接客の中で磨かれたバリアフリーの企業マインド
2003年度作成
事業所名 | 株式会社ヨネザワ | |||||||||||||||||||||
所在地 | 熊本県熊本市 | |||||||||||||||||||||
事業内容 | メガネ、補聴器、ジュエリー、光学品、コンタクト及びその付属品、移動通信機器 | |||||||||||||||||||||
従業員数 | 820名 | |||||||||||||||||||||
うち障害者数 | 11名
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1.事業所の概要
(1)沿革 |

1974年、有限会社メガネのヨネザワ創業。以来、着実な経営で業績を伸ばし、1981年、株式会社に組織変更。現在、沖縄を除く九州全域および山口県に約160店舗、従業員数820名を数える九州トップのメガネ専門店である。 事業の多角化においても積極的な取り組みを行っており、1981年には補聴器、1985年にはコンタクト、1991年にはジュエリー、1996年には携帯電話販売代理などの事業に参入している。 | ![]() 本店外観 |

(2)事業内容 |

メガネの加工・販売を中心に、補聴器、ジュエリー、光学品、コンタクトおよびその付属品の販売、移動通信機器の販売など。主力商品であるメガネについては、各店舗とレンズメーカー工場とをオンラインで結ぶなど、迅速性・効率性を追求している。また、特に店舗数の多い熊本には加工センター(本社1階)を設置し、県内各店舗のレンズ加工を集中的に行い、各店舗に配送するシステムを構築している。 |

(3)経営状況 |

主力商品であるメガネ市場においては、近年、低価格ショップの進出が相次ぎ、少なからぬ影響を与えている。また、数多く出店していた大手スーパーの倒産により店舗撤退も発生している。 メガネ事業に関する今後の経営方針としては、「専門家のいる専門店をめざす」ということが挙げられた。安売り店との違いはメガネを「雑貨」と捉えるか「医療器具」と捉えるかの違いがあるという。ヨネザワはあくまでも「医療器具」と捉え、専門的な対応を行っていくということである。 また、新たな店舗を出店していく時代から充実の時代へという認識もあり、現在、既存店舗のリニューアルによってバリアフリー化を含めた顧客満足度の向上を図っている。 メガネ市場の変化が影響を与えている一方、早期に取り組んできた事業多角化が功を奏しており、特に携帯通信分野の伸張はめざましい。 |

(4)雇用状況 |

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(5)助成金の活用状況 |

[1] 重度中途障害者職場適応助成金 2件 [2] 障害者雇用調整金受給 (平成12年度~平成14年度) |

2.ヨネザワにおける障害者雇用の特徴
株式会社ヨネザワにおける障害者雇用の特徴は、以下の2つが挙げられる。 [1] 規則にとらわれない障害者への柔軟な対応 [2] 接客業の経験に培われたバリアフリー環境づくり ヨネザワでは、障害者雇用や就業環境づくりについて特別の仕組みを作ったり、新たな規則を作っているわけではない。このことは一面、システム整備という企業としての課題を示すものでもあるが、言い換えれば、規則に縛られることなく状況に応じて柔軟に対応できる企業風土があるとも言える。 以下、これらの点について順を追って概略を紹介する。 |

(1)規則にとらわれない障害者への柔軟な対応 |

株式会社ヨネザワには、じん臓を患い人工透析を受ける必要のある従業員が4名いる。週に2~3回通院し、夕方5時から夜10時まで約5時間の人工透析を受けるのである。就業時間は夕方6時までであるが、会社はこれら4名については人工透析の日に1時間早く退社することを認めており、それに関する賃金カットは行っていない。従業員の1人が早退することで業務が滞る場合も、周りのスタッフがフォローすることで解決されているようである。 また、従業員が中途で障害が発症したケースでも、柔軟な対応がなされている。ここでは重度中途障害者等職場適応助成金の対象となった2つの事例を紹介する。 ひとつは、上・下肢の障害が発症したケースで、重度のために長距離の移動などは負荷が大きくなった。この従業員は大分県竹田店勤務(店長)で、阿蘇方面の住まいから竹田まで通勤をしていたのであるが、発症後、通勤しやすい場所にという会社側の配慮により阿蘇店勤務(店内管理事務)に異動となった。 もうひとつは、じん臓機能障害(1級)を発症したケースである。発症前は関連会社の営業本部長として売上づくりから組織管理まで陣頭指揮を取っていたが、週2回の人工透析を含めて労働条件の軽減が必要となった。そこで、発症後は株式会社ヨネザワ本体の商品部へと異動となり、商品政策や取引先との折衝など社内業務を中心とする配置となった。 これらの事例に共通しているのは、規則や本人からの申し出によって行われたわけではなく、会社側の配慮として実施されたということである。障害に対する心配りが企業風土として根付いていることが推察される。 なお、中途障害者2名の場合、異動に伴って新たな技能習得が必要となり、それぞれ毎月2回の教育訓練を受けている。この経費もすべて株式会社ヨネザワの負担である。 |

