障害者雇用率3%を目指して
2002年度作成
事業所名 | 栃木富士産業株式会社 | |||||||||||||||||||||
所在地 | 栃木県栃木市 | |||||||||||||||||||||
事業内容 | 自動車部品、航空機部品の製造 | |||||||||||||||||||||
従業員数 | 1,144名 | |||||||||||||||||||||
うち障害者数 | 16名
![]() |
|

1.障害者雇用取り組みの経緯、背景
昭和27年に、創立者である栗原甚吾氏が元・中島飛行機株式会社栃木工場の土地と建物を引き継いで誕生した会社であり、以来、社是を「和」とするとともに、地域に密着した経営を図るべく「自動車部品及び航空機部品専門メーカー」として、常に10年先20年先が見える開発型企業を、更には世界に通用・飛躍する会社を目指している。 平成14年6月に、会社設立50周年を迎えたことから、6月に来賓、地域関係者、全従業員等を招待して「創立50周年記念式典」を盛大に実施し、これからも次の目標として創立100周年を迎えた旨、栗原義彦取締役会長の挨拶があったところである。 会社のスタート後においても、決して平坦に推移してきた訳ではなく、戦後の激動、混乱した日本の経済活動とともに、いくつかの苦難に遭遇・直面したが、社是「和」をもって切磋琢磨を重ね、昭和39年には東証第2部に上場することができ、平成3年には念願の東証第1部上場を果たす等、努力の甲斐あって現在では、従業員数も1,100名を上回る規模となり、地域と密着した企業に育っている。こうした中で、従来から、地域との密着度を高める方法の一つとして、障害者雇用問題について、障害者と健常者がともに、ごく自然に働くことができる場を、「雇用」と言う形で提供する企業責任、「ノーマライゼーションの理念」について、会社上層部が高い関心を寄せていたこともあり、特に、栗原義一取締役社長が「障害者雇用率3%台にしていく」との意向を示され、会社全社に「達成することの共通目標が醸成されている」ところである。 |

2.取り組みの具体的内容・その効果・今後の課題と展望
(1)社内体制 |

こうした「障害者雇用率3%クリア」を目指していくために、総務人事部長をチーフに、各部門の管理者及び障害者や障害者職業生活相談員等をメンバーとする「障害者職場定着推進チーム」等によって中長期的な計画、対策を検討している現状である。 |

(2)障害者の内訳 |

障害者16名を年齢別にみると、定年を間近にした60歳が2名、50歳台が6名、40歳台が5名、30歳台が2名、20歳台は29歳が1名となっており、全社員の平均年齢である40.3歳より9.1歳も高い49.4歳になっている。 勤続年数別では、全社員の平均が16年7ヶ月にたいし、障害者は21年3ヶ月と全社員を4年8ヶ月も大幅に上回っている。 就労部門別では、製造部門10名、生産技術部門1名(2級機械保全技能士資格取得者1名)、検査部門2名(2級機械検査技能士1名)、物流部門2名(フォークリフト資格取得者1名)、開発部門1名(2級表計算技師1名)と多岐に亘って、それぞれの部門で就労している。 障害種類別では、聴覚・音声12名(うち重度9名)、上肢1名、心臓1名(うち重度1名)、腎臓1名(うち重度1名)、その他の内部障害者1名の状況である。 |

(3)職場適応 |

障害者だけの職場をつくらず、健常者と一緒になって仕事をする環境化に努めた結果、障害者の勤続年数は個々に見ても20年から30年に亘る永年勤続者が大半を占める等の良好な結果になっている。 |

