「特別のことはしていないですよ」～聴覚障害者雇用の工夫～
2003年度作成
| 事業所名 | アイテック株式会社 | |||||||||||||||||||||
| 所在地 | 長野県塩尻市 | |||||||||||||||||||||
| 事業内容 | 移動体通信基地局用アンテナ設備の開発/設計/製造など | |||||||||||||||||||||
| 従業員数 | 47名 | |||||||||||||||||||||
| うち障害者数 | 1名
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1.障害者雇用の動機・経過
| 『特別なことはしていないですよ』 取材で訪問し、面会いただいた人事・総務部門を所轄する 取締役 経営企画部長の村上さんが、もの静かに話された第一声である。 「障害者の雇用をねらっていたというわけではなく、退職した清掃要員の補充が目的でハローワークに相談した時に紹介があり、その仕事をきちんとしてもらえれば目的は達せられるのですから障害者ということで特別なことをしたんではないんですよ」 「それに聴覚障害であれば清掃の仕事に大きな障害になることも少ないだろうし、今までも一般企業での就労経験も持っておられたようですので、あまり心配しませんでしたよ。 だから、これを機会に障害者にも門戸を広げてみよう——と考えただけで、そんなに特別なことはしていないですよ」 |
2.雇用安定や管理面での改善や工夫、留意事項など
| 従って、会社内の行事には基本的には参加してもらうという方針ですすめ、その中で次のような工夫がされ、改善がなされてきた。 |
（1）手話通訳者の委嘱 |
 会社の経営手法として、半期ごとに経営方針・部門方針の示達、説明を受け、それに基づき個人目標を立て、その達成を目指して業務遂行するという制度を採用している。その時の全社ミーティング及び3ヵ月毎の状況確認や能力評価のフィードバックのための個人面談などの時には手話通訳者にも同席してもらってはいたが、『伝わっていないナー』ということを実感していた・・とのこと。 そこで改めて“助成金制度を活用しての手話通訳者として委嘱”し、支援の度合いを高め、通訳回数も増やすように改善した。 |
（2）社内活動への参加 |
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3.事業主などの意見、感想
| 前出の村上部長は言う。 「清掃という仕事は目立つ仕事ではない。 汚れてきて始めてその有難さや、日頃の努力がわかる…という地味な仕事だ。 その仕事をよくやってくれている。トイレや洗面所などの共用場所が以前に比べてずっときれいになり、それが続いている。それがいいですね」 さらに続けて、 「障害については、意識はするが特別に扱うことはしていないんですよ。彼女はその辺を解ってくれていて、自分のペースで、積極的に協力してくれているので助かります。この方が、お互いにやりやすいように思いますね」 |
4.今後の障害雇用について
| 『特別に障害者を……とは考えていない』と、村上部長は続ける。 「新たに雇用する機会ができれば、その仕事への要求水準を満たしてくれる人材を採用するだけです。能力や意欲で選びたいですね」 |
5.取材後の印象・考察
 事業内容にふさわしく、若い社員が多いうえ、天井の高い明るく、きれいな工場であった。彼女の担当する清掃エリアを案内してもらったが、当初は汚れていたが一所懸命にきれいにしたという油汚れの手を洗う洗面所や便器などはきれいにみがかれており、明るい廊下などと共に清潔感いっぱいの工場で社員教育の良さと、明るい企業風土が感じられた。 障害者雇用についても、アメリカ国籍の日系2世が社長を務める会社らしくアメリカ的であり、開放的だ。 能力と意欲があって、成果を上げられる人材であれば健常者、障害者を意識しないという考え方が随所に感じられた。 このことは、今回取材をしてみて、障害者であっても周囲からも親しまれながら信頼を得、他の社員と同じように明るく、元気よく仕事が出来るように、彼女の性格をうまく引き出した会社側の工夫や配慮が、彼女の前向きな姿勢とうまく一体となって、この“よい環境”を創ってきたように感じた これは、当社の“企業理念”の中の一節 『会社の強さの源泉は人材です。人材が会社の知性を創り上げ、「会社の評価・活力」を決定付けます。』 が、まさに実践されているとの思いを強くして取材を終えた。 |
| 執筆者：吉江 英夫 |
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