自然に親しみ、のびのび働ける職場を目指す
2002年度作成
| 事業所名 | 三洋ハートエコロジー株式会社 岐阜事業所 | |||||||||||||||||||||
| 所在地 | 岐阜県安八郡 | |||||||||||||||||||||
| 事業内容 | ・ 花卉、苗の栽培と仕入れ販売 ・ 室内観葉植物のレンタルと管理 ・ 花壇、コンテナガーデニングの設計、施工と維持管理 ・ 有機肥料、生ゴミ堆肥化材の生産と販売 ・ 園芸用品、資材の仕入れ販売 ・ クローン苗の育成、栽培 | |||||||||||||||||||||
| 従業員数 | 5名 | |||||||||||||||||||||
| うち障害者数 | 4名
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1.実施に至った経緯、背景
| 平成10年4月1日設立。平成10年11月20日に特例子会社として認可を受ける。本社は大阪にあり、全国に3カ所の事業所（大阪・群馬・岐阜）がある。2002年10月現在、全体で21名の障害者を雇用している。親会社の三洋電機株式会社は、「地球環境との共生」を目指し、岐阜事業所には「ソーラーアーク」と呼ばれる巨大な太陽電池の発電設備を造るなど、環境保全に積極的に取り組んでいる。 |
 ソーラーアーク |
| 三洋ハートエコロジーは、その名の通り、この三洋電機の方針を受け継ぎ、「共生の花咲かそう！人と環境にやさしい企業をめざします」という基本理念のもと、重度障害者多数雇用事業所として、さまざまな事業に取り組んでいる。岐阜事業所は、特に花鉢、苗の販売、観葉植物のレンタルなど、「花のことならどんなことでもご一報を」というキャッチフレーズで事業を始めた。 |
2.取り組みの内容及び効果
（1）職場づくり |
| 岐阜事業所では、胡蝶蘭のメリクロン栽培や、生ゴミの堆肥化を利用した野菜づくりなど、自然に親しみ、環境に配慮した事業を基本にして、思い切り働ける職場づくりを心がけている。各事業所ごとに、前年比で120％の事業拡大を目指しており、同時に障害者雇用拡大を図っている。また、障害者がのびのびと働ける職場環境づくりへの投資は、可能な範囲で行っている。 |
（2）採用の条件 |
| まず通勤が無理なくできること。また、農作業などにより、体力が必要なときもあり、生活指導上、家族の協力が必要であると感じている。例えば、ある社員が、TVゲームに夢中になり遅刻が多くなった。仕事にも集中できなくなったが、会社と家族が一体となり相談指導を続けて生活態度が改善され、今では、無遅刻無欠勤となったという事例がある。 |
（3）マニュアル |
| 誰もが、どんな仕事でもできるようなマニュアル（作業標準書）づくりをしている。それには、作業手順が細かく、視覚的にわかるように絵も用いて示してある。また、知的障害者が数を間違えずに作業できるように、例えば4、5、6、6、5、4と並べれば30になるように工夫している。これによりミスが減り、仕事の効率アップを図ることができ、一人ひとり自信がついていった。 作業指導は、具体的な情報を与えることが大切であり、現場でやってみせ、教えてやらせてみるという過程を何回も踏むことで、正しい作業を確実に修得させている。 |
（4）パソコン指導 |
| 昼休みなど利用し、パソコンの基本操作を教えている。文書作成などもできるようになった。TVゲームなどで慣れているせいか、かなりのみこみが早い人もいるようである。 |
（5）雰囲気づくり |
| 知的障害者は、ものごとに熱中し、根を詰めすぎる傾向がある。一日の仕事を終えると精神的に疲れてぐったりしていることがあった。メリクロン栽培などのように集中力のいる仕事では、ラジオやBGMをながし、精神的にリラックスできる雰囲気を作っている。今では、仕事のリズムとペースがわかるようになり、適度の集中と休息を使い分け、疲労感を緩和させている。 |
（6）社員教育 |
| また、あいさつ、礼儀、言葉使いの指導も心がけており、電話の応対もできるようにするなど、きちんとしたビジネスマナーを身につけさせている。ユニフォームもネームプレートもSANYOのロゴが入った親会社と同じものをつけ、入社時には三洋電機のマナー読本を与えるなど、三洋の一社員として扱っており、プライドをもって仕事に取り組んでいる。 |
（7）人間関係 |
