知的障害者の特性を活かした職務設定とジョブコーチの活用
2002年度作成
事業所名 | 株式会社マイカル御経塚サティ | |||||||||||||||||||||
所在地 | 石川県石川郡 | |||||||||||||||||||||
事業内容 | 総合小売業 | |||||||||||||||||||||
従業員数 | 87名 | |||||||||||||||||||||
うち障害者数 | 2名
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1.障害者の採用に至った経緯
(株)マイカル御経塚サティは、平成10年3月に開店したが、その当初より、「企業の社会的責務を果たす」という考えで、1名の障害者を採用している。平成12年9月にハローワーク主催の『障害者集団就職面接会』に参加したが、その時は新たな採用に至らなかった。 その後、平成12年10月に石川県立明和養護学校から知的障害者の職場実習依頼を受けることとなる。その時の実習生がNさんである。 実習では、専任の介助者を配置してもらい、裏方で商品の伝票整理などの仕事をさせてもらうこととなった。 実習の結果、Nさんは会社側の予想以上に仕事に対する理解が良く、日常の挨拶等も礼儀正しく、また動作もてきぱきとしているという評価をもらうことができた。 そして、Nさんは冬休みにアルバイトさせてもらい、職場でますます良い評価を得ることができた。その結果、会社側は採用を決定し平成13年3月Nさんを採用した。 会社は、Nさんを採用後も専門機関である金沢市社会福祉協議会のジョブコーチ(障害のある方が一般企業で自立して働けるように援助を行う者)と連携を図り、何か問題点があれば相談をし、1つずつ解決しながら現在に至っている。 |

2.Nさんについて
[1] 性格 長所 :きれいに整理整頓ができる 短所 :我を通す(周りの状況が読み取りにくい) [2] コミュニケーション 始めはオウム返しもしばしばあり、冗談も通じず、周りの従業員とは言葉を選びながら話をしていた。嫌なことを言われても、お互いに受入れられるぐらいの信頼関係が築き始めたころから、本人から冗談を言うようになる。「ピース」が合言葉。 [3] 仕事に対する自主性と意欲 新しい仕事は辛くても努力をしている。早く覚えて認めてもらいたいのがよく分かる。 [4] 見だしなみ 服装はいつもピシッと着こなして、見るほうはとても気持ちが良い。 [5] 変化への適応 朝、本人が来たら「昨日はよく眠れましたか?」と言う質問に対して本人がどのように返答するかで、周りの従業員全員で今日はどのように接していこうか考えるとのこと。仕事中にSさんが本人の変化に気付いたらすぐに全員で相談し、必要に応じてKさんが指示をしている。 [6] 家族からの連絡 ジョブコーチは定期訪問などで、Nさんの様子がいつもと違うときは、従業員からも情報を得るが、必要に応じて自宅に連絡し話を聞くこともある。家族とは常に情報交換ができる体制にしている。 |

3.仕事が出来る様に援助したこと
開店当初から採用されているKさん(身体に障害のある方)が障害者担当となってNさんの支援をしている。Kさんは、同じ障害があるという立場から、Nさんの障害の特性に合わせて配置を考えてくれている。 Nさんは一度やったことはすぐに覚え完璧なほどになる。しかし新しい仕事に取り組む時には、緊張したり気合が入りすぎてしまい寝不足になってしまうこともある。そこで、事前にジョブコーチがその仕事を体験し、本人の特性にあった仕事内容に組み立て直し、Nさんの精神的な不安を軽減するようにしている。その時は会社全体にも共通意識をもってもらい、協力をしてもらっている。 |

