創意工夫があれば、活躍できる職場がある
- 事業所名
- 相互タクシー株式会社
- 所在地
- 和歌山県和歌山市
- 事業内容
- 運輸業(事業区域は和歌山市域 タクシー保有台数139台)
- 従業員数
- 248名
- うち障害者数
- 4名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚障害 肢体不自由 2 タクシー乗務員 内部障害 2 電話受付・配車係、タクシー乗務員 知的障害 精神障害 - 目次

1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯・背景
(1)事業所の概要
相互タクシー株式会社は、事業区域を和歌山市域とし、保有台数(小型車・中型車・ジャンボタクシー)139台と多くの台数を取り揃えている。
経営理念として、「『命を燃やす』~高い志と優しい心根を体現する~」を掲げ、高い志と優しい心根をあわせもった集団として、「一隅を照らしながら」黙々と、そして堂々と仕事に取り組むこと、お客様、取引先、社員とその家族、そしてこの会社に関わるすべての人々の心に、灯りを灯していこうと提唱している。
当該企業はこの理念のもと、障害者雇用に対しても深い理解を示し、雇い入れを行っているところである。
また、障害者がそれぞれの役割をもって、各々の立場・職場において、その能力を活かすことにより「一隅を照らす」という精神が、長年にわたる職場風土・会社精神を形作っている現れである。
昨今、企業にもダイバーシティー対応が求められる状況になってきているが、すでに同社では、障害を持っていてもなんらかの工夫をすれば十分に障害のない者と同じように能力を発揮することができるとの観点から、常に障害者の新たな職務開発を考え、多くの障害者を社員として迎え入れ、重要な戦力としている。
同社はタクシー部門・観光部門を擁し、「絶対安全!」「絶対安心!」「絶対便利!」を合言葉に、タクシー業界にあっては常にトップクラスの業績を誇る資質の高い業務を展開し、タクシー乗務員のマナーの良さに関して、地元和歌山において、大変高い評価を得ている。
また観光ハイヤーでは、乗務員の為の歴史講座を開き、観光客に向けたサービス向上に力を入れている。この歴史講座は、和歌山市観光協会の人を講師に招き、半年に1回実施している。講座には約20名のドライバーが参加して、和歌山市中心部を描いたマップを使い、名所旧跡の説明にメモを取りながら、いつも熱心に聞き入っている。また平成22年には、世界遺産で有名な『高野山』での現地実習も行った。
このように、「観光ガイド」にも力をいれ、『観光和歌山』の推進にその力を発揮し、観光ハイヤーを通じて、地元の活性化に大きく貢献しているところである。
(2)障害者雇用の経緯、背景
① | 障害者雇用の経緯 同社は、創業(昭和29年1月6日)以来、今年で57年目に入っている。従来から障害者雇用について深い理解があり、最初に障害者を雇い入れたのは、いまから、約30年前(昭和56年頃)に遡る。 障害者の就労を考えるとき、「障害者にはできない」という視点ではなく、「何処かを工夫すれば、できる仕事は何かある」という視点で職務内容を振り返り、その工夫次第で「できる」可能性のある「仕事」が多くあることに気づき、その具体策を講じるように努めてきた。 そうした視点で、障害者との入社面接に普段から応じており、約30年前から、重要な戦力として常時3人~5人の障害者の雇用を継続している。 その姿勢は、経営理念である「『命を燃やす』~高い志と優しい心根を体現する~」という、「優しい心根を体現すること」に基づくものである。 また、約30年前から先輩の障害者の仕事に対する模範的な過去の実績があるからこそ、現在まで障害者雇用が途切れることなく、脈々と繋がっている。 |
② | 事業所としての姿勢 約30年前に障害者雇用を始めてから現在まで、障害者雇用を継続していこうとする受け入れ態勢は、毎年確実にその対応の厚さを向上していっている。 例えば、自動車による通勤者が多いなかで、いち早く建物に一番近くて便利な場所に障害者専用の駐車スペースを確保した。 また過去に、車いすにて仕事に従事する障害者を採用するにあたり、早期の就労要望に応えるため、会社負担で速やかに事務所入り口をスロープ化するとともに、執務室内・洗面所等できるだけ車いすで移動ができ、職務に影響がないよう事務所内部のバリアフリー化を図るなど、継続就労に向けた対策を講じている。 また当社では、社内新聞「相互ニュースてまり」を年2回(半年に1回)発行しており、すでに16号(2011年10月号)にて8年を経過している。ここでは、「和歌山再発見!」と銘打って、従業員以外の一般の人へも配布し、広くその季節ごとの和歌山の名所・旧跡の見所を紹介し、また、相互の「顔」ということで、社員の寄稿文をこの新聞に掲載している。 このように、常にコミュニケーションを大事にする姿勢が、この新聞発行にも表れており、障害者雇用に対する自然体で暖かい、会社全体を通じたきめ細かい配慮を感じ取ることができる。 ![]() 事務所入口もスロープ化
