障害者自身とその家族、さらには地域や
社会にとって「プラス」となる会社を目指して
- 事業所名
- 株式会社よんでんプラス
(法人番号: 5470001017256) - 業種
- サービス業
- 所在地
- 香川県高松市
- 事業内容
- 清掃業務・オフィスサービス業務
- 従業員数
- 28名
- うち障害者数
- 17名
-
障害 人数 従事業務 聴覚・言語障害 1名 オフィスサービス業務 知的障害 13名 清掃業務・オフィスサービス業務 精神障害 2名 オフィスサービス業務 高次脳機能障害 1名 オフィスサービス業務 - その他
- 特例子会社
- 本事例の対象となる障害
- 聴覚・言語障害、知的障害、精神障害、高次脳機能障害
- 目次
-
事業所外観
1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
(1)設立の経緯
四国電力株式会社(以下「四国電力」という。)においては、従来から身体障害者を中心に障害者雇用に積極的に取り組んできたが、引き続き多様な障害のある方々が生きがいと誇りを持って就労できる場を創出し、一層の雇用拡大を図っていく観点から、四国電力および四国電力の100%子会社である四電ビジネス株式会社の共同出資により、令和元(2019)年によんでんプラス株式会社(以下「当社」という。)を設立するに至った。(現在は四国電力送配電株式会社を加えた3社の共同出資となっている。)
社名の「よんでんプラス」は、障害のある方ご自身はもとより、ご家族や地域、社会にとっても「プラス」になるようにとの願いを込めたものである。
(2)事業概要
四国電力および四国電力送配電株式会社が所有する建物を中心に清掃業務を行なうほか、社内便の集配(メール業務)や紙媒体資料の電子化業務、郵便物の封入封緘業務、コピー用紙の販売・給紙業務などのオフィスサービス業務を展開している。
障害のある従業員(以下「チャレンジド」という。)にとって、少しでも働きやすい環境を整備していく必要があるとの認識のもと、さまざまな取組を行っている。
2. 障害者の従事業務と職場配置
(1)清掃業務
清掃業務には、知的障害のあるチャレンジド10名が従事している。四国電力の研修施設内にある事務所に勤務し、同施設の清掃業務を行うとともに、特定の曜日には支援スタッフ(当社でチェレンジドとの相談や指導・支援を担当する従業員であり、現在4名が配置)が同行のうえ、近隣にある同社の厚生施設などの清掃も行っており、基本的に清掃作業自体はチャレンジドだけでほぼ完結できている。
作業内容は、掃除機がけや拭き掃除などの一般的な清掃作業に加え、宿泊施設のベッドメイクなど相対的に難易度が高い作業も行っている。また、イベントなどの開催のための会場設営や郵便物の封入封緘業務などの清掃以外の業務についても、機会を設け積極的にチャレンジさせている。
(2)オフィスサービス業務
オフィスサービス業務は、四国電力の本店などにおいて、聴覚障害、知的障害、精神障害などのあるチャレンジドがメール業務に4名、事務補助業務に3名従事している。
メール業務は社内便の仕分け、集配巡回、郵送物の発送処理などを行い、事務補助業務は紙媒体資料の電子化、郵便物の封入封緘、イベント用粗品の袋詰めなどのほか、コピー用紙の販売・給紙なども行っている。
いずれの業務も、発注者との仕様調整などを支援スタッフが窓口となって行うことで、チャレンジドが目の前の作業に集中できる環境を整えている。
3. 取組の内容と効果
(1)取組の内容
ア 就業時間
チャレンジドができるだけ集中して業務に取り組めるようにとの考えから、一日の所定労働時間(フルタイム勤務)は7時間と、やや短めに設定している。
また、障害などの理由によりフルタイム勤務が困難なチャレンジドのために、短時間勤務制度も設けている(週20時間以上30時間未満で、一日の勤務は4時間以上7時間以下、一週間の勤務日数も個別に設定できる)。
イ 日々の体調管理
チャレンジドの日々のコンディションを把握する手掛かりとして、毎朝の検温のほか、睡眠や食事、体調、ストレス度合などを業務日誌(パソコン)に入力させており、不調や気がかりな点が見られれば、その都度、支援スタッフが面談を実施するなどの対応を行なっている。
