適材適所の人材配置と人材教育の結果が能力開発と長期雇用に繋がる責任と自覚が組織の強さに繋がる

1. 事業所の概要
(1)事業所の沿革
当金庫は、大正12年12月に有限会社水俣信用組合として設立された。その後、昭和46年11月に水俣信用金庫と有明信用金庫が合併し、熊本中央信用金庫が誕生した。その昭和46年には預金量100億円を達成した。昭和47年6月に熊本市内に初店舗を開設、その後、営業地区を順次拡張し、昭和55年6月に熊本市大江本町に本店を新築開設した。一方、昭和59年2月に両替業務を開始したのに続き、新規業務の取り扱いを次々に開始し、昭和62年には預金量1000億円を達成するまでになった。また、平成14年10月にはインターネットバンキングの業務を開始するなど、業務を順調に発展させてきた。現在では、店舗数22店舗、預金高1,571億円になっている。
(2)事業の概要
「良い家庭、良い企業、良い社会の育成発展のために、金庫の総力を結集し金融の円滑をはかる」という基本方針を掲げ、地域に密着した営業活動を徹底してきた。地域密着型金融の担い手として、今後益々、地域経済の活性化や中小企業金融の円滑化のための機能強化に向けた取り組みを推進する。
経営方針として、①健全経営を維持し、会員並びに預金者の保護に万全を期する。②貯蓄の増強に努める。③地域経済開発を目指し、積極的なる融資を図る。④経営の合理化と事務能率の向上に努める。⑤職員の福祉を増進するとともにその資質の向上に努める。の5項目を掲げている。
経営戦略として地域管理政策を推進している。この地域管理とは、単なる量的拡大のためのマーケティング戦術ではなく、地域金融機関としての社会的責任を果たすための経営戦略であり、その社会的責任には次の3つの基本的なものがある。
一つ目は、経営力の弱い中小零細企業に良質な資金を安定的に供給し、優れた経営合理化情報を提供することにより自己資金の堅実な形成を助成するとともに地域内の中小企業を育成する。二つ目に、定期積金による堅実な貯蓄習慣を定着させて金融資産を充実させるとともに生活向上のための資金と家計合理化情報を提供することによって地域内の人々の暮らしを豊かにする。三つ目は、地域内の地場企業を開発育成するとともに、地域内の金融資産を増加させ、そして、地域開発計画を確立し推進することによって地域経済を発展させる。
また、平成7年7月に中央しんきんボランティアチームを結成し、県内各地で、マスコットキャラクターの「チュウちゃん」および「そなえちゃん」の着ぐるみを用いて、各地域の祭り・イベントへの参加、一部の営業店での餅つき大会、全役職員で集めた使用済み切手を熊本善意銀行に寄贈、貯蓄教育を兼ねた幼稚園や保育園への訪問、更には「信用金庫の日」に合わせた献血活動及び大学生を対象としたインターンシップを実施し、信用金庫の役割や業務についての理解を深めてもらい、営業店や本部の現場視察を実施する等地域貢献活動に積極的に取り組んでいる。
(3)地域社会との関わり
地元の中小企業や住民が会員となって、お互いに助け合い、発展していくことを共通の理念として運営されている相互扶助型の金融機関である。
地元のお客様からお預かりした預金を、地元で資金を必要とされているお客様に融資を行い、事業や生活の繁栄をお手伝いするとともに、地域社会の一員として地元の皆様との強い絆とネットワークを形成し地域経済の持続的発展に努めている。また、金融機能の提供にとどまらず、文化・環境・教育といった面も視野に入れ、広く地域社会の活性化に積極的に取り組んでいる。
例えば、年金を受け取りのお客様を対象としたゆとり会旅行、お取引先企業にビジネスマッチングの出会いの場を提供し販路拡大などビジネスチャンスの機会創出を応援するためのしんきん個別商談会INくまもと、年金相談会及びソフト面でのバリアフリー化を図るため耳の不自由な方や外国人の方などが円滑に取引ができるよう簡易筆談器「かきポンクン」及び「コニュニケーションボード」を全店に、携帯助聴器「ボイスメッセ」を10店舗に設置している。
(4)現在の業況と今後の展開
当金庫の事業内容は、預金業務、貸出業務、為替業務及び代理業務等の付帯業務からなっている。
景気不透明感による資金需要の低迷及び金融機関の競争激化により、貸出金が低迷し資金運用収益が低下したものの、不良債権処理費用が減少した。なお、金融機関の健全性を表す指標である自己資本比率は、国内基準の4%を上回る8.13%となっている。
今後も環境変化に柔軟に対応し経営資源の有効活用と再配分を進めながら安定的な収益確保に努め、地域の皆様の「安心と信頼」のさらなる向上を図っていく。
地域経済の厳しい状況が続く中、中小企業専門の金融機関として、地元企業の支援に取組み業績は安定して推移しているが、平成23年3月九州新幹線の全線開通に続く、平成24年4月熊本市の政令指定都市移行に伴う経済効果に期待している。
(5)採用状況と教育システム
当金庫では、今後も変化し続けていく未来に向けて、お客様とのFace to Faceの関係をさらに強固なものに築き上げ、地域に貢献できる輝く人材を育てることで、地域に無くてはならない金融機関としてその使命を全うしていく。
そのための人材として、本年までは定期新卒採用を継続してきた。障害者の採用については、募集に応じて応募することに障害のない者との区別は無く、適性と能力等により採用の判断がなされる。現状では、適正人員を確保しており、来年度に向けては、退職者分の自然減を考慮して活動していく予定である。
