トップの決断で一気に法定雇用率を達成した事例
2002年度作成
| 事業所名 | トヨタカローラ東海株式会社 | |||||||||||||||||||||
| 所在地 | 静岡県静岡市 | |||||||||||||||||||||
| 事業内容 | 自動車の販売、自動車の修理 | |||||||||||||||||||||
| 従業員数 | 430名 | |||||||||||||||||||||
| うち障害者数 | 7名
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1.障害者雇用の推進に取り組むまでの経緯
| 民間企業が、障害者の法定雇用率達成について行政機関等から要請や指導を受けた場合、積極的に対応しようとしている企業は別にして、そうでない場合は、まず、障害者雇用がいかに困難であるかと言うことを立証しようとするのが通例である。 そうした場合、この会社が属する自動車販売業界においては、おおよそ次のような理由をあげるのが一般的である。
このため、昭和60年頃、障害者雇用促進法に基づく障害者雇い入れ計画を作成し、本格的な対策に取り組むこととなった。 |
2.トップの決断による集中的な取り組み
| この会社には、上記1で述べたように7人の障害者が雇用されているが、このうちの4人と既に退職しているもう1人を加えた5人は、平成3年12月から平成4年4月に掛けて採用された障害者である。 この結果、一気に法定雇用率をクリアーすることになるが、この背景には、トップの思い切った決断があった。 雇い入れ計画を作成した昭和60年当時からそれまでの間に相当の年月が経過しているのは、当時の担当者が既に退職していて詳しい状況は解らないが、この計画が総務部内の1セクションのみで作成されたもので、実効性の乏しいものであったからだと考えられる。 平成4年になって、かくも短期間に採用が可能となったのは、まさに、トップの力を見せつけるものであって、障害者雇用に関わるトップの役割の重要性が顕著に示された事例であるといえる。 そうはいっても、実際に採用をしようとすれば、どのような障害者を採用し、どのような部署に配置すればいいのかということが問題になってくる。 次に当社が行った採用と配置について見てみよう。 |
3.採用と配置の状況
| 採用する職種については、営業職や整備等の技術職ではなかなか適格者が見込めないことから、事務職を中心に募集を行うこととした。従って配置先については、事務職が1～2名しかいない営業拠点へ配置は欠員が生じないかぎり無理であるため、本社の事務部門及び浜松市にある本社直轄の西部営業部とすることとした。 こうした方針に沿って具体的な検討を行った結果、本社総務部に2人、同サービス部に1人、西部営業部事務課に2人を採用することとし、安定所を通じて募集を行った。 この結果、本社の総務部に採用が決まったのは、1人が脳性マヒ3級の男性で事務用品や印刷物の発注と管理の事務、もう1人が左片マヒ5級の男性で文書の発送事務と給与関係の事務補助にそれぞれ配置された。同じく本社のサービス部には左半身マヒ2級の重度の障害を持った男性が採用され、簡単な集計事務などの補助的業務を行うことになった。特にこのサービス部に採用された男性は、和式トイレの使用が困難なため、採用と同時に「第1種作業施設設置等助成金」を利用して洋式トイレへの改造工事を行っている。また、西部営業部には、上肢切断3級の女性と脳性マヒ後遺症2級の重度の障害を持った女性が採用され、得意先へのダイレクトメール発送作業を主とした事務的作業を行うことになった。なお、こちらも事務所が営業店の2階にあるため、本社と同様に助成金を利用して階段とトイレに手摺りを設置する環境整備を行った。 以上の5人が、ほぼ同時期に採用され現在に至っているが、トップダウンによる全社的な意思統一の下での採用配置であったので、西部営業部の重度の女性が平成7年4月に自己都合で退職したのみで、個々の障害者に対する周囲の配慮も行き届き、職場への定着は順調に進んでいった。 |
4.中途障害者の継続雇用に対する取り組み
| この会社における障害者の新規雇用はそれ以後行われていないが、平成8年2月に中途で腎臓機能障害1級の障害を負った男性、11年8月には直腸機能障害4級の障害を負った男性が新たに出現した。 この会社が属する企業グループは、病気や障害を負った従業員に対する配慮を徹底して行うことを社是としており、この2人の障害者についても勤務を継続できるよう十分な措置が講じられている。 腎臓機能障害の男性は週3回の人工透析を行っており、時間的な配慮が必要であるが、透析の日には一切残業を行わせないことを徹底するとともに、仕事が過重にならないよう配慮を行っている。また、直腸機能障害の男性については、サービス部門の現業職であるので力仕事の制限をおこなうよう配慮している。 なお、現在、メンタルな障害で休職している従業員がいるが、この従業員についても復職させることを前提に産業医や保健婦と連携して対処している。 |
5.これからの課題
| 現在、一人の障害者が障害程度が進み、担当の職務に適応困難となっている。肢体不自由に加え、視力が低下してきているので、これに見合った職務の見直しが必要になっている。事務的作業のため、適合する職種の探索が課題となっている。 また、今回、表彰を受けたことにより、全社的に障害者雇用率達成の状況を維持する責任を再確認することも必要となってきた。 直腸機能障害の男性が再手術が成功し、障害者でなくなる可能性が出てきたため、法定雇用率達成にむけての補充採用を考慮しなければならなくなってきている。 現在のスタッフも、さらに認識を深めて今後とも全社的な取り組みが可能となるよう努力して行きたいといっているが、平成4年当時の記憶が薄らぐことのないよう、継続的な取り組みを期待したい。 |
| 執筆者：静岡県障害者雇用促進協会 雇用推進技術顧問 中島 義夫 |
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