Where there's a will there's a way.（意志有る所に道有り）～重度身体障害者雇用事例～
2002年度作成
| 事業所名 | 有限会社センビメイツ | |||||||||||||||||||||
| 所在地 | 沖縄県南風原町 | |||||||||||||||||||||
| 事業内容 | 広告企画立案、グラフィクデザイン全般、看板の企画・施行・管理各種印刷物企画・製作、データ出力サービス、ラミネート加工、大型インクジェット・カラーコピー、インスタントサイン製作 | |||||||||||||||||||||
| 従業員数 | 9名 | |||||||||||||||||||||
| うち障害者数 | 5名
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1.障害者雇用状況
（1）障害者雇用のきっかけ |
| 有限会社沖縄宣美の代表取締役である玉城は、那覇福祉協議会の広告の仕事を10年間、無償で手伝ううちに車いすを使用する障害者達と交流を深める機会があった。交流を深めていく中で、障害者の持っている資質に驚かされ、障害者に対して新たな発見の連続であった。 車いすを使用する障害者達に、自ら経営する会社に必要な手作業を中心とした広告技術に関わる仕事は困難であるとの考えから、ひと工夫すれば障害者の持っているすばらしい資質を活かすことができると認識の変化があった。 そして、時代の趨勢とともに、広告技術業も手作業からコンピュータと大幅に能力向上した出力機器に頼るところが多くなり、それらの機器を導入することによって、障害者でも広告技術業を立派にやっていけると確信したことがきっかけになっている。 |
（2）障害者の採用について |
| 採用は、面接試験で決定している。面接の際に、仕事に対する姿勢や目の輝きから感じ取れる、本人のやる気、協調性を重視している。 交通事故によって上肢に障害のある者が、工場見学の後、自ら会社に「働かせて下さい」とお願いし、その目の輝きから感じられる本人のやる気をくみ取り採用に至っている。 今後の障害者の採用については、会社の利益との相談であるという。 |
（3）障害者の仕事内容 |
| 上記した営業種目を社員は、学び身につけるようになっている。障害の状態と仕事の過程からある程度特定の仕事に固定されるが、基本的に上記した営業種目が雇用されている障害者全員の仕事内容である。 |
（4）障害者の給与 |
| 基本給に能力別の給与がプラスされる。昇給は、年1回で基本的には2500円であるが、能力に応じている。交通費等も給与に考慮されている。現在働く障害者の給与は、9万円～18万円である。 |
（5）離職者について |
| 1名（女 上下肢障害者 障害の等級2級）の離職者がある。1年間勤務後の離職であり、主な理由は、会社の勤務時間帯と家庭の時間帯のすれ違いや、会社の立場上、会社見学やマスコミ等の取材も多く、自身の障害についてオープンになれなかったことである。 |
（6）会社の障害者感 |
| “みんないっしょ”。障害者も健常者もみんな普通に、みんないっしょに生活するものである。これは、福祉の基本的考え方のノーマライゼーションである。 |
2.Where there's a will there's a way －意志有る所に道有り－
（1）地域ぐるみの設立 |
| ひとつのボランティア活動から車いすを使用している者達との出会いがあり、コンピュータや出力機器の発達、そして、現センビメイツの前身の建物と土地を使用する目処が確かなものになったとき車いすを使用する障害者が安心して働ける障害者雇用施設作りが始まった。 周りの人々に恵まれ発展していった有限会社沖縄宣美の社会貢献の意識は、厳しい21世紀を乗り越えるには社会貢献が必要であり、ノーマライゼーションの時代でもあるとの考えから障害者の雇用を実現するものであった。この沖縄宣美の前向きの姿勢が近所の人々の理解と駐車場としての土地提供などの大きな協力を自然に生み出していくものであり、地域ぐるみでの障害者雇用施設作りと捉えても過言ではない。 |
（2） 職場環境の整備 |
