障害を意識しないで働ける職場環境
2003年度作成
| 事業所名 | 株式会社ヨコオ | |||||||||||||||||||||
| 所在地 | 佐賀県鳥栖市 | |||||||||||||||||||||
| 事業内容 | みつせ鶏の一貫生産、冷凍食品製造販売、観光事業 | |||||||||||||||||||||
| 従業員数 | 642名 | |||||||||||||||||||||
| うち障害者数 | 20名
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1.事業所の概要
| 大正15年1月、鳥栖市にて米穀商として創業。以降、飼料販売や鶏肉販売等を経て、「みつせ鶏」を中心とした一貫生産、冷凍食品製造・販売、観光事業、どんぐり村経営と事業を拡大して現在に至る。 障害者については、昭和61年8月、公共職業安定所から身体障害者の雇用要請を受けて採用して以来、採用を続け、平成15年7月現在、20名を雇用している。雇用率は3.12％となっている。 |
2.障害者雇用の経緯、背景
| 昭和61年より、身体障害者を雇用したことから始まり、知的障害者については、本社工場がある鳥栖市内の知的障害者施設の依頼により職場実習を受け入れたところ、実習態度や仕事の習熟等良好であったために、平成元年3月から雇用している。 その後、養護学校や公共職業安定所からの雇用要請等もあり、順次、障害者の雇用拡大を行い、現在20名の障害者が本社、東脊振工場、厳木工場で働いている。 このような障害者雇用が進んだ背景には、株式会社ヨコオの主な事業内容がみつせ鶏の一貫生産や冷凍食品製造であるため、農業部門や畜産部門そしてオンラインによる様々な作業工程等があり、障害があっても仕事が可能な工程が多く存在することや科学の進歩、工場生産機器の開発・発展により作業工程が簡略化されたこともその要因と考えられる。 障害の種別では知的障害者の雇用が8名と最も多い。これは、雇用が決定するまでに8週間を3回という長期の職場実習を実施することで職場の作業環境への適応性や作業工程への適性を見定めることができ、職場での順応性も高まるためと考えられる。 障害者の雇用は、雇用要請があったときに多くの作業工程や職種の中で依頼のあった障害者が可能な作業工程や職種を検討し、そこで職場実習を行い適性に問題がなければ雇用するという方針であるため、障害の種別も多彩で職種も事務部門、製造部門、畜産部門とすべての部門で雇用がなされている。 |
3.職場配置と配慮事項
| 知的障害者については、その能力に応じて、ダンボールの整理、製品をベルトコンベアーに乗せる作業、箱積作業、包装作業、手羽先カット作業等の工程に配置し、それぞれの班に指導員役の班長が配置されている。製造部門の7割が女性で班長もほとんどが女性であり、知的障害があることも踏まえて細やかな気遣いや配慮がされている。 身体障害者については、聴覚障害者は中抜き作業という同じ作業工程に配置されており、他の作業員と合同で作業をしたり、言語でのコミュニケーションを必要としない作業環境の工夫がなされている。他の身体障害者の場合は、肢体不自由や視覚障害はあるが作業工程を考慮してあるため障害者としての配慮は特に必要がない状態である。 また、直接の雇用ではないが、三瀬ルベール牧場どんぐり村では、花壇や園芸の仕事を知的障害者授産施設に作業委託を行っており、また、関連会社の養鶏事業においても知的障害者の雇用がなされている。 |
4.雇用の効果
| 身体障害者の場合、作業工程を考慮すれば作業効率は他の健常者とほとんど変わらないので雇用の効果も一般と同じである。 知的障害者の場合は、作業工程の適性を配慮し、指導体制をとっていても、作業効率という視点からみれば健常者と同じではないが、一生懸命さや、決められたことは守るという勤務態度は、職場全体に良い影響を与えている。特に、製造部門は、食品加工であるため、衛生管理には厳格さが求められるが、一度覚えたらその手順は必ず守るという態度が、他の社員の模範にもなっている。 また、職場全体として、各作業工程に障害者が配置されてから、他の社員が小さな気遣いをするようになり、メンタルな部分で社員同士の人間関係やまとまりがでてきている。 |
5.生活面での支援
| 作業工程ごとに班長制度が取り入れてあるため、仕事に関することだけでなく生活面についても相談ができ、細やかな配慮がなされている。また、不定期ではあるが昼食会も随時行われており、工場長等会社の責任者も参加して障害者とのコミュニケーションが図られている。 |
6.支援機関との連携
| 障害者施設や養護学校、障害者職業センター等関係機関との連携も取れており必要に応じて連絡調整ができる体制がとられている。特に、知的障害者の雇用が多いことから、知的障害者施設との連携は緊密になされており、自宅通勤が困難な場合は知的障害者通勤寮等も利用することができるようになっている。 |
7.今後の課題・展望
| 現在雇用されている知的障害者で最も長い勤務年数は15年程で、年齢も30才台と若く、まだ高齢化あるいは能力の低下等の課題は生じてきていないが将来的には、職場の配置等工場の内部だけで対応していくのは無理がくるため、どんぐり村等も含め広域での対策が必要になってくると思われる。そうなると、自宅や通勤寮からの通勤等は困難な状況もでてくることから、グループホーム等の支援費制度の活用を市町村や知的障害者施設と連携して対応していくことが必要と考えられる。 |
8.まとめ
| 株式会社ヨコオにおいては、障害者の雇用に特別の配慮がなされているということより、障害の種別がどうであれ、障害者その人の力が発揮される作業工程があるかどうかを検討し、そこで十分能力が発揮されれば雇用するという極めて自然体的発想により障害者の雇用が進められている。このため、それぞれの障害者の所属する作業工程では、障害者の作業能率に格差や遅れが生じていることもなく、他の従業員と障害者の区別がつかない状態で就労されていた。 これは、知的障害者更生・授産施設や重症心身障害児施設の理事長でもある経営者の「人の能力はもともと同一ではない。それぞれが自分のもつ力を精一杯出していくことが大切だ」という自己実現の理念が社員全体に浸透しているためで、障害者に限らず働きやすい職場環境ということができる。 |
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| 執筆者：西九州大学 健康福祉学部 助教授 田代 勝良 |
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