創業当初から障害者を雇用。従業員一人ひとりの理解と企業風土
- 事業所名
- 株式会社星光舎(ダスキン滋賀工場)
- 所在地
- 滋賀県甲賀市
- 事業内容
- ダスキン商品洗浄加工、ならびに物流センター業務
- 従業員数
- 129名
- うち障害者数
- 8名
障害 人数 従事業務 視覚障害 0 聴覚障害 0 肢体不自由 3 事務(1)、製造(2) 内部障害 0 知的障害 4 製造(4) 精神障害 1 製造 - 目次
1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
(1)概要
株式会社星光舎(ダスキン滋賀工場)は1998(平成10)年10月にダスキン生産グループの一員として創業を開始した。当工場は総合工場(ダストコントロールのレンタル商品の洗浄、仕上げと配送センターがある)として、全くの初めから新設され、京都府、滋賀県全域の44の営業店を担当している。新設当初は、ダスキンの仕事のことを知らない未経験者ばかりであった。それだけに苦労も多かったが、「皆で一緒に立ち上げたんだ!」という一体感もそれだけに大きいものとなった。
現在、従業員は129名(H.21年8月3日現在)であり、日勤および夜勤の二交替制をとっている。日勤は9:00~17:00、夜勤は17:00~22:00である。
(2)障害者雇用の経緯
当社の障害者雇用は工場の立ち上げと同時期、つまり、立ち上げ当初に2名を採用したことに始まる。その後、漸次、雇用数を増やし在籍が10名となった時期もあった。現在、雇用数は8名であり、障害別の内訳は身体障害者3名、知的障害者4名、精神障害者1名となっている。
当初の採用は、近隣の施設(知的障害児(者)入所施設)からであったが、遠方では京都府内の施設もあった。いずれにしても、求人に関しては当時も現在もハローワーク(公共職業安定所)を通じてのものがほとんどである。
創業から十一年。当初から現在まで在籍している人もいるが、一方、途中で退職された人もいる。また、採用はいつでもできるわけではない。原則、求人の必要がなければ、採用については難しいことが多いのも事実である。
2. 障害者の職場配置
通路を挟んで向かい合う洗濯機と乾燥機
洗濯機(50kg仕様)
各自が従事している仕事について具体的に見ていくことにしよう。まずは身体障害者であるが、3名のうち1名が事務職、2名が現業職(製造)である。3名はいずれも下肢障害だが、製造現場でも大きな支障は見受けられない。製造の2名は1名が洗浄を担当し、1名がマット仕上げを担当している。洗浄は繰り返し仕事であり、持続力はもちろん、広い意味での体力が要求される。一方、マット仕上げは仕上げに係る仕事であり、確かな品質チェックとスピードが要求される。
次に知的障害者であるが、4名全員が現業職(製造)である。1名はクローバと呼ばれる回収品の仕分け・整理を担当し、1名が洗浄、1名がモップ仕上げ、1名が配送を担当している。クローバは一連の工程の初期段階であり、チェックのスピード、そしてスピードを保つ維持力が要求される。洗浄とモップ仕上げは上述のとおりであり、配送は注文伝票通りに商品をセットできる正確さが何よりも求められる。
最後に精神障害者であるが、1名が現業職(製造)でモップ仕上げを担当している。
以上が、各障害者の仕事の概要であるが、参考のため、工場の部門ごとの人員構成を以下に示す。製造部・加工=11名、同部・仕上げ=72名、物流部・クローバ=19名、同部・配送=19名、同部・事務=4名、管理部=4名の129名である。いずれの部署でも、パートさん(当社では働きさん、と呼んでいる)が多数を占めており、賃金等の条件は同一である。もちろん、障害の有無にかかわらずである。なお、契約は一年ごとの更新としている。
積み上げられた回収品(モップ)
マット仕上げ風景
注文品を取り揃える(配送)
3. いくつかの取り組み
(1)募集・採用・実習の受け入れ