また、教育システムについては、金庫内研修と派遣研修があり、金庫内研修ではO.J.T.及び新入職員研修や入庫後6ケ月間の新入職員フォロー研修、階層別・職能別研修があり、派遣研修は全国信用金庫研究所、南九州信用金庫協会、各種団体研修及び中小企業大学校などで実施している。他に、階層別、職能別通信講座や各種検定試験向け通信講座を備えている。さらに、自己啓発として自主勉強会、通信講座、各種スクーリング及び各種検定試験を活用できる。これ以外にも、公的資格等取得奨励制度、中小企業診断士資格取得制度、ファイナンシャルプランニング技能士資格取得制度があり、職員のそれぞれに対して職責に応じた責任と自覚を持たせ、さらなる意欲と能力の開発向上に繋げるとともに顧客満足度をも一人ひとりが十二分に発揮できるようにするための教育制度が考えられている。
2. 取り組みの概要
(1)障害者の現状と従事業務
現在雇用している障害者は5名である。障害の内訳としては、視覚障害1名、聴覚障害1名、肢体障害2名、内部障害(腎臓機能障害)1名となっている。
現在の配属部署、従事業務は、次のとおりである。
A(聴覚障害、30代女性)
本部・事務集中部に勤務。主に各営業店から送付された伝票や手形等の確認・検証・処理業務を行う。事務集中部には14~15名(パート含む)が配属されており、事務集当部は正確さと集中力が要求される部署である。
Aさんは、入庫後、筆談と口話を頼りに、仕事を覚えるのにずいぶん気を使ったという一方で、莫大な時間を費やして慣れない筆談をしてくれた職場の先輩にありがたい気持ちに満たされたと。
B(視覚障害、40代女性)
本部・総務部に勤務。すでにベテラン職員として総務部の重要な役割を担っている。
また、アナウンス能力も高く、館内放送及び当金庫内スポーツ大会等ではアナウンサー役として活躍している。
Bさんは入庫後の気持ちをこう述べている。「当金庫に入庫して23年、周りの人に迷惑をかけたことは数えしれず。自分の気づかないところで、たくさんの人にフォローしていただいて助けてもらっている。私は「不自由」なのでなく人よりも「不便」なだけ、人よりも「不自由」なだけなのだと」そして、今、素敵な家族と素晴らしい人たちの中で生かされている自分を最高に幸せと。
C(下肢障害[車いす使用]、40代男性)
本部・業務部に勤務。社会保険労務士の資格を有しており、当金庫年金相談業務における中核的人材の相談相手として重要な役割を果たしている。さらに、現在、社内の教育システムを利用してファイナンシャルブランナー1級の資格取得を目指している。この資格を得るためには、数ヶ月間程度の計画的な相当厳しい猛勉強が必要となる。Cさんのこの資格を習得しようという前向きな姿勢が、他の職員に対する刺激になればと考えると。
D(下肢障害[車いす不使用]、50代男性)
営業店に勤務。担当は検証業務であるが、障害の程度は比較的に軽く、バイクの運転にも支障がなく、業務の必要に応じて外回りもこなしている。
E(内部障害[人工透析治療]、50代男性)
Dと同様に、営業店の検証業務を担当している。中途で発症したものであるが、体調管理と腎臓透か通通院のための勤務時間に対する配慮を施している。
(2)障害者の採用
当信用金庫においては、特に障害者に限定して採用を行っているということはない。
業務の量や特性と障害者の適性や能力を考慮し、必要の都度、採用を行ってきた。今後も同様の姿勢である。
(3)障害者雇用のための環境整備
10年程前に、車いす使用者を採用した時に、4階と6階のトイレを車いすで使用できるように広くする改修工事を行った。
勤務している本部の床から配線や段差を取り払い、通路を広くすることによって、車いすでの移動が自由に出来るようにした。また、エレベーターは元々広く設営したため、車いすでの乗り降りに問題はなかった。


なお、この職員は、車いすでも運転できるように改造した自家用車で通勤しており、本店駐車場(車いすで昇降できるように隣に空きスペースがある場所)を利用してもらうようにしている。
このような配慮はごく日常的な場面でも見られる。例えば雨の日には別の職員が傘を持って車まで迎えに行ったり、通用口近くに停車した車を別の職員が指定の駐車場へ回したりしているのだ。組織が作ったルールで型にはめるよりも、互いの思いやりから自然に生まれたものの方が柔軟に機能するのは当然のことである。少なくとも現状においては、これまでのようなやり方で十分であろうと考えている。
(4)最後に:金融機関業務と障害者雇用
金融機関に勤務する職員の業務は多岐に亘る。外回りを行う営業業務、窓口でのお客様とのコミュニケーション能力が求められる業務、さまざまな金融相談に応える業務、本部業務、人材の管理、育成などである。
当信用金庫は、適材適所の人材配置と人材育成に取り組んできた結果が、障害者の能力開発と長期雇用に繋がっていると考えられ、厳しい経済環境の下で障害のない者も障害者も責任と自覚を持って働いていることが、一面では組織の強さに繋がっているのではないかと思われる。
熊本中央信用金庫は、長年、地域に密着した金融機関として、地域の企業やお客様からの信頼が厚い。地域密着型の経営姿勢が、障害者雇用にあたっても肩肘の張らない環境を作っているように思われる。この柔軟な姿勢やここで働く人々の自然体の意識がこれからも継続し、さらに向上していくことを望むものである。
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