(2)接客業の経験に培われたバリアフリー環境づくり |

本社ビルには外付けのエレベータ(車いす対応)が設置されている。5階建てのビルで、もともとはエレベータが設置されていなかった。しかし、荷物の運搬などの必要性から、後日、外付けのエレベータを設置した。その際、障害者への対応も配慮し、車いすでも利用可能なものとしたのである。 |

このような設備面のバリアフリー対応は、本社だけではなく、比較的新しい店舗でも実施されており、古い店舗においても先に述べたように順次リニューアルを推進している。 本店を例に見てみると、まず、入り口の車いす用スロープがあり、店内はフラットな設計となっている。また、検眼器は従来イスがセットされているのだが、ヨネザワでは既存のイスを取り外し、車いすでも利用しやすく改造している。 接客業ゆえに障害を持つ顧客との対応もあり、メガネ専門店という業種ゆえに高齢者の来店も多い。自然、障害者や高齢者への配慮・心配りが身についているのだろうと思われる。ヨネザワにおいて、障害者雇用に関するハード面を含めた柔軟な対応や配慮がなされている背景には、接客業あるいはメガネ専門店として培った経験が企業風土・企業文化として根付いていることがあると思われる。 | ![]() 外部取付エレベーター |

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3.まとめ:ヨネザワにおける障害者雇用環境のあり方
前述してきたように、株式会社ヨネザワではハード面のバリアフリー化を含めた障害者の雇用環境整備が行われているが、具体的な整備というよりも、会社全体あるいは個々の持ち場での「心配り」や「配慮」のあり方が印象に残るものになっている。それは、規則や制度で実施されているのではなく、企業文化や風土として身に付いているからだろう。先に挙げた雇用率・定着率の高さは、規則などでは生まれない。やはり働きやすい環境や雰囲気が社内にあるからだと考えられる。 では、なぜヨネザワではこのような企業文化・風土が形成されてきたのだろうか。 まず挙げられるのは、先に述べたように「接客業」であること。顧客への配慮の徹底が、社内での障害者への配慮にもつながっていると思われる。メガネや補聴器を扱い、高齢者の来店も多いという特性がこれをより意識的なものに定着させているようである。 次に、業務自体が軽作業であること。本社の事務作業、店舗の販売・接客業務、加工センターの技術業務、いずれも比較的に軽作業であるために、障害者雇用における大きな阻害要因とはなっていないようである。 3番目に、規則よりも個人の裁量を重視していること。例えば、各店の運営についてもマニュアルで縛るのではなく、店長に任せるという意識が強い。一見関連がないようだが、このような自由な気風があるからこそ、情報だけを挙げて上部組織に判断をゆだねるのではなく、現場サイドで迅速で柔軟な対応をとることができる。先に挙げた「障害が発症した後の配慮にあふれた異動」といった柔軟な対応は、このような組織の自由さから生まれたのだと思われる。 企業運営には効率性と合理性が求められ、そのためにはシステム化の役割も大きい。しかし、同時に「人」がより働きやすい環境づくりを行っていくためには、システムだけに頼らない企業文化をいかに形成していくかが大切になる。接客業の経験に裏打ちされたヨネザワの「人」を大切にする企業文化のあり方は、貴重な示唆を与えてくれる。 |

執筆者:有限会社エアーズ 森 克彰 |

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