先にも書いたことであるが、求人については定員が充足している状況では考えにくい。それは障害者雇用に限ってみても同じことであるが、障害者の採用に向けての依頼がないかと言えば、ないことはないのである。むしろ、これまでの採用実績により近隣の特別支援学校や施設、あるいはハローワークをはじめとした障害者雇用の支援機関等から、どうですか? 是非、お考えいただけませんか? との話があったりもする。実際、採用にまつわることは、気持ちや理解だけで応えられるものではなく、無理な受け入れは結果として定着につながらなかったこともある。
募集・採用の際には、「現場ありき」との考え方を重視している。あらかじめ職種を限定することで、必ずしもその職種に適性のある応募者がくるとは限らないが、当社の職種を見回した場合、応募者の適性を見て担当可能な業務を検討するよりも、現場作業に順応できる真面目さとやる気を評価・判断することがより重要なことである。評価・判断のためには、トライアル雇用的な受け入れからスタートすることは受け入れ側の負担も小さく有効であろう。最終的な判断は工場長、副工場長、製造部長、物流部長の4名の意見を総括し、採用が決まれば、試用期間(一月半)を経た後、二回目の契約(本採用)となる。
また、実習(採用を前提としないもの)の受け入れは、工夫をしながら可能な限り受け入れている。それは、これまでの、あるいは、これからの関係づくりでもある。
(2)経験から学んだこと
採用から定着の過程でポイントになることがある。一つは、どうすれば職場にうちとけることができるか?であり、他一つは、本人の調子が悪い時にどのように考えることができるか?である。当社の場合、従業員の7割近くが女性であり、年齢も平均すると40~50歳ぐらいである。そのため、自然とお母さん的な対応ができる人たちが多くいて、時には見守り、また別の時には「しっかりせなあかんよ」と励ましたり、しかったりと無理のない付き合いができている。実際、分け隔てのない付き合いが職場の風通しの良さにもつながっているようである。そうしたことは障害者と彼(女)を取り巻く従業員の日々の結果であり、かつ創業当時からつちかってきた社風であるとも言える。
(3)経験だけではなく、学ぶ機会を
障害者雇用を進めていくことは、従業員一人ひとりの障害者に対する理解が深まることであると同時に、別様に言えば、従業員一人ひとりの理解が深まってこそ、会社全体としての障害者雇用の取り組みになるとも言える。従業員教育という意味で言えば、「障害者職業生活相談員資格認定講習」等の講習会への参加も良い機会となっている。同講習に関しては、近年に限定すると昨年度1名が受講し、今年度も1名が受講予定である。
また、昨年は同講習受講後に、さらに対象者を広げ(管理者および各部署のリーダー等、約20名)、外部講師による障害者雇用についての研修を行なった。こうした取り組みを通じて、職場での接し方が向上してきている。
4. 今後への展望
(1)悩み事を言い合える関係
仕事上の悩みと言ってしまうと大袈裟なことになるかもしれないが、日によって、あるいは一日のなかでも調子がいい時と悪い時、気分がのっている時とそうでない時がある。そうしたイマイチの時に話ができる関係。「しんどかった」「よう、がんばったな」。「えらかった(疲れた)」「ごくろうさん」。「あつかった」「ほんまにあつかったな」。誰でもそうだと思うが、特にコミュニケーションが独特であったり、苦手であったりしがちな知的障害者の場合、大切にされているんだと感じられること。それは仕事のやりがいであり、喜びである。
(2)自社だけでなく他社でも通用する職業人になって欲しい
これまで述べてきたように、創業当初から従業員一人ひとりが、障害ある人が一人前の仕事ができるようにと考え、行動してきた。それは社風と呼んでもいいものかもしれないが、その風土のなかで、職場になくてはならない人になって欲しい。そして職場だけでなく、他所でも通用する人であって欲しい。
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