社会とともに歩む~職業自立を目指した知的障害者の育成指導~
事業所名 | 株式会社南国リネンサプライ | |||||||||||||||||||||
所在地 | 宮崎県宮崎市 | |||||||||||||||||||||
事業内容 | (1)ホテル・旅館等のリネンサプライ(シーツ・包布・浴衣・タオル・クロス) (2)病院・医院等のリネンサプライ(病院寝具類) (3)各種ユニホームのクリーニング(白衣・厨房衣・制服類) (4)一般クリーニング(家庭用等) | |||||||||||||||||||||
従業員数 | 89名 | |||||||||||||||||||||
うち障害者数 | 26名
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1.経営理念と障害者雇用
経営理念には2つの柱がある。1つめは「お客様のために」、2つめは「社会とともに」。 障害者の雇用は「社会とともに」を実現するために行っている。 |
このことは、障害者がその能力を十分に発揮して健常者と共に社会経済活動に参加し、働く喜びや生きがいを見出していくというノーマライゼーションの理念に沿った社会を実現していこうという社長自身の強い意思表示がみられた。
| 代表取締役 國島和夫氏 |
2.障害者雇用の経緯と雇用状況
昭和37年に総合クリーニング業として設立。県全域をくまなくネットし、地域社会の高度化に伴い、顧客のさまざまなニーズに対応するために、徹底した品質管理と省力化による最新設備にて運営されており、顧客への安心感と快適性を限りなく追及し「品質管理と価格の高次元での調和」を目標に努力を続けている。 障害者雇用は、昭和55年先代社長の時代から始まった。現社長の叔父が障害者教育に携わっていたことから就職を頼まれ、ハローワークを通じて雇用したのがきっかけだった。 その間、昭和60年に優良事業所として宮崎県知事表彰、平成4年には、障害者多数雇用による労働大臣表彰を受けている。また、平成6年度には重度障害者多数事業所施設設置等助成金の認定を受けている。 |
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先代社長の國島茂氏は、筆者とは知己の仲であり、障害者雇用促進協会が実施した大分県別府太陽の家・日出町ソニー太陽での意欲的な視察が印象的であったが、その後障害者雇用に貢献された積み重ねが評価され各種表彰に繋がったものと思われる。 平成6年度以降は、現社長が障害者のための機械設備等の改善と、作業内容の単純化、軽労働化を最重点に新鋭機械設備を導入し、障害者と健常者の役割分担を明確にして、意欲的に障害者雇用の拡大を図ってきている。 |
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■全従業員数と法定雇用率
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3.障害者の育成指導
障害者を直接指導している総務部長の園田延也さんは、旭化成の特例子会社「旭化成アビリティ」の営業部長を定年退職され、先代社長に請われて入社された方である。障害者の育成指導面の手腕は、関係者間で全県的に知れ渡っており、入社10年間で輝かしい成果をあげられ貢献されているところである。 |
(1)家庭との連携と協力体制 |
[1]障害者の主治医との定期診断の配慮、[2]グループホーム者の定期的帰省の実施、[3]家庭の協力要請を行っている。 特に、[3]家庭の協力については、以下が重要と話された。
日曜日休みと3週2休制のローテーション勤務なので、家庭の協力は欠かせない。園田部長は連絡帳を使って、家庭との連絡を徹底している。「家庭との連絡体制がしっかりとれないと、出勤途中で事故に遭ってもわかりません。寝不足でボーッとしていたら、労働災害につながりますから、あすの仕事に最高の体調で出してくださいとお願いしています。家庭では、しっかりとフォローしてほしいですね。」 |
(2)職業自立訓練指針(障害者とともに働く) |
障害者のもつ能力を最大限に発揮できる職場づくり [1] やれば出来る障害者に希望と自信を植え付ける [2] かくれた能力(適職)を発掘し、これを生かし、伸ばしてやる |
(3)指導育成方法 |
[1] 常に愛情をもって接し、よくできた時はほめ、いつも声をかけ励ます [2] 叱る時は、本気で叱り、仕事の厳しさを分からせる。最初から叱るのではなく、相手のいいところをほめ、最後に叱る。安全面については、妥協してはいけない。 [3] 教えより育てるという気持ちで、一歩一歩着実に前進させる *育てる主なポイント
作業状況を現場で拝見して感じたことは、真剣そのもので目つきが違っていることを感じ取ることができた。 |
(4)実務教育訓練 |
[1]第一段階(基礎訓練)約6ヶ月間
能力の少し上の障害者と組み合わせると、抵抗なくそのレベルに到達する
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(5)職場定着推進チーム |
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4.障害者の募集・採用
(1)募集 |
養護学校・福祉施設とハローワークとの連携による職場実習を前提とする。 |
(2)主な選考基準 |
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5.賃金・労働時間等の労働条件
(1)賃金 |
毎年10月1日現在の宮崎県の最低賃金を基本に改定している。 担当している業務と作業能力により、月給・日給に分類している。1名は人工透析のため6時間30分(時間給)としている。 加齢、障害の高度化で、作業能力の著しく低下を招いている者も若干存在するが、会社の方針により最低賃金は保障している(最低賃金適用除外申請は行っていない)。 諸手当部分は、通勤手当、皆勤手当、家族手当、時間外手当である。 |
(2)年金 |
企業年金の導入により、定年退職時に対応を行っている。 |
(3)就業時間 |
8時30分~17時00分であり、知的障害者は7時間30分(休憩時間60分)、身体障害者は6時間30分(休憩時間60分)とし人工透析のための配慮をしている。 労働時間は、3週を通じて平均40時間勤務(3週2休制)。 |
(4)休日 |
年間87.7日。 日曜日52日、指定日34.7日、年末年始1日である。 |
(5)継続雇用・退職・定年 |
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6.各種助成金の主な活用
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7.今後の課題展望~障害者の豊かな未来の実現を目指して~
國島社長は今後の展望として、以下のことを言われた。
現社長は、会社設立の経緯から第3代目社長である。理念でも述べられている通り、第1に企業としての社会的責任、第2に仕事を通じて職業人・社会人としての自立を図る、第3に恒常的な職業の安定でこれは企業の発展がないと難しい、いわゆるゆとりある会社経営ができないと障害者の雇用はあり得ない、と言われた。 |
執筆者:社会保険労務士 長友 安弘 |
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