| 車いすが安心して使用できる施設を徹底するため、当初、世界でも障害者に優しい国といわれたアメリカの民間の企業が取り組んでいる施設作りを現地で学び、また、国内で最先端の障害者向けの施設などからコンセントやスイッチの位置などの細かい気配りや障害者雇用促進センターなどから積極的に指導を受け、建物の大がかりのリフォームとコンピュータや出力機器などの機器類の購入に大幅な投資を行った。 |
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| 雨天時でも駐車場から濡れないで会社に入れる屋根つきのスロープ、間口が広く動きやすい自動扉の出入り口、段差のないフロア、スライド式の出入り口で十分な広さのトイレや風呂場、車いすを使用する肢体不自由者には欠かせない車いすから降りて休める畳の間などが常設されている。また、室内は明るい採光と高さがあり、空間にゆとりを感じさせるように工夫され、働く者の環境を十分に整え、障害者が納得する施設だといえる。 |
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（3）社員教育 |
| 環境や機器類の十分な備えのみならず社員の教育にもかなりの投資と時間を費やしており、有限会社センビメイツ立ち上げから営業開始まで、当初の予定より時間をかけての社員教育を施し、約6ヶ月の遅れの営業開始であった。営業なしでの社員教育や営業が軌道に乗るまでの助成金等の存在が大きな支えであった。 社員のための環境づくりや時間をかけた教育は、仕事の遂行の中で、自身の障害に甘えさせない障害のある者達への大きな配慮でもある。自身の障害に甘えることなく任せられた仕事を責任を待ってやり遂げていく過程で社会人として成長し、より自分を高めようと日々努力するようになる。 |
（4）働く障害者の声 |
| 会社設立から働くAは、交通事故によって下肢に障害（1等級）がある。Aは、ここセンビメイツで広告技術業の技術を学習し、将来は独立して自分の可能性を試してみたいと話してくれた。また、先天的に下肢に障害（1等級）のあるBは、親元を離れ一人で生活し、夜間の大学に通い福祉関係について学んでいる。Bは、働き始めて体が丈夫になったことや将来の夢をはやくて3年、遅くて5年までには形にしていきたいと語ってくれた。さらにBは、施設内や養護学校で育つ肢体不自由者には、その経験から小さい頃からの健常者との交流や責任ある活動を成し遂げていくことが必要であることを指摘していた。この指摘は、センビメイツが当然のこととして行っている業務の流れであり、お客様との数多くの回数と時間をかけた打ち合わせが健常者との交流になり、お客様との約束した期限までの仕上げが責任ある活動になっている。 Cは、交通事故により上肢に障害（3等級）がある。Cは、働くことで経済的に自立ができたことが一番の変化だという。現在は、約18万円の給与があるが自分の実績を考えると、昇給すべきだと自信をもって語っていた。この自信こそ大切であり、生き生きと働く原動力になっていると考える。中途で障害者になったCは、働く場所もなく、仲間もいない、勇気もなく、自分に自信が持てなかったがセンビメイツで働くことで大きな変化になり、かねてから夢だった旅行社の仕事に挑戦することも考えていることを話してくれた。 Dは、上下肢に障害（2等級）があり、採用されてから4カ月である（平成14年12月現在）。これまで何度か就職を試みたが、施設設備の問題で長くは続かなかった。 ここセンビメイツで働くようになり、施設設備の面での心配はなく長期的な就職が可能になった。それに加えて、アメリカへの留学の夢が現実になるよう日々努力している。 働きながら自分の夢に向かって自らを高める人は、活き活きとするものである。 自分の意志を持って働くことは、自分の夢に向かう道が開かれ、周りの人々に元気を与えていく。 センビメイツで働く障害者達は、夢を追い続け活き活きと働いている。 その姿は、同僚の健常者に遅刻がなくなるなどの影響を与え、お客様には感動を与えている。 |
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| 執筆者：琉球大学教育学部障害児教育教室 助教授 田中 敦士 |
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