知的障害者を中心とした特例子会社設立後の職務検討と指導体制に係る企業の取り組み
2003年度作成
事業所名 | グローリーフレンドリー株式会社 | |||||||||||||||||||||
所在地 | 兵庫県姫路市 | |||||||||||||||||||||
事業内容 | 社屋内外の清掃・洗濯業務 社内のごみ焼却および産廃物の処理業務 社内で発生する廃棄物再利用業務 植木剪定業務 従業員食堂の湯茶配置業務 社内郵便物の区分け・運搬作業 書類及び図面のコピー業務 親会社工場内で部品の仕分け・組立 | |||||||||||||||||||||
従業員数 | 22名 | |||||||||||||||||||||
うち障害者数 | 12名
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1.事業所の概要
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2.特例子会社設立までの経緯
障害者雇用対策基本方針の策定など法整備の進む中、障害者の雇用は企業として社会的責務であるとの認識から、その雇用対策など関係機関(公共職業安定所、市)との相談、援助依頼や、社内に障害者の雇用に関する新事業を開拓する社内プロジェクトチームを発足させた。 一方、社内で発生する産業廃棄物や一般ごみの環境問題への対応策、あるいは清掃業務の分社化についての具体策が見つからずに検討が続いていた。 平成9年4月に「障害者の雇用の促進等に関する法律」が改正され、「雇用率の引き上げ」「特例子会社の設立要件緩和」などが改正されたのを追い風に、社内プロジェクトチームの報告を受け、その年に設立された雇用支援センターと協力体制を組みながら、障害者の雇用の場を創出することを目的とする知的障害者を中心とした特例子会社の設立に踏み切った。 |

3.特例子会社設立時の業務のマニュアル化への取り組み、および新規事業への挑戦
(1)2000(平成12)年度:親会社からの周辺業務を取り込み障害者2名の増員を計画 |

2000(平成12)年4月の特例子会社役員会において、今年度は設立時の事業計画に記載されている清掃業務以外の事業を展開すること、事業の拡張ならびに増員計画が提案、決議された。 |

![]() 親会社工場(7 ヶ所)内のビルの玄関、廊下化粧室等の清掃をしています。 |

5月、親会社部長会議で特例子会社社長より各部で子会社へ委託可能な周辺業務の洗い出しが依頼され、関係機関(雇用支援センター、姫路公共職業安定所)も入り、子会社に取り込み可能な業務かどうか検討した。その結果、総務部の業務である社内メール業務を子会社に委託することが決定され、具体的な業務の流れや業務量について他の子会社から情報を得ながら組み立てていった。 |

![]() 親会社工場内の、各部署より集められた郵便物を正確かつスピーディに仕分けします。 |

3名の障害者が清掃業務と兼務しながらメール業務を行い、1名の障害者を新たに実習で受け入れることになった。実習開始までに、親会社内でメール業務を子会社で行うことを周知し、宛名書式の統一化を徹底するなど全社的な協力体制がとられた。 実習候補者については「姫路市障害者雇用推進会議」にて検討、決定し、7月から6ヶ月間の就業体験支援事業を利用した。親会社従業員と雇用支援センター職員が付き添い、親会社従業員が1ヶ月で引き上げたあとは子会社従業員と雇用支援センター職員が確認をするといった形で、3ヶ月から4ヶ月でほぼ完全に業務を習得することができた。 |

(2)2001(平成13)年度:障害者の増員を図ることから特例子会社従業員を相談員として育成 |

2000(平成12)年度11月の特例子会社役員会において、2000(平成13)年度2名出る定年退職者の補充は障害者2名と、従来のように親会社からの転籍出向ではなく、特例子会社で1名直接雇用することが決議されたと同時に、特例子会社従業員のなかで障害者の指導や管理に専任できる人材を育成するため、新たに福祉施設の指導員経験者を採用する準備を進めた。 実習候補者については「姫路市障害者雇用推進会議」にて検討、決定し、2001(平成13)年1月から3ヶ月間1名の実習を、2月から3ヶ月間更に1名の実習が開始された。人的な体制が整いつつあったのと、さらに重度の障害者の採用も検討されたので、これまで統一されていなかった清掃業務のマニュアル化について検討を始め、清掃業務の技術講習会に参加し技術面での向上が図られた。 |

(3)2002(平成14)年度:重度多数雇用事業所に向けて知的障害者の増員を計画 |

2001(平成13)年2月特例子会社役員会において、2002(平成14)年7月親会社の新社屋完成に伴う業務量増加による障害者2名の増員計画が決議された。 前年度から準備をしていた、特例子会社従業員で障害者の指導や管理に専任できる従業員を配置し、清掃業務のマニュアル化を開始した。 |

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4.支援機関(雇用支援センターを中心とした)とのかかわり
(1)実習期間の設定 |

