調剤併設ドラッグストアにおける薬剤師の雇用事例
- 事業所名
- 株式会社ドラッグスギヤマ
- 所在地
- 愛知県名古屋市
- 事業内容
- 医薬品・化粧品・日用品全般の小売販売をするドラッグストアのチェーン店を経営
- 従業員数
- 2,983名
- うち障害者数
- 10名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚障害 1 販売 肢体不自由 6 薬剤師、販売、販促事務、総務・経理事務 内部障害 1 医療事務 知的障害 2 品出、鮮度管理、清掃 精神障害 - 目次

1. 事業所の概要
株式会社ドラッグスギヤマは、スギヤマ薬品グループ(株式会社スギヤマ薬品、株式会社ドラッグスギヤマ、株式会社スギヤマ調剤薬局、株式会社スギヤマ薬品商品センター)に属している。東海3県において医薬品(調剤を含む)・化粧品・日用品全般の小売業を運営している。店舗数は平成23年9月1日現在95店舗(グループ全体では115店舗)である。
スギヤマ薬品グループは1952年に専門薬局として出発して以来、「店はお客様のためにある」という基本理念のもと、いつもお客様を第一に考え、お客様の暮らしに役立つ店舗を目指して一歩一歩着実に進んできた。
お陰様で、お客様のご支持をいただき、当社は東海地区の医療品小売業において、トップクラスの企業に成長することができた。
この確かな歩みを支えてきたのは、「商売を通じて、人々の美と健康、医療に貢献し、全従業員の幸福を追求する。」を経営理念として、常にお客様が求めるサービスを追求し、業態開発に積極的に取り組む起業姿勢と、それをしっかり反映する各店舗である。
当社グループの店舗は、ドラッグストアの他に調剤併設型ドラッグストア、薬粧専門店、調剤専門薬局の4業態でチェーン展開しており、それぞれ業態特性を活かした店舗運営で順調に業績を伸ばしている。
当社グループは、地域のお客様の健康生活、快適生活を総合的にサポートできる新しいドラッグストアとして、これら4業態の利点を統合し、調剤機能、相談機能を持った専門ドラッグストアを開発している。調剤研修など薬剤師教育に注力し質の高い調剤を目指しており、調剤専門薬局以外でも大多数の店舗で調剤業務を行っている。
・ドラッグストア、調剤併設型ドラッグストア
美と健康を守り、暮らしを豊かにするドラッグストアとして当社グループは、医薬品、健康食品、化粧品を軸にハウスキーピング用品からカー用品まで、日用消耗雑貨も幅広く揃えている。また、高齢化社会に対し多くの介護用品の品揃えも充実させている。その為に地域の皆様の健康生活、快適生活を応援するスペシャル業態として、150~650坪の売り場を持つ大型店舗を都市郊外に展開している。
また、地域医療の担い手として、面分業時代に応え大多数の店舗で本格的な調剤薬局を併設し、多数の医療機関の処方箋を実際に応需している。
ドラッグストアの社員は先輩の指導のもと、調剤処方も含む、様々な部署を担当し、薬歴管理や商品ディスプレイから催事の企画、売上管理まで責任をもって行い、経験を積んでいる。大型店では、パートを含めた従業員の労務管理も重要な仕事であり、ここでは流通業のコアとなるマネジメント業務を体得する事ができる。
・薬粧専門店
薬粧専門店は、医薬品と化粧品を中心に厳選した品揃えで、主に繁華街やショッピングセンター内に立地する店舗である。この店舗は、お客様との一体のカウンセリングを主体として日常的なコミュニケーションを大切にしている。地域に根ざしたお店で、あなたのホスピタリティが存分に発揮できる舞台である。
・調剤専門薬局
医師の処方箋に基づき、医療用薬品を調剤する調剤薬局は、医療行政の大きな流れである医薬分業時代を支える業態として注目されている。
