— 車いすで工作機械の操作を —重度身体障害者の作業環境の整備
2002年度作成
| 事業所名 | オーニック株式会社 | |||||||||||||||||||||
| 所在地 | 岡山県御津郡 | |||||||||||||||||||||
| 事業内容 | コンピューター制御の各種の工作機械をつかい、金型並びに精密部等の受託加工 | |||||||||||||||||||||
| 従業員数 | 21名 | |||||||||||||||||||||
| うち障害者数 | 12名
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 ◆施設のバリアフリー ［1］障害者用駐車場雨よけ対策 ［2］スロープ化 |
1.車いす使用者の工作機械のオペレーション
| 工作機械は立作業を前提に設計されており、車いす使用者にとっては工作物の取付テーブルあるいは操作パネル、モニター等の設定位置が高くオペレーションが出来ないケースが多い。 こうしたことから、車いす使用者が工作機械をオペレーションする場合には次のような作業環境の整備が必要となる。 （A） 床面を掘り下げ、工作機械の設置位置を低くする。 （B） 床面に架台を置き、機械に対して相対的に車いすの床面を上げる。 （C） 各工作機の前部に固定式の電動リフトを設置する。 （D） 上下リフト機構付電動車いすを利用する。 （E） 車いす使用者向けに工作機械を改造する。 弊社はこれまで、（D）の上下リフト機構付電動車いすを利用して、車いす使用者のNC工作機械を使っての加工作業の実現を図って来た。 |
（1）改善の背景 |
| NC放電加工機を使い金型の加工を行っている。 リフトの高さが最も低い位置では加工槽の中が見えず、加工監視業務が出来ない。 また、モニター画面の小さな数値を確認することも出来ない。（特に液晶モニターでは見る角度によって全反射がおこる） |
（2）改善の内容 |
| （D）の上下リフト機構付電動車いすを利用する事により、車いす使用者のNC工作機を使っての加工作業が可能になった。 |
（3）改革の効果 |
| リフトの高さが最も高い位置では加工監視業務はもとより、モニター画面の確認および現場でのプログラム入力まで可能である。 また、機械の点検、清掃、ピッチの測定など一部のメンテナンス作業も可能となる。 |
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2.設備の改造
（1）車いす対応用研削盤 |
| ［1］ 改造の背景 単なるオペレーションのみであれば、リフト付電動車いすでの対応も可能であったが、当作業の場合は、効率面から加工と検査の2種類の作業を同時並行的に一人で行う必要があったことから、工作機械自体を車いす作業者用に改造した。 |
 NC研削盤で加工を行いながら、次加工品の加工治具への詰め込み作業および検査を同じ人が同時進行で行う。この写真は、NC研削盤に加工品をセットしているところである。 その間、同人は別の作業（次加工品の加工治具への詰め込み、厚み測定および形状検査など）を行う。 |
| ［2］ 改善の内容 当研削盤は、車いす使用者が使いやすいように、取付テーブル、モニター画面、操作パネル等の設定位置を低くしている。 また、ドアにはインターロックを付け、安全対策を、また一方清掃用ノズル、エアガン等を手の届く範囲内に設置しメンテナンス作業も容易に出来るようにしている。 |
 この写真は、次加工品を加工治具へ詰め込んでいるところである。この時、研削盤は移動中である。なお、危険防止のため加工室のドアを完全に閉めない限り、コンピュータは加工指令を受け付けない機構となっている。 |
（2）車いす対応用レーザー加工 |
| ［1］ 改造の背景 工作機械の改造は、機械自体の剛性や保証精度（機械本来の能力を保つこと）、安全上の問題、機構上の問題、重量的な問題などから車いす使用者対応用に改造することは極めて難しい。 従って、機械の性能や安全性の確保を前提としての部分的な改造とならざるを得ない。 |
 ［2］ 改善の内容このレーザー加工機は車いす使用者向けに取り付テーブル、モニター画面、操作パネル等の設定位置を低くしている。 光源は目の高さより低い位置にある。また、ドアにはインターロックを付け、安全対策を図っている。 |
 この写真は、加工物を加工テーブルに取り付けているところである。監視用のモニターにより加工状況の確認を行うことから、目の高さに設置している。 また、機械側加工ドア下部に交換可能な保護板を取り付けることにより、車いすとの接触による機械の塗装部分の剥離を防ぎ、また、静電気を帯びた車いすのコンピュータに与える影響を除去している。 |
3.今後の課題
| これまで車いす使用者が作業現場でNC工作機械を使用し加工業務にたずさわることは、「危険」、「困難」との先入観があるが、今日では工作機械自体もコンピュータ制御により操作されるものが主流となっており、作業内容によっては車いす使用者の就労が十分可能である。 こうした職場においては、自体的なハンディキャップによる作業場の制限は少なく、障害の有無に関係なくだれもが同等レベルの生産性をあげることができる。 付加価値の大きさに大小があるとすれば、自体的要因よりはむしろ本人のあまえ等精神的な要因が大きいものと思われる。 今後は、身体的なハンディキャップが出やすい作業（加工品のセッティング、搬送など）の改善を図るために、オートパレットチェンジャー、あるいはロボット等の導入を考えている。 |
| 執筆者：岡山県障害者雇用促進協会 業務部長 今城 充 |
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