実習期間を、概ね3ヶ月から6ヶ月とやや長めに設定した。これは、子会社者従業員が、障害者雇用への負担感、拒否感をぬぐいきれていなかったために、実習期間の中で時間をかけてできるだけ問題のある部分をさらけ出した上で、よい部分を引き出し、同じ子会社従業員として受け入れることができるかを判断したかったからである。 どうしても実習開始の1ヶ月くらいは、障害者に対してやや遠慮して接する期間、いわゆるお客さん扱いになってしまい、本気で障害者に向かい合い、子会社従業員として求める労働力にまで引き上げようとしない期間だった。必ず子会社従業員とペアを組んでの仕事であったので、2ヶ月3ヶ月と経過してくると担当する仕事が滞らないようにするためには、ペアを組んでいる相手に求めてくることが厳しくなっていき、それによりトラブルも生じてきた。そのトラブルをひとつひとつ試行錯誤しながら解決していくことで、障害者が労働力として育っていき、同じ子会社の従業員としての信頼関係が生まれてきたのである。 |

(2)雇用支援センターによる支援 |

実習開始の導入時期には必ず雇用支援センターの職員が付き添った。障害者が、同じ緊張感で仕事を覚えていくことを共に経験し、会社の人の作業指示が理解できなくても分かりやすく図や表を使って、専用の作業指示書をつくり噛み砕いてわかりやすいように教えてもらえるとか、1~2度作業指示を受けても聞き返せずに、おろおろして仕事が止まって動けなくなった時にちょっと応援してもらえるといった安心感を持たせるためである。実習者の過度の緊張感が薄れ、持っている力を充分に発揮できる環境作りも可能になった。 |

(3)社内ミーティング |

毎月の社内ミーティングに雇用支援センターが参加し、子会社社員からの声として子会社従業員の障害者を指導する方法の難しさや、障害を理解することの難しさが出てきた。又、仕事のことだけではなく、人間関係のこと、金銭管理的なこと、身辺処理の問題、家族との関係のことまでも話題になった。いかに指導することが大変かという愚痴の言い合いといった様子もあったが、これにより障害者を援助することを子会社だけで背負っているのではないといった負担感を軽くし、どのように指導すればうまくいくのかが検討される場にもなったと思われる。また、このミーティングを通して、子会社側が必要と判断して、従業員の中に障害者の指導や管理を主な職務とするポストを設けることができ、社外の支援機関との連携や情報交換がスムーズに行なえる体制が整えられるようになったのである。 |

5.考察
最初にグローリーフレンドリー株式会社の特性について検討を加える。 この企業の方針として現状維持ではなく、事業の拡張や従業員増員を目指し、3年間で清掃業務だけの職域から拡大し5名の障害者の増員を行ってきた。さらに、親会社の新社屋建設に伴い2名の増員を計画しているといったこの企業の常に前向きな体質が指摘されよう。さらには目標を決定してから、まず受け入れ、実習、雇用を通して必要に応じ支援体制を整えるといったことが行われてきた。また親会社に障害者を受け入れるため、各部署に対して受け入れの趣旨を説明すると共に声かけを求める協力文書を配布し、社内メールの業務を始める前には、分かりやすいように宛名の書式を統一するといった環境整備を行うなど、全社的にできることは協力しようとするスタンスも見えてきた。 このような会社側の前向きな障害者雇用に対する姿勢に対して雇用支援センターは、継続的に助言や情報提供あるいは他の機関への橋渡しといった事業主側へのアドバイザー的な役割を担ってきた。さらに子会社従業員の知的障害者に対する「職業人として充分ではない」、「守られた場所でしか働けない」といったマイナスのイメージを払拭するために、実習期間から継続して雇用支援センターが入りこみ、トラブルが大きくならないうちに解決していくトラブル解決機関となった。それにより目の前で解決方法を見せられた子会社の従業員がその方法を学び取った。いっしょに働く従業員の意識が変化していくことで、試行錯誤しながらも重度の障害者たちが、厳しい会社の空気を感じながらも充分にもてる力を発揮し、いきいきと働きつづける場面を提供できたのではないだろうか。 |

6.課題
最後に言及せざるを得ない新たな課題として、特例子会社での雇用人数が増えることにより、問題の量が増えるだけではなく、質が多様化してきたことがあげられる。障害者が働くことを支えるために、職場内のみならず家庭生活の部分を支える必要が出てきたのである。家族と離れて一人暮らしをする人、家族はいるもののその家族への金銭管理面での支援、健康管理面、あるいは制服のアイロンがけといった生活技術面での具体的な支援さえ必要になってきた。 障害者本人が子会社内で働く場面での問題は、いままでのハウツーの蓄積で子会社従業員が対応できるものもあるが、このような部分での問題はある程度の理解は求められても、子会社従業員に全面的に任せていけるものではないと考えられる。 これからの支援機関(雇用支援センターを中心とした)には、働く障害者だけではなくその家族をも含めた生活支援のサービス提供機関としての機能が求められるのかもしれない。 |

執筆者:(財)姫路市障害者職業自立センター 姫路市障害者雇用支援センター 森田 眞弓 |

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