精神障害者の雇用と職場定着について
2003年度作成
事業所名 | 有限会社ムラタ | |||||||||||||||||||||
所在地 | 島根県能義郡 | |||||||||||||||||||||
事業内容 | プラスチック成形金型用押し出しピンの製作 | |||||||||||||||||||||
従業員数 | 26名 | |||||||||||||||||||||
うち障害者数 | 16名
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1.障害者雇用の経緯
当社は機械器具部品の加工業として昭和60年4月に創業。平成7年10月、それまでの安来市内の工場から現在地に、工場を新築移転した。その際、生産効率を図るため、工場のスペースを拡大した。 これまでの旧工場はいわば3K職場ともいうべきもので、求人しても、なかなか人が集まらないような状況であったため、工場の移転を契機として、このような課題の解消が求められていた。折しも安来市内の精神障害者社会復帰施設からの障害者雇用の提案があり、初めて障害者雇用問題と取り組むこととなったものである。工場の新築に併せて前もって障害者受け入れを検討し、同年4月、社会復帰支援施設からの工場見学、ハローワークへの求人申込み、ハローワークからの指導による面接を行った。そして初めて当面3名の就労可能な精神障害者を受け入れ、スタートするに至った。 ハンディを抱えている方々を受け入れるためには、健康管理に留意すると共に、機械工場として、作業を単純化して安全に働いてもらえる作業環境の整備が課題となった。 |

2.障害者の受け入れ教育実習
受け入れに当たっては、工場の方針や職場規律をはじめとして会社の一員として就労する上での決まりやルールについて説明徹底を図ることとし、生産就労関係については、基本的な作業手順の理解と修得、本人の適性を見出すために、1か月毎に、数カ所の仕事の職場実習を行うプログラムを基本とした。そして無理なことは健常者がフォローして触れあいをつくるように努めることとした。 この教育は社長直轄で進められ、教育実習後に、関係者で相談して本人の特性と能力にあった職場に配置する方針とした。しかし総て順調に進んだわけではなく、現場の指導者を含めて、日々粘り強い指導、提起される日常の問題とフォローに追われることもしばしばであった。以降、逐次、社会復帰施設から、数名の精神障害者を受け入れる状況になったので、受け入れのあり方や教育の方法、日常問題の対応等も、次第に管理者・現場指導者の間に身についていった。 <障害者雇用状況>
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3.機械加工作業の単純化の推進
旋盤等の加工作業は従来手作業で行っていたが、不安全行動による怪我の発生や生産性の問題があった。こうしたことを克服するために、手作業による加工からNC装置の機械を導入することによって、平成7年より、機械加工作業の単純化と安全化を徐々に計画、着手していくこととした。 従来の旋盤作業(単能機)の場合、ワーク(加工部品)を取り付けて加工に着手し、加工完了すると、本人の判断でそれを目視確認していたため、判断がつかなかったり機械を止めることが難しい状態で、かつ不安全な行為を伴うこともあった。 こうした問題解消のため、NC旋盤の導入と一部改造を行うこととした。 |

(1)NC機導入、改造後の加工作業 |

[1] 機械操作に当たって、まずワークの取り付け [2] ボタン操作でスィッチの入力→自動的に機械加工 [3] ワークの取り外しを行うこと(この時は機械はストップしている) 以上で1加工工程の終了。 |

(2)利点 |

[1] 作業が単純化されたこと [2] 機械がカバー付きであるため、切削油や切り粉が飛ばず、作業上安全が確保できること [3] これにより、安全で簡単な繰り返し作業が可能となったこと ただし、加工部品が変わることがあるので、品質の管理等のために、職長等の関係者が指導・援助に当たっている。 |

(3)機械設備導入実績(平成7年から13年の間) |

NC旋盤 10台 NCタッピングセンター 2台 NCフライス盤 1台 | ![]() 工場内のNC旋盤加工中の現場 |

これらの機台には、精神障害者14名、身体障害者1名が就いている。 設備機械の計画的導入により、作業の容易化、簡素化が可能となり稼働率が向上し、生産性が向上した。 |

