作業工程を見直し知的障害者が働きやすい環境を整備した事例
- 事業所名
- 株式会社ひまわり畑
- 所在地
- 岐阜県加茂郡
- 事業内容
- 廃棄物処理
- 従業員数
- 16名
- うち障害者数
- 15名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚障害 肢体不自由 1 資源ごみの選別、リサイクル 内部障害 知的障害 14 資源ごみの選別、リサイクル 精神障害 - 目次

1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
(1)事業所の概要
株式会社ひまわり畑は、廃棄物処理業を営む株式会社橋本が、リサイクル事業の拡大と障害者雇用の促進を目的として、平成23年2月に設立した100%出資の子会社である。同年4月からは、株式会社橋本から知的障害者5名を移籍で受け入れ、事業開始に至った。平成23年9月には、障害者雇用促進法第44条第1項に基づく特例子会社の認定を受けた。
親会社では、知的障害者を準社員として雇用しており、単純な資源ごみの選別業務に従事させ、賃金は最低賃金を時間給で支払っていたが、在職中にフォークリフト免許を取得し、入出荷業務を行えるようになった者や、機械設備の操作が行えるようになった者もおり、一律な待遇では不公平が生じていた。また、準社員には昇給制度がないため、勤続やスキルアップの対価がなく、モチベーションの低下にもつながっていた。
そこで、子会社では柔軟な就業規則を定め、知的障害者を正社員として受け入れることとした。人事考課も業務実態に即した分かりやすい基準を定め、評価に基づき昇給および賞与に反映させた。退職金制度や福利厚生制度の充実も図った。
(2)障害者雇用の経緯
昭和48年5月に設立し廃棄物処理業を営む株式会社橋本が、ハローワーク職員の薦めにより平成16年6月からトライアル雇用奨励制度を利用して、知的障害者1名を採用した。この採用をきっかけに平成20年2月時点で、知的障害者の雇用は5名に至った。
平成21年頃からは顧客より、今まで産業廃棄物として処分されていた食品残渣や廃プラスチック類をリサイクルしたいとの問い合わせが急増したが、リサイクルコストの方が高く、受注に結びつくことはなかった。しかし、同年6月に障害者職業生活相談員を選任のうえ、障害者職場定着推進チームを発足したところ、知的障害者の配置転換やミーティングがしばしば行われるようになり、新たな工夫や改善が生まれ、業務効率が飛躍的に上がってきた。
そこで、平成22年4月に「リサイクル事業の拡張」と「障害者雇用の促進」をテーマに、今まで産業廃棄物として処分されていた食品残渣や廃プラスチック類のリサイクルを、障害者雇用により採算のとれる事業に変革させることを決意した。
その後は、平成23年2月に設立した株式会社ひまわり畑にて、平成23年12月までに、知的障害者9名と重度身体障害者1名の計10名を新規雇用し、リサイクル工程の見直しを図り、リサイクル事業の低価格化を実現した。これにより、廃プラスチック類のリサイクル事業が急激に拡大することとなった。
現在では、近隣の障害者授産施設等7団体との連携も図り、一般就労が困難な障害者に向けた在宅業務の提供や、障害者就労継続支援B型施設からの施設外就労の受け入れも行っている。
障害者雇用の促進とは、障害者を直接雇用するのみならず、一般就労が困難な人への仕事の提供や、一般就労を目指す人へのジョブトレーニングを提供することも重要であると考え、地域の福祉関係者とのネットワークづくりにも力を入れている。
2. 障害者の従事業務、職場配置
入社時は、プラスチック製品の解体作業等の単純作業を共同で行わせ、その作業の様子から、個々の能力、性格および障害特性を見る。その上で、より本人に合った作業場への配置転換を行う。配置転換後も作業性や周囲とのコミュニケーション能力を見極め、必要に応じ作業内容の見直しを行う。
日々のコミュニケーションを大切にし、人材育成は個々の能力に合わせ、スローペースで行い、挨拶ができるようになったら敬語を教え、機械の操作ができるようになったら伝票の書き方を教える等、段階を踏んで指導することで、スピードは遅くても確実な成長に繋げている。また、本人に悩み事や勤務態度の変化があった場合には、問題の解決に素早い対応を心掛けている。
知的障害Aさん 勤続1年(親会社通算8年)
- ①ペットボトル、その他プラスチックの分別作業および処理機械のオペレーター
- ②フォークリフトにて製品の入出荷および移動
- ③障害者のリーダーとして障害のある社員をまとめている
知的障害Bさん 勤続1年(親会社通算6年)