4.仕事以外の社会的な援助をしたこと(通勤支援・休憩や昼食の取り方など)
(1)通勤時の緊急事態の対応について |

冬のある日、Nさんは「電車が止まったら歩いて会社まで来ます」と言って天気予報を気にしていた。そんなNさんの様子を心配して会社からジョブコーチに相談があった。ジョブコーチが会社と打ち合わせをし、下記の通勤支援書を作成し、鞄に携帯してもらうようにした。これは突然の緊急時に混乱を起こさず、安心して出勤できるように、Nさんにとって分かりやすいものになっている。 Nさんから連絡があった時の対応として、総務課長とジョブコーチは警備室に行き事情を説明し、通勤支援書どおりに対応してもらうようお願いした。これにより、天候に関係なく出勤に遅れそうな時には連絡ができるようになり、会社側も安心して、連絡体制ができた。 【 通勤支援書 】 出社(しゅっしゃ)時間(じかん)に遅れる(おく)時(とき)の連絡(れんらく)について 朝(あさ)、大雪(おおゆき)などによって電車(でんしゃ)や各交通(かくこうつう)機関(きかん)に遅(おく)れがでる場合(ばあい)があります。 その時(とき)は次(つぎ)の方法(ほうほう)で連絡(れんらく)してください。
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(2)休憩時の過ごし方について |

Nさんは、当初、昼食後はずっと自分の椅子に姿勢を正して座っていた。周りの従業員はNさんに対し自由な時間の過ごし方をどうアドバイスをして良いか分からなかったので、ジョブコーチに相談があった。そこで休憩時に付添うことにした。一緒に弁当を食べ、テレビを見たり、本屋に行ったり、いろいろな過ごし方を提案した結果、Nさんは、自分のスタイルで自由に休憩時間を過ごすことができるようになった。 |

5.対人関係の援助をしたこと(ナチュラルサポートの形成など)
仕事上の指示は障害者担当のKさんに統一してもらうことで、Nさんの混乱を防ぐことができている。 相談相手は、年齢が近く、いつも一緒に仕事をしているSさん。SさんはNさんにストレスがあるのでは?と思った時に休日なども一緒に過ごし、仕事中に言えないこと等を聞くようにしてくれている。SさんはNさんの様子がいつもと違うと、他の従業員やジョブコーチに相談をし、問題等があれば会社全体でフォローするようにしている。 |

6.Nさんの仕事量(上手にこだわりの活用)
![]() 品出しの担当者とも打ち合わせをしながらジョブコーチは最初付添い支援を行った。手順や気をつけることをNさんに分かりやすく伝え、他の従業員にも説明し、理解を求めた。Nさんは初めはKさんからの指示通りに仕事をし、徐々に指示が無くても仕事が出来るようになった。今では「何事も綺麗に」というNさんの性格が生かされ、自分で判断できないことがあれば確認する以外は、一人でできるようになっている。 会社は特に賞味期限の確認が出来るかを心配していたが、Nさんにとって日付に関しては得意分野であり特に問題なく判断を行なっている。 飲料品出しでは、本人のこだわりが生かされており、いつも商品ラベルが正面を向いており、誰が見ても気持ちの良いものとなっている。会社でも、「Nさんの品だし方法が基本的な品だしである」と評価され、本人の自信につながっている。 |
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7.企業の取り組み状況
(1)障害者の採用や雇用に関して留意している事項 |

サービス業として、お客様に対し失礼の無い対応の出来る人を採用して行きたい。 |

(2)職務の再開発・組織の再編 |

障害のある方でチームを作り、後方での仕事(ゴミの分別作業等)を検討中である。ジョブコーチも関わり、障害のある方が働きやすいように仕事を組み立てている。 |

(3)労働条件の改善(賃金・労働時間) |

本人の労働意欲等を評価して、当初の5時間から8時間に勤務時間を改善した。 |

(4)企業の考え |

最後に、(株)マイカルは、平成13年9月会社更生法により再建を目指している会社で、経営状況は非常に厳しい状況である。社員の増員が望めない実状ではあるが、Nさんの雇用を踏まえて今後2名の知的障害者の採用を考えており、障害があるからと、特別視する事なく、周りの従業員でフォローして行き、また能力レベルに合わせて指導しながら、まかせて行きたいと考えている。 今後の障害者雇用に関しての基本的な考えとして 1、 障害の部位と障害の程度 2、 本人の労働意欲の有無 3、 自力で通勤が出来ること 4、 健康であること 5、 定着できる職場の環境をつくる 6、 賃金等労働条件は、健常者と区別することなく本人の能力により応じて対応する 等である。 |

執筆者:社会福祉法人 金沢市社会福祉協議会 障害者就労担当 松本 千春 |

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