高い雇用率を維持するための取り組み｜障害者雇用事例リファレンスサービス

高い雇用率を維持するための取り組み

2003年度作成

事業所名

新潟県基準寝具株式会社

所在地

新潟県新潟市

事業内容

寝具・白衣類・手術リネン・マットレス等の洗濯・消毒、寝具類・タオル類のリース・販売、おむつ類販売、病院・施設向けベット・車いす・特殊浴槽等の販売及び在宅者向け福祉用具のレンタル・販売、福祉用具の消毒・洗浄・抗菌加工修理等の事業

従業員数

99名

うち障害者数

31名

障害	人数	従事業務
視覚障害	1
聴覚障害	3
肢体不自由	2
内部障害	0
知的障害	23
精神障害	2

目次

取り組みの経過及び背景
取り組みの内容
取り組みの効果
今後の課題、展望
まとめ

1.取り組みの経過及び背景

昭和43年に身体障害者を採用して以来、逐次障害者の雇用を進めている。特に知的障害者は、手作業中心とするものが適しており工場内では大きなウエイトを占めている。
【障害者の就労内容及び配置状況】

寝具類の配達、集荷作業	3名(全体 8名)
集荷物の選別・区分け・消毒、寝具・白衣等の洗濯作業	5名(全体 11名)
白衣・看護衣類の仕上	5名(全体 8名)
寝具・病衣類の仕上	7名(全体 9名)
私物・オムツ・手術着等の仕上	7名(全体 15名)
事務・営業	1名(全体 9名)
介護用品返却品の消毒・洗浄・保管梱包	2名(全体 7名)
病院内で寝具交換、病衣・寝具の集荷	1名(全体 32名)

平成12年1月　介護保険法の導入により福祉用具消毒保管施設を新築し、これに伴い障害者の職域、職種拡大を図り、重度障害者3名を新規に雇用している。
作業内容は、レンタル及びリースの介護用品が使用済みで返却されたものを、商品の再リースに対応するために、消毒、洗浄、抗菌加工、修理、梱包等の作業があり、障害者は、洗浄、清拭作業、ビニール袋による梱包作業及び納品手伝いに主に従事している。
レンタル又はリースにより返却されるベッド、車いす、マットレスなどの介護用品は、年式、メーカー等により違いがあるため業務遂行援助者が汚れ加減によって個々に適切かつ具体的な指示、アドバイスを行っている。
障害者の離職は少なく、主な離職理由は、体調を崩したもの・高齢・転居など本人都合によるものが殆どである。

2.取り組みの内容

（1）障害者雇用を念頭に置いた営業活動

営業担当が新潟市内外の病院、施設等を訪問し受注する際には、絶えず障害者が従事できる仕事の確保を念頭において行っている。
これらにより、従来病院が洗濯担当を雇用し、病院内で行っていた入院患者の衣類の洗濯を外部委託することで従来からの委託に加え、最近数病院からの受注をみている。
従来からのクリーニング業に加え、障害者雇用を広げるために介護用品・福祉機器の消毒・洗浄、清拭作業等の新規産業にも参入している。

（2）障害者向けの作業の確保

同業者等から、更なる機械化・合理化を進められることがあるが、障害者の雇用安定を考慮して、自動化、機械化する際には、なるべく手作業の部分(工程)を残す方法を検討し実施している。例えば、布オムツをたたむ作業は、機械化できないことはないが、障害者が直接手で押し広げ、傷がないか確認(機械より人間の目のほうが細かいところも確認できる)し、機械にはない温かみのある商品として納品している。なお、下着類のたたみについては、手作業が主体になっている。
その根底には、「障害者と共に働き、共に学び、共に歩んで」という企業理念が根付いているからである。

（3）研修の実施

新規採用者に対し、現在の作業に就く前に他の作業部署において社内研修をかねて人間関係、コミュニケーションがスムーズにいくよう一定期間の体験学習をさせてから作業に従事させている。このことにより、限られた人間関係、作業スペースの他にも行動、会話ができるようにしている。

