中途障害者の職場復帰のための職務配置と施設の改善
2002年度作成
| 事業所名 | 帯広松下電工株式会社 | |||||||||||||||||||||
| 所在地 | 北海道帯広市 | |||||||||||||||||||||
| 事業内容 | 松下電工（株）が制御機器、照明、情報機器、電子材料、電器、住建の6事業に分社している中で、帯広工場は制御機器の製造工場として、配線器具、制御スイッチ、制御リレーなどを主に製造している。 | |||||||||||||||||||||
| 従業員数 | 580名 | |||||||||||||||||||||
| うち障害者数 | 7名
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1.障害者となった経緯
| 入社して5年の、金属プレスオペレーターの職員が日曜日にモーグルスキーで空中に飛び出して回転をする「エアー」の練習中に失敗して背中から落ち、脊髄を損傷（脊髄損傷による弛緩性麻痺により両下肢機能の全廃）し半年入院、その後リハビリなどで2年間の休職となった。 |
2.会社の情報把握
| 会社には怪我と同時に一報が入り、翌朝総務課において詳細が把握されたが、重症での入院であり、社長、専務を中心に対策協議の結果2年間の休職期間制度もあり、当面は怪我の回復を見守ることとなった。 |
3.会社の支援体制と検討経過
| 会社としては対策のために特別の名前をつけたチームや対策委員会の設置はしなかったが、事故半年後の本人の症状が回復するにともない、社長以下総務課が中心となって復職時の職場配置と職務内容について検討を行った。 これまで従業員で車いすは初めてであることから、どのような配慮が必要か、これまでの三交代制からの切り替え、これまでの業務経験を活かすことができること、本人に対する周囲の心がけ、本人に対する教育・訓練などの検討を重ね、その結果、会社として事前に次の職場を用意し本人に提示すると同時に本人の希望を聞くこととした。 復職時の仕事は、従前、本人が携わっていた金属プレスのリレー部品加工業でも必要であった「品質管理」の知識を活かすことができること、パソコンは本人が従前から使っており馴染めやすいこと、復職時の職場が1階であれば通勤のための駐車場を新たに設置した場合に近いこと等から「品質保証部」の「品質管理課」の職務を提示することとし、同時に教育・訓練や周囲の理解のための内部調整を進めた。 提示は、症状が固定した頃にすることとし、それまでは回復を第1とした。 会社としては法律上の決まりは勿論のこと、私的な事故であっても、本人がやる気があり会社のニーズと合えば全面的に支援を行う方針であり、これまでの本人の実績からも方針に変わりがないことは当然であった。 |
4.本人との相談と教育・訓練
| 怪我の回復が進み1年半経過後、本人から希望を聞くと同時に、会社の検討内容を伝えた結果、本人は気持ちよく了承。 休職期間中は新配置職場の上司がチューターとして職場復帰のための教育・訓練を行い、2週に1回は出勤して会社のソフトによる練習など半年間にわたって勉強・訓練をして復帰後にそなえた。 |
5.職場改善などの支援内容
| 職場における車いす使用者は初めてのため検討した結果、通勤、業務、福利厚生などの全般にわたる配慮が必要であり、北海道障害者雇用促進協会とも相談の結果、中途障害者関係助成金の外自動車車庫の新設と昇降機の設置、通路ドアの自動化、職場入口ドア改修、2階への階段のリフト、2階用の車いす、障害者用トイレ等について改善することにし、助成金の申請をすることとした。 |
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6.本人の復職への意気込みと人生観
| 会社における事前の検討、早めの対応や誠意、そして周囲の温かい接触に本人は当初のショックから早期に立ち直り、早くからの訓練や勉強に取り組むことができ、持ち前の明朗・闊達な性格がよみがえったものである。 周囲もそうした本人の仕事に対する積極性や持ち前の明るさや言動にいっそうの理解を示し、車いすがごく普通のこととして受け入れられている。 仕事に対する前向きな姿勢は、平成13年度の第25回全国障害者技能競技大会の「表計算部門」への出場にも表れており、何事にも吸収欲と挑戦・トライする姿勢をものがたっている。 また、本人は仕事だけではなく、事故前のモーグルスキーに代わってチェアスキーやバスケットにも挑戦しており、とくにチェアスキーでは全日本の大会での入賞を目指して練習に励んでいるほか同好者への指導もおこなっている。 本人は事故後、障害者に対する理解も深まり、地域でのボランティアに参加していることもあって、小中学校の福祉教育からの講師依頼や帯広市のまちづくり委員会への参加もあり、会社では地域との繋がりから勤務時間中の対応を認めている。 また、クラブ活動を支援している会社の「歩一会」が大会への参加費用を補助し、従業員も本人を応援している。 |
 帯広松下電工株式会社本社全景 |
| 執筆者：社団法人北海道障害者雇用促進協会 事務局次長 湯川 旭 |
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