また、チャレンジドの多くが特別支援学校卒業後間もない若年層であり、チャレンジド間の人間関係の構築に未熟さも窺われ、ストレスをためている者も多いことから、現状においては有効な解決策を見いだせていないものの、支援スタッフができる限りチャレンジドの話を聞くよう努めている。
ウ 単独勤務への対応
職場の中には、業務の内容と作業量の問題から、単独の勤務にせざるを得ない職場が発生している。当初、そうした職場へ知的障害、あるいは精神障害のあるチャレンジドを配属することは困難と考えていたが、外部の支援機関の協力を得て、適性を有すると考えられる人材を紹介していただき、半年程度の時間をかけてトレーニングを進めた結果、単独でも安定した勤務を実現するに至っている。
なお、単独勤務であっても、当該チャレンジドに(特に精神面での)過度の負担を負わせることがないよう、毎日、終業時刻前に近隣の事業所から支援スタッフが交代で巡回するとともに、イレギュラーな事象などの発生時にはチャレンジドからの要請に即応できる体制を敷いている。
エ 業務遂行上の工夫
チャレンジドが円滑に仕事を進めるうえでの物理的な配慮については、例えば清掃に従事する者(知的障害のある者)に対しては、清掃個所別に用具の色分けを行ったり、清掃の順番を細かく決めることで不衛生を招くことのない工程を心掛けているほか、コピー用紙の販売などについては、関係者の理解を得て受発注をファックスで完結できる工程にすることで、聴覚障害を有する者でも対応が可能となるようにしている。
また、清掃などの基本的な作業については、マニュアルの整備などに取り組んでいるが、作業手順などが定着しないチャレンジドも少なくないため、定期的な振り返り(復習)を行っている。また、当社では入社希望者などに職場実習(以下「実習」という。)の機会を提供しているが、手順が定着しにくいチャレンジドに実習時のコーチ役や、見学者への案内役などを任せることなどにより、本人のモチベーションや手順の正確さへの意識向上につなげており、実際に手順が自己流化していたチャレンジドが、コーチ役を務めることで正確な手順を取り戻したケースなどが見られている。
そのほかにも、チャレンジドに伝える情報については、分かりやすい形での提供に注力しており、特に目に見える形での提供を心掛けている。指示する際には、話しかけることだけではなく文字(メモ書きなど)にして伝えたり、可能なものは絵や写真で示すなど、情報の「見える化」に努めている。
清掃箇所別に色分けしたタオルなど
オ 人事評価仕事の出来栄えはもちろんであるが、取り組み姿勢なども重視しつつ人事評価を実施しており、その結果を給与や賞与にわずかながらも反映させている。このことはチャレンジドにも説明し、働く意欲の向上に資するよう努めている。
なお、チャレンジドの仕事の結果や、取り組み姿勢、生活態度などについての日常の指導や注意は、本人の理解力に合わせた方法で本人に直接行うこととしている(保護者や家族に直接伝えることは原則としていない)。ただ、賞与の増減などが家族などに対するメッセージの役割を果たしている部分もあるかと思われる。
カ 支援機関との連携
業務に付随する課題はもとより、業務以外においても課題を抱えるチャレンジドもいることから、外部の支援機関など(特に障害者就業・生活支援センター)との連携を密にし、早め早めの協力・支援を得ることで、課題の迅速かつ円滑な解決に努めている。
キ 定期的な研修などの実施
仕事の成果やモチベーションの向上に資するよう、写真や図を積極的に用いた自作教材に基づく研修のほか、業務に関するDVD教材の視聴、自身の就業姿勢の振り返り、ビジネスマナー研修など、定期的に研修などの時間を設けており、適宜確認テストなども実施することで、チャレンジドの理解促進に取り組んでいる。
(2)取組の効果
前述の取組を中心に、チャレンジドにとって働きやすい職場環境の整備に努めた結果、会社設立から現在(2023年10月)に至るまで、チャレンジドの定着率100%を維持できている。
