特例子会社の業務拡充による障害者雇用率の確保
2003年度作成
事業所名 | 株式会社旭化成アビリティ | |||||||||||||||||||||
所在地 | 宮崎県延岡市 | |||||||||||||||||||||
事業内容 | (1) 印刷及び製本に関する事業 (2) 給与計算・経理・庶務などの事務業務の請負・代行・受託に関する事業 (3) 電子計算機のプログラム作成、計算、各種データーの収集・加工・解析ならびに情報提供に関する事業 (4) 厚生施設・工場施設の管理ならびに清掃に関する事業 (5) 樹木の栽培その他の緑化に関する事業 (6) 衣料用繊維製品・食料品・日用雑貨などの斡旋・販売に関する事業 (7) 駐車場の管理・運営に関する事業 (8) クリーニング業務 (9) ふすま・障子・網戸の張り替え及び掛け軸の制作販売に関する事業 (10) 損害保険代理業 (11) その他前各号に関連する一切の事業 | |||||||||||||||||||||
従業員数 | 123名 | |||||||||||||||||||||
うち障害者数 | 104名
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![]() 本社風景 |
1.事業所の概要
旭化成工業株式会社(以下「旭化成」という)が、昭和60年8月に障害者雇用促進法に基づく「特例子会社」として設立した事業所である。発足当時は、本社(本店):東京、営業所:東京・富士・守山・水島・延岡であったが、平成9年10月事務手続きの効率化を図るため、本社を延岡に移転した。資本金4,000万円(旭化成100%出資) 延岡営業所は、障害者数 57人。部位別には下表のとおりである。
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2.特例子会社設立時の経緯
旭化成の特例子会社として誕生した経緯から、作業内容は、親会社の各工場の中から障害者に可能な作業を開拓していき、事業内容の拡大を図っていった。その間の経過を設立当時、その任に当たられた初代所長の甲斐泰氏(旭化成OB)は、「従業員の採用も旭化成の[1]従業員の子弟・配偶者、[2]従業員の親族、[3]関係会社従業員の親族からのスタートだった。社員の子弟に障害者は48人おられたが、家庭の事情で就労しても良いと回答を得たのは7人しかいなく、10人確保するのに、なみなみならぬ苦労があった。」と述べている。 この時期は、昭和56年からスタートした国際障害者年10年の中で『完全参加と平等』をテーマに運動が展開された時代であったが、地方ではまだまだ障害者に対する偏見があり外に出ない、出したがらないといった当時の時代背景も少なからず影響があったものと思料されるところである。 |

3.障害者の選考方法
この間における雇用の経過をたどると、就労希望者に対して会社側としては、賃金処遇、仕事の内容等を説明して、次の三つの条件を提示した。 [1] 宮崎障害者職業センターの適性検査を受けること [2] 旭化成保険病院で健康診断を受診すること [3] 面接選考を行うこと この要件は、事業を運営するための最低要件であるが、それにもかかわらず、かなりの抵抗があり関係者を困惑させた。職業センターの検査には1人4時間を要し、当時、主任カウンセラーの荒木武人氏(のちのハローワーク宮崎所長)には、懇切・丁寧な検査を献身的に行っていただき所期の目的を達成したとのことであった。会社としては、適性を見極め、健康を確認し、障害を有していても健全な心、優しい素直な心をもっている人に重点をおき、既存の従業員との雰囲気に溶け込んでくれる人を選んだ。 このような選考基準を明確に定めたことが、職場の人間関係を良好なものとし、向上心と相まって、それが現在の旭化成アビリティの根底に流れていることを感じ取ることができた。 |

4.事業内容と障害者が従事している業務
事業内容について、その取り組みの状況を個別に紹介することとする。ただ、事業が多岐にわたっているので、紙面の関係上一部について紹介することにとどめることとする。 |

![]() 会議の資料・教育のテキスト・OB会の名簿日誌・記録用紙・各種提案カード・広告用チラシまであらゆる印刷物の作成ができる。 また、名刺や葉書(挨拶状・案内状・年賀状)の印刷。カラーコピーもできる。 |
![]() 今は、いろんなデーターが膨大な量で出ている。しかし、そのデーター(数値)も入力しないと必要とする情報にならない。データー入力では、計算や図表化などの、データー加工も可能である。 |
![]() 障害者技能競技大会の県大会に優勝し、全国大会でも上位入賞の実績を持ったメンバー数名が、ワープロとパソコンによる浄書を行っている。 |
![]() 事務部門の事務補助として、各種書類のチェツク・給与事務補助・データー入力などを行っている。洩れやミスが絶対に許されないので常に緊張感と責任感を持続することが必要である。 |
![]() 旭化成及び旭化成関係会社の作業服と事務服の受発注を一手に引き受け、現品は直接手元に配達している。 |
![]() 文書をコピーして、たくさんの相手先に送るという作業は、予想以上に時間がかかり、特に定期的に発行するものは尚更かかるので、受注が伸びている。 なお、郵便物の一括発送事務も行っている。 |

5.業務拡充への取り組み
延岡営業所長の後藤利男氏が営業所の業務紹介の冒頭に、「私たちの会社は、旭化成グループ会社の社外流出経費を内部還元させる関係会社といっても過言ではありません。ですから私たちは、皆さんの職場で外注している仕事や、手間ひまかかる仕事は何でも引き受けてやれる力を備えていかなければなりません。2年後に創立20周年を迎える延岡営業所は、そんな力を着々とつけてきたと自負しておりますが、まだまだ皆様のご期待に応えきれない部分もございます。しかし、水島・東京をはじめとするアビリティ軍団の総力をあげれば、皆さんがびっくりするようなことができるような気がします。どうぞ今一度、皆様の仕事の中で、アビリティに廻せるものはないか見直していただき、ひとつでも多くの仕事を出していただければ幸いです。」と、その取り組みの決意を述べている。 |

6.今後の課題・展望
旭化成アビリティの仕事の考え方として、企画管理部・部長堀口雅一氏は、次のように述べている。 |

(1)個々人の課題 |

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(2)仕事量の確保で注目すべき課題 |

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(3)旭化成アビリティの目標・改善点 |

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7.まとめ
“工都・延岡”の礎を築いた旭化成生みの親、当時日本窒素肥料の専務野口遵が、大正12年(1923年)工場を設立して以来、現在まで一貫して県北地域経済に大きく貢献している旭化成は、時代を先取りした事業を展開している。障害者雇用面においても、特例子会社「アビリティ=新しく能力を生み出す」を設立して、県内からハローワークを通じて57人の障害者を雇用している実績は高く評価されている。 今回事業所を訪問して感じいったことは、発足当初は旭化成グループの業務オンリーであったが、年を経るごとにアビリティとしての特色を有し、従事する障害者も健常者と変わりなく、データー入力部門等においては健常者を上回る実績をあげていることである。 また、日常の労務管理で、[1]明るく仕事をしてもらうこと。[2]安全と健康を心がけてもらうこと、に留意し業務遂行を行っている。 このことは、社長をはじめ経営者群の卓越した指導力によるところが大きい。テーマとなっている障害者雇用率も、今後の事業拡大に伴い雇用増を予定しており、法定雇用率を大きくクリヤーすることを目標にしている。(14年度の雇用率は、1.87%) |

執筆者:社会保険労務士 長友 安弘 |

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