当社グループは、東海地方で最初に本格的に調剤薬局をチェーンとしてスタートさせ展開してきた。調剤薬局は、薬剤師が、医薬品のスペシャリストとして存分に力を発揮できる場である。
調剤を専門に行う薬局としては1986年より出店を開始し、2011年4月現在で、独立店舗が20店ある。さらにドラッグストア内で56店舗の調剤薬局を運営している。国公立の病院前の調剤薬局も多く、ここで習得した総合的で高度な調剤技術を、全店に広める事により、質の高い調剤を行っている。
面分業に伴い一薬局で受け付ける医療機関の数が増えた場合でも対応できるのは、こうした歴史があればこそ可能である。当社グループでは、1店で100を超える医療機関からの処方箋を受け付け調剤している店もある。
ドラッグストア内で行われる調剤では、薬剤師が一般薬や健康食品との飲み合わせも含めた服薬指導をすることにより、患者に喜ばれている。2009年度は、110万枚の処方箋を応需し、愛知県内ではトップクラスの実績を誇っている。
調剤業務を行っている全店に、散薬監査システムを導入し、順次錠剤監査システムや電子薬歴の導入を行っている。薬剤師が安心して働ける職場環境を整えている。
教育も、調剤スクール(初級・中級・上級コース)、各種セミナー勉強会、各エリア勉強会を常に実施し、系統的にスキルアップできるようにしている。また、薬剤師全員がNPO名古屋臨床薬剤師研究会に所属し、ドクターを講師とした臨床教育も行っている。
2. 障害者雇用の経緯
高度高齢化社会の到来、生活習慣病の低年齢化などによる国民医療費の高騰が深刻な問題になっている。そうした中、薬局には“一人ひとりが健康に関心を持ち、軽度な病気であれば自分で治す”という「セルフメディケーション」の意識向上に向けて、啓蒙役としての期待が寄せられている。当社グループでは、調剤業務や医薬品販売だけにとどまらず、医療機関への受診勧奨や生活習慣のアドバイスなどを通して、健康な方はより健康になるように、体調に不安のある方は一日でも早く回復できるよう、健康づくりのお手伝いをしている。当社グループでは「医療人」として、地域の患者様やお客様の健康管理を行える“かかりつけ薬剤師”の育成に力を入れている。今まさに薬剤師への期待が高っている。
そうした中、くすりを取り扱うドラッグストアにおいては、薬業界をリードする薬剤師の雇用は必須である。
今回事例として紹介する薬剤師のAさんを雇用する事となったきっかけは、当社の薬剤師募集に対して本人より「上肢、下肢に障害があるが、薬剤師募集に応募は可能か」という問い合わせを受けた事からである。
当社では、新規店舗の出店に伴う従業員数の増加に合わせ、職業安定所の障害者面接会に参加し障害者雇用を進めているが、Aさんからの問い合わせは、当社にとって「薬剤師雇用」と「障害者雇用」両方の面で効果が期待できるものだった。
そこで「まずは本人と会って、具体的にAさんの障害の状態や勤務の希望等を聞いて、当社で薬剤師として勤務をしてもらう為に必要な条件を確認しよう」という事になった。
Aさんと面談をした結果、Aさんは人物の評価としては問題無く、疾病による上肢機能と下肢機能及び体幹機能に障害があり車いすを使用しているが、自動車の運転ができ、短い距離であれば杖を用いての移動も可能だった。結果、店舗の施設としては駐車場が確保されていて、階段が無く、車いすが通れる広さの通路が確保できる店舗であれば勤務は可能である、と判断し採用することになった。
3. 取組の内容
Aさんには、薬剤師として調剤併設型のドラッグストアにおいて処方箋調剤及びOTC薬の相談販売の業務を行ってもらう事となり、勤務店舗においてAさんが障害を克服して業務が行える様に以下の取組を行った。
1) | 入退店時の移動距離を少なくし身体への負担を軽減する為、入口に近い駐車場を確保した。 |