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2. 取り組みの内容、障害者の処遇
(1)取り組みの内容
① | 募集及び採用 同社では、地元ハローワーク・求人情報誌・地元地域情報誌等を媒体に採用(労働)条件を明示して求人活動を行っており、さらに毎週土曜日に会社説明会を開催し、面接等を実施している。 その過程で、障害者に対しても就職の機会を大きく広げ、何かしらできる仕事はあるとのプラス思考のなかでの、採用選考をおこなっている。 |
② | 業務内容及び障害者の職場配置 現在、障害者は4名在籍しており、勤続年数は5か月から8年9か月と、まだ経験の浅い人からベテランまで幅広く様々であるが、業務内容はタクシーの乗務員が大半を占めている。 それぞれがタクシー運転手等として、日々業務に精励しており、当社の重要な戦力の一員として安心・安全運転に徹し、同社のカラーである「懇切・親切な接客マナー」にてお客様の信頼を得ている。 また、会社としてもお客様の意見に、的確に素早く対応し、同社の社是である、お客様の「絶対便利」を合言葉に、その要望にお応えをしている。 地元和歌山も高齢化が進み、高齢のお客様の「便利」な足として、その利便性を要望されているが、同社のきめ細かな対応は、お客様に愛されて50余年のご愛顧・ご支持を得ている所以でもある。 全体的に障害者の勤務姿勢は、同社の経営理念である、「『命を燃やす』~高い志と優しい心根を体現する~」ことを常に心がけており、自身も障害を持ちながら、弱い立場の高齢者等のお客様に対し、気配りが行き届いた質の高い接客マナーの実践をもって障害のない人達と同様にお客様の厚い信頼を得ている。 |


③ | 就業以外のフォロー 同社は、従業員数が現在248名であり、そのうち4名が障害者である。 4名の障害者は、いずれも前述のように、任せられた職務の中で、日々その責務を果している。 同社としては、4名の障害者がその職務に専念できるように、様々な工夫・配慮を講じているところであり、バリアフリーへの改善・障害者専用駐車スペースの設置等に加えて、就業以外での活動として、従業員同士のスポーツ活動(レクリエーション活動)にも力を入れている。ソフトボール同好会(人数約20名)をはじめ、ゴルフ、ボーリング等のクラブ活動も活発に行われており、8年前からは、社内新聞「相互ニュースてまり」の発行を開始し、従業員全体のコミュニケーションの促進に特に力を入れている。 仕事を通じ、また、社内新聞・クラブ活動を通して、経営理念である、『命を燃やす』の精神を実践する。そのことが、障害者雇用の前向きな職場環境・職場風土を培う土壌になっている。 |
(2)障害者の処遇
同社では、約30年前(昭和56年頃)から積極的に障害者雇用を推進しているが、基本的にその当時から、賃金体系・就業時間等において、障害のない社員と同等の処遇条件に一貫している。
また、内部障害のため、通院を余儀なくされる人には、どうしても一定の時間、職場を離れることになるが、長年の創意工夫で時間のリカバリー体制が定着しており、きめ細かな人員配置や勤務割表が、スムーズに毎日の業務に支障なく行われている。
障害を有する従業員の「能力」「資質」はもとより「意欲」が高いことで、職務に対し常に前向きであること、同社の経営理念である『命を燃やす』の意味をよく理解していること、質の高い接客マナーを実践していることなどから、そのキャリアアップを通して、障害の有無にかかわらず、一般の従業員同様の処遇環境を整えている。
3. 今後の課題と展望
同社は、30年前から障害者雇用の重要性を認識し、以来その精神は人事関係者に受け継がれ、今日まで障害者雇用を維持・向上している。
地元和歌山において、業歴50余年の実績を残してきたが、今後とも障害者雇用に深く関与していくことが、企業の社会的責任(CSR)としての重要性を増してくるものと考えている。
これからも、企業として様々なことが、経営環境・労務環境のなかで起こってくると思うが、そのひとつとして、ダイバーシティー対応が求められるようになることが考えられる。
その具体策として、まさに、この障害者雇用対策の拡充もひとつの要素として、考慮しなければならない状況となってくることが予想される。
障害者が、快適に職務に専念できる環境づくりには、ハード面・ソフト面からのアプローチが大切であり、障害者雇用を推進していく具体策について、そのプランニングを助成することが求められてくる。そのためにも、障害者雇用推進の入り口だけでなく、継続雇用、そして働きがいのある職場づくり等の諸施策にも、更なる配慮が必要となってくる。
同社としては、これまでの障害者雇用の実績・経験を新たに検証し、従来から培ってきた障害者雇用に関する創意工夫を更に進化させ、これからの新たな障害者雇用の「展望」を目指していきたい。
そのためには、障害者を含めた、高齢者、女性社員の活用等、いままでの画一的な働き方のパターンから、多種多様な働き方のパターンを作り出す状況が生じ、その中での障害者雇用のあり方もより良いものに必然的に変わってくるものと考える。
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