特例子会社設立による障害者雇用の推進
2003年度作成
| 事業所名 | 株式会社サニーマート | |||||||||||||||||||||
| 所在地 | 高知県高知市 | |||||||||||||||||||||
| 事業内容 | 総合小売業（量販店） スーパーマーケット コンビニエンスストア（地区本部） |
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| 従業員数 | 1,780名 | |||||||||||||||||||||
| うち障害者数 | 20名
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| 事業所名 | 株式会社エコライフ土佐 | |||||||||||||||||||||
| 所在地 | 高知県高知市 | |||||||||||||||||||||
| 事業内容 | 発泡スチロール再生処理 | |||||||||||||||||||||
| 従業員数 | 10名 | |||||||||||||||||||||
| うち障害者数 | 6名
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1.（株）サニーマートにおける障害者雇用の考え方
| 現在、当社では26名の障害者を雇用している。障害者雇用については、企業の社会的使命であると考えており、積極的に雇用を検討していきたいと考えている。 しかし、当社のような接客業においては、お客様を第一に考えていかなければならないという事情があり、障害者に適した職場は限られてくる。そのため、当社の障害者雇用においては、障害者の個性、能力を把握し、適材・適所の職場配置を行うとともに、特例子会社の設立に重点を置いた取り組みを行っている。 具体的には、障害者の雇用に際しては、本採用前にトライアル雇用制度を利用し、できるだけミスマッチのないように仕事の内容、勤務時間、休日、職場環境、通勤時間等について、お互いに無理がいかないように話合いをし、双方の希望を最初に出し合い接点を見つけていくことを心がけている。そうすることにより、働きだしてからの「こんなはずじゃなかった」というギャップが比較的少なく、長く勤務してもらっていると考えている。 障害者の方もさまざまな性格、能力、適性があり、できるだけその方に合った仕事内容のある職場を考えるようにしている。 |
2.（株）サニーマートにおける障害者雇用の状況
| 現在、26名の障害者を雇用しているが、障害者を雇用するということで施設・設備などハード面で特別に工夫したことはない。当社としては、トライアル雇用制度を活用し、本人の個性・能力を把握した上で、仕事内容などを考慮し、配置する職場を決めるなど配置面での工夫をしている。現在の配置部署は以下のとおりである。 |
（1）流通センター （障害者12名） |
| 最も多くの障害者が配置されている部署である。行っている作業は、単純定型業務を中心であり、水産・食肉の盛り付け（3名）やコンテナの洗浄（8名）、流通事務（1名）に配置している。 ●Kさんの感想 「働く前に不安はなかった。職場では、上司には怒られないようにと心がけている。」 |  （流通センターで作業中のKさん） |
（2）店舗 （障害者4名） |
| 青果・水産・食肉・惣菜関係の商品パックや製造に従事し、バックルームでの仕事が主である。売場にはあまりでない。 ●Nさんの感想 「みんなに助けてもらっているので、それがうれしい。商品が集中した時のパックは大変。お客様の対応は気を使う。その他は楽しく仕事をしている。」 |  （店舗で商品パック中のNさん） |
（3）PFセンター （障害者3名） |
| 塩干物のパック詰め、肉の筋きり、惣菜の計量・袋詰を行っている。 ●Mさんの感想 「仕事内容を聞いた時にはかりを使えるかどうか少し不安があったけど、働き出すと何とかできた。今はとくに困っていることはない。」 |  （PFセンターで計量・袋詰中のMさん） |
（4）エコライフ土佐 （障害者6名） |
| 当社の特例子会社で、回収した発泡スチロールを洗浄・処理ラインに流す作業を行っている。 |
（5）感動推進室 （障害者1名） |
| また、職場配置に当たっては、当該部署のスタッフを集め、障害者への係わり方を事前に勉強するなどの取り組みを行っている。 |
3.特例子会社設立の背景、経緯
| 平成元年頃、自社で出る発泡スチロールのリサイクルをはじめた。その後、機械の老朽化により、平成11年3月に新しい機械を導入したが、臭いの問題が表面化し、新たな処理方法の検討の必要性が生じた。 そうした時、高知市のエコタウン計画の勉強会への参加の誘いがあり、そこで研究を重ねた結果、コストはかかるが、発泡スチロールの処理・再生にはソニー方式がよいという結論に達した。平成12年10月に子会社を設立、経済産業省や高知市の補助金を導入し、建物の建設、プラントの導入を行い、平成13年4月に創業の運びとなった。 特例子会社としたのは、作業自体が障害者でも可能なものであったとともに、当時は障害者の雇用者数が不足していたためである。そのため、子会社を親会社の事業所とみなし、そこでの障害者の雇用者数を親会社にカウントできる特例子会社として、（株）エコライフ土佐を設立することにした。 |
4.特例子会社（株）エコライフ土佐における障害者雇用
（1）施設・設備などハード面の工夫 |
| 【代 表 者】齋藤 和男 【設立年次】平成13年4月 【資 本 金】1,000万円 工場は、高知市仁井田のエコタウン計画地域内にあり、工場内には各地から回収された発泡スチロールの箱がうず高く積まれている。それを障害者と健常者の4～5名が紙・テープ類を除去し、ベルトコンベアに乗せる作業を行っている。 工場は、特に安全面に配慮した設計がなされている。設備面では、至るところにセンサーが備えられており、いつでもベルトコンベアを止められるようになっている。また、再生プラントの大部分は、屋外と別棟に配置されており、そこでの作業は健常者が主体で行うようにしている。 |