| 職場の人間関係は良好で、みんな仲よくやっている。春と秋には親睦会を開き、春は花見、秋は行楽をしている。「会社生活に自信がついた」などの声があり、社員それぞれ成長があり、家族からも喜びの声が寄せられている。 |
（8）健康管理の体制 |
| 指導者が衛生管理者の資格をもっており、健康管理センターには、産業医、看護師3人、メンタルヘルス担当医を配置している。健康保険組合の診療所をもっており、社員の健康維持・促進に努めている。 |
（9）他の機関との連携 |
| 養護学校の先生が仕事の様子を見に訪れている。また、県雇用促進協会、ハローワークとも密な連携を取り、雇用上のさまざまな問題について、相談や協力をし合っている。 |
（10）支援団体 |
| この会社を支援する団体（会）をつくり、その会費で会社運営の補助を行っている。個人会員と法人会員がある。個人会員は三洋系列の社員が中心で、自由意思で入会しており、年会費制を取っている。管理職が中心となり約2万人いる社員の半分ほどが会員となっている。また法人会員は、協力会社や関連会社が会員になって三洋ハートエコロジーの支援をしている。 |
3.雇用上の課題、配慮していること等
（1）家族との連携 |
| 保護者会を設立し、情報交換、相談の場としている。定例の会合には、本社社長、役員も参加し、家族からの相談や意見などを出し合い、ざっくばらんに話し合える場となっている。できれば家族同士のつながりも作っていきたいと願っている。また、三洋電機の夏祭りである納涼祭に障害者の家族も招待している。家族も三洋ファンになっていただいている。 |
（2）聴覚障害者とのコミュニケーション |
| 筆談や口話で行っている。当初、うまく伝わらなくて苦労したことがあったが、ハローワークを通じてろう学校の先生に相談したところ、指導者が変わり、合わせることが必要であり、それがハンディキャップを支えることであるとわかった。今では、この聴覚障害者は、1日の予定、計画を自主的に作り、取り組むようになった。 |
4.コメント
| 知的障害をもつ人を中心に重度障害者の受け入れを積極的に進めている特例子会社の事例である。場所は、広大な本社工場に隣接する厚生棟が並ぶ敷地の一角にあり、広々とした建物の1階部分を事業所として使っている。 この事業所の基本方針にあるように、「環境」と「共生」がキーワードである。自然に触れ、人々の心の潤いや癒しにつながる仕事をとおして、循環し持続可能な社会をつくり、ノーマライゼーションの実現を目指し、雇用の機会を拡大することで社会的な貢献を果たしていこうという姿勢が、端々に感じられた。 特に感心したのは、三洋の一社員であるというプライドをもって、会社を好きになってほしい、という所長の言葉である。障害者にとっても、サンヨーマンとして認められることが、大きな自信と責任感をもつことにつながっていると思われる。また、それを支えるきめ細かい指導や支援があり、思いきり働き、やりがいのある職場をつくっているようである。 メリクロン栽培は、かなり細かい手先の動きが要求されるものである。こうした熟練した技術を要する仕事もあれば、農作物を育て収穫するというように、作業の内容が変化に富み、単調な作業の繰り返しではないようである。また、本社指導にこだわらず、事業所ごとの自立が重んじられ、独自の発想と責任で、事業を進めていくことができることも、注目すべきであると思われる。そこには創意工夫があり、前向きな取り組みにスタッフもやりがいを見いだすという効果が期待できるだろう。 特例子会社ということで、さまざまなメリットを活かし、まだまだこれから雇用を伸ばしていくことが期待できる事業所である。 |
 胡蝶蘭のメリクロン栽培5mmほどの胡蝶蘭のクローン苗を無菌状態でフラスコの中にピンセットで植え込み、培養室で10cmほどの大きさまで成長させる。 |
 有機肥料、生ゴミ堆肥化材を利用した野菜づくり三洋グループの各事業所（社員食堂）より出る生ゴミをバイオ技術で処理し、完熟堆肥化し、それを利用してたまねぎ、じゃがいもなどを生産し、三洋の社員食堂に納入するというリサイクルを行っている。堆肥は三洋ハートエコロジー会員にも廉価で販売されている。 |
| 執筆者：中部学院大学短期大学部 稲垣 貴彦 |
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