4.社内体制、環境の設備
(1)業務遂行援助者の配置 |

障害者の仕事を指導援助するために、業務遂行援助者を3名に1名配置している。作業指導、品質向上の指導、並びに安全衛生等の助言を行う体制がとられている。現在工場内に5名の援助者が任命され、作業の円滑化にも役立っている。 |

(2)身体障害者の新規雇用 |

障害者職業センターとの連携により、トライアル雇用を経て平成15年2月に、身体障害者(両下肢機能障害2級)1名を採用するに至った。これに伴い環境の整備を図るため、駐車場の舗装整備、工場に至る間の通路及び必要なスロープの舗装整備を行うこととし、協会の指導のもとに助成が認められ着工に至っている。 |

5.福利厚生への配慮
(1)住宅(寮)の建設 |

これまで居住していた宿舎が老朽化したこと、火災予防に加えて、宿舎が定員一杯となり、2名程度のコミュニティにいる障害者の住居の必要性が生じたことから障害者の方が、より安心して生活できる住宅の確保を目的として平成11年11月に建設を計画し、翌年3月竣工完成した。(耐火構造2階建て、個室8、給湯器他電化設備) |

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(2)通勤への配慮対策 |

従来は自転車や公共のバス等で通勤していたが、宿舎と会社までの距離が20キロほどあるため通勤用の小型バス(定員8名)を購入し、障害者の通勤・利便性の向上施策が図られた。(平成11年10月購入実施) |

これにより、降雪等天候時の通勤困難さが解消され、宿舎やきめられた場所までの送迎ができ有効な通勤施策となった。通勤用バス運転は委嘱の運転者により毎日運行されている。なお、寮生以外の障害者は、自宅から乗用車の利用により通勤している。 | ![]() 出勤時マイクロバスからの下車風景 |

(3)職場懇談会の開催 |

現状についての報告、意見交換のため年2回、職場懇談会を開催している。 出席者は、施設の担当者、保護者、障害者全員が対象で、現状の報告と問題点も出し合って、相互理解を深め三者の連携を図っている。なお、障害者は休業している人にもよびかけて殆どの人が出席している。 |

(4)健康管理 |

昼食時には、社長が食堂で一緒に食事し、話題を提供したり、話を聞くなど、また体調等について話したりして、健康状態の把握とコミューニケーションに努めている。 体調不良等で1週間以上に亘って休業を要するような場合は、事前に会社に対して、その従業員の主治医と密接に連携を取っている社会復帰施設から連絡・要請があり、会社が同意する形式を取っている。そして病状が回復した時には、当該施設から出勤させたいとの連絡が入り、職場へ復帰手続きをとったり職場受け入れが整えられ、出勤となる。 会社としては当該施設との連絡・連携を密にして、障害者の立場、健康状況に特に配慮し、必要なリハビーテーションを認めている。 年2回定期検診を実施し全員が受診している。 |

6.雇用に関する留意点
障害者を定期的に受け入れてきた会社としては、色々の雇用体験などから精神障害者の雇用について、次のような点に留意することが望ましいとしている。 [1] 一人でなく二人以上の雇用がよい 職場で孤立することなく働ける。当社の場合3名から採用開始している。 [2] 同じ施設の人がよい 日常の話題があり安心感、仲間意識がわく。 [3] フルタイムから始めない方がよい 8時間業務になれていないため、当初は2時間→半日→フルタイムと徐々に移行する方がよい。 [4] 作業指導は気長に行う方がよい 複雑な作業ができないため、作業の単純化を図り気長に指導すれば段階的に理解を得られ、雇用の継続に繋がる。 [5] 他の機関の助言を受ける 社会復帰施設等の指導を受け、仕事以外の面のフォローを受けないと企業は全部はできないため、定期的に意見交換を行うことが良い。 |

7.まとめ(総括と課題)
以上の各種の取り組みから当社における、表題の「精神障害者の雇用と職場定着」は着実に図られていると思料される。とりまとめ事項を評価とともに下記する。
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執筆者:島根県障害者雇用促進協会 障害者雇用アドバイザー 須山 光弘 |

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