- ①空き缶類の分別作業および処理機械のオペレーター
- ②空きビンの積降作業
- ③フォークリフトにて製品の入出荷および移動
- ④体力があり、力仕事を得意とする
知的障害Cさん 勤続1年(親会社通算5年)
- ①発泡スチロールの分別作業および処理機械のオペレーター
- ②フォークリフトにて製品の入出荷および移動
- ③発泡スチロール減容機のメンテナンス作業
- ④理解度が高く、複雑な仕事でも正確にこなせる
知的障害Dさん 勤続1年(親会社通算5年)
- ①資源ごみを持ってくるお客様への受付および分別案内
- ②会話が好きで、接客を得意とする
知的障害Eさん 勤続1年(親会社通算4年)
- ①廃棄CD・DVD類および廃棄飲食料品等の分別作業および同作業のリーダーとして、チーム内への作業指示や指導を行う
- ②フォークリフトにて製品の入出荷および移動
- ③全ての職場を経験しており、他の職場へも応援に行く。大型特殊運転免許、ショベルローダー、高所作業車、車両系建設機械の免許も有している
知的障害Fさん 勤続1年
- ①ペットボトル、その他プラスチックの分別作業および処理機械のオペレーター
- ②仕事を覚える意欲が旺盛である
知的障害Gさん 勤続1年
- ①廃棄CD・DVD類および廃棄飲食料品等の分別作業
- ②リズムにのれば、高い集中力を発揮する
知的障害Hさん 勤続1年
- ①空き缶類の分別作業および処理機械のオペレーター
- ②空きビンの積降作業
- ③最年少社員。どんな仕事も積極的に行う
知的障害Iさん 勤続1年
- ①廃棄CD・DVD類および廃棄飲食料品等の分別作業
肢体障害Jさん 勤続1年
- ①廃棄CD・DVD類および廃棄飲食料品等の分別作業
- ②最年長社員。障害のある社員の相談役になっている
知的障害Kさん 勤続1年
- ①ペットボトルの分別作業および処理機械のオペレーター
- ②フォークリフトを免許取得した
- ③作業場の整理整頓が得意
知的障害Lさん 勤続1年
- ①廃棄CD・DVD類および廃棄飲食料品等の分別作業
- ②耳の不自由もあるが、努力家である
知的障害Mさん 勤続1年
- ①廃棄CD・DVD類および廃棄飲食料品等の分別作業
- ②フォークリフト免許を取得した
- ③理解力が高く仕事を覚えることが早い
知的障害Nさん 勤続1年
- ①廃棄CD・DVD類および廃棄飲食料品等の分別作業
- ②活発で作業が早い
知的障害Oさん 勤続1年
- ①ペットボトルの分別作業
3. 取り組みの内容、取り組みの効果、障害者自身のコメント
(1)取り組みの内容
知的障害者の採用にあたっては、入社日前までに、保護者同伴で工場見学に来てもらい、会社の説明、業務内容および就業規則の説明を行っている。入社後しばらくは、ジョブコーチのアドバイスを受けながら仕事を教え、社員の保護者へも勤務状況の報告を行っている。
就業時間については、入社当初、長時間の勤務が困難な社員は、仕事に慣れるまで1日6時間勤務からスタートする。また、トライアル期間終了後においても、長時間勤務ができない社員は、1日6時間ないし7時間勤務のパートタイマーとして採用することで、雇用の幅を広げている。
自力での通勤が困難な社員には、送迎バスを用意し自宅近くまでの送り迎えを行うことで、自動車運転免許を持っていない障害者の雇用も可能にした。
業務内容については、障害のない社員が、資源ごみの入荷から選別、処理機への投入、排出、出荷および計量までの作業を一貫して行っていた業務を、①処理機からの排出と入出荷業務、②選別と処理機への投入業務、③計量業務の3工程に分割し、知的障害者が従事し易い体制を作った。
安全衛生面については、より危険を少なくするため、防護柵やカーブミラーを増設した。また、安全衛生担当者による見回り回数を増やし、作業上の危険および体調の異変を早期発見できる体制を整えた。親会社の産業医による健康相談や、カウンセラーからのアドバイスも取り入れている。
職能が上がってきた社員には、フォークリフト免許取得にチャレンジする機会を与え、必要なOJTを行っている。また、難しい作業場への配置転換も適宜行う。ただし、配置転換した社員が、過度なストレスや不安を感じるようであれば、作業内容を見直したり、配置を戻したりと、臨機応変な対応を心掛けている。
(2)取り組みの効果
官公庁、学校および福祉関係者をはじめとする諸団体からの工場見学が急増し、リサイクル促進の啓発につながった。また、大手企業からの受注が獲得できた。
今まで廃棄していた資源ごみをリサイクルすることにより、処理コストの低下および資源の有効活用が達成できた。
