として雇用し、老人の話し相手として好評を得るとともに障害者雇用の新たな職務を開拓する先駆的な役割を果たしていると自負している。
今後は、さらに高齢化社会が進む中で介護サービス事業へのニーズは増大すると思われる。当社はそれらに応えるべく業務拡大していくことを検討している。
そのためにも障害者雇用についても継続して取組みながら、障害のある者と障害のない者が協働、協力して、利用者にサービスを提供してまいりたい。ただ、企業設立後に障害者を複数採用したが、介護サービス業務は体力が必要なことから、体がきついとの理由や収入を増やしたいとの理由等で退職した人もいた。障害のある者に限らず障害のない者についても個人面談を行いながら、サービスの質の向上と継続雇用の取組を進めて行きたい。
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