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（2）ソフト面の取組み |
| ［1］ 募集・採用 会社の創業時は、公共職業安定所の場を借り合同面接を行って採用者予定者を決め、約2週間の職務試行を行った。その後、3ヶ月のトライアル雇用を実施し、準社員として雇用した。また、会社が立ち上がって以降は、公共職業安定所を通じた募集・採用を行っており、雇用形態については、正社員としていく方針である。 |  工場内で作業する障害者 |
| ［2］ 賃 金 会社を立ち上げて間がなく、仕事量も少ないため、作業内容は単純な繰り返し作業である。また、障害者全員が同じ作業、同じ勤務形態であることなどから、賃金は全員同じで、月に10万8千円である。賞与はまだ出せる状況ではなく、昇格・昇進もまだ制度化していない。 ［3］ 労働時間 労働時間は朝8時から17時までの1日8時間であり、日曜日ともう1日休みの完全週休2日制を採用している。ただし、1日の作業量が早く終われば、終業時間前でも退社してもかまわないようにしており、その分、17時までに作業が終わらない時には残って働いてもらう場合もある。 ［4］ 教育・訓練 現在の仕事は、単純、繰り返しの作業であるため、教育・訓練といったものはない。しかし、2,3日休むと作業の工程を忘れる者もおり、日々が訓練であると考えている。 |
| ［5］ 福利厚生・健康管理 福利厚生としては、通勤手当を支給している。支給方法はすべて実費支払であるが、上限は2万円にしている。 健康管理としては、年1回の健康診断を実施している。 |  工場内で作業する障害者 |
| ［6］ 保護者との連携 知的障害者を雇用する場合、保護者との連携が非常に重要である。会社では事あるごとに電話などで保護者と連絡を取り、コミュニケーションを図っている。今後、保護者との懇親会などを開催し、会社と保護者の意見交換を行うなど、密接な連携を取っていきたいと考えている。 ［7］ 助成金や各種支援制度の活用 エコライフ土佐は、「ゼロ・エミッション構想」に基づく高知市の「エコタウンプラン」の中で、「エコタウン事業」（経済産業省）の承認を受けた事業所であり、会社の立ち上げに際しては経済産業省の「資源循環型地域振興施設整備費補助金」（1億7,500万円）と高知市の「産業活性化助成金」（10,237千円）を活用している。 また現在、業務遂行援助者の配置のために「重度障害者介助等助成金」の活用を申請中であり、今後事業を拡大していくなかで助成金や各種支援制度を積極的に活用していきたい。 ［8］ その他 特例子会社の経営に携わっている経験から言うと、障害者雇用については、行政が主になり民間を巻き込んでいくといったやり方で推進していくべきだと思う。また、知的障害者でもいろいろのことができる。その能力を把握し、活用していくべきである。 |
5.特例子会設立の障害者雇用に及ぼす（及ぼした）効果
| 第一に上げられる効果としては、障害者の雇用者数が増加し、雇用率が会社設立前の1.6％から1.8％にアップしたことである。当社のような接客業においては、障害者の雇用といってもなかなか難しい。その点で、子会社での障害者の雇用者数を親会社にカウントできる特例子会社制度は、非常にメリットがある。 また、障害者の雇用が増えることにより、会社のイメージアップが図られ、障害者への認知度が高まったことが上げられる。その結果として、障害者雇用についてのハローワークからの依頼や障害者雇用に関する講演依頼などが来るようになった。 さらに、今回は活用しなかったが、特例子会社設立に対しては、手厚い助成制度、例えば「重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金」が設けられており、そうした制度を活用することにより、子会社の設立・運営や障害者の雇用が比較的容易となるように思う。 |
6.今後の課題・展望等
| 当社のような接客業は、お客様を第一に考えなければならない。そして、接客業が気を付けなければならないことは、お客様に迷惑をかけてはいけないということと、お客様に聞かれたときの適切な対応である。その点で、障害者はハンディを持っている。障害者雇用は、確かに企業の社会的責任であるが、業種・業態によりその取り組みはかなり違ってくる。接客業として気を付けていかなければならないことと、障害者の雇用を如何にしたら両立させていけるかが今後の大きな課題である。 また、当社の障害者雇用では、トライアル雇用制度を活用し、障害者の個性・能力を把握するとともに、能力向上をあせらず、適材適所での雇用を検討していくといった考え方が大事である。そして、社内の受け入れ体制も重要であり、チームにストレスを溜めない工夫が必要とされる。そのため、会社全体に障害者雇用に関する意識の浸透を図っていくとともに、建物、設備（階段、トイレ等）なども徐々に改善していく必要がある。 さらに、社内における障害者雇用の部署の拡大やエコライフ土佐のような新たな特例子会社の検討などが上げられる。特例子会社制度は、障害者雇用が難しい業種・業態の会社にとってメリットが大きく、その啓発・普及を図っていくことが重要である。エコライフ土佐については、受注が処理能力を大幅に下回っている現状であり、今後受注エリアを広げるなどにより受注量の増加を図り、生産規模の拡大と障害者雇用の増加を図っていく必要がある。 |
| 執筆者：株式会社 くろしお地域研究所 調査研究部長 浜口 忠信 |
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