精神障害者の清掃業務における合理的配慮事例
- 事業所名
- 合理的配慮事例・27070
- 業種
- 医療、福祉
- 従業員数
- 53名
- 職種・従事作業
- 清掃作業等(1・2階廊下、利用者居室の洗面所、トイレ)
- 障害種別
- 精神障害
- 障害の内容・特性
- うつ病:一度に多くの指示を受けると混乱したり、頑張りすぎて体調を崩すことがある。
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募集・採用時の合理的配慮
面接時に、就労支援機関の職員等の同席を認めること
前職場(特別養護老人ホーム K)での採用面接時に、対象となる障害者(以下、「対象障害者」という)の雇用促進を図るため、ハローワークの担当者が同席した。対象障害者の受け答えを補足しながら障害特性、就労上の配慮点などについて説明を受けた。
その他の配慮
前職場(特別養護老人ホーム K)では、利用者約100名分の洗濯業務を担当していた。当業務は洗濯物の汚れ具合により、臨機応変に変更するべき洗濯手順が多様であり、また職員から対象障害者への適時適切な声かけ等のサポートも十分とは言えなかったことなどから、作業の間違いが増え、本人の混乱を招き、考え込むような結果となった。これらの状況から、大量の洗濯物を処理するような作業は、対象障害者には合っていないのではないか、障害特性に合わせて、ゆったりと業務に当たれる部署への異動が適切であると判断し、特別養護老人ホーム Uへの異動を実施した。
採用後の合理的配慮
業務指導や相談に関し、担当者を定めること
- 対象障害者が所属するフロアの主任、リーダーを指導担当者としている。
また当事業所では、これまで精神障害者の雇用経験がなかったため、障害者職業センターへジョブコーチの派遣を依頼した。ジョブコーチの指導・助言を得ながら、対象障害者に対して主任、リーダーが作業をやってみせ、やってもらって、その担当業務に習熟できるよう取り組んだ。 - 作業面以外では、園長自ら適宜、対象障害者を園長室に招き入れ、お茶を飲みながら悩みなどを気軽に話せる雑談の場を提供している。
業務の優先順位や目標を明確にし、指示を一つずつ出す、作業手順を分かりやすく示したマニュアルを作成する等の対応を行うこと
- 就労当初は、慣れない職場、職員と慣れない作業であり、さらに建物内で方角や場所が分からず緊張し、焦りや自信のない様子が見受けられた。そこで、ジョブコーチに見取り図を描いてもらい、詳しい説明を受けた。
また、作業内容が本人にとっては多かったため、対象障害者、ジョブコーチと相談して作業内容を6種類に絞って優先的に覚えてもらった。なお、その際には、できるだけゆっくりと丁寧に指導することを心がけた。ジョブコーチの協力とアドバイスを得て、作業手順書と作業スケジュール表を作成し、対象障害者に提示した。さらに焦りを無くすため、職員が皆で常に声かけをし、仕事の進捗を全員でさりげなく見守りサポートを続けたところ、少しずつ緊張も薄らいできた。これらの状況報告を互いに月に一度のジョブコーチとのミーティングに活かしている。 - 業務日報の整備はしていないが、対象障害者と施設課長で当日の業務内容を口頭で話し合い、作業進捗把握、体調確認、コミュニケーションを図るようにしている。さらに月に一度は対象障害者と施設課長のミーティングを設定し、反省点を翌月の改善につなげる取組としている。
作業手順書
作業スケジュール表
勤務時間・日程計画
出退勤時刻・休暇・休憩に関し、通院・体調に配慮すること
勤務時間が、9:30~12:30で休憩時間の設定はなかったことから、暑くなったときに体調を崩したことがある。その時は1階休憩室のソファーで休息を取ってもらった。以来、休憩室で、1時間に1回の水分補給する時間(スケジュール化)を設けている。今は、出勤すべき日には一日も休むことなく、その勤務態度もいたって良好である。
できるだけ静かな場所で休憩できるようにすること
1階に対象障害者が一人で休憩できる(他の者は出入りしない)専用スペース(本人の更衣室兼休憩室)を確保している。そこにテーブル、ソファーを置き、薬を飲んだり、リラックスできる環境を提供している。
本人の状況を見ながら業務量等を調整すること
当事業所に異動となった2月頃は、一日3時間週3日の勤務シフトでスタートした。その後、徐々に習熟するとともに、体調面での不安要素もなくなってきたため、6月には一日4時間週4日の勤務に増やした。本人にはもう少し働きたいとの希望があり、8月半ばには週20時間の勤務に増やすことを目標にしている。
清掃の作業場面
施設全景
本人のプライバシーに配慮した上で、他の労働者に対し、障害の内容や必要な配慮等を説明すること
当事業所では、対象障害者が職場定着できるよう全力でサポートしている。当初、各リーダーと主任を集め、障害特性について説明した。その後、対象障害者が業務につく1階、2階の職員はリーダーや主任の説明をもとに対象障害者について情報共有している。全員で声がけ、見守りを欠かさないようにしている。
その他の配慮
業務スケジュールは、本人のペースに合わせることを基本としている。早くできたらステップアップしてもらう。
対象障害者は利用者と関われる仕事をしたいと考えている。散歩に同行するなどの関わり部分を増やし、チャレンジできる環境を提供することとしている。スケジュールはこれまで2ヶ月に1度程の改定を行っている。 - 対象障害者が所属するフロアの主任、リーダーを指導担当者としている。
障害者への配慮の提供にあたり、障害者と話し合いを行った時期・頻度等の配慮提供の手続きの詳細
ジョブコーチ支援は当初毎日3時間行い、その後徐々に日数を減らして、今は週2回30分程度としている。周りとの関わりの中で表情は大変良くなってきており、笑顔も声もよく出ている。
今後さらに、毎日就業後のコミュニケーション活動、月に一度の対象障害者と施設課長の相談の機会を設け、更なるステップアップを目標としている。
配慮を受けている障害者の意見・感想等
当初は、別の事業所に異動し新しい業務に就くことに対して大いに不安があったが、今では新しいチャレンジをさせてもらえて良かったと思っている。ジョブコーチをはじめ職員の方々から指導や声掛けをして貰ってありがたい。また、仕事の中で利用者の方々と関わり、お礼の言葉やちょっとした会話をしていただけることが励みになっている。今後、経験を積んで、人と関われる仕事、コミュニケーションをとれる業務につきたいと考えている。すなわち、介護の仕事をしたいと考えるようになった。そのため、ヘルパーの資格取得はどうすれば良いかなど、関心を持っている。
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