環境と人にやさしいコールセンター
2003年度作成
事業所名 | ソニーイーエムシーエス株式会社 東日本CSフロントセンター | |||||||||||||||||||||
所在地 | 千葉県東金市 | |||||||||||||||||||||
事業内容 | ソニー製品の修理・サービス業務他 | |||||||||||||||||||||
従業員数 | 400名 | |||||||||||||||||||||
うち障害者数 | 7名
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![]() 東日本CSフロントセンター 全景 |
1.事業所の沿革
ソニーイーエムシーエス株式会社、東日本CSフロントセンターが所在する東金市は、千葉県の中東部、九十九里平野のほぼ中央に位置している。 古くから農業・商業等の産業を中心に発展し、山武郡市の中核都市としての役割を担ってきた。首都圏から50km~60km圏に位置するため、交通の利便性の高い地域として首都圏における役割は高まっている。市民意識も高く、東金市が掲げた「第三次総合計画」では、「人・自然ときめき交感都市 東金」を将来像として策定した。 正に、この市のコンセプトと同調するかのように、東日本CSフロントセンターでは、「環境と人にやさしい」を社内方針とし、地域住民に密着した事業所を目指している。 1972年11月にソニー(株)の全額出資(資本金3億円)で、オーディオシステム(株)を設立。 1984年11月にソニーアスコ(株)に社名変更。 1995年10月にソニー小見川(株)と合併し、ソニーコンポーネント千葉(株)に社名変更。 2002年10月にソニーイーエムシーエス株式会社と合併し、千葉テック東金工場に社名変更。 2003年11月に組織変更によりソニーイーエムシーエス株式会社東日本CSフロントセンターと名称変更。 主な業務は、カスタマーサービス/コールセンターである。 |

2.職場新設の背景
東日本CSフロントセンターは、ソニーイーエムシーエス(株)の本社直轄組織として2003年11月に新設された。業務内容は従来の生産品目の他にソニー製品の相談・修理等のお客様サービスを、東日本全域対象に実施することになった。 ソニーグループでは、地球環境の保全が人類最重要課題であることを全ての社員が認識し、行動している。また、東金地区は、環境ISO14001(環境と人にやさしい地球環境保全運動)を市の政策として積極的に推進している。 当社はISO14001に基づく活動をあらゆる場面で実践し、模範的な評価を受けている。地域密着型企業として、会社周辺の住民との交流は欠かさず行っており、特に学生・生徒へ、環境保全の大切さを体験してもらっている。この地域の学校では「キッズISO」をすでに発足し、小学生、中学生を対象に、環境に対する意識を高めてもらうよう努力している。 このことから、東日本CSフロントセンターは「小・中学生に環境のことを勉強してもらう場」となるべく、発泡スチロールのリサイクル設備を設置し、見学者に開放している。ミカンの皮から抽出された溶液で発泡スチロールを溶かして、再び発泡スチロールに還元するという設備である。 その他に、厨房から出る残菜・残飯を整理して堆肥化し、その堆肥を農家の人が購入して、それを肥料のかわりに使用し、再び稲作とか野菜の栽培に活用してもらっている。その生産物を、会社が購入している、というリサイクルフォローを行っている。 また、2003年11月に大規模な太陽光発電設備を導入しており、環境保全についても先進的な取り組みを行っている事業所である。 |

3.障害者の募集・採用
2002年の10月にソニー製品の国内生産統括会社であるソニーイーエムシーエス(株)と合併して以降、採用のあり方、進め方が変わってきた。 採用のあり方については、合併後、職場はバリアフリーに改装したため、多くの障害者を受けられるスペースになった。 合併後はソニー本社から障害者一人が配属された。 障害者の採用に当たっては、「健常者も障害者もビジネス的にはイコールである」というのが会社の方針である。障害があってもよい。会社に対して奉仕できるものであれば報酬は同じである。 |

4.知的障害者の配置とローテーション
知的障害者の場合、以前、同じ職場に複数の者を配置したが、ライバル意識が強くてうまくいかない場合が多かった。そこで、一人ずつ別のポジションに配置変更をした後は、定着率がよくなった。 医師・看護師が、知的障害者の人に日常的な対話や、カウンセリング等のメンタルケアーをしている。そのため、一般社員より、知的障害者の家族との話し合いが密になっている。 会社には多くの職場があるため、ローテーションをせざるをえない。知的障害者の家族には、その会社の状況と、障害者の会社での状況等を充分説明している。同じ部署に長期に勤務している訳にはいかない。逆に考えると、ローテーションをすることにより新鮮味がある。長期定着の要因もそこにあると思われる。勤務期間も、長い人では10年以上にもなっている。 |

5.能力開発と配置転換
![]() 例えば、障害者が別の所属に異動する場合、新しい所属に慣れてもらうため、他の健常者が仕事に必要な作業を障害者にいろいろと教えている。それ故、職場の配置転換も一般社員と同様の扱いをしている。 障害者の中には「時間に余裕ができたから、もっと仕事を探して欲しい」と、非常に前向きの人も出てきており、一般社員も障害者の勤務態度に啓発されることが多い。 |

