感謝と思いやりの心があふれる職場を目指して
- 事業所名
- 小柳産業株式会社(法人番号 5100001009653)
- 所在地
- 長野県上田市
- 事業内容
- 鉄・非鉄、古紙等資源ごみのリサイクルおよび一般・産業廃棄物の処理
- 従業員数
- 90人
- うち障害者数
- 11人
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚・言語障害 肢体不自由 内部障害 知的障害 8 廃棄物の選別、加工、回収補助等 精神障害 3 発砲スチロールの溶融、回収補助等 発達障害 高次脳機能障害 難病 その他の障害 - 本事例の対象となる障害
- 知的障害、精神障害
- 目次
-
本社 上田工場の外観
リサイクルセンター丸子工場の外観
1.事業所の概要
(1)概要
当社は明治22(1889)年、小柳平三郎個人商店として創業以来、リサイクルを主体とした企業として地域社会の皆様と共に歩んでまいりました。昭和28(1953)年に有限会社となり、昭和52(1977)年に株式会社に組織変更を行い今日に至っている。
当初、鉄屑や非鉄金属、古紙等を買い集め製鉄所や製紙所に販売するスクラップ問屋でした。ところが、時代とともに取引をしていた排出企業様から産業廃棄物の処分の依頼を受けるようになり、産業廃棄物の処分業の許可を取りました。そして今日では自治体からの委託を受け、家庭ごみのステーション回収や不燃ごみの選別処理なども行っている。
また、地域の家庭の依頼で不用品の片づけ・処分や家屋の解体も行うに至っている。
人が生き、社会活動を営めば必ず「ゴミ」が出ることから、これを適正に処理することは快適な社会環境を維持するうえで必要であること。また、循環型社会の形成が問われている今日、当社のような事業は「静脈産業」と呼ばれるようにもなり、社会的重要性が高まっていることを自覚している。
(2)経営理念
「小柳産業株式会社は感謝と思いやりの心が溢れ、従業員が生き生きと誇りを持って働き、地域社会とお客様に信頼される誠実でたくましい企業を目指します。」
(3)環境基本理念
「小柳産業株式会社は地球環境の保全の重要性を深く認識し、廃棄物の処理とリサイクルの推進、並びに事業活動に伴う環境への負荷の軽減に取り組み、地域社会の発展と環境の保全に貢献します。」
2.障害者雇用の経緯、制度活用等
(1)障害者雇用の経緯
当社の障害者雇用は、長野県上小地方事務所商工雇用課求人開拓員が平成17(2005)年の2月に当社を訪れ、「会社が倒産し、職を失った障害者がいるのだが雇用してもらえないでしょうか」と声をかけてきたのが始まりであった。当時は障害者雇用などということについて考えたこともなく、雇用したとしても何をどうすればいいのか見当もつかない状態であった。しかし、当社にとっての障害者雇用一人目となったTさんが乗用車の免許があり自分で通勤できること、その上フォークリフトの免許を取得しており戦力になれるかもしれないと考えたこと、そして求人開拓員が熱心に勧めてくれたこともあってまずは職場実習のような形で採用することにした。
最初にTさんに担当してもらったのは発泡スチロールの溶融の作業であった。この作業は当時工場内で最高齢の社員が担当しており、優しく丁寧に教育した。そして求人開拓員も足しげく当社を訪問し、Tさんの相談にも乗ってくれた。こうした支援の結果Tさんは職場になじみ、平成17(2005)年の5月には正社員となった。その頃にはほかの社員もTさんが極めてまじめで、一生懸命仕事していることを認め、同じ社員として協力し合いながら仕事をするような関係ができたと考えている。
その後ハローワークや上小障害者就業・生活支援センター、障害者就労移行支援事業所などの紹介で、当社の地域社会への貢献の一環として障害者雇用を増やしてきた。しかし、何の課題もなく障害者雇用が実現できてきたわけではなく、「指示通りに作業してくれない」、「コミュニケーションがうまく取れない」などの課題があった。また、精神障害のある社員を雇用するときには最初に知的障害のある社員を雇用するとき以上に社内での検討を重ねた。このときには役員、工場の責任者、現場でともに作業をする社員などが集まり、就労支援機関の担当者から精神障害の特性、雇用に際して配慮すべきことなどについての説明を受けた。こうして現在は精神障害のある社員の雇用も行っている。
(2)活用した制度
障害者介助等助成金(業務遂行援助者の配置助成金)
職場支援従事者配置助成金
特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者雇用開発助成金)
障害者短期トレーニング促進事業
トライアル雇用奨励金
ジョブコーチによる支援事業
障害者民間活用委託訓練「実践能力習得訓練コース」
3.障害者の従事業務
障害のある社員の能力や得手不得手を踏まえながら、障害のない社員と同様の業務に従事してもらっている。業務は大別して工場内の業務とゴミステーションからの可燃ごみ・不燃ごみ・資源ごみの回収作業がある。
(1)工場内の業務
【廃棄物の選別業務】
リサイクル業、廃棄物処理業を営む当社の最も基本的な業務であり、この中には、次のような業務がある。
- ア.