2) | 杖を使用して短い距離の移動はできるが、身体への負担は大きい為、軽量のキャスター付きのいすを購入し、調剤室内では、そのいすに腰をかけたままでも移動が出来る様に、通路の確保と調剤室内のレイアウトの変更を行った。 |
3) | トイレ(和式)を使用する際の負担軽減及び転倒防止対策として第1種作業施設設置等助成金を利用し、手摺の設置を行った。 |
4) | レセプトコンピューターの入力時にパソコンを使用するが、入力作業の負担軽減の為に補助プログラムとして日本語かな漢字変換ソフト(エイトック)を導入した。これにより、一度入力した言葉は最初の一文字を登録する事で表示される様になった。 |
5) | 錠剤を包装からくり貫き出す作業の負担を軽減する為に、軽い力で錠剤が出せる専用の器具を購入した。 |
6) | Aさんの主業務は処方箋による調剤である。調剤業務では散剤や細粒の粉薬の調剤を行う事が多くある。その際には、分包機(散剤や細粒の粉薬を1回分ずつに均等に分けて正しく詰めるために必要な機械)の使用が業務上不可欠である。しかし、店舗で使用中の分包機は、Vマスと呼ばれる部分に粉薬全量を入れ、手で種類のあるヘラを使い分けて使用し、粉の上部をフラットな状態になるまで均等に伸ばして調剤を行うものである。均等にするには手の微妙な感覚が必要であり、上肢に障害があるAさんにはこの業務を行う事が難しく、従来店舗で使用していた分包機を業務で使用することはできない。そのため粉薬の処方については、どうしても他の薬剤師が代わって行わなければならず、一人では調剤業務全般を行う事ができない状況であり、薬剤師としてAさんの能力を十分に発揮する事ができなかった。この問題は人の手で粉薬を均等にする作業を、機械で自動的に行う事ができれば解決することができる。 |
そこで、機械が自動的に散剤や細粒を分包する全自動式の分包機を導入する事を検討した。ところが全自動の機械は高額であり、Aさんの勤務する店舗の経費では購入は難しい状況だった。そこで、愛知高齢・障害者雇用支援センターに相談をし、第1種作業施設設置等助成金を活用することで経費面での負担を軽減し、導入をする事ができた。全自動分割分包機の導入により、散剤や細粒を投入する部分に、量り取った散剤や細粒を投入した後は、機械の操作パネルで各種ボタンを操作することで散剤の分包が完了し、Aさんは障害を克服して粉薬の調剤を行う事ができる様になった。 |


4. 取組の効果、今後の展望と課題
(1)取組の効果
上記取組によりAさんには、薬剤師としてその能力を生かし、生き生きと働いてもらう事ができる様になった。
障害のある薬剤師を採用するという事で、最初は漠然とした不安や心配があったが、実際に一つずつ生じた課題を解決して行く事で、Aさんには専門職である薬剤師として期待をする働きをしてもらう事ができている。他の従業員とのコミュニケーションも良く取れており、お互いにサポートをしあう体制もできている。また、薬剤師としてお客様からの評判も良く、顔見知りになった患者からは「頑張ってね」との声をかけられることもある。これは、本人の努力とともに一緒に働く同僚の理解と協力、そして支援機関の方々の的確なアドバイスあっての結果であると思っている。
(2)今後の展望と課題
障害者の雇用については、業務の選定や設備、従業員間のコミュニケーション、お客様との関わり方等まだまだ多くの課題がある。しかし、その課題は一つずつ解決して行く事で、障害者の方の雇用継続と、新規雇用の創出に繋がる可能性が広がるものであると考える。
今後も、お客様の暮らしに役立つ店舗づくりを進める中で、障害者の持つ能力を最大限に生かした形で、会社に貢献をして頂くことを念頭に、障害者、障害がない者を問わず、当社グループで働く全ての従業員の幸福を追求していく所存である。
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