6.賃金・労働時間
職場では、社員と一緒に仕事を進めているので、障害者とか健常者とか区別する必要はない。障害者が仕事で失敗すれば普通に怒るし、遅れれば「残業せよ」と言う。何かかばうことがあったら、ビジネスは成り立たない。忙しいときは皆同じに働く、という基本方針で指導している。このようなことから障害者といえども会社の一員という認識を強く持つようになり、企業として大変心強く思っている。 一方、通勤については障害者の個別の事情を考慮して、きめ細かい対応をしている。例えば、障害者の障害の度合いにより、会社の送迎バスが使えない人がいた。そこで、公共の交通機関を利用して出社してもらうことにした。しかし、公共機関のバスは会社の送迎バスより30分遅く出発することから、出社時間を一般社員より30分遅らせた上で、勤務時間を8時間労働から、7.5時間労働とした。労働条件が適合しないから採用しないというのでなく、障害者の特性を考慮して雇用しているのである。 |

7.健康管理
![]() また、肢体不自由者(車いす)は、昼食時に一般社員と同時に食堂に行くと大変混雑し、尚かつ、セルフサービスのため配膳が上手にとれないことが多かった。そこで食事時間を午前11時ごろにずらす配慮をしている。この時間帯であればまだ一般社員が食堂にいないので、医師や看護師が障害者と一緒に食事をとりながら問診をし、本人の健康状態をチェックしている。 尚、体調不良の重度障害者については、健康状態が悪いからすぐに退職させるというのでなく、長期間様子を見るという対応をしていた。 また、てんかんを持っている知的障害者が入院することになったとき、社員は彼女に手紙を出して、一所懸命励ました。彼女も返事を出し、挫けそうになった気持を持ち直し、やる気が出て職場復帰を果たしていた。 一方、安全衛生委員会は月に一回あり、この委員会に医師が参加してアドバイスをしてくれている。 医師は、自分も会社の一員であるとの意識から、通常は白衣を着ずに、会社のユニホームで、工場内を歩いて社員の健康状態を把握している。また、障害者の家族と綿密に連絡を取ることも併せて行っている。 |

8.就業環境の整備
当社は今回、障害者のために施設整備を行い、従来より、職場の照明を明るくし、一人の作業スペースを広くするなど、快適に仕事ができるように改善した。 新設された棟内も、メンタルヘルスを取り入れて、社員一人ひとりが快適に仕事ができるレイアウトにしている。 パソコンを使用した業務が多いことから、どうしても孤独になりがちである。それを解消するため、いろいろと社内で検討した。その結果、机の配置をV型にして、イスも全てヒジ付きとし社員の気持を和らげる努力をした。 言うまでも無く、社員は障害者も健常者も皆、平等であるから、作業所内はどこもバリアフリーになっていて、障害者でなくても快適に過ごせるようになっている。 また、お問い合わせをしてきたお客様に対しても、心地よい態度で接することができ、より高品質なサービスの提供を社員ができる環境を作っている。 健常者の押し付けになりがちな改装・整備も障害者の意見を丁寧に反映し、できる限り配慮した施工をしている。 ![]() ![]() 次に具体的に改善した事例を示す。 |

(1)エレベーターの設置 |

![]() その結果、障害者が2階にある食堂、及び売店に行けるようになった。 初めて2階の食堂・売店へ行けるようになったある障害者は「やっと会社の一員になれた」と顔をほころばせていた。 |

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(2) 防火ドアーの改修 |

![]() 具体的には、下肢障害者(車いす)はドアーのノブにタッチするとき従来の高さでは高すぎるため、本人に触ってもらって位置を決めている。また、リュウマチを持った障害者はノブを回せなかったため、そのノブをタッチ式の自動ドアーにした。車いすの人にも、手の不自由なリュウマチの人にも使いやすい機能にしている。 |

(3)駐車場の改修 |

![]() また、進行性の障害を持っている下肢障害者(車いす)に対して次のような会社の献身的な対応を聞き敬服した。 障害者が会社の門をくぐると、守衛が総務に連絡を入れ、連絡を受けた総務の男性と社員が駐車場に行き、障害者が自家用車から降車するとき介助している。介助する社員は決して当番制にはしていない。ノルマがあると長続きはしないから、男子社員が自発的に毎日行っているとのことだった。 |

9.評 価
ソニーイーエムシーエス株式会社 東日本CSフロントセンターは「環境と人にやさしい」を社内方針に掲げているとおり、社風がとても人間的に温かく感じられた。 評価として次の3点を挙げる。 |

(1) 障害者の雇用管理について |

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(2)健康管理等についてはきめ細かい配慮をし、障害者の職場定着を図っている。 |

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(3)施設改善をし、障害者に配慮した職場環境作りを積極的に推進している。 |

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10.後 記
「ISO14001」に基づく活動は際限が無い。これを真摯に考えているソニーグループの模範的態度には頭が下がる。次世代のためとはいえ、地球環境の保全が人類における最大重要課題であることは、万民の知るところである。地球環境への配慮が子々孫々への贈り物であることは阻めない。自然との共生、社会との調和をはかり、一人ひとりが多様なニーズに対応した人間性豊なまちづくり、環境づくりを未来に向かって実践することを、次世代へ継承させたい。良い方向へ変貌するまちづくり、環境づくりなら大いに期待したい。人間と自然と環境の問題をよくとらえた、均衡ある企業の発展を願う。 差別の無い世界に触れ、心が洗われた。 「で愛・ふれ愛・かたり愛」そして、「未来に残す環境の安全・安心」 を地球環境として、未来への贈り物としよう。 |

執筆者:(有)東葛一級建築士事務所 所長 1級建築士、障害者雇用推進技術顧問 宮崎 輝紘 |

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