知的障害者のために作業工程を見直し業務を分割して成功した経験から、親会社も廃棄物収集運搬業務の見直しを図り、定年後の継続雇用および高齢者の雇用枠を確保することができた。
今後は、今までのノウハウを生かし、親会社が新設を予定している工場でも、知的障害者を5~7名新規採用し、資源ごみの選別を請負う予定である。また、親会社の経営する工場2棟と葬祭用セレモニーホール3棟について、日常清掃業務の請負も新規事業として検討中である。
(3)障害者自身のコメント
- 知的障害Aさん
「自分が頑張っていることはリーダーをすることです。リーダーとして選ばれたということもありますが、自分にとって人との接触などが苦手なので、克服できたらと思っています。少しずつではありますが、みんなが楽に仕事ができるように頑張っています。
リーダーのことだけじゃなくペットボトルの分別、圧縮の仕事も頑張っています。その仕事で機械を使って作業していて、機械のトラブルがあったりしたら早く元に戻せるように頑張っています。仕事でフォークリフトに乗っていますが、フォークリフトで物にぶつかったり、物を壊さないように気をつけて頑張っています。自分の仕事が終わったら機械の点検、身の回りの清掃と缶の応援を頑張っています。
今後は、少しの間だけでもDVDの解体がしたいです。自分がどのくらいのスピードでできるのか、みんなについていけるのか、確かめたいからです。
昼休みの時間にみんなとやるゲームやカードゲームをすることが楽しいです。今は、特にカードゲームが楽しいです。カードの効果を見て作戦を考え、それで勝てたらうれしいからやっています。」 - 知的障害Cさん
「発泡の分別を頑張っています。なるべく鉄を流さないようにしています。他の部署に応援に行っても頑張ります。機械のエラーをしないようにしています。」 - 知的障害Dさん
「エコひろばで、お客様の手伝いをしています。お客様といろいろ話したりするのが楽しいです。僕はこのままエコひろばがいいです。僕はエコひろばでやる仕事が大好きです。」 - 知的障害Eさん
「主にCD、DVDの解体をしていますが、みんながうまく作業をできるようにし、トラブルを軽減したいです。
自分の場合、どうしてもみんなの中に入ることができず、悩んでしまいます。ストレスを軽減したいです。」 - 知的障害Fさん
「今は、みんなとカードゲームをすることが楽しいです。
今後は、やったことのない発泡の機械とペットボトル粉砕機の仕事をやってみたい。今いるところも楽しいけど、ひととおりの仕事をやってみたい。」 - 知的障害Gさん
「CD、DVDのフィルム取りを主にやっています。さらに、解体もやっているけど、サンテナが溜まったら、なるべくEさんに報告しています。そのほか、ペットボトル、廃プラスチック類のお手伝いに行くことがあります。」 - 知的障害Hさん
「缶の分別で手を早く動かして、早く分別したりして、一生懸命頑張っています。今後は発泡の分別もやりたい。」 - 知的障害Iさん
「一生懸命やっている。いろんなも物が流れてくる。」 - 肢体障害Jさん
「DVD、CDやクッキーの分別をやっています。自分は4時までで、できるだけ沢山やるように頑張ってリズムよく動いています。帰るときは、たまに声がかけづらいときもあります。音がやかましいので、静かな場所が良いです。朝、早く起きるとき、少し眠たいです。つらいときもあります。」 - 知的障害Kさん
「DVD解体やビンや粉砕の仕事をしてきました。今は、粉砕機の仕事をしながらリフトも会社でとらしてもらい、今は粉砕機の仕事を頑張ってやっています。これからも一生懸命粉砕機の仕事を頑張ってやっていきたいと思います。
入社してから友達も増えて、遊びに行ったりしています。これからも皆で仕事を頑張ってやっていきたいと思います。」 - 知的障害Lさん
「CD、DVD解体分別を頑張ってます。ペットボトル解体分別を頑張っています。今後は、ペットボトル解体分別とビンで仕事をしたいです。」 - 知的障害Mさん
「フォークリフトの運転が上手くできるように頑張っています。」 - 知的障害Nさん
「お菓子の解体やDVD、CD解体や、そして僕が一番やりがいのある仕事が、まず1つ目は、ペットボトルの選別です。ペットの中身をひたすら見つけて取り出すことが好きだし、とても簡単なことでもあります。2つ目は、2週間に1回だけある廃プラスチック類です。この仕事はめちゃくちゃ大変だし、やっても先が進まないことが苦労しています。
会社へ行くことが毎回楽しみです。今後は、1回だけでもいいから、粉砕機をやってみたいと思っています。リフトの免許を取ったらやりたいです。」


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