- コンベアーラインを使った上田市の容器リサイクル法のプラスチック、および不燃ごみの選別作業
- イ.
- 産業廃棄物の手選別作業
- ウ.
- 鉄・非鉄金属の選別・手解体作業。
- エ.
- 束ねられた新聞、雑誌のヒモ取り作業・古紙の選別作業
これらのすべてに障害のある社員が携わっている。
【廃棄物の加工業務】
- ア.
- 圧縮梱包機(ベーラー)を使った段ボール、ペットボトル、廃プラスチックの梱包作業
- イ.
- 金属プレス機を使ったスチール缶、アルミ缶のプレス作業
- ウ.
- 溶融機を運転しての発泡スチロールの溶融固化の作業
- エ.
- プラズマ切断機を使ってオーバーサイズのステンレスを炉前サイズに解体・切断する作業
このような廃棄物の選別業務、加工業務ではフォークリフト、ショベルローダー、バックホーが使用されているが、障害のある社員の中で資格を取った社員はそれらを運転して業務に携わっている。当社の工場内の業務は、扱っている品目の種類が多く、その処理方法も多様であることから、多くの作業があり、個々の障害のある社員の障害特性等に応じて作業を分担している。
(2)ゴミステーションからのごみの回収業務
塵芥車(パッカー車)やダンプトラックでのゴミステーションからの可燃ごみ、不燃ごみ、ビン、ペットボトルの回収業務である。これには運転手と助手がおり、トラックの運転免許がある障害のある社員は運転手の役割も担っている。
また、ゴミステーションの数は500か所もあるが、回収するゴミで適正に排出されていないものは「レッドカード」を貼付して回収しないことになっている。
4.障害者雇用の効果と課題
(1)障害者雇用の効果
障害者雇用の最大の効果は、障害のある社員が十分に戦力となり、「当社の業績に貢献してくれている」ということである。企業は利益の追求が目的であり、それが存続できるための基礎であることから、これに貢献できるということが社員が社員足りうるということであり、この意味から障害のある社員は、当社の業績に貢献している立派な社員と言える。もちろん当社のすべての障害のある社員が最初から複数の作業を行うことができたわけではない。はじめは一つの作業が少しずつできるようになり、やがては熟達して作業をこなすことができるようになる。そして別の作業も覚えてゆく。このような過程は障害のない社員より、時間がかかる場合もあるが、仕事を覚えるのに時間がかかるのは誰も同じことであり、程度の差にすぎない。そしていったん習熟すると、驚くような集中力で、まじめに作業に取り組んでくれる障害のある社員もいる。もちろん、入社当初は飽きっぽくて作業に集中できなかったり、指示された以外のことを勝手にやり始めたりといったことがなかったわけではない。しかし、粘り強い関わりを通して、自分が認められていると感じたり、一つの作業に自信を持ったりすることをきっかけにして変わっていくことを実感している。
障害のある社員を雇用して得られた効果の一つは、個々の社員の特性に応じてかかわりを考えるということが、障害のない社員にも行われるようになってきた、ということである。仕事を遂行する上での一定の基準のみで社員を評価するのではなく、個々の社員の適性を踏まえどのように能力を高めるか、と考えるようになり、このことは障害の有無に関係ないと考えている。
また、手順書の作成などを行う際には、障害のある社員に対しても教育することを想定して、写真などを使ったわかりやすいものを作るようになり、これが結果的にはすべての社員にとって理解のしやすい内容となった。
作業風景
リフトによる荷役作業
プラズマ切断機によるステンレス解体作業
古紙の選別施設での
不適合物除去作業金属仕分け作業
選別施設での不燃物仕分け作業
手選別コンベアーによる容器包装
リサイクルプラの不適合物除去作業(2)障害者雇用の課題
当社の作業には、危険をはらんだものが多く、障害のある社員の雇用にとって、一番目の課題は安全確保という点である。軽微なものが大半であるものの労働災害も発生している状況の中で、障害のある社員も含めた全社員の安全確保ということが極めて重要な課題になっている。障害のある社員の中には危険予知をすることが苦手な社員もいることから、このような社員の安全確保を図るために業務分担の見直しなども含めて取り組む必要があること。
二番目の課題としては、フルタイム勤務では働けない、あるいは確実に出社し仕事をすることができない、といった障害のある社員に対するかかわりがある。このような場合、社内におけるコミュニケーションを最大限にとることが基本となるが、一企業だけでの対応には限界がある場合もあることから、状況に応じて医療機関スタッフや就労支援担当者等との連携を図る必要があること。
三番目の課題としては、障害のある社員のモチベーションを常に高めてゆくことが重要であり、当社ではこれまでもフォークリフト等の技能資格取得に向けた取組、というようなことも行ってきており、これからも行う必要があること。
このような取組も障害のある社員にとって自信につながり、仕事に対する意欲を高めことにつながるものと考えている。そして今後は、今まで以上に当社の仕事の持つ「重要性」と「社会的意義」についての自覚を促し、誇りをもって仕事に臨めるようにできればと考えている。
執筆者:小柳産業株式会社
常務取締役 内堀 眞也
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