あるがままに、当たり前にー会社は人にありー
2002年度作成
| 事業所名 | 株式会社同仁社 | |||||||||||||||||||||
| 所在地 | 福島県福島市 | |||||||||||||||||||||
| 事業内容 | マット、モップ、ロールタオルのクリーニング作業 ホテル、旅館等のリネン品のクリーニング作業 病院基準寝具等のクリーニング作業 | |||||||||||||||||||||
| 従業員数 | 530名 | |||||||||||||||||||||
| うち障害者数 | 43名
 |
1.障害者雇用の取り組みの経緯、背景
（1）高い障害者雇用率 |
| 周知のように「障害者の雇用の促進に関する法律」では「障害者雇用率制度」が設けられており、常用労働者数56名以上の民間企業ではその常用労働者数の1.8％以上の障害者（身体障害者及び知的障害者）を雇用しなければならないことになっている。いわゆる法定雇用率が定められているが、平成13年6月現在、我が国の身体障害者及び知的障害者の実際の雇用率は1.49％に留まっており、依然として法定雇用率が達成されていない。しかも大企業になるほど雇用率は低く、ちなみに常用労働者数1,000人以上の大規模企業では実に73.4％が未だに法定雇用率を達成していない。このような状況の中で、同仁社における障害者雇用の実態には注目すべきものがある。 同社の場合、平成14年11月現在でリースキン事業部の工場で24名、リネンサプライ事業部の工場で17名、ホスピタルリネン事業部の工場で2名の、総勢43名の障害者が就労している。その内訳は、知的障害者が41名（うち重度障害者が22名）、肢体不自由者が2名（うち重度障害者1名）となっており、過半数の23名が重度障害者である。さらに本社管理部（総務部）にも1名の障害者が雇用されているために、実質的には総勢44名の障害者が雇用されていることになる。ちなみに法定雇用率の算出は重度障害者の場合は1人を2人に相当するものとしてカウントされる。したがって、この方式で算出すると同仁社では総数67人（23×2+21）が雇用されていることになり、同社の法定雇用率は12.64％となる（パートを含む）。ちなみにパートを除く平成14年6月時点の法定雇用率は13.26％となっている。これは実に全国平均（1.49％）の約9倍に相当し、同社は非常に高い雇用率を誇っている。しかも注目すべき点は、雇用者の過半数が重度障害者で占められていることである。 |
2.障害者雇用の取り組みの内容及び効果
（1）障害者雇用に際しての工夫と配慮事項 |
| 同仁社では、事業主・工場長、人事部課長、職業生活相談員、それに障害者代表からなる「職場定着推進チーム」（総勢15名）を組織し、障害者の職場定着を図るための様々な努力や配慮がなされている。こういった社内のシステムや配慮がなされてこそ、障害者雇用が定着し維持されていくものと考える。その具体的な配慮事項は下記の通りである。 |
|
| 上記のような細やかな配慮と会社挙げての取り組みが功を奏し、長期にわたる障害者の職場定着が可能となり、驚異的な障害者雇用率を可能にしている。 |
（2）障害者雇用の取り組みに対する評価 |
| 同仁社が多くの障害者を雇用し高い雇用率を維持している背景には創業以来、社是に「社会的奉仕」を掲げて障害者雇用に積極的に取り組んでいることに加えて、障害者雇用を定着させるための様々な配慮がなされていることが大きい。同社では障害者と健常者を分け隔てることなく、障害者を「あるがままに当たり前に」一人の社員として対応している。また専任の相談員を配置し、毎日保護者と「連絡帳」を交わしたり、保護者会を組織し定期的な会合を持ったりして、会社と家庭が協力して障害者の職場環境作りや職場定着への努力がなされている。障害者雇用を定着していくためには本人の努力もさることながら、それを支える保護者（家庭）と会社の連携協力が不可欠である。その点、「連絡帳」を交わして保護者と連携した支援体制を取っている同仁社の取り組みは高く評価される。 大手電力会社の事故隠しや大手食品会社の偽装工作等、企業のモラルが厳しく問われている今日、創業以来会社の社会的責任として、一貫して障害者理解と障害者雇用に積極的に取り組んで来た同仁社の姿勢とその努力は高く評価される。同社に可能なことがどうして他社に出来ないのか。その点の解明とそのための努力が雇用率未達成の企業には厳しく問われているといえる。そういう状況の中で、障害者雇用のモデル事例としての同仁社の取り組みには学ぶべきことが多く、参考にしていただきたい。 |
3.今後の課題と展望
| 同仁社では障害者の健康管理が今一番の問題になっている。仕事が単純な肉体労働（単純作業）が中心になるために、障害者の高齢化に伴う体力の維持と健康管理が今後の課題となっている。高齢化の問題は相談員についても同様で、引き続き障害者に理解のある後継者を確保することが早晩問題になる。高齢化社会を迎え、障害者を含めた高齢者の健康管理とQOLを高めていくことが今後の課題である。 今日的な構造不況の中で、会社の経営も厳しい時代を迎えており、その影響をもろに受けるのが障害者である。障害者雇用には、公的な支援と共に企業のモラルや姿勢が大きく左右する。残念ながら現状は大企業になるほど障害者雇用に対しては消極的で冷たい。今回紹介した同仁社も決して大きな会社ではない。要は会社の規模ではなくモラルや姿勢である。障害者雇用率未達成の会社の一層の奮起を期待したい。 最後に、やはり－会社は人にある－といえる。障害のある社員を障害者として対応するのでなく、一社員として健常者と対等に対処するのが肝要である。何も構える必要はなく、普段の姿勢で接していくことであり、－在るがままに当たり前に－接することである。 健常者、障害者を問わず、要するに－会社は人づくり－なのである。 【文献】 (1) 冨田健之丞(1987）：誠実一路-我が半生の思い出- 同仁社25周年記念プロジェクト (2) 厚生労働省・日本障害者雇用促進協会（2002）：障害者の雇用促進のために-事業主と障害者のための雇用ガイド-（平成14年度版） |
| 執筆者：福島大学教育学部 教授 松崎 博文 |
アンケートのお願い
皆さまのお役に立てるホームページにしたいと考えていますので、アンケートへのご協力をお願いします。
なお、事例掲載企業、執筆者等へのお問い合わせや、事例掲載企業の採用情報に関するご質問をいただいても回答できませんので、あらかじめご了承ください。
※アンケートページは、外部サービスとしてMicrosoft社提供のMicrosoft Formsを使用しております。
