障害者にとって働きやすい環境を整備し、能力を最大限に発揮する機会の創出
2014年度作成
- 事業所名
- 日本食研スマイルパートナーズ株式会社
(日本食研ホールディングス株式会社の特例子会社) - 所在地
- 愛媛県今治市
- 事業内容
- 食品包装・加工業
- 従業員数
- 27名
- うち障害者数
- 15名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚・言語障害 6 パック詰め 肢体不自由 2 サンプル作り、シール貼り、事務 内部障害 知的障害 7 パック詰め、サンプル作り、シール貼り 精神障害 発達障害 高次脳機能障害 難病等その他の障害 - 目次
![]() 事業所外観 |
1. 事業所の概要・設立の経緯
設立日 | 平成22(2010)年10月1日 ※この間に障害者の就労に対応できるように作業場を改修 |
事業開始日 | 平成23(2011)年4月1日 |
特例子会社認定日 | 平成23(2011)年5月9日 ※障害者は7名でスタート |
設立目的 | 障害者にとって働きやすい環境を整備し、能力を最大限に発揮する 機会を創出するとともに、更なる雇用の機会を図るため |
従来より障害のある人たちを雇用していたものの、本人たちの能力を十分に発揮していただく態勢が整っていたとは言えない状態であった。それまでは工場内の業務に合う聴覚に障害のある人を主に雇用していたが、障害者をサポートするためのソフト面・ハード面での資源を集中させることで幅広い障害者の雇用ができるように特例子会社を設立することとなった。
2. 取組みの内容
作業内容は主にパックインパックという調味料の袋詰めを行っている。中に詰める調味料は親会社の工場で生産し、それをスマイルパートナーズで詰め合わせている。この業務は親会社の工場で一つの部門として従来からあったが、障害者の雇用促進を考慮し手作業でできるこの業務だけを、特例子会社である日本食研スマイルパートナーズ株式会社のメイン業務として移管した。
![]() 袋詰め作業
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![]() シール作業
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(1)サポートのあり方(ソフト面)
- ア. 入社時は障害者一人に障害のない社員二人でのフォロー体制わからないことがあれば誰にでも聞いて欲しいと言ってもなかなか話しづらいということが多くの障害者が持っている特性である。主に担当となる指導者を決めておくと話しやすくなる。当初は、障害のない社員の中には障害者を指導することに対して大きな負担感を持つ人もいたが、障害者を指導することも大切な仕事であることを徐々に理解してもらっていった。また、昼休みは、障害者が孤立することがないよう全員で同じ場所で食事をとるようにしている。
- イ. 筆談器・タブレット端末の利用(聴覚障害者)間違ってはいけないこと・必ず伝えないといけないことは現場内で筆談器等を使い文字にして確認をしている。また、社内文書の伝達の際も、漢字にルビを振り確認済のサインをもらい伝達漏れのないようにしている。
- ウ. 障害のない社員の自主的な手話講座受講職場内に聴覚障害者が多くいるので、障害のない社員の中には自主的に地元の社会福祉協議会が主催する手話講座を業務終了後に受講し、職場内で手話を使い簡単なコミュニケーションが取れるようになった。また、会社行事や社内の勉強会では手話通訳の人に来ていただいている。
- エ. 作業指示書の作成作業手順を教える際、指導する人により伝え方が少しでも違うと障害者が戸惑ってしまうので、視覚的に解るように全商品について写真での作業手順書を作成した。
- オ. 家庭・支援機関・会社間の連絡帳の利用(知的障害者)障害者が就業後にその日の業務についての感想等を記入し、担当指導者がコメントを記入し自宅へ持ち帰り、保護者の所見をもらっている。このことは会社と家庭での見守りに役立っている。また、必要があれば支援機関にもアドバイスをいただいている。
- カ. ジョブコーチ等支援機関との連携障害者職業センター、障害者就業・生活支援センター、ハローワーク、社会福祉協議会、特別支援学校等と連携をとり、障害者の業務適性の見極め・採用後の職場定着に向けたフォローアップ等の就業指導のほか、障害のない人のための勉強会の開催、日常生活等の問題について関係者での相談をするようにしている。知的障害者を採用した際、1回目の職場実習ではできないことや問題点が多く、採用には反対意見もあったが、その後できないところは障害者職業センターで訓練を受け、また、家庭には社会人としてのマナーや言葉遣いなどの指導をお願いしたところ、2回目の実習では改善されたことから採用に繋がり、今では戦力となって活躍してくれている。1度の実習でできる・できないを即断せず、問題提起しながら長い目で見て育成していくことを学んだ。
