創意と活力で障害者の職場定着を
2003年度作成
| 事業所名 | ウインナック株式会社 | |||||||||||||||||||||
| 所在地 | 和歌山県和歌山市 | |||||||||||||||||||||
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| 従業員数 | 48名 | |||||||||||||||||||||
| うち障害者数 | 23名
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1.取り組みの経緯、背景
| ウインナック(株)は、平成6年に和歌山県、和歌山市、和歌山内燃機株式会社（平成15年8月21日アクロナイネン株式会社に社名変更）による県下初の第3セクター方式による重度障害者多数雇用企業として設立され、日本障害者雇用促進協会から「障害者の雇用の促進等に関する法律」に基づく重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金の認定を受けて、平成8年から操業している。 当社は、創業当初より従業員の懸命の努力により業務を拡張して、売り上げ、収益ともに着実に進展を遂げ、障害者の多数雇用に向けても和歌山公共職業安定所の協力の下に努力がなされてきた。 しかしながら、障害者雇用については現在に至るも目標に達せず、就職をしても通勤の不便さや職場環境、勤務がきつい等の理由で離職する者があり、従業員の定着面の問題が雇用の拡大に大きな障害となっていた。 このようなことから障害者の職場定着には、職場環境の改善を図り障害者が持てる能力を充分に生かすことができる職場づくりがもっとも重要な課題と思われ、働きやすい職場づくりに向けてさまざまな取り組みが行われた。 |
2.コミュニケーションの改善
| 職場におけるコミュニケーションを大切にして個々の相談、各職場での問題点、作業状態などのチェック、それぞれに応じた対処方法等について話し合い、各人の特性、能力に合った作業と作業目標値を設定するなどしてやる気を出させ、各人の持てる力を充分発揮できる職種への配置を考え、働きやすい職場づくりを考えた。 また、特に聴覚障害者にとっては、職場での指示、情報をその都度、的確に伝えられることが最も大切なことであり、会社設立当初は手話通訳士の配置ができておらず、コミュニケーションの悪さが聴覚障害者の離職の大きな原因になっていた。 |
| しかしながら、聴覚障害者からリーダーへの昇任者が出たことにより、聴覚障害者のまとめ役として積極的に取り組むとともに、朝礼、会議等での聴覚障害者とのコミュニケーションにはFM送受信機を購入し、受信機を障害者のリーダー（聴覚障害者）に持たせて発言を直ぐ手話で他の聴覚障害者に伝える方法を採り、問題が発生すれば、聴覚障害者を集めて、その都度、問題解決のための検討をして適切な解決方法を見いだし、その後は離職者もなく職場環境も良好になった。 |  聴覚障害者独自のミーティング |
3.作業方法の改善
| 作業方法を改善して障害者が働きやすい職場にすることは、障害者の職場定着にとって最も重要な課題である。さまざまな取り組みの中から、［1］プラグの組み付け、［2］紀州梅干しの包装作業を取り上げて改善への取り組みを説明す |
（1）プラグの組み付け |
| プラグの組み付けは完成品で全高17mmと非常に小さい部品であるため、障害者が手作業で行うのは大変な負担になっており、採用面接の際、保護者に現場を見せると「こんな細かい仕事はうちの子供らにはとてもできない。」と仕事に対する不満も聞かれた。何とかして改善を加えて、障害者に負担の少ない作業にするかが大きな課題になっていた。 さまざまな思考錯誤の末、現在の作業工程に決定し、順調な実績を上げる知的障害者が中心の職場ができあがった。 |  作業風景 |
| ［1］ 部品を入れるマットを考案した。スポンジ状のウレタン製のもので、指先で摘みやすくするため、ある程度クッションがあるものと考え、手作りで作った。 ［2］ 組み付け手順を変更した。先に、パレットに本体を並べていたものを、逆転の発想で最後にパレットに着装する方法で作業をすることにした。  |
