障害者の働く場として創業17年
2003年度作成
| 事業所名 | 株式会社 ハクホー | |||||||||||||||||||||
| 所在地 | 栃木県真岡市 | |||||||||||||||||||||
| 事業内容 | 食品包装業（菓子・パスタ類の小分け包装、詰合わせ、梱包等） | |||||||||||||||||||||
| 従業員数 | 20名 | |||||||||||||||||||||
| うち障害者数 | 9名
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1.創業の経緯、背景
| (株)ハクホーは、昭和61年に社長の篠崎久子氏が創業当初から障害者の働ける場、特に知的障害者が就労、自立できる環境を確保するために設立された。 当時、真岡市近辺は、障害者関係の施設や作業所も少なく、ましてや就労できる事業所等も見つけるのが困難であった。 篠崎社長は、今でも創業当初の精神と目標を掲げ、事業内容も知的障害者が適応しやすい作業を開拓し、選択して受注している。そのために、事業運営においても、他の事業所には見られないご苦労があるようだ。 業種は、スパゲティ、マカロニ、キャラメル等の食品包装業である。従業員は、20名でうち9名が障害者である。 |
2.作業内容と配置
| 当社の作業内容は、食品メーカーから搬送されてきた、半製品（仕掛品）を所定の分量に小分け計量して袋や箱に詰めて包装した後に梱包して出荷するものである。 計量や包装は、専用の機械を操作して自動的に行うが、機械に半製品を投入したり、検品作業、化粧箱や段ボール箱への詰め作業、製品をパレットへの積み上げ作業、片付け作業等、工程の随所に人手による作業が見受けられる。 機械の操作は、機械の性能、操作方法を熟知し、安全にも配慮する必要があるので、多くは健常者が担当している。手作業による工程は、障害者が分担して行っている。 障害者が分担する手作業の内容も多種多様に分けられており、一日中の立ち作業や座作業で分けたり、一部器具を使用したり、測定を行うこともある。また、製品の入った段ボール箱には10kgを超えるものもあり、このような物の移動には体力を要するため、これらの作業に障害者を配置する際には、障害者の個々の能力と体力、特性を十分に理解・把握して行うことが望まれる。その点、当社では、全従業員の能力や体力を把握して作業配置を行っている。 稼動中は、作業内容及び従業員を熟知した工場長が、時々、工場内を巡回し、作業の進行状態の確認を行い、場合によっては、作業の指示等も行っている。 障害者の作業配置には、不測の事態への対応や障害者のみの単独作業にならぬよう健常者との組み合わせを行うよう配慮している。 |
3.教育訓練
（1）作業教育 |
| 当社では、事故及び不良品の発生には、防止対策に徹底を期している。事故及び不良品の発生は、会社や従業員の存亡にかかわるため、全従業員が安全基準や作業手順等の遵守を習得できるまで、教育・指導・注意を行っている。 各作業には、一定の手順や注意すべき事項やきまりがあり、作業の安全と製品の品質保証のためにも全従業員に必ず理解されるよう教育を行っている。知的障害者は、文字や口答のみの説明では、十分な理解が得られないので、絵や色別により繰り返し習得されるよう指導を行っている。 |
（2）生活教育 |
| 挨拶・返事・個人物品の管理・昼食の準備や片付け等、基本的な生活習慣を身につけられるよう会社においても指導を行っている。 |
（3）衛生教育 |
| 当社が扱っている製品は食品のため、衛生教育には、特に注意をしている。手洗いや消毒、作業着の着脱、健康管理等や会社の規則・基準を守れるよう一人一人の理解度に合わせて教育を行っている。 |
4.通勤手段と人間関係
| 従業員の通勤手段は、家族による送迎、自転車通勤と路線バスである。路線バスは、本数が少なく時間が決められているため、バス通勤者はバスの発着時刻に合わせて退社するよう配慮している。 また、障害者が、毎日勤務できるようにするためには、家族の関わりが重要と考え、勤務カレンダーに変更が生じた場合などは、本人に伝えると同時に手紙にて家族へも連絡している。 職場における人間関係は、従業員のうち健常者は中高年齢者の女性が主体であり、障害者は比較的若いので、それぞれに親子関係のような感覚で接している。時には、我が子のように注意したりすることもあるが、普段は親密に家族的な雰囲気で作業が続けられている。そのためか、退職するものも少なく定着率も高くなっている。 また、工場長は、職業生活相談員として12年のベテラン女性であり、創業当初から障害者の受け入れから職場配置、教育、作業指導ばかりでなく、人間関係や生活面の相談も積極的に行っている。障害者と会社の橋渡し役、相談役として、よりよい職場環境作りに努めている。 このため、作業に起因する健康障害等の発生は皆無である。 |
5.今後について
| 現況でみられるように、今後も障害者が安全に安心して働ける職場となるよう引き続き工夫・改善を行っていきたいと考えている。また、昨今の厳しい経済情勢の中で、障害者を含めた全従業員の雇用の確保を維持していくことは至難の業である。将来の雇用を考えると、障害者に適した仕事をいかにして安定・継続して確保していくかが事業主に課せられたテーマではないだろうか。 また、養護学校等の生徒たちが職場実習を行うことは、就職前の体験として有効であると考えており、学校等からの要請があればより多く機会を提供し、就職前のステップとして活用してもらいたいと考えている。 |
6.事業所の取組に対する意見、評価など
| 障害者の雇用の場の確保という理念の下に創業し、17年間続けてこられた熱意と行動力は敬服に値するものであり、高く評価したいと思う。 従業員20名という規模の事業所では、これ以上の障害者の雇用拡大は難しいものがあると思料される。しかし、現実として職場定着の面では、障害者に対する社員の意識改革を行い、障害者を理解し、障害者に合った作業指導を行い、共に安全で正確な製品作りができる職場環境を築き上げておられ、熱意と行動力の賜物かと思われる。 知的障害者の特性を配慮した作業手順（絵、色別を使用し理解しやすくしたもの）の作成などの工夫が、安全や不良品の発生防止に効果をあげている。また、作業内容と障害者の体力、能力等を見極めて職場配置を行っており、それぞれ自信をもって仕事を行うよう指導していることは評価したい。 終わりに、知的障害者の雇用管理、とりわけ職場環境を障害者の目線で見つめつつ取り組まれ、厳しい経済情勢の中にあって、障害者の雇用の拡大に努力されている状況が見られたことは取材した者としてうれしい限りであった。 |
| 執筆者：社会福祉法人 鹿沼希望の家施設長 山口 穣治 |
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