(4)対応策の一例 |

|

(5)障害者の雇用拡大策 |

栃木県経済6団体のトップが発起人となって、「栃木県経営品質賞(TQA)」の推進母体の「栃木県経営品質協議会」が平成11年10月に設立され、その会長に取締役会長が代表幹事に就任していることや、取締役社長の基本理念である、企業の社会貢献として「法定雇用率3%」を至上命題と捕らえているものの、中長期採用計画の中では、まだ、知的障害者、精神障害者等の採用には踏み切れないでいるところである。 そのため、当面、「身体障害者の採用」を中心に推進することとし、募集職種については生産関連職場で50歳台の障害者が8名就労していることから、後継者育成も視野に入れながら、前述の職場適応諸策が功を奏している現在、どうして自分達の職場で障害者をうけいれなければならないのか、という健常者からの戸惑いが殆ど見られなくなり、受入れ部門・職種の確立等、具体的な受入枠拡大等を検討、協議をしている。 また、募集方法としては、栃木県教育委員会事務局や聾・養護学校、社員等から就職希望者情報を収集する一方、地元ハローワークに求人申し込みを行って障害者雇用率「3%達成」を目指している。 |

3.事業主の取組状況に対する意見、評価など
(1)障害者雇用率 |

取締役社長の基本理念である「企業の社会責任として障害者雇用率3%達成」を当面の目標とする姿勢は、総務人事部門は勿論のこと、各部門の責任者を始め、全社的に障害者とともに働く状態がごく自然なものとして浸透されていることが窺われ、最近の厳しい経済情勢及び雇用状況の中にあっても、過去5年間の雇用率の推移を見ても、平成10年が2%台の前半にあったものが、年月を重ねるごとに着実に上昇し、平成14年には3%に近い2%台の後半になっており、このことを、企業の社会責任の観点からも大いに評価しておきたいと思う。 |

(2)背景 |

こうした良好な結果を生み出している背景について考えて見ると、第一には職場適応対策として、障害者のみならず全社員にも繋がる方法を導入している具体的な事例の数々を前述しているが、特筆すべきは、平均勤続年数において健常者の16年に対し、障害者の方が21年と5年も長いという事実になって表れており、このことに対しても総合的な評価に値するものではと考えている。 一方、障害者16名のうち勤続年数1年から29年までと、様々な勤続年数になっているが、就労部門別でも製造、生産技術、検査、物流、開発部門と多種多様な職場にまたがって、人材の育成関係においても、各種の2級技能士資格取得者等が4名もおり、健常者と同等に就労している状況が確認できた。 こうしたことは、会社として「障害者だけの職場をつくらずに、健常者と一緒になって働く職場構成化」することを心がけ、健常者と障害者を区別せずに自然な形で共に働くことで、意思の伝達や心の繋がり等人間関係の構築を図り、職場適応・離職防止の効果を確認できた。また、重度障害者9名を含む12名の聴覚障害者が各職場に分散就労しているにもかかわらず、コミュニケーション方法として敢えて手話を導入せずに、仕事上のミス防止策としてメモ・筆談によって確実に意思の疎通を図っていることも、逆の発想で成果をあげている事例として評価しておきたいと思う。 |

(3)企業風土 |

これらは、昭和27年の会社創立時に、特に、「地域の発展の中にこそ、会社の発展があり、地域住民に愛され、信頼され、ともに生きていく地域密着企業を目指すため、従業員は地元の人を中心に採用していく」という確固たる方針があり、更に、昭和29年4月、当時としては画期的な「定年退職年齢60歳」を労働協約に盛り込み実行されてきたことが、お互いに同じ地域住民だという意識が生まれ、やがて障害者も健常者と共に自然に働ける職場環境づくりに、大きく寄与しているものと評価される。また、こうした会社首脳部の「地域密着企業でありたい」という姿勢が下敷きになり、昭和27年に僅か38名でスタートした企業が幾多の苦境を乗り切り、「障害者雇用率3%」達成を目指している企業風土を醸成したトップと首脳陣の姿勢を評価して事例調査のまとめとする。 |

|

執筆者:獨協医科大学 リハビリテーション科 教授 古市 照人 |

アンケートのお願い
皆さまのお役に立てるホームページにしたいと考えていますので、アンケートへのご協力をお願いします。
なお、事例掲載企業、執筆者等へのお問い合わせや、事例掲載企業の採用情報に関するご質問をいただいても回答できませんので、あらかじめご了承ください。
※アンケートページは、外部サービスとしてMicrosoft社提供のMicrosoft Formsを使用しております。