（2）紀州梅干しの包装作業 |
| ［1］ プラスチックへのシール貼り作業 テーブルの上にべタと横に寝かせた状態で一枚一枚手で剥がし張っていたが、廃材等を利用して考案改善したくるくる廻しながらテープを剥がし張っていくように考案・改善し、作業効率の向上に役立っている。 |
 円形の小さな容器を固定して密着テープを手作業で巻いて行く困難な作業であった。木製半円形の定着皿と古いテープカッターを併用して、回転させながら円周にテープを巻くように考案した。 |
| ［2］ 型円形蓋付きの商品に金色の密封テープを巻く作業 古いテープカッター台を再利用し容器を回転させながら密封し、貼り付けていく方法に改善した。 また、テープと容器が一直線になるよう段ボール材で枠を作り固定した。これにより、作業が容易になり、仕上げも美しく、スピードも倍増した。 |
 プラスチック容器フタのシール貼りシールローラーが大きく重い手間のかかる作業であったが、廃材を利用し簡易回転式補助機を作成し、作業がスピードアップでき、簡素化され作業がし易くなった。 |
4.作業指導の徹底
| 作業方法を改善するだけでなく、指導を徹底することにより、初めて障害者にとって有効な作業となる。指導は徹底して行い、担当者は半日など当たり前で、時には一日付きっきりで指導を行う。根気のいる仕事だが、「使命感を持ち、障害者の立場になって、同じ目線で判断し、行動をしょう」を合い言葉に頑張っている。 |
5.作業目標
| 障害者にとっては一日一日の作業を目標を持って挑戦しこれを達成することは大きな喜びと明日への励みになる。 手作りで目標板を作りその人その人の能力に応じた努力目標を設定し、一日の作業目標を達成した都度一こま移動させる方法である。 |
| 目標設定も2～3ケ月に一度見直すようにして進歩、向上に繋がるような見直しをしている。 一日の作業目標を完成させ一こま移動させる時の楽しそうな顔はスタッフみんなの励みになっている。一ヶ月の目標達成者にはバラの花が飾られる。 このように目標達成数などをカラーで図示、掲示して達成者は誉め、不足の人には努力の激励をして、品質の向上を図っている。 | 私たちの作業目標  個人目標掲示板 （加工出来高表示） |
6.レクリエーションと健康管理
| 職員の福利・厚生対策は、障害者の健康に配慮し、やる気を起こさせ、職員間の融和を図る上で欠かせない事であり、キャンプ等のレクリエーションを行うとともに、毎年9月に一斉健康診断を行い、診断結果の報告をさせている。また、生活習慣病の受診も行わせている。 自らの健康管理への意欲高揚を促し、朝礼の後には体操を行わせる等、日頃から健康・衛生面に気をつけて作業をするよう指導している。 |  朝礼時の体操風景 |
7.職場を美しく
| 平成8年に新築落成した工場であり、いつまでも美しく、職員が誇りを持って大切に利用するよう、快適な職場づくりのため、「みんなで協力」を合い言葉に美化運動に取り組んでいる。 清掃は週2回（火、金）、全員が参加して行っている。課長、係長、班長が先頭に立って、社内の清掃に汗を流している。 また、駐車場も鳩の糞公害で悩まされているが、大勢の人が自発的に各自の持ち場が終わってから、一斉に清掃を行い、自分たちの会社は自分たちの手でとの自覚の元に、障害者に優しい職場づくりのために取り組んでいる。 |
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| 社屋清掃風景 毎週火曜日と金曜日の2 回全員で分担を決め始業前の一斉清掃 |
8.今後の課題・展望等
| 設立時に障害者の雇用計画目標を29名としているが、現在、目標数を6名下廻っていることが最大の課題である。そのため、明るく、働きやすい職場を作り、離職者をなくして一日も早く目標が達成できるよう全社一丸となって取り組んでいるところである。 |
| 執筆者：社団法人和歌山県障害者雇用促進協会 障害者雇用アドバイザー 中西 俊二 |
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