(3)「できる」を増やす能力開発のための取組
ア 本来業務以外の業務に従事する機会の創出
チャレンジドができることを増やし、自信やモチベーションを高めていくため、業務が非効率になることがあっても、担当する業務以外の業務にもできるだけ触れさせる機会を設けるようにしている。
具体例をあげれば、ふだんは清掃業務に従事する知的障害のあるチャレンジドであっても、パソコン入力作業や業務の垣根を超えてのオフィスサービス業務の応援、さらには厚生施設での受付業務など、一人ひとりの障害特性や能力を見極めながら、本来業務以外の業務もチャレンジドそれぞれの仕事の中に組み込み、能力の開発に努めている。
イ 会社生活における仕事以外の役割分担
チャレンジドができる可能性を有しているにもかかわらず、保護的な観点から役割を制限することで、体験し、成長する機会を奪っていないかとの認識を持って接することにも努めている。
例えば、知的障害のあるチャレンジドに電話対応はできないと決めつけずに、相手に用件を伝えるだけでよい電話などであれば、手元メモを準備してかけさせるなど、会社生活の中にある日常の様々な場面にできるだけ取り組ませるようにしている。
ウ 表彰制度の活用
チャレンジドの努力により、目標を超えた顕著な業績をあげた場合などには、当該チャレンジドを表彰する制度を設けている。同時に、業務のみならず、社会的な貢献(福祉、防犯、交通安全など)や文化・スポーツなどにおいても、優秀な成果をおさめた者には社長表彰などの機会を用意しており、副賞金も準備している。
エ 社外コンテストなどへの参加
従業員のモチベーションの向上などをねらいに、障害者技能競技大会への参加やアートコンテストなどへの応募も奨励することとしており、令和4年度においては、香川県障害者技能競技大会(アビリンピックかがわ)に過去最多の5名が出場した。出場競技についても、会社での担当業務にかかわらず個々人に自由に選択させた結果、清掃業務に従事するチャレンジドがオフィスアシスタント部門で金賞を受賞するなど、本人にとっても、会社にとっても、新たな能力・適性を発見する機会になっている。
アートコンテストについても、パラリンアート才能発掘コンテスト2022でグランプリを受賞するなど、チャレンジドの自信につながっている。
そのほか、清掃業務を受託している施設の利用者様へのおもてなしとして配布している栞(しおり)のデザイン・作成に挑戦させるなど、能力発揮の機会を少しでも創出するよう努めている。
【社外コンテスト】パラリンアート才能発掘コンテスト2022 グランプリ受賞作品4. 今後の展望と課題
当社は、今後ともチャレンジドの自立と社会参加を支援していくため、障害者雇用に積極的に取り組んでいきたいと考えているが、そのためには、障害の特性に応じた仕事の付与や職場環境の整備が不可欠と考えている。
(1)障害特性や多様な能力に応じて就労できるための新規業務の開拓
現状においては、チャレンジドの従事業務が限定的であり、新規業務の開拓が重要な課題の一つであると考えている。開拓にあたっては、発注者様との間にWin-Winの関係を築くことは当然のこと、一人でも多くのチャレンジドが自身の障害特性に応じて、持てる能力を存分に発揮し、充実した会社生活を送れるよう努めていきたいと考えている。
(2)業務の標準化と合理的配慮の充実
知的障害などを持つチャレンジドが仕事を円滑に進めていくためには、業務の標準化が不可欠であると考えているが、当社の業務遂行の流れのなかでは、まだまだ人(上司など)の判断を要しているのが実情である。
このため、引き続き関係者の理解と協力を得て、標準化を進めるとともに、人の判断を要する場面においても、チャレンジドを混乱させることがないよう、支援スタッフが常に情報の共有化に努め、共通の認識をもって支援を行っていく必要があると考えている。
併せて、チャレンジドがさらに働きやすい職場環境を整備していくため、合理的配慮の充実に取り組んでいきたいと考えている。執筆者:株式会社よんでんプラス
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