- キ. グループ内企業への障害者雇用の情報発信グループ内企業に障害者雇用の理解とスマイルパートナーズの現状を知ってもらうために、グループ会社の部長・リーダー全員に職場見学をしてもらった。そのことが後に業務委託の受注に繋がった。
- ク. 障害者のモチベーションアップ業務能力の判断については、当初は日頃の業務態度を見ての感覚的な判断だったが、力量表・教育計画表等を作成し数値的な判断を加味することに移行した。このことにより個々の目標が明確になりスキルアップに繋がっていった。また、その目標達成を昇給判断の参考にもしているのでモチベーションも上がるようになった。
- ケ. 勤務時間を柔軟に運用障害者本人の体力・精神面を考慮し短時間労働も可能としている。
(2)サポートのあり方(ハード面)
- ア.作業場のリフォーム従来の作業場をバリアフリーに改修した(フロア・通路・自動ドア・車いす用スロープ・トイレ・駐車場等)。また、事業開始時より業務量が増えたので作業スペースを倍の広さへ拡張した。
- イ. 地震・火災別の警報ランプの設置聴覚障害者が多くいるので、作業場・休憩室等に地震・火災別に警報ランプが光る装置を設置した。年2回の避難訓練も実施している。
- ウ. 聴覚障害者用火災連動機器・光るチャイムの設置入寮している聴覚障害者のために火災報知機と連動した腕時計タイプの機器と、来客者が来れば室内のランプが点滅する機器を設置した。
3. 問題点と特例子会社を設立しての効果
(1)問題点
- ア.障害のない社員とのコミュニケーションが取りづらい朝礼・作業等での意思疎通が難しい。また、聴覚障害者だけ知的障害者だけというように同じ障害種別の人だけで集まる傾向がある。
- イ.指導者への負担増障害のない社員は自分の仕事もしながら障害者の指導もしないといけないということで業務負荷が大きくなっている。
- ウ.業務外(プライベート)の部分への配慮プライベートの部分についてはどこまで関わっていくべきかの判断が難しい。
- エ.業務量の確保特例子会社も一民間企業であり、利益を出して継続経営が必要である。現在は業務委託をグループ会社に依存している状況である。今後もグループからの業務委託が維持されるためには更なる努力が必要である。
- オ.業務幅の脆弱さ現在はパックインパックの業務が主となっており、他の業務が少なく多様な障害者が雇用できていない。業務幅を拡大し、さまざまな障害をもった人を雇用できるようにしていきたい。
- カ.各種会社行事等への参加意識の欠如創業記念日・慰安会等他のグループ会社社員と交流できる行事があるが、スマイルパートナーズの社員以外との交流をしたがらない傾向がある。社会人としてもっと視野を広げて欲しい。
(2)特例子会社を設立しての効果
- ア.担当業務に対して真摯に作業を行っている障害者を見て、他のグループ会社の社員は大きな刺激を受け、職場の雰囲気も良くなっている。障害者たちに負けていられないぞという思いが、他の社員へ、気づきや元気を与えてくれている。
- イ.見学に来られた障害者の御家族から、お子さんが以前の職場の様子と見違えるくらい自信を持った明るい表情になって毎日過ごせるようになったとの言葉をいただいた。以前の職場では何をしてもダメ・ダメ・ダメといわれて自信を失くしていたのだと思う。この職場でやりがいを見つけてくれたのが嬉しかった。
- ウ.外部からの見学・職場体験等も積極的に受け入れ大きな評価を頂いている。日本食研グループのCSR活動に貢献できている。
4. 今後の課題と展望
(1)毎年継続した障害者雇用
特に精神障害者雇用の実績を作り、その職場定着のノウハウを蓄積していきたい。
(2)業務拡大での経営の安定
現在はグループ企業内よりの委託業務だけであるが、将来的にはグループ外の業務も取り込んでいきたい。また、さまざまな障害者を雇用できるように業務の幅を広げていきたい。
(3)人財育成
障害者の方にスマイルパートナーズでキャリアアップしていただき、リーダーとなれる方や親会社の工場でも働ける人財を育てていきたい。
(4)労務環境面での待遇向上
将来不安なく生活ができる給与等待遇面の更なる改善を進めたい。
執筆者: | 日本食研スマイルパートナーズ株式会社 統括部長 矢葺 道夫 |
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