製造工程における知的障害者の雇用
2003年度作成
| 事業所名 | 株式会社カンショク | |||||||||||||||||||||
| 所在地 | 香川県観音寺市 | |||||||||||||||||||||
| 事業内容 | 豆腐製造業 | |||||||||||||||||||||
| 従業員数 | 30名 | |||||||||||||||||||||
| うち障害者数 | 1名
 |
|
1.障害者雇用にいたった背景
| 創立（法人化）は平成元年である。 平成12年秋、地元の養護学校から知的障害者に対する職場実習の依頼があり、障害者雇用に経験はないが代表取締役秋山益廣の母が精神科の病院で看護婦の経験があり、障害者について理解があったことから実習を引き受ける。 実習作業については、養護学校の先生から単純作業を繰り返す実習がよいとの指導があり、返品された製品（賞味期限の切れた豆腐）をパックから取り出し廃棄用の箱に詰める作業を行った。 平成13年3月当該障害者が卒業するに当り、公共職業安定所から雇用についての依頼があり、検討の結果採用することにした。実習の段階では本人の能力に合った作業について短期間の実習ではあったが、雇用となると継続してOJTが必要となり、人的な負担が多くなることから何かよい方法がないかと公共職業安定所に相談したところ、日本障害者雇用促進協会の助成金制度を活用するようアドバイスを受けたので雇用に踏み切った。（日本障害者雇用促進協会の重度障害者介助等助成金（業務遂行援助者の配置）を受給） |
2.知的障害者雇用上の問題点
|
3.改善の状況
（1）礼儀作法等の教育（ソフト面） |
| 職場での集団生活を維持していくためには、従業員間の礼節、コミュニケーションが必要なことから礼儀作法を、実例を示しながら習得させ自然に挨拶等ができるように教える。 |
（2）就業職場の選定 |
| 職場配置に当っては、全職場の分析を行い生産工程の職務分析を行ったが、当社製品の特殊性（生鮮食品であり、毎日午前10時までに得意先に発送する必要がある。）から短時間に製造を終える必要がある。(別添職務分析票) その結果就業可能な職場として、職務分析表の［1］フライ、［2］包装、［4］外包装が考えられたが、いずれも流れ作業の一部分であり、何れかのセクションが停滞すると製品出荷に大きな影響を与えることから、当面製造部門に関係のない部署であるコンテナーの洗浄や返品製品の廃棄作業に当らせることにした。 |
（3）業務遂行援助計画の作成（ソフト面） |
| 業務を遂行する上での援助は三段階に分け、第一段階では礼儀作法等の習得に力を入れ、社長及び業務遂行援助者が実例を示しながら自然に挨拶等ができるように教育する。 第二段階として、コンテナーの洗浄方法や返品製品の解体廃棄など一つ一つ実例を示し習得させる。ある程度職場になれた段階で、比較的単純な作業であるフライ部門で油揚げのフライ作業を援助者が上がり具合の見本を示しながら製品にムラがないよう経験で習得させる。 第三段階として製造部門ごとに稼動の時間差があるので、あいた時間帯は包装部門で就業できるよう援助する。 |
（4）設備等の改善（ハード面） |
| 製品の性格上衛生面での管理は重要であり、特に、毎日相当量の洗濯物が発生することから既存の洗濯機、乾燥機を使用している。しかし、一度に多量の洗濯物が発生する、操作が複雑である、操作スペースが狭いなどから、健常者である経験者でも苦労しており、対象障害者に操作させたところ作業できなかった。そのため、全自動の洗濯機、乾燥機を購入して改善した。 |
（5）賃金の対応（ソフト面） |
| 雇用当初は職業能力が不明であるため低賃金で雇用していたが、将来の自立に向けて生活が可能な収入が得られるよう教育を実施する。 |
4.改善の効果
| 雇用後3年半が経過し、最近では挨拶や従業員間のコミュニケーションができるようになり、積極的に行動ができるようになっている。 特に、朝礼では、毎日従業員全員が刊行物である「職場の教養」の今日の心がけを読み上げているが、対象障害者も大きな声で読み上げるなど積極性が出ている。 また、この朝礼の集合も障害者に担当させたところ、毎日朝礼の集合のため各職場を回り集合させるようになっている。（朝礼は、生産時間帯の関係上製造が終わった昼前に実施している。） この仕事が自分の仕事だとの意識をもち始め、開会の号令など積極的に取り組むようになった。 また、ベテランの女性に指導を任せたところ、自分の子供に接するように繰り返し繰り返し指導を行っており、この結果、社内全般に部下に対する指示が大きな声ではっきり伝わるとともに社内全般の雰囲気が和やかになってきた。 |
|
5.今後の展望
| 障害者特有の問題なのか、仕事に時間が空くと自分に興味があることに熱中するなど仕事以外のことを行うことがあるので、職場内では1人にせず大勢のなかで作業をさせる必要がある。 3年余経過し1人前の労働者として自立できる見通しが立ったので、今後も引き続きOJTを中心に教育訓練を継続する予定である。 |
 |
| 執筆者：香川県障害者雇用促進協会 障害者雇用アドバイザー 金谷 健二 |
アンケートのお願い
皆さまのお役に立てるホームページにしたいと考えていますので、アンケートへのご協力をお願いします。
なお、事例掲載企業、執筆者等へのお問い合わせや、事例掲載企業の採用情報に関するご質問をいただいても回答できませんので、あらかじめご了承ください。
※アンケートページは、外部サービスとしてMicrosoft社提供のMicrosoft Formsを使用しております。