（4）適材適所による賃金の確保

職場適応訓練等の活用により、能力、適応力を見極めたうえで本人に見合った賃金形態による雇用とし、最低賃金除外申請は行っていない。

（5）雇用継続のための工夫

職場内(配置・組織内)での不調和、人間関係、作業能率の低下、体力の低下等の問題が生じた場合、本人・保護者の意思を確認したうえで、配置換えを行い様子をみることとしている。

（6）業務遂行援助者の活動

業務遂行援助者は、毎朝、職場で行うミーティングの際には、一日の作業の流れ、予定(納品、入荷等)について説明し、作業への取り組みについて自覚を促している。
また、業務遂行援助者は自らの作業をしながら、数名の障害者及び商品の仕上げを管理している。

（7）職場定着推進チーム

各部署から1名と障害者代表1名、計5名からなる委員を選任し、定期的(月一回及び必要の都度)会議を開催し、意見交換のもと安定的な就労が可能になるよう配意している。

（8）職業生活相談員の選任

現在3名を選任し、職場からの問題提起、苦情の吸い上げ、本人からの相談に当たっている。
業務務遂行援助者と職業生活相談員との連携と職場定着推進チームとの一層のつながりが必要である。

（9）保護者・家族との連絡

2カ月に一回位連絡会を持ち、会社での様子や家庭での出来事などを確認しあい、保護者・家庭との連携を密にしている。

3.取り組みの効果

業務遂行援助者による長期反復指導、訓練実施の結果、その作業が身につき製品の仕上がり状態が格段に改善され、作業能率が向上している。
障害者の勤勉性が発揮されて、欠勤が少なく定着率も高い。また、顧客の評価もなかなか良い。

4.今後の課題、展望

レンタル、リースの機器が複雑多岐に渡ってきているため、消毒・洗浄・仕上げ等により一層の配慮とサービスの向上が求められてきている。
多機種の機器を使用することが今後見込まれるが、適切に操作できない障害者には身の安全ため機械に携わらせない等一層の指導が求められる。
一つの作業だけに従事させるのでなく、重度障害者の一層の職域拡大のため各種の体験・経験をさせ自らの作業選択、希望による配置をしていくことが求められる。
障害者自らが仕上げたレンタル・リースの機器がどんな人にまたどのように利用されているか実際に生で体験させ、仕事の意義ややりがい等を一層本人に自覚させるため、納品等の仕事にも従事させることが求められる。
現在、同社の敷地内に新工場建設を計画しており、健常者と合わせて数名の障害者の雇用を予定している。
使用済み紙オムツの処分には、焼却に多くの燃料を要すことから、近年地球に優しい布オムツが見直されてきており、病院の産婦人科では布オムツに移行してきているケースもあり、買取あるいは賃貸の洗濯出来る布オムツの市場拡大に大きな期待を寄せている。

5.まとめ

本事業所が、障害者雇用において、高い雇用率を維持している背景には、さまざまな取り組みや工夫があることが判明した。これらの取り組みはいずれも高く評価できるが、特にそれらの要因を分析すると、以下の3点にまとめることができよう。
第1に、「障害者と共に働き、共に学び、共に歩んで」という事業主の企業理念が根底に根付いているだけでなく、従業員一人ひとりがその理念を理解し、その共通理解のもとに、さまざまな取り組みが行われているということである。事業主がよく「企業を支えているのは障害者だ」と言うそうであるが、その言葉の中にもその理念が表されている。
第2に、その企業理念に基づいて、職場の中で障害者向けの作業を必ず確保している、という取り組みがあげられる。近年の機械化・合理化によって、機械に委ねる部分も当然あるが、たとえ機械化しても、人員(障害者)は減らさない。つまり、障害者が従事できる手作業の部分(工程)を必ず残しながら、機械化を進めているということである。
第3には、職場の人間関係づくりの工夫と支援体制の充実が挙げられる。たとえば、新規採用者に対する一定期間の体験学習もそうであるが、入職直後の職場の人間関係づくりを円滑に行い、職場適応を促進している。さらに、職場定着推進チームや職業生活相談員らが、家庭とも連携しながら、障害者や本人の相談にのるなどして、雇用継続に向けて取り組んでいる。

執筆者：新潟大学教授　松井　賢二

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